現れたセイバーと名乗る男は2人に質問をするが、キャパシティを超える出来事が重なったため上手く答えられない。何とか言葉を出そうとしていると
「まずは落ち着きましょう。ひとまず、明かりをつけては頂けませんか?」
セイバーからの提案を戸惑いながらも受け入れる2人。小さなテーブルを囲うように3人は座る。
「さて、ではまずは自己紹介から。私はサーヴァント、セイバー。剣士の英霊です。」
「え、えぇと...わ、私は神崎蘭子...です。そ、そのぉ...アイドルです...」
「ボクは二宮飛鳥、蘭子と同じアイドルさ。そのセイバーというのは本名なのかい?」
「いえ、これはクラス名、いわゆる職業みたいなもので真名は別にありますよ。もしかして、2人は魔術師ではないのですか?」
自己紹介を済ませる3人。その中でセイバーは、2人が魔術師ではないかもしれないと考え質問をする。2人は魔術師とは何かを訪ね、セイバーから説明を受ける。
「どうやら2人は魔術師ではないようなので、私の方から簡単に説明させていただきます。まず、私は過去の英霊がサーヴァントと言いう、使い魔の枠に収まった存在です。サーヴァントには7つのクラスがあり、セイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカーのクラスがあります。」
「なるほど...つまりキミは歴史上の偉人の幽霊、みたいなものでいいのかい?」
「ヒッ!ゆ、幽霊!?」
冷静に分析する飛鳥に、蘭子は驚いて抱きつく。
「簡単に言ってしまえばそうですね。そして、サーヴァントはマスターと呼ばれる魔術師からの魔力供給を経てこの世界に存在します。つまり、魔力が切れてしまうと私たちは消えてしまうのです。」
「あの...マスターっていうのはなんなんでしょうか...?あと、魔力供給って?」
震えながらも質問をする蘭子。セイバーは蘭子に対し、優しい声で答える。
「マスターというのはサーヴァントを使役する存在の事です。2人とも、手の甲に痣のようなものはありませんか?」
手の甲を見る2人。すると蘭子の手の甲には見た事のない赤い痣のような物ができていた。
「な、何これ!いつできたんだろう...」
「どうやら、ミス蘭子が私のマスターのようですね。」
「ちょっと待ってくれたまえ。ボクの手の甲にもあるんだが」
そう言って手の甲を見せる飛鳥。飛鳥の手にも赤い痣のような物が出来ていた。
「これは...どういう事なのでしょう...通常、サーヴァント1人につきマスターは1人というのはずなのです。...どうやら、魔力が1人からでは足りず、例外的に『2人と契約をする』という形で魔力を供給しているようですね。」
「その、魔力供給というのは?」
「失礼、説明の途中でしたね。さて、我々サーヴァントは現世にいる間魔力というものを必要とします。なので、サーヴァントはマスターからそのための魔力を貰い、マスターに尽くすのです。それが、魔力供給です。」
説明を終えるセイバー。蘭子は幽霊だと怯えていたが、話すうちに警戒心が解け、本調子を取り戻し始める。飛鳥はふとある疑問が浮かび上がり、セイバーに尋ねる。
「その、根本的な事を聞いてもいいかい?どうして、ボク達はサーヴァントなる存在を召喚できたんだい?正直に言って、ボク達はアイドルという事以外普通の人間と変わらないはずだが?」
その言葉に蘭子も気がつく。
「そ、そうであった!何故我らは汝らサーヴァントなる物を召喚できたのか?」
蘭子のいきなりの変貌に驚きながらもセイバーは答える。
「そ、そうですね。お2人の祖先に、魔術師の家系の者がいたのでしょう。お2人の魔力量はそれなりにあるようなので有名ではないにしろ、そこそこ実力のある魔術師であると考えられます。そして、その魔力があったため、聖杯戦争に参加してしまった、と考えられます。」
「「聖杯戦争?」」
聞きなれない単語に首を傾げる2人。戦争などとは縁遠い現代の少女2人は『戦争』という単語に疑問を感じつつも恐れるのだった。
「せ、聖杯戦争?聖杯召喚のおまじないじゃなくて...?」
「少々不穏な言葉だね。ボクらは誰と戦うと言うんだい?」
「どうやら聖杯召喚のおまじないというのは聖杯戦争の参加者を集めるための隠れ蓑のようですね...。聖杯戦争の敵は他の6人のサーヴァントとそのマスター。彼らを打ち倒し、聖杯を手に入れた者の願いが叶う。それが聖杯戦争です。」
「じゃ、じゃあ殺し合いをするって事かい!?そんなのはゴメンだ!ボク達は誰かを殺したりするのなんかゴメンだ!!」
思わず立ち上がり大声をあげる飛鳥。
「しっ!静かに!殺し合いをするのはあくまで私たちサーヴァントだけです。マスターは誰も殺さなくても聖杯戦争は終わります!」
「な、なんだ...よかった...。」
力の抜けたように蘭子にもたれ掛かる飛鳥。
「以上が簡単な聖杯戦争の説明になります。他に何かご質問はありますか?」
「あ、あの...」
セイバーの言葉に蘭子が反応をする。
「なんでしょう、ミス蘭子?」
「セイバーさんの本当の名前ってなんでしょう...?」
至極真っ当な質問をする蘭子。本名を知り、できるだけ交流を深めておきたいと思っての質問であった。
「申し訳ございません。お2人は魔術師ではないようなので、今真名を伝えてしまうと、他のマスターに思考を読まれる危険があります。なので、私の事はセイバーである、ということしかお伝えできません。」
申し訳なさそうに答えるセイバー。
「そうですか...。」
肩を落とす蘭子。すると部屋を叩く音が聞こえる。
「!誰か来たみたいですね...私は霊体化といって、姿を消す事ができますので、お客様を部屋に入れてください。私はすぐそばで待機していますので。」
そう言って姿を消すセイバー。姿が消えるのを見届けてから、蘭子が扉を開ける。
「ランコ、大丈夫ですか?大きい音、聞こえました。」
扉の前に立っていたのは同じ寮に住む、アナスタシアであった。心配そうな顔をするアナスタシアに対し蘭子は普段通りに振る舞う。
「フフフ、このような喧騒、私の前では小鳥のさえずりよ。」
「フフ、ランコはいつも通り、ですね。ん?アスカも一緒、ですか?」
「あ、ああ。ちょうど2人で話していてね。ちょっと白熱したのさ。」
アナスタシアに対し誤魔化す2人。ふと、アナスタシアは蘭子の部屋にある魔法陣を見つける。
「ん?これは...。」
「あ!そ、それは!」
「な、なんでもないんだ!ただちょっと描いてみようと...」
「もしかして...聖杯戦争、ですか?」
アナスタシアから先程聞いたばかりの単語が飛び出したのだった。
閲覧ありがとうございました。今回は少し長くなってしまいましたが、長さは前回と今回、どちらがちょうどよかったでしょうか?感想などで教えて頂けると幸いです。
また次回もよろしくお願いします。