「なッ!?…おい、ルーク!ルーカス!誰でもいい!無事なら返事しろ!」
一瞬思考が鈍るが、直ぐに安否確認の通信を送る。返事は、無い。代わりに、別の通信が割り込んでくる。
「よう、隊長さんよ。お優しいのはご苦労なこったが、戦場で棒立ちってのはちょっとマズイんじゃねぇの?」
通信と同時にバズーカ弾が飛んできた。それを避け、通信を返す。
「貴様ら…本部の使いじゃないな。何者だ!」
「何者?難しい質問をしてくれるもんだ。それでいて単純でもあるがな。我々は現在、君らの敵だ。それ以上でも、以下でも無いさ。」
「…その機体は…」
敵だと名乗るその男が乗る機体には、見覚えがあった。乗ったことこそないが、昔知識として学んだ。
「ん?…ああ、そう言えば君らはエゥーゴか。であれば、こいつにも見覚えはあるよな。」
あの機体の名前はリックディアス、と記憶している。本来ならエゥーゴ所有の指揮官用機だ。
「何故リックディアスを持っている?」
「そう面白い話でもない。もう不要だってんで、譲ってもらったのさ。」
…このリックディアスは記憶のものと異なる部分が多い。…恐らくなんらかの改修を施している。シュミレーター訓練で戦った機体とは性能とは大幅に違うはずだ。
「譲ってもらった、だと?…誰にだ?そいつはそう簡単に持ち出せる機体では無いはずだ。」
「優しい優しいお得意様さ。結構簡単に貰えたぜ?」
離れた地点から睨み合う。いつでも撃てるように、ビームライフルに手はかけておく。一触即発の状況は、すぐに終わった。両者ほぼ同時に得物を構え、射撃する。撃ち合いながら対照方向に円を描くように動き、お互いビームを避け合う。一周したところでビームライフルを冷却するため、バズーカのリロードの為、互いに一旦手を止める。その隙にリックディアスは自分の部隊へ、こちらも自分の部隊に合流した。
『隊長!』
「エイダン、大丈夫か?」
『はい、私はまだ行けます。それよりルーカス達は?無事ですか?』
「…連絡は出来なかった。」
『…そうですか。』
『ちょっと、どっちかこっち手伝ってもらえないかしら、機体は旧式ばっかりだけど数が多い!』
「俺が行こう。エイダンは他のみんなを援護してくれ。」
『任せてください。』
まだ冷却仕切っていないビームライフルをバズーカに持ち替えてミラの元に急行する。ミラの元に到着した時、ミラは数機を相手に被弾もなく立ち回っていた。
『そろそろ限界!こいつら引き剥がして、隊長!』
「分かった、任せろ。」
ミラをまっすぐ追っている集団の前に割り込み、減速しきれなかったパワードジムをサーベルで斬り伏せる。MS集団の狙いが切り替わったのを確認し、そのままインファイトに移行する。まず、迎撃しようとしてヒートサーベルを抜いたリックドムをサーベルごと叩き斬り、その後ろからキャノンで狙い打とうとした量産型ガンキャノンにバズーカを叩き込む。ガンダムの後ろに回り込みヒートホークで斬りつけようと近づいてきたザクはミラが撃ち抜き、爆散した。
「助かる。」
『ライリーの方手伝ってくるわ!』
残ったジムコマンドも撃ち抜いて、ミラは離脱した。こちらはイーサン達の方の援護に行くことにする。イーサン達の方は複数人だからか先程より多くの敵MSが纏わり付いていて、みんなビームがいくつも掠ったのか、MSのところどころが黒く焦げていた。
「イーサン!」
『隊長、セキグチの援護してやってください!』
「分かった!」
返事と同時に突撃してきたジムコマンドをバズーカで撃墜し、MSの群れに突進する。突進した勢いは殺さずにジムキャノンを蹴りとばす。強すぎる衝撃に晒されたジムキャノンはなすすべもなく吹き飛ばされ、近くにいたMS数機を巻き込みながら爆散した。
「新型の調子、どうだ?セキグチ。」
新しく入ってきた隊員であるセキグチには同時に渡された新型のMSに乗ってもらっていた。その名も、ネモIII。中距離支援型MSだ。
『いい…ですけど、今ちょっとまずいです!』
セキグチがジムコマンドに追われながら返事をしてくる。多少訓練はしたとは言え宇宙には上がったばかり。慣れない空間戦闘で旧式相手でも余裕で対処とはいかないようだ。ネモIIIを追いかけるジムコマンドに横槍を入れ撃破し、セキグチに声をかける。
「前に出過ぎだ、イーサン達の後ろにいけ。」
『は、はい!』
イーサンとディランに合流し、戦闘を再開したところでエイダンから通信が入った。
『隊長!敵エースがそちらに向かいました!ミラが追いかけてくれていますが…』
「分かった。迎撃準備をしておこう。…しかし数で負けているな…敵は前のように消耗もしていない、か。…合流するか。」
『了解、移動します。』
「イーサン、ディラン。俺はミラを迎えに行く。ここは任せたぞ。」
『『了解。』』
ミラとリックディアスは移動してすぐに目視できた。リックディアスとミラが鍔迫り合いをしているところだった。リックディアスの出力が高いのか、ミラが若干不利なようだ。
「ミラ、避けろ!」
サーベルを抜き、最高速度でリックディアスに突っ込む。ミラはギリギリで避け、サーベルを振りきってしまっていたリックディアスに突き刺さる。…筈だった。
「なっ…」
『久しぶりだな。…ガンダム』
「赤い、ゲルググ!」
『ひゅう、助かったぜ。…まあ、これで2対2だ。』
「ミラ。」
『わかってるわよ。』
この前の戦闘で取り逃した何機ものゲルググの取り巻きが近づいていた。2対2だと言っているが、あと数分でそれも終わるだろう。
「すぐに終わらせるぞ!」
『できるものならな!』
ゲルググに突っ込み、サーベルを横薙ぎに振る。前転の要領でサーベルを避け、ナギナタで切り上げる。横薙ぎの勢いで回転しながらナギナタを避け、今度は袈裟斬りする。ナギナタを同じ方向に降り、サーベルを受け止めてきた。
『…どうだ、すぐに終わらせられそうか?』
「ああ、想像よりもずっとな…っ!」
ナギナタごとゲルググを弾き飛ばし、距離を取る。ふとミラの方を見ると、やはりそちらは少々辛そうだった。
「ミラ!」
『…!』
ミラがこちらに近づいたタイミングでリックディアスのサーベルを受け止め、ミラと入れ替わる。追撃しようと近づいたゲルググはミラが牽制し、追撃を中断した。
「む…」
やはりリックディアスの出力はかなり高いようだ。…しかし、押し込まれる程のものではない。…むしろ、多少押し返していた。リックディアスがサーベルを弾き、また距離を取る。すぐ互いに突っ込み、切り合いながらすれ違った。
『よう、そろそろおしまいらしいな。』
『隊長、敵が。』
リックディアスのパイロットとミラの言葉にレーダーをみると、取り巻きがかなり近づいていた。
「…」
どうするか。離脱しようとしたとしてコイツらが素直に逃がしてくれるとは思えない。しかし応戦してもこれでは…
『はぁ…棒立ちはマズイって、言っただろうが!』
「くっ!」
突進してきたリックディアスの猛撃に対応しきれず、思わず後退してしまう。その隙を突かれて体制を崩してしまった。
『レイルス!』
横からの衝撃に、大きく吹き飛ばされる。振り回される視界の中で、リックディアスのサーベルが、ジムlllに突き立てられていた。