黙示録の封印   作:kurono20

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脱出劇

「ルーカス!」

「隊長。コックピットに入って、起動するか試してみて!」

「起動させるんだな、分かった。」

腹のあたりにあるコックピットに向かい、レバーを下げてハッチを開ける。操作系統は少し違いそうだが、基本的な部分は同じと見て安堵しながらコックピット内に入る。

「入った。起動出来るか試してみる。」

通信を出し、起動手順を踏む。緊急起動手順なら最も確実に起動できるだろう。

モニターが起動する。この後各パネルがつき始める筈だが…。

「ルーカス、操作パネルが起動しない。原因に何か心当たりは無いか?」

「パネルが?じゃあ、椅子の下を見てみて、どこかおかしくなってるかも。」

「椅子の下…?む。導線が…」

「切れてたりする?」

「ああ。入ってきてくれ。ここだ…」

ドン、という衝撃と共に大きく船体が動く。

「ッく!ルーカス、どこかに掴まれ!…ミラ?エイダン?何が起こった!?」

『隊長!まずい状況です!一旦引いた方がいいかと!』

「エイダンか!?状況は?」

『敵の数は10数機ほど。数こそそんなに多くないですけど、手練ればかりです!こちらは現在あまり被害は出てないですが、装備も万全ではないですし、時間の問題かと!』

「ッぐ…そうか。であれば一時離脱して、体制を立て直してくれ!俺たちは大丈夫だ!」

『了解!隊長、ご無事で!』

「すぐに戻ってきてくれよ!艦もそんなに頑丈じゃない!」

「隊長。多分これでコードは繋がった筈だよ!試してみて!」

「ああ、分かった。」

一度、深呼吸をして、先程生まれた焦りを頭の片隅に追いやる。もう一度同じ手順を踏む。モニターが付き…コンソールパネルも、無事起動。

「ついた?…ついたか。よかった…」

「操作は?もう動かせるのか?」

「出来る…けど、ルーク達が戻ってくるまで待っておいた方がいいと思う…!?」

また、衝撃。まるで、艦を爆弾か何かで爆破したような…

「隊長!」

ルーカスの言葉で我に返り、急いでコックピットを締める。全天周囲モニターを同期させ、周りの状況を確認する。幸運なことに、まだどこかが破られたということは無さそうだ。

「爆発だったら、装甲で耐えられるはず。…とはいえ、ルーク達は待っていられないみたいだね…いつ穴が空いてもいいように、椅子に座っておいて。」

「分かった…お前は?」

「大丈夫。消火ホースがあったから、これで体、固定できる。」

「…吐かないようにな。」

もう一度、衝撃と、爆発音。今度は、取り乱さない。

「穴、空いた!アレ広げれば出られるよ!どうする?」

「出来る限り不意をつきたい。こっちを覗いてきた奴を攻撃してからだ…あれ。」

「ん、どうしたの?」

「武器が無い…バズーカくらいあると思ったんだが…」

「…サーベルで戦わないとね。二本あるし。」

「難しいな…だが、やるだけやるしかないか…!」

船体に空いた穴から入り込む光に、影がかかるのを見た瞬間、背部スラスターを噴射、船体にあてがったビームサーベルで、船体ごと敵のガザCを真っ二つにする。画面いっぱいに映る一つ目に、MSに乗っての戦闘なんてものは初めてのルーカスが座席の後ろ側で少し恐怖か、驚きか分からない声を出す。しかし、これは命懸け。かまっている暇などない。

船腹を縦に大きく切り、脆くなった部分を思いっきり蹴飛ばす。バキ、メリ、という金属が折れ、軋む音がして、MSも通れる程の穴が出来た。通れると判断した瞬間、迷わず外へ出る。直後、先程までいた場所にビームが飛んでくる。

「敵は見える範囲に5、あのゲルググはいない…か。」

肩に燕のエンブレムが入ったゲルググ。見るとガザ系が多い隊において全く系統が違い、調達が難しそうな機体に乗るのは、恐らくエース級、ないしは部隊長級か…

「下から何か接近中!多分ハイザック!」

「下から?…であれば…!」

下から急上昇してきたハイザックの頭を踏みつけ、たたき落とす。ああなれば、機体の制御に少々かかるだろう。ハイザックを踏みつけた反動と共にスラスターをふかし、前方のガザCに斬りかかる。が、関節部の感度が高いのか、新兵のような機体捌きになってしまった。相手パイロットは相当のやり手のようで、突き出した左手のサーベルを、同じように取り出したサーベルで受け流し、その勢いで後退。右手のサーベルも避けられてしまった。返す刀でもう一太刀、とは行けず、ビームライフルで牽制射撃されてしまった。このままただ距離を離されるだけでは囲まれてやられる。と判断し、廃艦の周りの、大小様々な岩や、船体破片のデブリが漂う区域に飛び込み、そこで奇襲をすることにした。

「くっ、金のかかったワンオフ機め…!」

「なんで今の逃したのさ、チャンスだったのに…うわっ!?Gが…!」

「あの状況で近づいたら撃たれる。ここはいわば効果は弱いが範囲が広いIフィールドだ。離れてもどこかから狙い撃たれることは無い。それよりも、身を隠して、相手から接近してくるか、ルーク達が戻ってくるのを待つべきだ。」

「むっ…そういうものなの…ッ?」

艦の裏側に回り、視線が切れたと判断したところでMSを停止させる。敵もレーダーで探そうとしているだろうが、ミノフスキー粒子が阻害してくれるだろう。

「…ひとまず休める…?」

「いや、まだ戦闘中だ。いつ発進しても大丈夫なように心の準備をしておけ。」

「だよねぇ…ところで、どう?このガンダム、ジムIIIと比べてみて。」

「推力は明らかに強い。それに、可動域が格別に広い。想像以上に動いたせいでさっきのガザCを取り逃がした。」

「隊長も結構いろんなのに乗ってるベテランじゃなかったっけ?」

「本来なら慣れるためにしばらく習熟運転するべきものなんだよ、初めて乗るMSってのは。…っと。来たぞ。あっちもルーク達がすぐ戻ることが分かってるからな。さっさとカタをつけたいハズさ。」

ならその願いを叶えてやる、とばかりに敵の前に躍り出て、目の前にいたハイザックを、またもや蹴り倒す。そのままハイザックを蹴った反動で、敵ガゾウムのビームライフルを避ける。

「うわっ!?」

脚部にビームを掠ってしまったようだ。軽く体制を崩されたが、そのまま急発進。何本かのビームが先程までいた場所に飛ぶ。

「チッ…このままだと攻め手に欠ける。何故頭部バルカンも付いてないんだ!」

「多分、暴発とか、誘爆とかでメインカメラが壊れるのを警戒してだと思うけど…確かに、少し気にしすぎだよね。まあガンダムの頭は縁起いいらしいけどさ。」

文句を言いながら、デブリや船体からでた金属片などを盾にして着実に近づいて行く。相手も当然気づいているのでじりじり後退して行く。はっきり言ってイタチごっこの状態だった。

「だめだ、隊長、このままじゃなにも…」

「分かってる。だからずっと続けてるんだ。」

「え?でもいずれデブリも…」

無くなる。そう言おうとしたルーカスを、一筋の光が遮る。敵のガザCが爆発すると同時に無線が飛んできた。

「こちらマイラ。間に合ったか。」

『こちらルーク。エリオン隊、全機補給完了しました。隊長、交代の時間ですよ。』

「了解、ヘンチマンに向かう。こちらも補給完了次第もう一度出るぞ。」

「…ッ!?助けか…!」

ルーク達のかなり早い帰還で、敵部隊に軽度の混乱が見られる。今はそれに乗じて脱出するが、戻る頃には既に敵部隊は先程の状態に戻っているだろう。それに、最初から今まで姿を見せていないゲルググ…奴とはきっと対峙することになるだろう。決着は、いつになるか分からないが、なぜか、そんな気がする。俺は、混乱状態の敵機の下を潜り、ヘンチマンに戻りながら、そんなことを考えていた。

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