【完結】もう恋人だと思っているエイシンフラッシュVSそんなことは微塵も考えていないトレーナーVSダークライ   作:かむくら

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 いつもここすきありがとうございます。
 この小説を書いていると、やはり文学史に名を残す文豪ってすごいんだなと実感します。語彙が違う。


正実を願うエイシンフラッシュ

 夜が明けると雪が降っていた。さらさらとした玉のような雪だった。息を吐くと、口から(こぼ)れた体温が白く星の雲のようにたなびいた。

 

「珍しいな」

 

 トレンチコートと赤いマフラーに身を包み、トレーナーは呟いた。

 時刻はまだ早朝だった。トレーナー寮の一室から這い出すには、朝霜の混ざったような空気は冷たく感じられた。

 軽く手のひらを上に向けると、指先に雪が一粒舞い落ちた。触れた途端に氷の粒は溶けてただの水へと変わる。手袋が必要だったろうかと、(かじか)む指を擦り合わせた。とはいえわざわざ靴まで履いてしまったのだから面倒だと、彼はその思考を指先の水滴と共に振り払った。

 

 幸いにして雪はそれほど強くなかった。灰色の雲の下に身を躍らせてみても、傘が必要とは思えない程度の雪に思える。

 積もるだろうか。積もるようにはあまり見えない。冷えたアスファルトに落ちた雪が()()と溶けて消えていく。それはまるで地面をすり抜けているかのように見えた。空から降りる幽霊のようだった。

 

 踏みしめても音はしない。雪が降るさまを『しんしん』などと表現することもあるが、果たして今この光景に音がついていたとしたらどのようなものだったろうか。しんしんと鳴るのだろうか。それともまた別の音が鳴るのだろうか。

 

 一月一日。新春を迎えたこの季節に、雪はまるで祝福のように見えた。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「Frohes Neues Jahr! トレーナーさん」

「明けましておめでとう、フラッシュ」

 

 雷門といえば、この東京において知らない人はいないほどに有名だろう。

 台東区浅草。かつての江戸と呼ばれた一帯における下町の一区画を指し、合羽橋や浅草公園といった数多くの名所や商店街を抱える東京を代表する観光地の一つである。

 雷門とは聖観音宗の総本山である〝浅草寺〟の正面に吊り下げられた高さ3.9メートルの大提灯が印象的な総門で、毎年数多くの観光客が訪れる観光名所の一つでもある。

 

 その巨大な赤い提灯を前にして、トレーナーとエイシンフラッシュは年始の挨拶を交わしていた。時刻は既に昼近くになっていた。

 

「しかし意外だね。フラッシュの方から浅草寺に行きたいだなんて」

 

 年始の参拝を初詣と呼ぶのは今更言うまでもない。過去二年はトレセン学園近くにある府中の〝大國魂神社〟で済ませていたものだが、この新年はエイシンフラッシュからの要望で浅草まで足を伸ばしていた。

 これまで彼女から言われてスイーツ店を訪れることは数あったが、こういった節目においてのイベントでどこか遠出をすることはなかったようにトレーナーは記憶している。

 

「どういう風の吹き回しかな」

「大した理由ではありませんよ。ただ、今まで機会がなかっただけです」

 

 そう言われて思い出す。

 機会がなかっただけというのはたしかにその通りであろう。三年前はクラシック級に向けての前哨戦でもある京成杯がすぐ後に控えていたし、二年前は各世代の実力者たちによるG1戦線参加表明で大慌てであった。初詣のために遠出をするような暇があったかと問われればそうではなく、エイシンフラッシュの言う大した理由ではないというのは、本当にただ来たかったというだけのことなのだろう。

 

 彼女は物珍しそうに雷門を眺めている。周りに目を遣れば、あちらこちらに写真を撮る外国人観光客の姿を見ることができ、その中に紛れ込むエイシンフラッシュは、トレセン学園の生徒ということを忘れてただの一観光客にも見えた。

 

「見たことはなかったっけ」

「天皇賞・秋の後に、両親となら」

「ああ、あのとき」

「その後も様々なところを巡ったので、あまりゆっくり見ていることはできませんでしたが」

 

 そう告げるエイシンフラッシュの顔は、どこか懐かしいものを思い返しているようにも見えた。

 二年前の天皇賞・秋。かつて日本ダービーを制覇したときと同じ地で再び栄光に輝いた彼女は、地下バ道で久しぶりに両親と対面していた。その際ドイツから遥々やってきた彼らと共に東京に繰り出していくエイシンフラッシュの姿に、普段の彼女とはまた違う、年相応の子どもらしさを感じたことも、また少し懐かしい記憶である。

 

 とはいえ東京は広い。一晩で全て見ることはできないし、場所を絞って見たとしてもかなり限られた時間になるだろう。両親と語らいながら歩く街並みは淡く輝いて見えただろうが、しかし鮮烈に記憶に残りはしない。通り過ぎただけの記録は、過ぎればセピア色に染まるだけだ。

 

 ならば、エイシンフラッシュにとって初めて見る本格的な雷門はこれが初めてなのだろう。その下に立って見上げれば、頭上に聳える赤が灰色の雲と降りゆく雪に映えている。彼女の息も白かった。トレーナーは巻いていた赤いマフラーを彼女の首にかけた。

 

「使いなよ」

「悪いです」

「いいんだよ。君が身体を冷やさないことが最優先だ」

 

 冷たい空気に触れた首元が粟立つ。やはり手袋は必要だったと、数時間前の自身の怠慢を後悔した。

 手のひらに息を吹きかける。身体の奥底から生じた熱が白く雲のように濁って、間に落ちた()()()()の雪を消し去った。

 

「やっぱり寒いんじゃないですか」

「そんなことないよ。うん、そんなことない」

「嘘をつくのが下手ですね」

「俺の手は冷たいんだ」

「自分で言うことではないですよ」

 

 手が冷たい人は心が温かいなんて、そんな言説を誰が唱え始めたのだろう。誤魔化すように斜め上に視線を向けるトレーナーの指先は、たしかに白んでいるように見えた。彼が冷え性だという話は聞いたことがないが、この気温では無理もない。

 素直になれない幼子に向けるような笑みで、エイシンフラッシュは彼の首筋から顎に両手を当てた。既にマフラーが巻かれていたときの温かさは無くなっていた。熱が手を通じて流れていくかのように、触れたところには何者も入り込めないような優しい温度があった。

 

「君の手は温かいね」

「では、私の心は冷たいですか?」

「それを俺に訊くのは狡いだろう」

「ふふっ。ええ、はい。そうですね。私は今、狡いことを言いました」

 

 トレーナーならそこで首を縦には振れない。そんな当然のことを分かった上での問いかけだった。彼もその意図を分かっているから、拗ねたように首に添えられたエイシンフラッシュの手を振り払うことしかできない。行こうか、と彼が一言告げて歩き出した。空いた首筋を撫でるようにして、仲見世を小さな風が吹き抜けた。

 

「雪には慣れていないのですね」

「東京にいるとね。ここでは雪なんて降る方が珍しい」

 

 長くこの東京という地に住んでいるトレーナーにとって、雪とはあまり馴染みのないものだ。

 たまに降っても(みぞれ)程度、積もることもなくアスファルトに薄らと白い氷の膜が張るだけ。雪合戦なんてものとは縁のないこの地では、数年に一度わずかに雪が降るだけでも交通機関に混乱が起こるような大事件である。

 

「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった、なんて言うけどね。俺にとっての雪国は、縁のないどこか遠くの場所のような気がするよ」

「川端康成ですか」

「そう。有名な冒頭だ」

 

 〝雪国〟。

 名作と国内外で名高い、言わずと知れた日本初のノーベル文学賞受賞作家・川端康成の長編小説。雪国を訪れた『島村』という男が、その先で出会った芸妓の『駒子』を始めとする温泉街で生きる人々の日々と世相を描く、彼の代表作と言われることもある作品である。

 その冒頭、「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」は知らない人はいないであろうほどの名文として知られ、それはもちろんエイシンフラッシュも知るところであった。

 

 トレセン学園のトレーナーとして居る限り、たしかに彼に川端康成が語るような雪国との縁はできないだろう。〝雪国〟の舞台は新潟県湯沢町であるから、あるいは新潟でのレースを選択することがあれば機会に恵まれるかもしれないが、しかしエイシンフラッシュはこれまでそういったレースに参加したことはなかった。必然、トレーナーも新潟に行くことはないということになる。国境の長いトンネルも、彼らは通ったことがなかった。

 

「雪が降ると年甲斐もなくテンションが上がる。君にとってはそうでないのかもしれないけど」

「そうですね。私にとっては、雪は珍しいものではありませんから」

 

 エイシンフラッシュの故郷であるドイツの気候はとても厳しい。

 日平均最低気温、マイナス2度。

 月平均日照時間、40時間。

 

 クリスマスの前まではこのような気温が続き、それは年を越しても変わらない。相も変わらず風は冷たく、街路樹の葉は落ち地面は凍る。そのような環境下で幼少期を過ごしたエイシンフラッシュにとっては、雪とは冬になれば降る程度のものでしかないのだろう。寒さに慣れているかは別として、寒さとの付き合い方は心得ている。トレーナーには彼女がそのように見えた。

 

「なら、雪合戦とかはするのかな。君にそういうイメージはないけどね」

「ドイツの雪は日本のものより氷に近く危険なので、校則で雪合戦を禁止しているところも多いんですよ」

「へぇ」

 

 意外な雑学を聞いて、トレーナーは感嘆の声を漏らした。

 そんなことを話しているうちに仲見世を抜け、宝蔵門までたどり着いた。周囲には縁日のように多くの屋台が出ていて、串焼きから綿飴、昔懐かしいカルメ焼きまで並んでいた。

 そこまで来れば本堂まではあと少しだった。雑踏の数は計り知れない。人の波は30センチ先もないほどまで混み合っていて、気を抜くと隣の誰かが知らない人に変わっていそうな、そんな雑然とした不安感があった。

 

「フラッシュ」

「……? なんでしょう」

「手、借りるよ」

 

 言って、トレーナーはエイシンフラッシュの手を取った。触れたところが途端に熱を持った。彼の手は聞いていたほど冷たくはなかった。

 

「……っ!」

(はぐ)れるといけないからね。嫌だったら────」

「いえ、いえ……!」

 

 髪が乱れるほどに頭を横に振って、彼女はトレーナーの言葉を否定する。

 嫌なんかではない。ただ、驚いてしまっただけ。突然の手を包む彼の温度に高鳴ってしまっただけなのだ。

 借りたマフラーを口元まで上げる。頬を隠すように覆う。雪が降るこんな天気だというのに、顔がどうにも熱くて仕方がなかった。彼に巻いてもらったこの赤いマフラーよりも真っ赤になっているのではないかと思えるほどに、エイシンフラッシュの中で何かが燃えていた。

 

「そういえば、川端康成はかつて浅草にも住んでいたらしいよ。〝浅草紅団(あさくさくれないだん)〟というものがあってね」

 

 彼には悪いと思ったが、エイシンフラッシュの意識は話よりも繋がれた手の方に向いたままであった。手のひらを通じて伝わってくる彼の脈動までも感じられるほど、彼女の神経はそちらに集中していた。

 二人きりで初詣。謂わばデートと言っても過言ではないこの状況で、彼の方から手を握ってくれたことに、エイシンフラッシュの心は舞い上がったままであった。

 

 今どれほどまで進んだだろう。先程宝蔵門から見えた本堂までの距離を鑑みれば、そろそろ到着してもおかしくないはずだ。顔を上げればすぐ分かるはずのそんなことも、今の彼女には分かり得ない。何故なら、ずっとその視線は繋がれた手に注がれているのだから。

 

「────フラッシュ?」

 

 その声に応えて顔を上げれば、すぐ前にトレーナーがいた。少し腰を(かが)めて、エイシンフラッシュの顔を覗き込むように彼女を見ていた。その瞳に自身が真っ直ぐ映っているのを至近距離で見つめた。瞳の中の自身も彼を真っ直ぐに見つめていた。まるで合わせ鏡のように、どこまでも瞳の奥底に小さな影が続いていた。

 

 彼の声で現実に引き戻されたような気分だった。具合悪いの、と彼が訊いた。なんでもないです、と彼女は答えた。その声が震えていたかどうかは、彼女自身には判別がつかなかった。

 

「そろそろ着くよ」

 

 言って、彼が手を離そうとした。離れようとする気配を感じた。それは嫌だと、少しわがままな自分が顔を出した。そこで手を握り返せるほど、エイシンフラッシュは器用ではなかった。

 

 するりと離れた指先に、愛しい熱量の残滓が残る。代わりにその手を包んだのは、雪のひとかけらが連れてきた冷たい空気だった。エイシンフラッシュは小さく手を握って、残った何かを逃がさないように捕まえていた。

 

 たどり着いた本堂の中も人でごった返していた。エイシンフラッシュの身長では賽銭箱が見えないほどだった。隣を見ると、トレーナーも困ったように笑っている。前の参拝客がいなくなるのを待つしかないようだと、彼女も返すように表情を変えた。

 

「ドイツでは、お正月に何をするの」

 

 雑踏の中の沈黙を破るように彼は言った。取り留めもない雑談であった。

 

「特に何もしませんよ。ドイツでは大晦日にパーティーをして新年を祝ったり、年越しの後に花火を打ち上げる習慣があります。なので、その疲れのために元旦は休養していることが多いです」

「なるほど。日本でいう寝正月みたいなものかな」

「計画的な休息を取るのであればそうかもしれませんね」

「寝正月にそこまでの意味は無いよ」

 

 正月といえば、トレーナーは過去にエイシンフラッシュからマジパンで作られた子豚を贈られたことがあったのを思い出す。

 Glücksschwein(幸運の豚)といい、ドイツの風習で新年の幸運を祈るものだという。エイシンフラッシュから贈られたそれは、トレーナーの目には『目玉のついたピンクの丸』にしか見えなかったものだが、曖昧な記憶の中のそれはたしかに豚に見えなくもなかったかもしれない。年賀状と称してやたら精巧なてんとう虫の絵を贈られたことを考えると、どうやら彼女は写実的な物しか描けないようだった。

 

 君にも意外な弱点があったんだね、と茶化すように言ってみると、エイシンフラッシュの表情が恥ずかしそうなものに変わった。

 

「あの時は『ちゃんと豚に見えた』と言ってくれたじゃないですか」

「大丈夫、美味しかったから」

「味と見た目は関係ないですよね」

「……俺の手は冷たいんだ」

「貴方の手、温かかったですよ」

 

 つくづく嘘をつくのが下手な人だと、エイシンフラッシュは呆れたように息を吐いた。自分が嘘をつくのに向いていないタイプだと、トレーナーも薄々勘付いていた。

 

 そんなことを話していれば前の参拝客は既に()け、彼らの順番が来ていた。

 賽銭を投げ込み拝む。果たして何秒そうしていただろうか。互いに顔を上げて隣を見ると、その先で同じように自分を見ているもう一人と目が合った。奇妙なところで気が合うものだと、二人して吹き出すように笑った。

 

「何をお願いしたんですか?」

「人に願いを話すと叶わなくなるって言わない?」

「迷信ですよ。結局、願い事を実現しようとする心が肝要なんです」

「それはそうだね」

 

 納得したように腕を組み、どうしようか、と彼は呟いた。別にエイシンフラッシュとしてもそこまでして聞き出したいわけではない。言いたくないことなら言わなければいいし、言ってもいいなら聞いてみたい。その程度のことでしかなかった。

 

「まあ、多分君と同じだよ」

 

 故に、その一言が聞けただけでも満足した。

 

「同じ……同じ。そうですか、そうですか」

「嬉しそうだね」

「ええ、はい。同じ方向が向けているのなら、それに越したことはないのですから」

 

 口元に手を当てて笑う、彼女の癖。どこか優雅な令嬢のような、あるいは精巧な西洋人形のような、気品のあるその仕草を見るのは、彼女の気分が上向いている証拠だった。どうやら随分嬉しがっているようだと、それだけでトレーナーには筒抜けだった。

 

 そんなとき、ふと視界の端にとある物が映った。本殿の横、多く人が集まっているそこにあったのは、どうやら御神籤(おみくじ)のようだった。年始の風物詩と言ってもいいそれを見て、トレーナーの心にはわずかばかりの興味が顔を出している。

 

「あれをやろうか」

「おみくじですか」

「そう。今年最初の運試しだ。きっと大吉が出るよ」

 

 日本ダービーは最も運が良いウマ娘が勝つと言われる。同時に、ダービートレーナーは一国の宰相よりもなるのが難しいともされる。そんな二人であれば並大抵の運気ではない。彼はそう信じていた。運も実力の内、運さえ引き寄せるのが実力だとするならば、たしかにエイシンフラッシュの運は並大抵のものではないのだろう。

 

 100円を入れて(くじ)を引く。出た棒に書かれた番号の棚を開けて、そこから取り出した紙を見る。きっと大吉だろう、とトレーナーは確信していた。少なくとも彼は自身の運をかなり良い方だと思っていた。

 

「あ、大吉ですね」

 

 だが────

 

「凶なんだけど」

「それは……残念でしたね」

 

 トレーナーが引いたのは凶であった。隣のエイシンフラッシュが大吉を引いたために、余計にその悪運が目立っていた。

 

「もう一回引いてもいいのかな、これ」

「ダメだとは思いませんが」

「なら引こう」

 

 凶の籤をおみくじ掛けに結び、トレーナーはまた100円を入れて籤を引く。彼の顔からは今度こそという気概さえ感じられた。エイシンフラッシュにはなんだか彼のことが随分と子どもらしく見えた。

 

「凶なんだけど」

 

 現実は無情であった。

 

「そんなことある?」

「ここがそういう場所なのでは?」

「いやまあ、たしかに浅草寺は凶が出やすいって言うけどさ」

「なら仕方ないことかと。確率ですし」

「いや、そんなことはない。今度こそ俺は大吉を引くよ」

 

 言って、また彼は籤を引いた。

 

「凶なんだけど」

 

 もう諦めた方がいいのではないだろうか。そう思わずにはいられなかった。浅草寺の御神籤は凶が多いとは言っても、ここまで連続で引いては、むしろ運が良いと言えるのではないだろうか。

 3枚目の凶を前に唸るトレーナーを見て、エイシンフラッシュは困ったように笑った。先程まで優しく手を引いてくれたあの人の面影は、同一人物であるはずなのにまるで感じられなかった。それでも同じ彼であることはたしかなのが、どこかおかしくて笑ってしまう。

 

「なら、私から幸運のお裾分けです」

 

 先程自らが引き当てた大吉の籤を差し出して、彼女はそう言った。眼前を落ちていく雪のひとかけらが、やけに大きく見えた。それは事実大きなひとかけらであった。玉雪は牡丹雪になりかけていた。

 

「いやいや、それは君のものだろう」

「ええ。ですから貴方に渡すのも自由です」

「そういう道理かな」

 

 2枚目と3枚目の凶をおみくじ掛けに結ぶ。その指先に雪解けが乗る。周りを見れば、大きくなった雪の粒に傘を差す人々がいた。規則性のある図形の群れは、それそのものが雪の結晶のように見えた。透明なビニールであったり、撥水性の黒い布であったり、色も高さもまちまちなそれらの上に、真っ白な蓋が被さるように雪が降っている。

 

 トレーナーはエイシンフラッシュから渡された大吉を受け取った。第五十八大吉の文字が踊っていた。気の持ちように過ぎないのだろうが、それだけで少し幸運になれた気がした。

 

「雪が強くなってきた」

 

 これは積もるぞ、と彼は言った。果たして東京でこんな雪などいつぶりだろう。トレーナーは雪国には慣れていないから、雪に覆われた道を歩く自分を想像するだけで、なんだか滑稽に思えてしまった。「歩き方、教えてくれないか」と呟けば、エイシンフラッシュが嬉しそうに微笑んだ。

 

 『窓で区切られた灰色の空から大きい牡丹雪がほうっとこちらへ浮び流れて来る。なんだか静かな嘘のようだった。島村は寝足りぬ虚しさで眺めていた』。

 

 川端康成は朝の雪をそう称した。見上げた頬に落ちる大きな雪の粒を払って、これが嘘の冷たさだろうかとぼんやり考える。受け取った大吉を静かにポケットの中に入れながら、トレーナーは延々と白い嘘を吐き出し続ける灰色の空を眺めた。

 雪が嘘なら、雲は大口か。その灰色の舌でどのような言葉を紡いでいるのだろう。優しいものか、厳しいものか。この空が優しかったことなど、考えてみれば今まで無かったのかもしれない。

 

「雪、慣れておかないと」

 

 ぽつりと、彼がそう溢した。思い出したかのような声音だった。それは雪のように冷たくはなかった。

 

「東京では雪に縁が無いのでは?」

「そうだけどね。でも、いずれ雪国とは縁があるだろうから」

 

 何か奇妙な物言いだった。新潟か北海道のレースにでも出走する予定があるのだろうか。以前トレーナーから見せてもらった今後のレーススケジュールにはそのような予定はなかったはずだが、とエイシンフラッシュは疑問を抱いた。

 

「それは、何故?」

「ん? だってまあ────」

 

 途切れたように聞こえた言葉は、果たして雪の向こうに映った虚像ではない。それはたしかにそこに在って、間違いなく音に聞こえた真実に他ならない。

 トレーナーは続けて言った。その肩にわずかばかりの雪が積もっていた。

 

「いつかまた、君の故郷には行くことになるだろうからね」

 

 その言葉が雪のように冷たかったら、どれだけ彼女の心は穏やかだったろう。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 灰に暗い空と、対称的に白く染まる雪の足元は、エイシンフラッシュにとっては見慣れたものであった。長い長い暗闇と、雲に覆われて星さえ見えない日。夜の底が白くなったような雪国の景色は彼女の国では至極当たり前のことで、トレセン学園に来てから、気温が氷点下に達しない冬というものを初めて過ごした。

 

 冬は日の入りも早い。まだ17時にさえなっていないというのに、既に空に明かりはなかった。太陽は沈み、月が出る。はずなのに、未だ空を覆う灰色の雲からは滔滔と吐き出すように雪が舞い続けていた。見上げるとそこに在る雪たちは、まるで一面の星空のようにも見えた。その星は、エイシンフラッシュに触れて消えていった。

 

 一歩踏み出す度に、靴の下から氷の弾ける音がする。積み重なった雪はまるで天然の楽器のようだ。エイシンフラッシュの手によって、小さく、小さく、取り留めもないように鳴っている。

 

 ────あ、マフラー……

 

 寮に着いて、トレーナーからマフラーを借りたままだったのを思い出した。首に巻かれた温もりは、あたかも始めからそこにあったかのように馴染んでいる。彼の優しさのようだった。その優しさに抱き締められているような感覚さえあった。

 口元まで引き上げて、緩むそこを隠してみる。次に会ったとき返さなければと思って、それでも今はこの温もりに浸っていたいというのは、果たして彼女のエゴだろうか。

 

 ────牡丹雪は、まだ降っている。

 

 雪を落として自室に戻れば、そこには誰もいなかった。同室のスマートファルコンは今日もどこかでライブ中だろうか。身体を冷やしていないといいけれど、なんて思考が頭を(よぎ)る。

 窓の外を見た。東京の夜景も元旦はあまり多くない。遠くに見えるビルのシルエットを、雪の白さが霞ませる。それこそ、『夜の底が白くなった』とはこのような景色を言うのだろう。

 

「〝雪国〟……」

 

 首を覆っていたマフラーを外して、胸に抱いてみる。

 

 窓の外には誰もいない。ここは温泉街ではないのだから、いくら元旦とはいえこんな寒い日に好んで外に出ようという人影は見えない。皆一様に自室に引きこもっているか、あるいは実家に帰っているか、はたまた一緒に過ごしたいと願う誰かのところに行っているのだろう。

 エイシンフラッシュとしてもそうしたかったのは山々だ。今年でもう出会ってから四年が経つ。つまりは、彼との関係が始まってから近く四年になるということである。そろそろプライベートの一つでも見せてくれてもいいのではないか。そう思わずにはいられない。

 

 ────それなのに、あの人は。

 

 心をかき乱すだけかき乱して、本当に狡い人だと、彼女は呻いた。胸元のマフラーを強く抱き寄せた。その端が口まで覆った。

 柄にもなく背中からベッドに飛び込んでみる。見上げた天井に星と雲はなかった。ただ見慣れた白い壁紙だけが広がっていた。

 

 まだあの手の温もりを忘れてはいない。突然握られたあの感触を忘れてはいない。(はぐ)れるといけないから、そう言った彼の心は、残念ながら覗くことができなかった。あの行為の意味はそれだけだったのか、彼女には分からなかった。

 

 ────いいえ、いいえ、それだけではないはずです。

 

 彼も手を繋ぎたがっていたのだと、そう思えれば幸せだろう。それだけでいいのだ。それだけ思えば、既に満たされた心地になる。

 

 彼のように事も無げにそれができてしまう人が、きっと後に文学になるのだろう。それはさながら『島村』のように、『駒子』と『葉子』という二人の女性の間で揺らぐような、どうしようもなく人好きする人間になってしまうのだろう。それはエイシンフラッシュがよく知っていた。心を奪われている本人がよく知っていた。

 

 ────いつかまた、ですか。

 

 彼女はトレーナーのとある言葉を思い出していた。いつかまた、君の故郷には行くことになる。彼はたしかにそう言った。それを聞いて、エイシンフラッシュの心は昂っていた。抑えようのない歓喜が溢れて仕方なかった。

 

「……えへへ。ついてきてくれるんだ……」

 

 同室いなくてよかったね。今の顔とてもじゃないけど人様に見せられないよ。

 

 凛々しく引き締まった顔の〝エイシンフラッシュ〟などどこにもいない。今そこにいるのはただ一人の恋する乙女であり、幸せそうな顔でマフラーを抱き締めて横たわる女の子であった。これでダービー制覇したってマジ?

 

 ────いつかまたドイツに行く。

 ────ドイツで一緒にマイスターになる。

 ────ドイツで一緒にケーキ屋を開く。

 

「幸せな結婚生活……!」

 

 エイシンフラッシュは恋愛模様になると途端に掛かり気味になるウマ娘だった。賢さが1300になっても特に変わりはなかった。一緒にトレーニングしてくれたファインモーションとナイスネイチャに顔向けできないね。

 

 エイシンフラッシュは悶えるように身を捩りながら回想を重ねる。

 いつかまた、という言葉の真意。それはつまり再びドイツに行く機会があるということ。

 彼女はかつてトレーナーに自身の夢を話していた。父のような立派なマイスターになる。そのためにはレースを終えた後故郷に戻る必要があり、どのような形であれ、彼には選択を迫る羽目にはなるのだ。共にドイツに行くか、日本に残るか。

 いずれ来るそれに不安が無かったかといえば嘘になる。だが、彼はその不安に今答えを返してくれたのだ。それはつまり、『一緒にドイツに行く』という宣言に他ならなかった。少なくとも、エイシンフラッシュにはそう聞こえた。

 

 ────もうずっと離れるつもりはないってことですよね、これ。

 ────故郷までついてくるって、結構大胆な告白ですよね!?

 

 恐らくあの愚か者にそんな意図はない。

 

「ふふ……そうですか、そうですか……」

 

 満足げに繰り返し呟く。その声はマフラーに吸われて小さく消え、それに呼応するように、彼女の声そのものも段々と小さくなっていく。

 

「……一緒にいて、くれるんですね」

 

 浅草寺で参拝をしたとき、彼が言ったことを思い出す。

 願い事は何かと聞いた。彼は『君と同じだよ』と言った。エイシンフラッシュはその途端に胸が跳ねたものだ。

 

 彼女の願いは三つだった。

 一つ、今年もスケジュールを狂いなく遂行できますように。

 二つ、レースでの完璧な勝利を。

 

 ────三つ、貴方とずっと一緒にいられますように。

 

 その願いが同じなら、果たしてどれだけ幸福なことだろう。それ以上を望むなんて烏滸がましいのではないだろうか。そう思えてしまうくらいに、トレーナーのあの言葉は、劇薬のように彼女の心をかき乱した。

 

「狡いです。狡いです。……どこまでも、貴方のことしか考えられなくなる」

 

 夢の続きはいずれ再び歩み出すもの。日本でどのような結果を残し、どれだけの価値を積み上げようと、それは過去に歩んできたエイシンフラッシュの道程があってのものだ。

 雪国の記憶。厳しい冬の記憶。危険だから雪合戦などしたことはない。雪を楽しむような余裕なんてあるはずがない。彼女の故郷では、寒さとは生活の中にいる死神である。街を覆う雪化粧は、その重みをいつでも武器に変える死化粧であり、雪を喜ぶなんてしたこともなかった。

 

 だが、トレーナーが横にいてくれるなら。

 雪国に不慣れで、きっと彼は足を滑らせて転ぶだろう。寒さに身を震わせるだろう。その横には、きっと少し成長した自分がいる。

 転んだなら手を差し出そう。寒さに震えるなら寄り添おう。そうやって、いつまでも隣にいられたなら。

 

 ────それはきっと、とても素敵なことなのです。

 

 窓の外を見た。窓で区切られた灰色の空から大きい牡丹雪が浮かんでいた。静かな嘘のようだった。エイシンフラッシュは満ち足りた心地で眺めていた。

 

 元旦。新年。正月。呼び名は数あれど、そのどれもが祝福を孕んでいる。新たな季節の訪れに幸いがありますようにと願っている。

 

 大吉の籤は手元に無いけれど、大切な人に幸運を分け与えることができたのなら本望だ。手放した後悔などなかった。二人で幸運を分かち合えるのなら、それ以上に幸せなことなどありはしないのだ。

 

 ────今年もよろしくお願いします、大切な貴方(Mein Schatz)

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「そうだ。ドイツ行こう」

 

 開幕十割やめろ。

 

 トレーナー寮に戻っての第一声がそれであった。まだ外は雪景色であった。

 エイシンフラッシュと共に初詣に行き、帰った頃には既に18時を回っていた。何も特別に彼が時間を使うことをしていたわけではない。ただ帰り際に慣れてない雪道を慎重に歩いていたら遅くなっただけである。さらには雪の下で静止し肩の上に本当に雪が積もるのかをやってみたり、綺麗な雪を集めて雪玉を作ってみようとしただけである。こいつ小学生か?

 

 とはいえ彼も大人である。そういった遊びは早々に切り上げ、風邪を引かない内に冷えた身体を温めようと帰宅するだけの常識は備えていた。マフラーが無いのに気がついたのは帰宅してからのことであった。

 

 ────貸したままだったか。

 

 首元が寂しいとは思っていたが、エイシンフラッシュにマフラーを渡してからずっとそのままだったために返してもらうことを忘れてしまっていたようだ。だが、彼女が寒そうだから貸したというのに帰り際になってそれを返せというのも中々どうして道理ではない。その内気がついたときにでも構わないと思い、「まあいいや」という一言で彼はその思考を窓の外に放り投げた。言葉は雪に(うも)れていった。

 

 ────ドイツ。

 ────雪国、ねえ。

 

 ドイツに行こうという言葉に間違いはない。彼は迷いもなく、いずれ再びドイツに行くつもりではあった。昨年のURAファイナルズの後、エイシンフラッシュに連れられて訪れた異邦の地。その大地を再び踏みしめるという思いは、たしかに彼の中に脈打っていた。

 

 だからこそ、彼は先程エイシンフラッシュに宣言したのだ。いつかまた彼女の故郷に行くことになる。それは決して、雪のような冷たい嘘ではないのだ。

 

 それはエイシンフラッシュとの関係を考えてのこともあるのだろう。彼と彼女は既に四年の付き合いだ。彼女の夢はマイスターになること。そのためにはドイツでの修行と勉強が必要。その夢を支えるため、彼もまたドイツへ飛ぶ決意を固めたのである────

 

「ドイツ、観光名所、検索っと」

 

 旅行行く気だろお前。

 

 当然、トレーナーにそんなつもりはなかった。エイシンフラッシュの夢を応援するというのはトレーナーとして、師として当然のことではあったが、それは生涯を共にする伴侶としての意味ではなかった。

 

 彼がドイツへ行きたいと思ったのは、何も年を越したからという特別感が原因ではない。事の発端は数ヶ月前、エイシンフラッシュからサプライズと称してドイツに連れて行かれたあの日に遡る。

 トレーナーは好奇心が強い方であった。同時に、面白いと思ったことに素直な性格であった。春、まだ現地では寒い季節が続く中で、初めて訪れた()の地はトレーナーの中に鮮烈な記憶を残した。「あ、ここ面白いところだ」と。

 つまるところ、彼にとって現在のドイツの認識は『とても楽しかった旅行先』なのである。そこで半ばご両親への挨拶まがいのことをさせられたこともトレーナーは気がついていない。当時の気分は海を越えた三者面談であった。

 

「フラッシュ、頼んだら案内とかしてくれるかな」

 

 恐らくウキウキで準備すると思う。家具を*1

 

 その場合でも、トレーナーは『(旅行行きたいから現地に詳しいだろうし)ドイツを案内してほしい』という意図で話すのだろうが、エイシンフラッシュには『(今後住むことになるので現地のことをよく知っておきたいから)ドイツを案内してほしい』というように聞こえるのだろう。わかるよ。お前ら絶対それやるから。

 

 とはいえ彼にそこまで余暇があるわけではない。トレーナー業は激務であるし、身体的余裕も精神的余裕も中々充分に取ることはできていないのである。いつかまた、というのは本当にいつかの未来でしかなく、それがいつになるかは彼自身予測ができていない事柄であった。

 

 トレーナーはエイシンフラッシュとの関係を『担当』と『トレーナー』としか考えていないために、彼女がドイツに帰ると言った際には悲しみながらも門出を祝福するつもりである。この悲しみも教え子が卒業するときのもので、決して遠距離恋愛だとか愛する人との別離だとかそういったものでは断じてない。そろそろエイシンフラッシュは泣いていい。

 

 雪に慣れておくというのも、もし冬に訪れることになるのだったら雪が降っているだろうから、という程度のものでしかない。エイシンフラッシュからクリスマスマーケットなどの話を聞いた際にも面白そうだと彼は感じていたので、行くなら冬が良いとも考えていた。ならやはり雪での歩き方を知っておくべきだろう。そう思ったからこそのあの発言であった。

 

「……、まだ手は冷たいな」

 

 雪に触れたからだろうか、随分と指先は冷えていた。そっと右手を握り込むと、手のひらの熱が指先に染みるような心地がする。また手を開けば、その中から何かが飛んでいったように思えた。白い嘘つきの雪の精がいたならどれだけ幻想的だったろうかと、彼は空中に見えない羽根の軌跡を空想した。

 

「あ、そうだ。貰ったものがあるんだ」

 

 取り出したのはエイシンフラッシュから受け取った大吉の御神籤だった。受け取ったはいいが、詳しくは見ていないことを思い出したのである。

 大吉というのは、ある意味では凶より悪いものだという。新年最初の運試しで上手くいってしまったから、自分は大吉を引いたから安泰だという幻想に憑かれてしまって、結果何もしなくなってしまうからというのが通説だ。

 エイシンフラッシュもトレーナーも、その程度で努力を怠るような性格ではない。所詮運試しは運試し以上の意味を持たないし、それが全て絶対だとも思ってはいない。エイシンフラッシュは参拝時に願い事は実現しようとする心が肝要と言ったが、トレーナーもそれには全面的に同意だった。

 

 ────そういえば、随分喜んでいたようだけど。

 

 参拝といえば、エイシンフラッシュに『願いは同じ』と告げたときの反応が思い出された。口元に手を当てて優雅に笑うその仕草は、彼女の気分が良いときに見られるものだ。そんなに喜んでくれたのかと、トレーナーは嬉しく思いつつも少しばかりの疑問を抱いた。

 

 彼が神様にお願いしたこと。それはたった一つ、何より重要なことであった。

 

「今年もフラッシュが順調に勝てるといいなぁ」

 

 トレーナーとしては満点なんだ。男として0点なだけで。

 

 勿論、この男にエイシンフラッシュが考えているようなロマンチックなことはなかった。しかしエイシンフラッシュもレースでの勝利を望んでいたのであながち間違いでもないのがタチが悪い。たしかにトレーナーは嘘をつけない人間であった。嘘はついていないが、適切な言葉選びが何一つできていなかった。お前は研修で何を学んできたんだ。

 

 が、残念なことにこの部屋に彼の間違いを正す者は誰もいない。窓の外を舞う雪ですら、彼の誤りを指摘することはできなかった。

 

「……積もるといいな、雪」

 

 白い嘘にも似ている牡丹雪を見て、無意識のうちにそう口にした。

 きっと、雪が積もれば少し大変になるだろうけれど。

 そう願わずにはいられなかった。そんな子供心が、彼の中から顔を出した。

 

 大吉の籤をテーブルの上に置いた。これは大切に飾っておこう。貰い物だし、福がある。そう考えて、彼はその大吉を指でなぞった。

 

「今年もよろしく、フラッシュ」

 

 そう呟く彼は、随分と優しい表情をしていた。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 第五十八大吉

 

 願望:叶うでしょう。

 病気:治るでしょう。

 失物:出てくるでしょう。

 待ち人:既に現れているでしょう。

 新築・引越:問題ないでしょう。

 旅行:良いでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結婚・付き合い:転機があるでしょう。

*1
ドイツ人は高価な素材を使い長持ちする家具を使う国民性がある。滅多なことでは家具の買い替えなどは行わないのだが、そんな彼らが唯一家具を買い替えたり作ったりする機会がある。家族が増えるとき、つまり結婚のときである。




 浅草には美味しいメロンパンがあります。オススメです。

 感想評価があれば是非。



 ────あと少し。

この戦いの最終的な勝者は?

  • エイシンフラッシュ
  • トレーナー
  • ダークライ
  • その他
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