「子供をつくるってこと? どうやるの?」
ずっと気になってたんだけど、聞くに聞けなかったことがやっと聞けた。
僕だってカヨとそうなりたいなってずっと思ってたんだから。
「子供なんてもっとあとだよ、ユウのエッチ」
真っ赤になったカヨの顔を見て僕の顔も熱くなってきた。
「既成事実っていうのは、婚約の腕輪を交換しあっちゃうの。結婚を誓いあったらもう、当人同士でしか2人を分かつことはできないのよ」
「お役所に行って登録するんじゃないんだ」
「「そ。お互いの幸せを願って誓いの証を交換しました」ってね。そこまでやったらよほど安物を差し出されたとかじゃない限り反対できないわ!」
「安いとだめなんだ」
「なんてったって覚悟と実力の証だからね」
「だから僕たちじゃまだだめってことなんだね」
「素材も無いし、魔法陣もかけないからね。今作れるのはただの木の腕輪だね」
ちょっと自嘲気味に笑って続けた。
「そうして、誓いの証を持って神殿に行って精霊と女神様に誓うのよ」
こうしてね、とカヨは立ち上がり僕の手を引いて立ち上がらせた。
「夫婦の幸せを司る女神の前で腕輪を交換してさ、こうやって手を重ねて誓いの言葉をいうの、今度教えてあげるね」
そう言って恋人つなぎで繋いだ手の指をくにくにと動かしてもじもじした。
「魔力の同調もちょっとだけ教えてあげる」
手を繋いだまま一緒にテーブルと椅子を引っ張って来て、ベッドと椅子、間に丸い小テーブル。
「ユウ、魔力はもうだいぶ扱えるよね」
「うん」
「魔力を少し出してあたしの魔力と混ぜるの、だせる?」
繋いだ手の中にあるカヨの魔力がある。
力強く頷いて僕は魔力を出してみる。
魔力なんて意識していなくても呪文さえ唱えればなんだかんだ行使できるもんなんだけど、真に魔法を極めようと思うなら基礎の基礎を大事にしなさい、と魔力を操る訓練もするようになった。
魔力は出してみたものの、繋いだ手の中では僕とカヨの魔力が混ざり合うことはなかった。当然、自分の魔力は自分のものなんだから。
「心を落ち着けてあたしの魔力を探ってみて、なんか波長が合う所みつからない?」
その言葉を頼りに目をつぶってカヨの魔力を感じてみる。
「お母さんがこうやって魔力を扱う基礎を教えながら子供の魔力とか体調を見るためにやるのよ。ほら、こうよ」
ゆっくりとうねりながらカヨは僕の表面をなでて僕に合わせて形を変えてくる。
それでなんとなくカヨに歩み寄るやり方がわかる気がする。
しばらくそうしてカヨの表面をなでていると、境目があやふやになってくる箇所が出てきた。
そこに集中して魔力を広げていくと、なんだか体がぽかぽかしてきて安心感というか心がなにかに包まれるような幸せな気持ちになった。
「どう? きもちいい?」
「うん、温泉にいるみたい」
「じゃあ、次は少しずつ魔力を出しながらあたしの魔力を包んでみて」
リラックスできているので気負わずにカヨの魔力を僕の魔力で包んでみる。
「上手だよ、もっと出して」
「うん」
完全に混ぜあった状態で僕の魔力を注ぎ込み続けてみると、カヨの魔力から悲しい、悔しいという気持ちが伝わってきた。
これがお母さんが子供の体調をみるためにやることなのか、と思った瞬間、予告なく内側から涙が押し出されるように涙がこぼれてしまった。
「なんか急にごめん」
「ううん、あたしの気持ちを感じてくれたんだもの。うれしいよ」
そういうと再び魔力を注ぎ込んだ。
ぐっと押し返される魔力に僕も注がなきゃ、という気持ちが湧いてきて力を込めると、ぽかぽかしながらカヨのことがなんだか分かる気がして体も心も暖かくなる。
カヨは僕のことを求めてくれている様に感じて、もっとカヨが欲しくなる。
うっすらと汗ばみながら上気した顔でうつろな目で僕のことを見ているけど、きっと僕も同じ様な顔をしているんだろう。
呼吸が浅くしかできなくなって、息苦しさからふうふうと息を吐きながら顔が熱くなる。
カヨがもっと注いでと言っている気がしてもっと注いでほしくて。
頭がぼーっとしてきたせいか、眼の前にいるカヨしか見えなくて幸せな気持ちが止まらなくて。
そうしているとなんだかだんだんと、息苦しくなってきて眼の前がチカチカしてクラクラしてきた。
「もう少し頑張って」
僕のそんな様子に気づいているのか気づいていないのか、魔力が枯れかけているのにカヨはもっと頑張れという。
枯れかけているのに止めたくなくて注ぎ込んでいるうちに、怖くなってきて魔力を止めた。
「ごめん、このまま続けるのなんか、怖くて」
「あたしも調子に乗っちゃってごめんね、初めてでいきなりすぎたね」
手の中に視線を落とすと恥ずかしそうに、でもちょっと嬉しそうに
「でもね、これをお腹に入れると、赤ちゃんができるんだよ」
さっきの余韻が残っているせいか、かわいく見えてなんだかカヨの赤ちゃんがほしい気がする。
「腕輪交換したらちゃんとしようね」
もじもじしながらカヨは僕の顔を見ずにそう言って手の中の魔力を霧散させ、いそいそと部屋に戻っていった。
次の日の朝、目覚めると僕は世界のすべてに祝福されていて光に満ち溢れている、そんな錯覚をしそうになるほど爽やかで元気いっぱいの目覚めだった。
「おはようございます、朝食にしますね」
お茶を置くと、台所に向かう。
「ユウ」
「はい、なんでしょう?」
「魔力の同調は親愛までですからね、間違いがあれば修行は中止ですよ」
そうにっこりと笑う師匠。
「はい……」
バレていた。
その後、カヨは別で呼ばれて相当絞られていたようで、以来、あまり深く魔力の同調をしてくれなくなった。
いちゃこらしたのが書きたかったのですが難しかったです
希望と機会があればまたなにか書きたいと思います