傭兵の戦場 side.A   作:舌百

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想像より短くなった(話数を稼いでいくスタイル)



神を滅ぼす英傑 file.2

会議の後、部屋に戻った俺はベッドに身を投げ、天井を見上げていた。

 

「はぁーめんどくさい仕事押し付けられちまったなぁ。ま、そういうこともあるのが傭兵だから何にも言えねぇけどさ。」

 

とこのような独り言をブツブツと述べたあと軽くため息をついて自分の手で目を覆った。はぁとため息をつく。このまま寝てしまおうかとも思ったがまだ17時だ。この時間に寝てしまってはまともな時間に起きれなくなるだろう。作戦の近い今、そうなることは避けたい。かと言って何かやることがあるのかと言われたら何もない。

ビールを飲むのも悪くないが一人で飲むのはつまらない。なにせ先ほどの連中はビールを飲まないし、飲み友は全員長期依頼に駆り出されている。

…仕方ない。買い物でも行くか。

 

部屋を出てエレベーターに乗り一階で降りる。

一階は広いエントランスになっており、壁には誰の趣味か何やら近代アート的な絵画が飾られている。

玄関は二重の厳重なロックがかけられていて、さらに扉や周りの壁は超硬質な防弾ガラスでできている。これはウトガルドの砲撃すらも弾く強度があるらしい。その自動ドアを抜けてガーデンと呼ばれる庭を通っていく。ここガーデンは平時はただの花園だが敵襲があった場合地下格納されているCIWSやVLSなどが展開して防衛を行うらしい。あと、自分が今歩いている道も有事の際には地下ガレージにつながりそこから出撃できるとかの説明を受けたが、このAランカーの宿舎(国家戦力の集まり)を襲撃するようなバカは流石にいないようだ。

 

枯れ始めた花を眺めながら歩いていると門の前まで来ていた。重たいゴシック様式の鉄門を手で押し、外に出る。陽は傾き始めていて空は朱に染まっている。なんというか、陽が落ちるのが速くなってきている気がするなぁ。少し寒い澄んだ空気を感じながらアスファルトで舗装された道をのそのそと歩く。

Aランカー宿舎は小高い丘の上に建っており、徒歩で市街地まで行くには少しばかり距離があるがそれもまた暇つぶしにはちょうどいい。そういや外出の際には可能な限り身分を隠してSPをつけてからにしろとか言われてたけどまあいいや。

 

10分ほど坂を降ったところで人で賑わう市街地に着いた。広い大通りを挟んで店が乱立している様はシャンゼリゼ通りを連想させる。いやその割には芸術性が足りないが。目的はこの先にある酒屋だ。

そこの酒屋はよく俺が訪れる場所で店主とはすっかり顔馴染みになっている。そこに向かって街中を歩いていると何やら周りからヒソヒソと話している声が聞こえてきた。誰か有名な俳優でも居るのかと思い辺りを見回してみるが何やらそういう雰囲気でもなさそうだ。

…というか俺に向けられてないか?

なんか変な格好とかしてないよなとちょっとビビって服屋のショーウィンドウに映った自分の姿を確認していると、脇を通った高校生くらいの女子2人が「今のエリオットじゃない?」と呟いたのが聞こえた。

…え?バレるの?俺?

マリアくらいの知名度が有ればバレるんだろうけど、俺のような冴えない三十路の男なんざ誰も注目してないとばっかり思ってた。何もなしの素顔で外に出たのは初めてだったがここまで噂にされるなら隠さないとまずそうだ。どさくさに紛れて刺されても困るのでそそくさと立ち去って人混みに紛れ、目的地を目指した。

 

少し歩いたあと路地裏へ通じる一本の道へ逸れ、そこの突き当りにある木の扉を開く。

ここが俺の行きつけの酒屋ことフォービスムだ。

 

「らっしゃい。ってあんたか、今日は金持ってきたんだろうな。」

 

カウンターの内側でこちらを一瞥しながらぶっきらぼうにそう言い放ったのは店主であるマティスだ。

 

「ああ、ちゃんとな。なんかいいやつ入ってないか?あとツマミくれ。」

「運がいいなお前さん。実は昨日特上品を仕入れたんだよ。」

 

マティスは椅子から立ち上がり店の奥へと消えていき、戻ってきたときに手に抱えていたのはずんぐりとした瓶に入ったワインだった。

 

「こいつは27年もののリシュブールだ。たまには高いものでもと思って仕入れたのさ。」

「27?!そいつぁ大当たりだな…それにしても、よく仕入れられたな。あんたワインの方の脈はそんなに強くなかったろ?」

「なあにちょいとブラックマーケットでね。安心しとけ、贋作とかじゃねぇから。買うかい?」

 

彼はポンポンと太い胴の瓶を叩きながらにやりと笑った。

 

「いくらか聞かねぇと決められねぇな。」

「へっ…43000、これでどうだ?」

 

43000…払えない金額ではないがもう少し値下げできないものか

 

「40000だ。」

「そこまではきついぜ、俺にも生活ってもんがあるのさ。まあ42000までなら値下げしてやってもいい。」

「あークソッタレ…買いだ。」

 

買うことを決めた意思を伝えた瞬間マティスはカウンターの下から木箱を取り出し、目の前の瓶を包装し始めた。

 

「ところで原価いくらだよ。」

「あ?教えるわけねぇだろうがよ。ボッタクってんのバレるだろうが。」

「けっ、この悪徳業者がよ。」

 

そのように冗談を言い合いながら木箱に入ったそれを受け取り、ついでに近くにあったチーズをちょろまかして会計を済ませる。

 

「また来いよ。」

「おうとも、今度はもうちょい値下げ交渉粘ってやる。」

 

マティスはケケッと笑った。

 

フォービスムを出た後、先ほどのようにざわつかれても困るので路地裏を通っていく。路地裏は表通りの喧騒とは打って変わって静寂を孕んでいる。人はおらず、ただつい先程まで人がいた痕跡が残されているのみだ。道の端に置かれた安ビールの箱と空き瓶を避けながら歩を進める。紐で縛られた木箱に傷を付けないよう、慎重に。曲がりくねっているためか来た時よりも少し時間がかかり、宿舎へ通じる坂に差し掛かった時にはすっかり陽は落ち、月が顔を見せていた。

その後、20分ほど坂を登り、門の前までたどり着いた。街灯も民家の灯りもほとんどない道なので足元に気をつけながら登っていたら予想よりも時間がかかってしまったようだ。

ギシギシと音を立てる門を押しながら中に入る。何があると言うわけでもないが少しバツの悪いようなそんな気がしてゆっくりと音を立てないように歩き、玄関の生体認証を済ませてエントランスホールの中をエレベーターに向かって突っ切った。

 

自室に着いた。電気を付け、木箱をテーブルに置く。木箱の中から瓶を取り出して、試しに買ったはよかったものの空っぽのまま放置されているワインセラーの中に慎重に入れた。一本しかないがワインセラー自体もそんなに大きくはないので入っているだけで部屋に高級感が出る。

ワイン収集というのも悪くないなと思った。

ふぅ、と息をついて椅子に座ると一気に疲れが体に襲ってきた。人混みに紛れたのは久しぶりだし高級ワインの運搬に神経を使ってしまったために異様に疲れた。服を脱ぎ捨てシャワーを浴び、歯を磨きベッドに横たわった瞬間に睡魔に導かれてしまった。

 

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