傭兵の戦場 side.A   作:からす the six hands

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神を滅ぼす英傑 file.4

演習の2日後、今俺たち5人…というよりか5機は太平洋の上空を輸送機の中でコンテナに包まれながら飛んでいる。目的地は衛星発射のために用意をしているパールバティーだ。

なんで予定よりもこんなに早いかというと、時は少し遡り、四時間前。

 

 

「「「「「なんて?」」」」」

 

いきなり会議室に呼び出された俺ら5人は口を揃えて素っ頓狂な声をあげてしまった。

 

「ですから、パールバティーがいきなり速度を上げまして。もう衛星の打ち上げ準備に入ろうとしているので今すぐに出撃の準備をして欲しいのです。」

 

壇上でマイクを握っている男は最初に作戦説明をしていたやつだ。髪や服の細かいところが乱れているのを見るに走ってきたのだろう。

 

「ったく…これだから企業ってのは嫌いなんだ。ガレージまでのトラックの用意はできてるんだろうね。」

 

頭を軽くかきながらロゼが言う。

 

「ええ、裏口に手配してあります。こちらに。」

 

男が壇の端にある扉を開けて5人でゾロゾロと入る。そして裏にある搬入口に止められた大型の軍用トラックに乗り込む。中には護衛と思しき軍人が4人、帯銃して座っていた。

横一直線の椅子があるだけのまさしく兵員輸送車と言ったこの車両の内側の適当な場所に座る。

全員が座ったことを確認したのかエンジンが唸りを上げる。

 

最高速で流れる街並みを眺める。

窓が小さいのでそんなに見えるわけではないが街並みを眺めるくらいならできる。

…こうしてみると意外と発展しているのがわかるな。

ウトガルドの視線から見れば広く見れるが一つ一つの建物がどうしても小さく見える。かといって歩いてみてみると等身大な建物の見方ができるけれど見える範囲が狭くなってしまうので世界の広がりがなくなる。

このような車の視点、というものもなかなかに悪くない。今度久しぶりにガレージに眠っている車でも引っ張り出してみようか。

今度はいきなり景色が入れ替わった。都市が流れていたのが水平線が映るだけになった。

娯楽として使われることを一切考えていないコンクリートで固められた海だ。ここのど真ん中にはペイロードの工廠兼ガレージ、そして軍用機の滑走路や軍港がある。

今回はペイロードの輸送機で行くから、そっちに俺らの機体が運ばれている。

分厚い柵で守られた検問を越え、滑走路を横目に見ながら積み込み作業をしている大型ガレージに入る。

車から降りると、大きさの均等なコンテナが五つ、自分たちの目の前に置かれていた。

「こちらの中に皆様の機体が入っています。コンテナ上部のハッチから中に入れますので。」

助手席から降りてきた仲介人の男がそう告げた。

そそくさと仮置き更衣室でパイロットスーツへの着替えを済ませて[エリオット]と名札がつけられたコンテナの梯子を登り中に入る。

中にはコックピットを開いて主の帰還を待っている自分の愛機がいた。

 

 

そうしてコックピットの中に乗り込んで今に至る、というわけなのだ。

ところで、この四時間ずっと機体の中にいたせいか腰や肩がバキバキだ。密閉型コンテナだから一回ハッチ閉めたら開けられないのはわかるけどさ。なんか、気に食わない。外に出たら適当に真上に撃ってみようか。

とまあこのように気を抜いているが、つい数分前にそろそろ作戦エリアに到着するという無線を受けたので色々と動作確認なんかを行なっている。各関節部も問題なく動き、カメラアイ、各種電子機器系も適切に起動する。一段落ついたと背もたれに寄り掛かろうと伸びると肩と腰から悲鳴が聞こえた。個人的なあれだが、この輸送時間が今回の任務で一番の苦痛なんじゃないかと思える。

最終確認ということで、もう一度HUD表示の不具合の有無を確認してみる。そしてしているうちに最終ブリーフィングが始まった。

 

『作戦領域範囲内に到達しました。この通信の終了から60秒後に後部ハッチを解放します。改めて作戦を確認します。現在位置周辺でウトガルドを投下、その後は各自パールバティー甲板上へ展開して対象を撃沈。不可能と判断した場合は後部甲板へと移動し、衛星発射装置に損害を与えてください。投下順は第一陣でエンケイ様、マリア様。第二陣はレツィーナ様、エリオット様。第三陣としてロゼ様と狙撃用の航空機でございます。また皆様の機体に、勝手ではありますが空中制御用のブースターをつけさせていただきました。自動で速度を調整しますが不要でありましたら各自ブースターを展開して取り外してください。使用なさるのでしたら内蔵燃料がなくなりますと自動でパージされますので。それでは皆様のご武運を祈らせていただきます。』

 

放送が終わったまさに瞬間、自分の後方で鉄の扉がゆっくりと開く機械音と風が吹き込む音がした。

そして床がゆっくりと傾いていき徐々に徐々に滑っているのが体感できる。

ある程度進んだあと摩擦係数が低くなったのか一気に加速した。いきなり体に訪れる浮遊感。パラシュートが展開した衝撃で体が少しガクンと揺れる。気分は空挺される補給物資のようなものだ。

コンテナのせいで周りが見えないがもう少しすればこのコンテナもパージされる。

一定高度、高度メーターで見て2000mの高さになった時自身の周囲から空気が抜ける音と小規模な爆発が連続する音が聞こえて視界が一気に明るくなった。自機の周囲に散らばるコンテナの破片が視界に入る。右を見るとほぼ同じタイミングでコンテナをパージしたレツィーナのミッシェルがいた。

下の方では第一陣がすでに交戦を始めたのか煙が立ち上っているのが見える。

 

「さあてと、さっさと片付けるとしますかぁ!」

 

メインシステムの起動音を聞きながらただ1人ではあるがそう気を奮わせる。機体を反転させて増加バックパックをフルスピードで吹かせて加速する。こんな使い方は多分想定してないだろうけどスピード上がってるから問題ない。はず。

 




空挺用コンテナ
細かい鉄板を大量に溶接した後鉄骨で拘束したタイプのコンテナ。
板と板の隙間に少量の爆薬を入れて高度指定した信管を入れることである一定高度通過時にパージができる。
空気が抜ける音は爆発のために少し拘束を緩めた音。

次からはキャラごとに視点変えていくので夜露四苦

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