傭兵の戦場 side.A   作:舌百

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神を滅ぼす英傑 file.5-1-1

甲板の上にかなりの轟音を響かせて着地する。スピード乗せすぎたし緩和用ブースターは早々に燃料尽きるしで一切減速が出来なかった。

もっとも堅牢な作りのこの機体には傷一つ付いていないが。

衝撃のせいで少し視野が歪んでいるのを抑えて、レーダー機能の範囲を大幅に絞って周囲の敵機情報を確認する。

ウトガルドはおよそ30、戦闘機…まあそれ含めた一般兵器は100と少しくらい。数は多いがそれだけだ。戦闘機如きの機銃では傷一つつかないし、並のウトガルド程度ならば10いようが100いようが関係ない。時間はかかるけど。

ただ怖いのは高層ビルのような高さの艦橋の隙間にぎっしりと敷き詰められた、集合体恐怖症の人が見れば卒倒しそうなほど大量の対空対艦両用速射砲だ。流石に艦砲クラスの大口径はいくらコイツといえどもタダでは済まない。そして前を向いた時に気づいた。そんな喰らえばタダでは済まなそうなのが、大量にこちらを向いている。

やばい、と回避行動をとろうとした瞬間、山のようになっている砲台の中心部分が溶解した。溶け落ちて赤くなった砲台の奥にマリアのグレイヴィーナスが未だ銃口から煙が出ているものをこちらに向けながら立っているのが見えた。向けている得物の銃口がやけにでかいが、今回は各種破壊用に高火力なエネルギーキャノンを搭載してきているらしい。

 

「サンキュー、マリア。」

『問題ないわ。艦砲はこっちで処理するからウトガルドの殲滅よろしくね。』

 

言われてから敵ウトガルド、アウシュニャギャーンの量産型であるガネーシャが展開している場所にロックをかけてみると手前の甲板側と船体奥のマリア周辺にいた。マリアの機体は重装型だしサブ兵装も充実しているから落とされることはないと思うけど、彼女の役割はあくまでも船舶の破壊だ。まずは向こうの敵をやることにしようか。

そんなことを考えながらブースターのペダルを踏んだ時真横に何者かが降りてくる影が見えた。白く流麗でとても線の細い機体。同時に投下されたレツィーナのミッシェルだ。律儀にも減速ブースターを使って降りて来たのだろう。着地がゆっくりだ。

 

『遅くなりました。それでは、作戦を開始しましょう。』

「おうともさ。俺は手前、君は奥の殲滅を頼む。」

『わかりました。ご武運を。』

 

回線が開き軽く挨拶を交わす。今回ウトガルド等殲滅の主戦力の役割が分配されているもの同士、連携ってのは必要だしな。

そしてお互いに加速する。もっともレツィーナの方が圧倒的に早いのだが。

先程の無線の通り手前を俺、奥をレツィーナが担当するようになった。

俺に回ってきた数はおよそ半分ほど、まあ15〜20くらいだ。

相手はレツィーナのブースト炎を追いかけようとしている。そのため大半が後ろを向いているので背中がガラ空きだ。

遅れつつも肉薄したので手始めに隙まみれの背中にライフルを撃ち込み、二機を爆散させる。

ようやく敵の機体がこちらを向いた。六本腕に取り付けられた多種多様な武装を全てこちらに向けて交戦態勢に入っている。

 

接近しながらレーザーやガトリングなどの弾幕を回避し、装甲で弾く。大量に搭載した増加装甲のおかげで小口径弾などであれば痛くも痒くもない。

ロックオンの範囲内に入れたので、ライフルの引き金を引いて、手前にいた敵のカメラアイと関節部を吹き飛ばす。

倒れゆくそいつを盾にして敵弾をやり過ごす。敵の武装はガネーシャの薄い装甲を蜂の巣にし、もはや装甲の一部も残っていない。パイロットは災難だったとしか言いようがないな。

消し炭になったそいつを尻目に右側にいた機体にライフルを突き刺して二発撃ちながら左手のライフルを他のやつに向ける。

こちらを狙ってきている二機にそれぞれ一発ずつ撃ち、相手の動きを止めてから突っ込んでいる右腕を引き抜いて両腕を1回づつ鳴らす。

これで計6機。まだまだいる。

次に手前の機体をやろうとライフルを構えた時そいつが爆散した。それは自身の後方から放たれた砲弾だった。

そちらに目を向けると、かなりの後方の海上に飛行機の上で狙撃をしているロゼのザミエルがいた。

 

『おっと、キルスコアを奪っちまったかい?』

「まあな、後で請求しとくよ。」

『あんたは背後に気をつけな。』

 

とまあ戦場とは到底思えないような会話をした後ロゼは他のところへと移っていった。置き土産的に一機消してから。

奥に目を向けると、あちこちから煙が立ち上り、燃えているのが見える。甲板後方で暴れているエンケイの攻撃によって半分に折られた一つの艦橋が破壊の激しさを示している。しかもマリアの方はレツィーナに加えて先程ロゼが向かったことで兵器類はほとんどが壊滅、艦橋も少し衝撃を加えたら崩れそうなほどにボコボコにされていた。まだ殲滅が終わってないのは俺だけかよ。

さっさと終わらせようと一気に数を減らされたことにより混乱が生じている敵部隊の中心部へと切り込んでいき、肩につけられた増加装甲を使って近場の敵に体当たりを仕掛ける。よろけた機体に超至近距離から砲撃を行い、胸部を吹き飛ばす。

次の獲物となる敵の方を向き、より効率の良い倒し方を考える。ふと自分の真下に転がっている機体に目がいく。

いいものがあるじゃないか。

すでにスクラップとなった敵の腕にライフルを突き刺し、勢いよく振り抜いてそのまま敵が二、三機固まっているところにぶん投げる。

そして、射撃。

敵が何か投げられたことに気づいてこちらを向いた直後に大爆発が起こった。ガネーシャの武器腕は弾薬庫内蔵型、つまるところ撃てば爆ぜる。

煙が晴れたところには少し窪んだ床と辛うじて直撃を避けられた足だけが残った。どうやら投げたのは適当に選んだやつなのにレーザー腕だったようだ、なにせ火薬爆発的な吹き飛び方をしていない。レーザーの熱量が熱暴走を起こして発生した大爆発…巻き込まれるのは想像したくないな。

三機いたのがわかる残骸を踏み潰しながら残りのガネーシャを掃討する。

かなり数が減ったことで逃げようと背を向けているのが一機見えたので手始めにそいつのブースターを爆破炎上させる。

かわいそうだな。

残す二機も左手を一発、右手を一発で関節部を撃ち抜いて沈黙させた。

 

「ようやく片付いた、か。どれ、俺もあいつらの支援にでもいくかな。」

誰もいなくなった船首の上でただ1人、ぽつりと呟いた。

そういえば航空機もいたはずなのにもう飛んでるのがいないな…なんでだろ。

 

俺がマリアのところについた時には、すでに敵はおらず残った自動兵器やらを壊滅させていた。

機体に積まれたレーダーは兵器を手当たり次第に探査するタイプなので甲板上の予備兵装とかも表示されているのだが、その数は確実に減っている。

 

「なんかすることあるかい?」

『ないわエリオット。そこでお茶でも飲んでていいわよ。』

「おいおい、そんなつれないこといわないでくれよ。」

 

言われたようにコックピットでお茶をするわけにはいかないので適当に破壊をすることにする。といっても艦橋は根本がほんのり残ってるくらいで大半は吹っ飛んでるし甲板はもう航空機の発艦など不可能なレベルで穴だらけになっている。要するに、俺の仕事はないということだ。そもそも俺の機体は破壊用じゃないから弾が貫通しないだろうし。

レツィーナは何してるんだろう。

そう思ったものの、無線で聞くようなことじゃないなと思い、諦めて安全な場所で周辺警戒という名目の休憩を行うことにした。

ガッショガッショと駆動音を鳴らしながらなるべく平たい場所を探す。周辺に溶けた残骸が大量に広がっているせいでまともそうな場所が見当たらない。

そうやってうろついているうちに衛生発射装置のところに来ていた。船体の右側の3分の1ほどを占領する大きく硬い蓋、それはさながら地獄の蓋のようだった。

試しに2発ほどライフルを撃ってみるがその両方共に軽い音を立てて弾かれてしまった。

そりゃ無理だよな。

これの破壊はエンケイの仕事、と割り切ってその蓋の上に休憩モードに入る。機体は膝を付き、コックピットは半開きくらいにキープしておく。

微かに雲がかった太陽照りつける青空を眺める。

「あーあ、来るなら旅行が良かったな。」

席の裏に隠してあるタバコを取り出して火を付ける。

ふぅ、と息を吐くことで口から出た煙がコックピットのなかを白く濁らせる。

脳に満ちるなんとも言えない堕落した多幸感とただ広がっている空の清涼感に板挟みになりながらボーッと空を眺めているといきなり視界に影が降りた。

 

『エリオット、甲板上の見周りは終わったわ。休憩しましょう。』

 

そう言われてコックピットを中にしまい、各種UIが起動準備を終了させ、メインモニターがプロジェクター越しの青い世界を写したとき、そこには4機が立っていた。

それと少し離れた海上にホバリングしている特殊輸送機も。

 

『あんたら、残弾とか破損状況はどんな感じだい?』

『自分は残り623/16で、損傷は7です。ヘイトがこっちに向かなかったおかげで軽く済んでます』

『わたしは、19/154、損傷は22。ちょっと喰らいすぎたけど大丈夫。リミッターは2よ。』

『62と破損は13ね。右のこの子は凝縮式だから安心して。』

「俺は223/174、破損は2だ。ただ増加装甲が2、3枚持ってかれた。」

 

一旦の業務連絡を済まし、他愛のない会話をする。

 

「なあ、この船ってこんだけ暴れても沈まないんだな。」

『たしかにそれは思ったねぇ。もっとも、艦橋が全部イカれたんだ。もう何もできないだろうからゆっくり破壊すればいいさ。』

 

たしかに増援は来ていない。おそらくまだ積載はしてあるのだろうが、エレベーターも破壊されたために動かせなくなったのだろう。

だが、何か引っかかる。

 

『そういえば、衛星発射装置はどうなりましたか?』

『ああ、それでしたらこれから破壊します。なにぶん外からでは硬すぎたので、下段のところを経由して…あれ?下段の甲板ってどうなってます?』

 

あ。

 

皆がそう思ったであろう瞬間に俺らがいる場所の後方、()()からジェットエンジンの起動音と何者かが甲板上層部に着地する音が連続した。

数は約500。俺らの目の前に広がる、イナゴの大群のような航空機の群れとどこかの映画か軍事パレードかと思うほどに大量に並んだウトガルドガネーシャ。それら全てが今、こちらを向いていた。

「ちょっちヤベェなこれ。」

 

 

およそ10分ほどが経過した時だろうか、踏んでいるのが甲板なのか兵器の残骸なのかわからないほどに片付けたころ、いきなり無線が入った。

 

『おいエンケイ!今すぐ船体後方に向かいな!衛生発射装置が動き始めた!』

 

そちらに目をみやるとたしかに何か支柱のようなものが建っているのが見える。

今まで後方高台から砲撃支援を行っていたエンケイの乗る遮那王は無線を返すこともなく、今動いているソレの方を向いてキャタピラとブースターを同時に点けフルスピードで向かい始めた。

だがしかし、進み始めた直後に右肩が爆ぜた。

上空を見ると大量のマルチロール機が獲物を狙う鷹のように旋回していた。

孤立した重装機体、これを狙うのは戦術の基本だ。実際、エンケイの機体は足止めを喰らっている。

もっとも、あの程度の爆弾やミサイルでは遮那王に傷をつけるのは不可能ではあるのだがね。

速度こそ遅くなったがそれでもまだ許容圏内だろう。

そう思っていたのに、いきなりどこからともなく現れたガネーシャがエンケイに取りつき始めた。

物理的に四方八方から進路妨害を行われているので無視できないレベルでの減速が起こった。

右腕に構えた船体破壊用の大口径ガトリングを乱射しているので数はかなりの速度で減ってはいるが、あのペースで撃っていては弾切れを起こす可能性もある。

このままではたどり着く頃にはまともな武装も残っていなさそうだし、そもそも間に合うかすらも危うい。そう判断した俺は無線を手に取り、

 

「すまん、3人でここを押さえてくれ。俺はエンケイの支援に行く。」

『ああ、頼んだよ。』

 

そうとだけ告げて、戦線を離れた。

振り向くとそこにはエンケイを妨害しようと色々なところから湧いて出たガネーシャが歩みを進めていた。

数自体は大したことはないが何故か減る気配がない。無尽蔵のように思える。急いで行くためにブースターをフルで稼働させて高速で移動する。

後ろからの音が遠くなっているのを聞きつつ、通り道の数機に射撃を行ない、蹴り飛ばしおおよそ5機ほどを沈黙させて、堅牢重厚なタンク機のそばに立つ。

 

「よっし、ミッション達成を急ぐとしますかねぇ。」

『救援、感謝いたします!私の大筒が火を吹きますよ!』

 

 




本当は5-1で止めるつもりだったんだけど俺にしては長くなりすぎたので2分割にします
許して…
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