あの依頼から帰還して一週間後、全員のヘルスチェックや各種被害報告などが終わりあの時のメンバー全員でカフェテリアで寛いでいた。
「レツィーナ、あんた無理しすぎだよ全く…」
「別にいいじゃない。あれのおかげで助かったのも事実でしょ?」
「そりゃ結果論じゃないか。あれでレツィーナが死んだりしたらアタシは…」
「まあまあ、心配なのはわかるけどそのくらいにしたら?結果的にみんな無事だったし。」
「でもねぇ…」
レツィーナに滔滔と説教をしているロゼ、それを宥めるマリア、そして説教されてるのを意に介さない様子のレツィーナ。ロゼはレツィーナと今日顔を見合わせてからずっと説教をしているので流石に慣れてきたのだろう。あそこまで説教している必要があるのか疑問に思えるが、仕方ない気もする。なにせレツィーナは作戦終了後すぐに病院に搬送、治療を受けた後三日間目を覚まさなかったし、ロゼはずっと病院に通い詰めて面会時間ギリギリまで病院にいるほど心配していたからな。ロゼもミッション直後はいつもの気絶とたかを括っていたようだが病院の診断を聞いた時にはブルーベリーとどっちが青いかわからないくらい真っ青になっていた。どうやらギレント粒子を薄くなった装甲板越しに浴びたようで、それに当たって脳に過負荷がかかったからとかなんとか。
そんな説教をエンケイとともに眺めていると、放送が入った。
『パールバティ攻略戦メンバーは至急会議室に集合してください。』
おそらく報酬の支払いの連絡だろう、と思って全員で会議室へと向かう。
会議室の扉をロゼが開けると中はブリーフィングの時とはうって変わって全ての明かりがついていた。そして壇上にはブリーフィングの担当とは違うメガネの女性が立っていた。
その女性は俺らが部屋に入ったのを見るとマイクを手に取った。
「お集まりいただき感謝いたします。報告がございますので是非お席の方へ。」
そう促されたので大人しく席に着く。
「ご協力感謝いたします。それで報告の内容なのですが、今回の依頼の報酬金に関して、です。」
やっぱりだ。報酬の振り込み自体は電子メールで行われるので所属不明機撃退による報酬の上乗せだろうか。
「では本題に移ります。今回、報酬に関してはペイロード上層部の決定により、70%の減額となります。」
「はぁ?!」
「驚かれるのも無理はないですが、理由の程を説明させていただきます。今回ロゼ様にペイロードから貸与した航空機および輸送時の航空機に対して故意の攻撃の跡が発見されました。これにより弊社上層部はあなた方傭兵は十分に依頼内容を達成しなかった、ということで報酬の減額という最終決定となりました。」
そのことに対してロゼが声を上げる。
「ちょっとまちな、それはいくらなんでも…」
「これはペイロード、そしてMRS双方の上層部から合意を得た正式な決定です。異論は認められていません。」
「ならあの不明機の対処についてはどうなったんだい?」
「ペイロードの厳粛な現場捜査の結果、そのようなウトガルドの痕跡が発見されなかったため今回報酬には上乗せされません。」
確かに俺らはアレを撃退こそしたが撃破までは至らなかった。だからといってこの減額…あまりにも傭兵というものを舐めている。
「それでは報告は以上となります。おそらく本日中に詳細な書類が電子メールで届くと思われるのでご確認ください。」
そう言い残すと壇上の女性は裏口から出て行った。
「ふっざけるなよ、クソ守銭奴が!」
一瞬静かになった部屋の中でロゼが怒りを顕にした。机が砕けそうなほどのド派手な台パン。もともと気が立っていたところへの追撃で怒髪天と言ったところだろう。だが実際俺もかなり怒りを感じている。たしかに輸送機を数発撃ってやろうかとは言ったが実際撃ったわけでもない。つまり冤罪だ。そんなことで一方的に報酬を減らされてはたまったもんじゃない。
直談判しようにも傭兵と企業上層部の謁見は契約で禁止されている。賄賂や不正の防止が名目ではあるがその本来の目的は殺されないためだろう。
この場にいる皆が怒りを感じているのが空気でわかる。温厚なはずのマリアもその怒りを滲ませていた。
「まあ、一旦部屋に戻るか。細かいことは明日だ。」
「…ああ、そうだね。」
そしてこの報告はお開きとなった。
自室の中にたどり着いた俺はベッドに腰掛ける。
「本当にクソだな。メアリースーを使って俺らを潰すのが失敗したら適当な理由をつけて報酬を減らす、か。」
「あー、やってらんねぇ。」
立ち上がり、ワインセラーに入っているワインを手に取りコップに注ぐ。血のような赤がグラスを満たす。
それを一気に飲み干す。久しぶりの酒な上に度数が高かったことからか意識を失うように寝てしまった。
翌日、頭痛と共に朝日を望む。カフェテリアへ行くとすでに皆集まっていた。
「悪い、遅くなった。」
「構わないよ。」
ロゼが言う。
「さて本題に入ろうか。報酬が減らされたのをなんとかしたい。」
「それはそうだ。けどな、俺らじゃ何もできないだろう。」
「そうですね。交渉はそもそもが不可能で、かといって武力行使では我々に勝ち目はありません。」
「かと言ってこのまま泣き寝入りなんてのもなぁ…。」
みんなして唸り声をあげる。
そんな中あっと言う声をあげたのはマリアだった。
「なら、ペイロードの依頼をこれ以上受けないってのはどうかしら?それどころか他の企業の依頼ばっかり受けるとか!」
確かにそれならばペイロードを直接的に倒さなくても長期的に見ればかなり苦しめられるはずだ。なにせペイロードのウトガルド戦力のほとんどは俺たちAランカーにかかっている。大型兵器では攻略できない細かい所の攻略を俺らなしでは不可能なのだ。それにペイロード以外ともパイプを持つのはいざとなった時に後ろ盾にできる。
「たしかにそれはいいかもな。だが、MRSがそれを許すか?」
MRSは現在ほぼ完全なペイロードの傀儡となっている。もしペイロード以外を受け始めたりしたらMRS自体が解体されかねない。
「それなら大丈夫だね。もしそんなことをしたら各企業からの大バッシングと総攻撃を受けかねない。」
「なるほど、そういうものか。」
「そうと決まれば、全体に通告といくか!」
全員でおー!と声を上げた。
ここから、俺たちの反逆が始まる。
かみほろ終了です。二章を待ちなされ。