「結果は見えています」と、ステータス見える系外面闇深内面限界オタクウマ娘トレーナーは言った。   作:親の顔より見たウマ娘

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 ルドルフ視点。


シンボリルドルフ・賢人との邂逅

「我こそはと思う者は、是非名乗り出て欲しい」

 

 

 そう宣えば、静まり返る。

 戸惑い、躊躇い、畏怖、敬遠。様々な感情。

 分かってはいたことだ。我がことながら素質があるというのは、何も良い事ばかりが巡ってくるというわけでもない。

 

 トレーナーにとって、私のような大願持つウマ娘を担当するということは、実際に導いて共に成し遂げた際に得られる大きなリターンだけでなく、それに見合う相応のリスクも付きまとうものだということは重々承知している。

 現理事長の私腹を切るように財を投じた改革によって、このトレセン学園のトレーナー事情も段々とは改善されてきているものの、それでもまだまだ厳しい現状。三冠を一先ずの絶対条件とする私が望むのは、熱意と実力のあるトレーナーという競走ウマ娘にとっての理想的パートナーそのもの。如何にこれが私にとって最低限であろうと、そのトレーナー自身はそうではない。

 

 大きな賭けとなる。

 成功すれば功成名遂、一度で絶対的トレーナーとして登り詰められるが、万に一つでも失敗しようものなら無能のレッテルを貼られ、このトレセン学園での未来を全て失うことになるだろう。それは私もだが。

 

 しかし薄々分かっていたこととはいえ、この場で誰一人名乗り出て来ない、というのもそれはそれで困ってしまう。

 

 仕方ない。また後日募るとして、今は様子を見よう。

 そう思い、その場を後にしようとしたその時であった。

 

 

「シンボリルドルフ。私と共に歩めますか?」

 

 

 私は、運命と出会った。

 

 

「君は……」

「私は、馮堂。今年からトレーナーとなった新人です」

 

 

 歩み出てきたのは一人のウマ娘(・・・)。儚げな深窓の令嬢といった容貌とは裏腹に、その銀の眼は力強く私を射抜いた。

 

 彼女のことは知っていた。

 馮堂ながれ、十六歳。類稀な頭脳と観察眼を評価され飛び級でトレーナー資格を獲得し、秋川やよい理事長の信任を得て今年からトレーナーとなった異質の存在。

 誰一人声を上げなかった中、唯一名乗り出た少女の存在にトレーナー達がざわめく。

 

 私は、面白いと思った。

 

 

「ならば一週間後、私に何らかの形として証を立てて欲しい」

 

 

 だから、私は彼女に課題を出した。

 

 いくら理事長の信任を得たトレーナーだとしても、未だ実力未知数の彼女に私の全てを預ける決断はできない。

 それに、元よりこの課題は私をスカウトせんとするトレーナー全員に出す予定であった。

 

 資料だろうか。計画だろうか。それとも別の何かか。

 彼女がどのような証を立てるのか、今からとても楽しみだ。

 

 そう思って、踵を返した私に彼女は待ったをかける。

 

 

「シンボリルドルフ、証なら今ここで立てます」

「なに?」

 

 

 そう言うと、彼女は取り出したメモ帳に何やら書き込んでゆく。

 ざわめくトレーナーたちと暫く待てば、彼女は書き終えたメモをちぎって私に見せてきた。

 

 私は、その数字とアルファベットの羅列に思わず我が目を疑った。

 

 

「っ、これは……」

 

 

 スピードF106、スタミナF111、パワーF101、根性F118、賢さF114。

 芝適性、A。ダート適性、G。短距離E、マイルC、中距離長距離共にA。脚質は先行、差しがA。調子は好調。

 

 そこに書かれていたのは、所謂私のステータス(・・・・・)。驚くべきことにそれらは私自身が実感している以上に正確だった。

 これが、彼女をその歳でトレーナーにした観察眼か。これならば、トレーナーとしての彼女に期待するに十分過ぎる証だ。

 

 だが、驚くのはさらにその後で。

 

 

「こんなものは、どうでも良い(・・・・・・)です。貴女は三冠と言わず、七冠、いや八冠は堅い。努力次第ではそれ以上も」

「ははは。随分と私を評価してくれるね。でも、これがどうでも良い、というのはどういう……あっ」

 

 

 私の言葉を遮り、彼女はそのメモ用紙を破り捨てた。ベテランと呼ばれるトレーナーですら難しいウマ娘の能力の正確な数値化。その結晶をなんでもないかのように。

 

 バラバラになったそれが、彼女の芦毛の髪と共に風にさらわれる。

 それに思わず見蕩れていると彼女は口を開いた。

 

 

「貴女は、ウマ娘でありながらウマ娘を誰よりも想っている。それは生徒会長という職務以上に」

「っ」

 

 

 その時の彼女の目は、何を映していただろうか。銀の双眸に私は何を見た。

 私への期待? 希望? 情熱?

 

 違う。

 彼女の目が映していたのは、生徒会長でも皇帝でもないシンボリルドルフ。私自身だ。

 

 

「そんな貴女に私の特技なんて見せても意味は無いでしょう。だから────」

 

 

 

 

 ────私の夢を叶えてください。

 

 

 

 

「……これは、参ったな」

「ふふ。どうです? 私のプレゼンはお気に召しましたか?」

 

 

 彼女はイタズラが成功した子供のように、無邪気であどけない微笑みを浮かべた。

 




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