「結果は見えています」と、ステータス見える系外面闇深内面限界オタクウマ娘トレーナーは言った。 作:親の顔より見たウマ娘
『あ……うそ、私、こんなつもりじゃ』
取り乱した様子の少女はそう言って、恐る恐る私の脚に触れた。
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「チェックメイト。今度は私の勝ちですね、シンボリルドルフ」
「……なかなか勝ち越させてくれないね、君は」
「当然。今日こそは私の勝ち越しで終わりにしますよ」
えー、はい。
気が付くとですね……あの、私……。
ウマ娘ちゃんとチェスしてるっ!!!
待って。なんで私は生徒会室でシンボリルドルフとチェスしてるの??? 天国? 私の人生のボーナスタイムか何か?
いや、ていうかチェス強……私これまで負け無しだったのに……流石はウマ娘ちゃん!! こんな底辺のモドキとは訳が違う!
「今日からデビューに向けて走り出すというのだ。景気付けに私に勝ち越させてくれても良いだろう?」
「でも、手を抜いたら貴女は満足しませんよね?」
「ふっ、当然至極。私とここまで競えるのは今のところ君しかいないからね」
選抜レースのあの日。
走るその姿のあまりの神々しさ、溢れ出るウマ娘ちゃんパワーに自我消失。気がつくと、あの皇帝シンボリルドルフの専属トレーナーになっていた。どういうこと……その間の私、何したの……。
真面目に困惑する他無いのだが、何はともあれこれで一番の課題であった担当の不在は解消。ウマ娘ちゃんを幸福にする為に、全ウマ娘ちゃんの頂点に立つとかいう皇帝らしいめちゃくちゃ貴い大志を支えることになったわけだが……。
なんと最初の1年、ジュニア級開始時点でのシンボリルドルフのステータスは破格と言う他ないオールF。時々ステータスが高くとも距離適性が微妙な子とかもいるのだが、その点においても安心安全の中長距離適性A。流石デビュー前から皇帝と呼ばれるだけある才能の塊。いやー、他の先輩トレーナーを差し置いて申し訳ない気持ちでいっぱいである。
多分私じゃなくてもそれなりの力があるトレーナーならば、シンボリルドルフを頂点に立たせることは可能だ。だけども、私は彼ら彼女らを差し置いてシンボリルドルフの担当となったわけで。
それならば、私の持てる全てを使って彼女を頂点に立たせてみせると決意するのは必然……! 頑張れ、私!
「……君も知ってのとおり、私が目指すものは、全てのウマ娘が幸福に過ごせる世界だ」
「ええ、大志ですね」
ウマ娘ちゃんの為に東奔西走するその姿は、私がトレーナーになってからこれまでの日々で何度も見掛けた。
……別にストーカーではない。一人のウマ娘ちゃんではなく、全ウマ娘ちゃんを追い掛けているから!
「そうだ、大志だ。この大志、言うまでもないが一日千秋と待っていたのでは到底叶えることなど不可能。なればこそ」
「誰もが疑わぬ頂点に立ち、優れた指導者となる」
なんとなく言ってみる。違ったら恥ずかしいが、似たようなところだと思う。
まあ、流石にそこまでじゃないだろうけど。
引退後はURAで何らかのポストに就いて凄いことをするみたいな、そんな感じかな? 何にせよ私が死ぬまで支えますとも!
「……ふふ。やっぱり君にはお見通しなんだな」
「これでもトレーナーですから、それくらいは分かります」
「だろうね。……頂点に立つのは通過点に過ぎない。指導者となり、全てのウマ娘を導く為に私は走るのだ」
え゛。
ガチで指導者? そういう?
ひょっ。
【優勝】うちの担当ウマ娘ちゃんが尊さの為に戦う尊さの塊で死ぬんだが【尊さの勝利】
「皇帝になるのなら、先ずは皇帝であるという証明をしなければなりませんね」
「ああ。徳も無ければ力も誉も無い皇帝など存在しないからな」
もう既に徳はあるし、力と誉は約束されているから実質現在進行形で皇帝では??? 推し。
でも実際、シンボリルドルフの努力はこの学園の全ウマ娘ちゃんが知っていると思うのだが。それでも彼女は邁進していくのだと思うと、シンボリルドルフ、あまりにも強過ぎる……! 浄化されてしまうぅぅ……!
「度徳量力の為、差し当ってはクラシック三冠を狙う」
「冠を戴かない皇帝など存在しませんからね、確かに三冠は必定です。ただ」
「ただ?」
実際のところ、このクラシック三冠を全て勝つことはとてつもなく難しい。
ウマ娘ちゃんにとって最大の誉れであるG1レース、その中でも一生に一度、クラシッククラスでの一年でしか挑戦できない三つのレース。それが『皐月賞』、『日本ダービー』、『菊花賞』だ。
そもそも、重賞に勝てただけでも凄いとされるのが今のトゥインクルシリーズを走るウマ娘ちゃんの実情であり、この所謂エリートが集まる中央トレセン学園のウマ娘ちゃんであってもメイクデビューすら出来ずにここを去っていくことが多い。そんなただでさえ厳しい競争社会において同じように苦難を乗り越えてきた実力のある者達と鎬を削るのだから、レースのグレードが上がるに連れて自ずとその難易度も上がる。クラシック三冠などその典型だ。
三冠全制覇を成し遂げたウマ娘ちゃんが現時点で三人しかいないということからも、それがどれだけの偉業であるかは分かるだろう。
だが、私には分かる。いや、私のようなズルをしなくてもほとんどの者は分かるだろう。
「貴女は、三冠程度では終わらないでしょう。いえ、私が終わらせない」
「ほう?」
「貴女にはシニアクラスでも春三冠、秋三冠を獲ってもらいますから」
彼女はクラシック三冠を確実に獲る。
だが、その程度で終わる器ではない。だからこそ、私は彼女の担当として彼女を中途半端なところで終わらせる訳にはいかないのだ。
それに、恐れ多くも彼女には私の夢を託してしまったし。恐れ多過ぎるぅぅ……!!
「ふふふ。君は本当に予想できないね、トレーナー君。でも、君がそう言うのなら、是非とも私を導いてくれ」
「勿論、最高の指導者になるその時まで、リードしますよ」
私の全てに変えても。
「指導者……リーダー、リード……ふ、ふふふ」
「?」
あれ、なんか変なこと言ったかな。
……あ、え。もしかして、強気過ぎた!? そんなに頑張らなくても良いとか!? 一人舞い上がってたら恥ずかし過ぎる……! でも、皇帝の微笑みふつくしい……推し。
「ならば私もひとつ」
そう言うと彼女は立ち上がり、私に手を差し伸べた。
ひぇっ、このアングル、決まり過ぎているぅ……!
「これから忙しくなる。その前に、コーヒーでも如何かな?」
「コーヒーですか、良いですね」
「ああ、序と言ってはなんだが仔細な擦り合わせでもしようじゃないか」
確かにこれから忙しくなる。向かい合ってコーヒーを楽しみながら談笑なんてことは時間的に難しくなるだろう。
で、でもとてつもなく分不相応な気がしてならない……! こんな私めがウマ娘ちゃんとコーヒータイムなんて共にして良いというのか……!!
「ただし熱が入り過ぎて、こう、ヒートしないようにね」
「……?」
「……」
「……」
……コーヒーを飲みながら……こう、ヒートしないように……あ。
今、私は完全に理解した。
ドヤ顔シンボリルドルフが今この世において最も尊いということを!
……後、彼女の駄洒落はまだまだ発展途上だということも。
「ふふ、まだまだですねシンボリルドルフ」
「うーん、無理矢理すぎたか……」
こうして、私達の旅路はどこか締まらないながらも幕を開けるのであった。
熟語はともかく、駄洒落とかユーモアセンス皆無なので考えられないんですけど。
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