『超ロリコンマッチ!!アイデンティティ!ギバラアゴ!』
そう合成音が鳴り響いた途端――重苦しい鐘の音が地響きのようにその場を揺らす。
剣持刀也の背後に大きなアンティークに施された時計の盤面が映し出された瞬間、さっきまで、街中に居るはずだったのに気づけば辺り一面、暗闇に包まれうっすらとしかし無秩序に乱立された城壁の上に気づいたら立って――遥か天に聳え立つその時計盤を見上げていた――
それは時間にして、体感僅か5秒――故に、判断が決断が、意識が状況整理が何もかも全てが遅れ――間に合わなかった。
『[[rb:ロリロリローリ > 幼女こそ]]・[[rb:ロリローリ > 至高]]』
次の瞬間、時計盤を割って飛び降ってきたのは剣持刀也で――その突きの型では一撃必中の必殺コンボ――
虹色に光る刀が二人に到達するまで僅かコンマ2秒。
――避けられッ!? その瞬間、声さえも出せず瞬く間の内にその衝撃波が沸き、白煙が立ち上る。
『[[rb:我にじさんじぞぉ!? > シンデレラ・インパクト]]』
その声とともに、剣持は高らかに笑った――
『ハッ!勝った!!どうだ!?これでお前の垢BANは免れまいッ!!』
――そう高らかに勝利の宣言を上げる……がその時だった。
「それはどうかな」ふと、その声がどこかで響いた――
『ガッシャーン!!セット!スロット2!『[[rb:無敵アーマー².exe > ムテキアーマツー.エグゼ]]』』
突如としてその電子音声が鳴り響く……それも剣持の足元からで――一瞬にして、彼の表情が一変し、早くもその声から不安の感情がにじみ出る――
「そんなッ!?有り得ない!?こんな事ッ」
「有り得るんだよなあ――それが!!」
ぐらりと、剣持が立っていた――その時まで、剣持が地上だと思って疑わなかった“それ”が揺らぎ、そして白煙が晴れた瞬間にその正体が露わになる――
それは剣持刀也にとって、あってはならない光景で――それは絶対と言う信頼と自信が崩落する――今までの常識が全てがひっくり返るほどの衝撃を覚えたのだった。
信じられない“それ”は、仁王立ちで“それ”を受け止め――
聞いたことも無い“それ”は、普通なら死ぬ必殺必中を喰らって尚立っていて――
そして、それをやってのけたのは、紛れもなく蜜柑猫という新人で――
「――ムテキシリーズ……どうしてお前がそれを!!」
「知らねえッ!!剣持刀也!!お前をッ今!!叩きののめしてやるよお!!」
「おお!?やってみろよお!!新人がよお!!」
一言同士の罵り合い――直後、『斬撃』と『殴打』が同時に交わされ、お互い距離を取る――
「間に合ってよかった――」
そう、蜜柑の影から出てきたFamiliarに、剣持刀也は早くも状況を飲み込みながらも悪態をついた。
「この一瞬で《デミ-アカウント》を差し込んだか――なるほどお前の差し金か……使い魔がよおしゃしゃり出てくるなよ!」
『申し訳ないけど――ここからはボク達のターンだ』
瞬間、『ガシャン!ガッシャーン!!』とベルトを鳴らす――『ボクの必殺技だよ――ありがたって受け止めな』
瞬間、舞台は一気にメルヘンな景色へと一変し――彼は高らかに飛びながらその電子音と供に、彼と彼の間には瞬く間に七枚の透き通った、映像の流れる『配信画面』が重なる。
『コピー!ココココココココピー!たまき!』
――剣持と彼の距離は目測わずか10メートル――その間にフォログラムとして現れた七枚の透明感のある『×1』と表記された液晶で、剣持に近づくほどその表記は増え――「7!ダメージアタック」そう呟くとを親の顔よりも見たあのキックを繰り出した――
「くらえ!![[rb:千人万能万面美人 > マルチ・スレッド・フォーリア]]」
その破壊力は何かを語るよりも、その目で見た方が早かったし的確でもあって――
えぐすぎだろ――そうつぶやいた蜜柑が見た光景は、まるで月のクレーターを彷彿させるほどに、地を深くまで抉るその殺傷力だった。
クレーターの底は立ち上る煙で覆われ見えず、勝負の決着が未だわからない――その時だった。
「――コピーシリーズで、犬山たまきのチャンネル登録者数を利用し、64万の5040倍ダメージ、見事なコンボだ……」
と、聞こえたのは剣持刀也の声だったが――
「対して僕のチャンネル登録者数は約36万……油断した……マジで死ぬかと思った」
「ふーん、これでもやっぱり効かないか……」
煙が風に煽られ、晴れると――
二人の姿が現れる……しかし、見た感じ一人は軽度の負傷を負って、もう一方は軽度の負傷“しか”負っていないのを視認すると、途端に愕然とする――「ここまでやってもダメなのか……」辺り一面をここまで破壊させる威力を放ったのにも関わらず、両者とも軽度の負傷でしか済んでいないのを見て蜜柑は戦慄し、声すらも出ず。その仮面の下の表情は固まっていた――
『あなたの力じゃ、いくら掛けようとも僕に敵いませんよ――1個人が世界に敵うわけがないでしょう、“塵も積もれば山となる”“三人寄れば文殊の知恵”……こちとら国内1、2位を争う企業V『にじさんじ』の一人……総ライバーのチャンネル登録者数に比べれば、あなたの力など、遠く及ばないんですよ』
ふと振るった刀が、まるで手に取った砂を宙で撒いたときのように――風に任せて宙に消える――
「まあそうは言っても、ある程度はダメージが入ったみたいですね――奇跡的なのか、それとも計算された出来事なのか――まあ勿論後者なのは知っていますが……できれば前者だと思いたいんですがね……」
「――ボクがただ、ヤケクソに技を放つと思うのかい?」
その煽るような声に彼は、舌打ちをする。
「――小賢しいやつがよお」
「誉め言葉だね――」
瞬間――剣持刀也は新たな刀を発現させると――「最終決戦といこうじゃないですか――」そう威勢よく放った時だった。
それは彼にとっても、また彼にとっても予想外で――
それは勢いに任せて飛び込み、弱者と呼ぶには破天荒で――
その姿は暴虐そのもので――
その実力と中身の供わない、無知で無鉄砲で――無謀さに、二人して『マトモじゃない』と心の中でその底の、正体の見えないに蜜柑と言う男に恐怖する。
それは、単に行動が予測できないからではない――普通なら有り得ない滲み出る強さが本来なら感じないはずの不気味さが――“その男から漂う底無しの『覇気』が尋常じゃないから”で――
それまで音も立てず、まるで真空の中を飛ぶようにそれはやってきて。
そして、物凄い衝撃音を立てて、いきなり剣持刀也――彼の目の前へと落下し、そして唸るように、その低い声を剣持へと発す。
『剣持ぃ……お前ォ……ぶっ潰してやっからよぉ――』
その声はまるで、獲物を狩る虎のように静かに、熊のような畏怖を孕んで、獣のような生々しい牙を剥かれているような恐怖のような不安のような奇妙のような『不気味』さに、ただただ場面は硬直し、一瞬がとてつもなく長く伸びる――
『俺もよぉ……混ぜてくれや――』