モンハンヘタレプレイあるあるだと思っていただけると……わ、私だけじゃないよね。みんな同じようなことしてるはず。
モンハン2から参入したドヘタプレーヤーでした。かつ初めての共闘ゲーム。
そして本格アクションゲーにおいては「うちの主人公かっこわるい」がデフォの腕前です。
ハイスペックハンターなんて天上人はポッケ村に存在しません。
以上が前提です。よろしくお願いします。
01~05
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01.私の話
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振り下ろした双剣は、硬い皮膚に弾かれて手の中で跳ねた。反動でたたらを踏む。その上急に勢いを増した吹雪に視界を奪われて、口の中に進入した雪に咽喉を詰まらせて、おまけに風の音に聴覚までもを詰まらせられた。
やばい。思ったときには遅かった。豪腕が狭い視界を埋め尽くす。とっさに武器を顔の前でクロスさせて、体勢を低くして後ろに飛んだ。
鋭い爪の先が刃を掠る。それだけでも火花が散るほどの衝撃だった。あぶなかった、と刹那安堵した私の身体は。
「う、うわわわ」
足を着けるべき場に地面がないことを知った。
「ちくしょおおおおおおおおおおおおおおお……!」
後は真っ逆さま。
ニュートンとかいうどこぞの学者は、どうして慣性の法則なんてものを見つけちまったんだ。名前を付けて意識するから、物はその法則になす術もなく従うことになるんだろう。物は重力を知って落下するのだと、知らなければ足掻いて足掻いて、もしかしたら空をも飛べるかもしれないのに。
「そう思うだろう!ナタリー!?」
「知らないニャー」
テーブルにジョッキを叩き付ける。無機物を虐待しながら主張した私に返ってきたのは、無情にもネコの残酷な聞き流しだった。何てネコだ、偉大なる雇い主さまに対して。
「大体、どうしてティガレックスに挑みかかるのニャ。いらない勇気は単なる無謀ニャ」
よもやネコ風情に諭されよう日が来るとは思わなかった。随分偉そうだよなお前。正論なのがまた悔しくて、顔を逸らしてビールを呷る。
正直、あの高さから落ちて生きていたのは奇跡だったと思う。
人間って意外と丈夫なものだ。打ち身は今現在も全身を苛んでいるものの、骨折裂傷その他諸々、動くのに困るほどの怪我は一切ない。どんだけ悪運強いんだ。
「依頼は達成したのかニャ?」
「うん。雪見草は全部取り終わってたし、アイルーにキャンプまで運んで貰ってすぐ帰ってきた」
ふうん、と気のない相槌を返して、我が家のシェフは肉焼き作業に戻る。焦がすなよ、命からがら持って帰ってきたポポの肉なんだから。憮然として僅かに焦げたつまみを口に放り込んだ。
ここらで自己紹介しておくと、私はカグラ。今年20を数える、ピチピチを半歩譲った年頃の女だ。
モンスターハンターになって数日。まだまだひよっこです。村長に「キノコの勇者」とかいう珍妙不可思議な称号を付けられた。正直殺したい。ぶっちゃけ早々にモンスターハンター止めたい。
モンスターハンターってのはその名の通りモンスターを狩猟することで生計を立てる職業だ。
モンスターから取れる材料が必要だから狩ってきてくれ。或いは近所に物騒なのがいて迷惑だから倒してきてくれ。世の中はそういう依頼で溢れている。
逆に言えば、モンスターハンターがいなければ必要な素材が手に入らないし、物騒は物騒なままほったらかしだ。なので一家に一台、じゃなくて、一つの村に一人はハンターが必要になる。
勿論ここ、北の雪山の小さなポッケ村も例外ではなく、ハンターはいた──いたのだ。この間までは。
そろそろシルバーと呼ばれて相応しくなるほどのおっさんだった。豊かな顎鬚、反面きらめく無防備な頭頂部。体育会系の暑苦しいおっさんは、こんな片田舎には勿体ないくらいの結構な腕前の持ち主だった。手解きを受けてボッコボコにされた私が言うんだから間違いない。
けれど彼はあくまで人だった。寄る年波には打ち勝てず、普段は楽勝で狩ってくるフルフル相手に気張りすぎたらしい。ギックリ腰で動けなくなったそうだ。噂だが。本人がショックの余り部屋に引き篭もって出てこなくなったから、事実はわからない。多分真実だろう。
そうしてポッケ村の守護者はいなくなった。おっさんに頼りっぱなしだった田舎には、胸を張って後釜に立候補する者もおらず。
まあつまり私は、人柱にまつり上げられたわけだ。中途半端におっさんの訓練を受けていたせいで。
雇えよ!誰かを!世の中には素っ裸で古龍狩りに行って勝利を収める変態もいるんだから!
「でもそのお陰でボクは職にありつけたんだニャー」
「肉球と肉球を合わせて余すことなく感謝の意を示せ」
はーあ、と盛大に溜息を吐いてテーブルに突っ伏した。雪と反対色のざんばらな髪が視界を埋め尽くす。
──そういえば新しい兜受け取って来なきゃ。
無意識の思考は意外と現状に適応していたのだと気付いて、真剣に絶望した。
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02.初めての小タル爆弾
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小タル爆弾とかいう物を買ってみた。
行商のばっちゃんが半額セールをやってたもんでうっかりした。
衝動買いってのは良くない。いつの間にか金はなくなるし、家の中がいらない物で一杯になるからだ。ただでさえ金は少ないし家は広くないのに。
しかしこれってどうやって使えばいいんだろう。爆弾ってんだから、爆発するわけで。置けばいいのかな。
首を傾げてまじまじと観察する。ポポあっち行ってろ。地響きが煩いから。
小、というだけあって小さい。小さいが、わざわざモンスター狩りのためにいくつも持ち歩くのが不便なサイズではある。
おっちゃんは4個とか5個とか持ってってたけど、動き難くはなかったんだろうか。こんなん持ってたら怖くて火吹くようなのとは戦えないし。
軽く投げてみる。意外と軽いので力はいらない。1メートルほど宙を舞って、手の中に帰って来た。
「火点けるところ、ないんだよね……」
あっても着火できる物持ってないけど。
帰ったら訓練所のおっさんにでも使い方聞いてみよう。とりあえず今日の目的はドスギアノス狩りで、アイテム使用訓練じゃない。
ようし、と己に気合を入れて、小タル爆弾を置いて立ち上がる。
持ってったら邪魔だし置いていこう、と、思った──んだけども。
あれ、何かジジジとか音がする。例えるなら火種が縄を焼いていくような。
音は足元から聞こえて、下を向いた。今まで座っていた場所だから怪しい物は何もない。
地面と、そこに生えた草と、置いた小タル爆弾が……爆弾?
「え」
それ以上何を疑問に思うこともできず、私は衝撃に飲み込まれた。
爆弾ってんだから爆発するわけだが、まさか置いただけで爆発するとは思わなかった。
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03.初めての大タル爆弾
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大タル爆弾なる物を作ってみた。そんなモンを、作ってみた、と作れる自分は凄いと思う。もうちょっと改良して、大タル爆弾Gなる物にしてみた。
小タルのときに物凄くびっくりさせられたので、今回はちょっと慎重に扱いたい。びっくりさせられたで済む自分もやっぱり結構凄いと思う。
「あれー?」
自分で作ったんだから導火線付ければ良かった。思ったときにはもう完成してたんだから仕様がない。
えっちらおっちら重たいモン持ってドスファンゴのところまでやってきて、早速置いて距離を取ってみたのだけれど。
「何で爆発しないんだろ、おっかしいな」
突進してきた大物ファンゴを慌てて回避する。双剣はガードできないのが困る。あの突進を果たして盾ごときで阻めるのかどうかは解明したくもない謎だが。
いいさ、逃げるのは得意だ。ネコの逃走術なんかなくたって、例えティガレックスからだって見事逃げ遂せてやるさ。
牙をぶん回し始めた猪を放って、仕掛けた爆弾に走り寄る。
前回の小物とは違って静寂を共に鎮座するだけだった。恐る恐るもう一度持ち上げて置いてみても、全く反応なし。
もしかしたらちょっと力を入れて置かないといけないのかもしれないけれど、こんがりアフロになりかけたトラウマがあるだけあって、荒っぽく扱うような真似はできない。しかし大体重いんだから、置くだけでもそれなりに重量はかかるはずだし。
ちょっとした自信作の不発があんまり不満だったから、首を捻る私は背後で向きを変える大猪に気付かなかった。
ようやく気付いたのは吹雪が途絶えた瞬間で、後ろを振り返ったときにはもう、マジでKISSする5秒前の距離に奴は接近していて。
それでも逃げるのはやっぱり得意だった。柔らかな雪の上を転がって、まさしく猪突猛進の勢いで突っ込んできた巨体を皮切り避ける。
避けたんだけど。
「え、いや、うそ」
ご立派な象徴──って言うと何かいかがわしい物にも聞こえる──が大タルを貫いた刹那、閃光が目を焼くのをほんの少しだけ知覚できた。
後はまあ、前と同じですよ。爆音が次いで、耳を殺して、大猪をぶっ飛ばして。
ついでに私もぶっ飛ばされて。
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04.虫と私
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世の中には太公望って人がいたらしい。いたらしいけれど、私は「釣りがどうのって人だよね」くらいのことしか知らないので、多分釣り名人か何かだったんだと思う。
「……釣れなーい」
あまりの引きのなさに竿を上げた。小さなカエルが助かったとばかりにゲコッと鳴く。いいじゃない、お前水の中でも呼吸できるんだろ?
水の中を自分の影が映らないように覗き込んでみると、悔しいことに魚はいない訳ではなくて、むしろ結構な量が悠々と身をくねらせていた。憎たらしい。一匹くらい引っ掛かってくれてもいいじゃないか。
癖になった溜息を飲み込んで、また釣竿を振る。ポチャンと水を跳ねさせて水没していくカエルを見守った。
もしかしてこいつが動くから掛からないのかな。いっそ弱らせてやったり殺してやったりしたら釣れるのかな。
しゃがみ込んで竿を支えるのも飽きてきた。お腹も空いてきたし、そろそろ一息入れてこんがり肉でも食べようか。
眠気すら覚えてきた私に影が被さった。ブブブとか音も聞こえた。
何だろうと振り向く前に。
「うぐっ」
肩口に注射針よりぶっとい針を食らって倒れ込む。
あ、竿落とした。ちょ、痺れてきた。これはアレか、ランゴスタかてめぇ。
渾身の力を振り絞って身を起こし剣を構えたときには既に遠方遥かに飛び去っていて、ちくしょう、空を自由に飛びたいなあ。
仕方なしに武器を仕舞い、また竿を手に取る。カエルは元気に泳ぎ回っていた。
まだちょっと痺れてる。麻痺に効く薬ってそういえばないよね。回復薬でも効くのかな。バックパックをごそごそと漁る。
と。
「わーっ、た、」
今度は腰に衝撃を食らった。再度取り落とした竿にもし九十九神が宿っていたら、私はきっと呪い殺される。
「てめこらカンタロスー!」
飛び跳ねて逃げる甲殻が、腰の痛さに負けて追えない。涙目で蹲るこの姿を見れば、もしかしたら九十九神も同情して祝福をくれるだろうか。
もういい。帰ろう。腕のせいじゃない、カエルのせいだよ、釣れないのは。
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05.無知の特攻
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たまにはおばばこと村長の依頼ばっかじゃなく、集会所のヤツでもいいだろう。
思い立って酒臭い建物に乗り込んだのが間違いだった。
「クエストクエスートー。ん、コレなんか良さそうかな、名前的に弱そう。すんませーん、手続きお願いしまーす」
「はーい。じゃあコレにサインして。はい、よろしくね。いってらっしゃい」
お姉さんもさ、もう少し何か忠告とかしてくれてもよかったと思うんだ。だって、私が最近やっとイャンクック相手に辛勝をおさめたばっかりのヒヨっ子だって、知ってたろ。ババコンガにフルボッコされて半泣きで帰ってきたとき笑って見てたろ?
止めてくれたら、これはなかったと思うんだ。
「う、わー、わ!」
もう叫ぶしかできない。迸る電撃ブレスが僅かに皮膚を焼いて過ぎ行くのに安堵すらできない。その間もくれず、巨体は私に体当たりを仕掛けてくるからだ。いいんだ、そんな熱烈なルパンダイブは見たくないんだよ。
横っ飛びに避けて出来の悪い紙みたいになることだけは免れたが、その不気味な顔はすぐにこちらを向いて、また泣きそうになった。
これでも私は結構頑張ったのだ。素材が剥ぎ取れないからまだそんなに強くなくて、切れ味も悪いクックツインズなんぞで。硬い足に何度も刃を突き立てて、機会があれば顔面に乱舞を叩ッ込んだりもした。
そしたら、怒った。
もうそれからは地獄しか待ち受けてなかった。あっちへ逃げれば電撃ブレス。こっちへ逃げれば発電しつつ体当たり。一回以上ずつ食らって痛過ぎる目を見たので、もう二度と当たりたくない。
どうしてこんな凶悪な奴が、フルフルなんつう間の抜けた名前を付けられてるんだ!名前だけ見ればもっとこう、キュートでか弱そうなのを想像するだろうが!
「ひっ」
ついに回復薬が尽きた。砥石も尽きた。ついでにホットドリンクも尽きた。精神的にも物理的にも蓄積されたダメージで目の前が真っ暗になって。
……打倒、フルフル。できることならもう二度と見たくないけど。