狩人になった私の話。   作:ぽんぱたあすか

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09~12

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09.シュラちゃんと一緒(シュラ設定)

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 今日もいい天気だティガレックスに狩られに行こう。

 別にマゾの気があるんじゃない。ただちょっと、フルフルに殺されるのに飽きてきただけだ。しばらく電気という電気を視界に収めたくない。

 こんな晴れた日には風花に塗れながら雪見草集めに勤しんで散るのが相応しいだろう。

 思い立ったら即実行。ろくに物も持たず家を出て、村長に会いに広場へ走る。

 年がら年中転寝している小さな竜人をいつも通り目にして、ふと。

 「……あれ」

 村の入り口からキョロキョロと中を見渡す、知った姿を見付けた。

 「シュラちゃん?」

 「あ、カグラちゃん!」

 あの髪型作るのに最短何分かかるんだろう。一度計測してみたい。根元が団子状になった赤紫色のツインテールを風に靡かせて駆けてくるのは我が幼馴染だった。私の2歳上には到底見えない。背に負った太刀が小煩く揺れる。

 「お帰り。どこ行ってたの、ずっといなかったけど」

 目の前で立ち止まって優しげな顔立ちでほっこりと笑う様子に、相変わらずうっかり心が温まりそうになった。

 「ちょっと新人ハンターらしく旅に出てたの。カグラちゃんもハンターになったって聞いたから、どんな調子かなって思って」

 騙されるな、私。優しいのは顔だけだ。経験を生かせ。学習能力を働かせろ!笑い返しながら自分に言い聞かせた。

 どうせハンターらしくつっても自分でモンスター倒したわけじゃなく、誰かの獲物をちゃっかり共同で剥ぎ取りしてたくらいなモンで、自分じゃ全くと言っていいほど倒しちゃいないんだろう。

 「すごーい。さすが幼馴染!よくわかったね」

 嬉しくない。

 

 生まれたときからご近所さんの付き合いがあったシュラは、物心付いたときからそうだった。

 よく言えば要領がいいんだけれど、あえて私は悪く言おう。ちゃっかりしてるのだ。寄生虫よろしく人の手柄を共用する妹じゃないくせに妹気質。いや、まあ奪い取らないだけマシかもしれないけど

 お前年上だろと何度文句を付けたか、数えたら那由他を超えるはずだ。1の後ろに0が60個も付属するんだぞ。そりゃもう無限だろ。今からじゃ多分遅すぎるだろうけど、私のためにどうにか改めるがいい。

 ていうか。

 「寄生虫してた割に、装備が貧弱じゃない」

 一歩引いて、全身を視姦する勢いで眺めなおす。遠慮?こいつ相手にその辞書は使用しないから認識を改めろ。

 最高ランクでギアノス装備、一部は既製品ときたもんだ。私でも既にザザミやブランゴ装備を部分とは言え纏ってるのに。だからといってその分の材料を武器に使っているのかと思いきや、大骨はないだろう。

 私の20年間の観察と経験から察するに、寄生虫すらめんどくさくて宿屋でひたすら惰眠を貪ってたりしてたに違いない。

 「……カグラちゃん、そういうとこムカツクよね」

 「私はいつでもお前にムカついてるよ」

 シュラのくせにこの程度で気分を害したらしい。頬を膨らませ目を吊り上げて……お前22年生きてて未だに自分が垂れ目だと理解できてないのか。睨み付けているつもりのようだが、生憎さっぱり怖くないんだ。

 バカだのアホだのボキャブラリー貧困にひとしきり罵って──シュラほどじゃないよと言い返したら益々ボキャブラリー貧困にヒートアップした──僅かに不満そうではあるが、一応満足したようだった。似合わない仏頂面で鼻を鳴らして、一転満面の笑顔に変わる。

 ……ああ、ぞっとしない、ぞっとしないぞ。シュラが笑顔でいるときに、私に幸運の女神が視線を寄越した例がない。

 「ねえ、お願いがあるんだけど」

 嫌だよ。心から嫌だ。頼みがあるんなら相応しい内面でお願いしてくれ。そうしたら耳に入れるだけ入れてやらんこともない。

 「私ね、いい防具と、ダークサイスが欲しいの」

 全身で拒絶を示す私の哀れな姿は、だがしかし、彼女には届かなかったらしかった。無情にも躊躇うことなく言葉を小さな唇から飛び出させた。発射と言ってもいい。なんせ私のガラスのハートに確かにヒビが入るほどの威力を持って向かってきたのだから。

 「勿論、手伝ってくれるよね。私の幼馴染?」

 言うまでもなく、それはお願いという名の強制だった。

 

 早くまた旅立ってくれないかな。

 

 

 

 

 

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10.アマゾネスと一緒(アマゾネス設定)

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 上級ハンターが同じく上級ハンターとつるんで大物を狩猟に行くように、私にもそういう仲間がいる。上級には上級、ということで、つまり私の仲間は歯に衣被せて言っても初心者なんだけど。

 しかし初心者の集いとて舐めて貰っては困るというもんだ。

 塵も積もれば山となる。今馬鹿にした奴、ちょっとそこ座れ。アリだって1万匹くらい群れれば、人に集りまくって発狂死に追い込むくらいできるだろう。一応これでも、一人ではフルボッコにされるだけのレウスとレイアも皆で攻略してんだぞ。ちまたではヘタレアマゾネスとか言われてる私らだぜ。

 

 という訳で週に一回くらいのペースで顔を合わすそいつらと、今日も今日とて週に一度の大物狩りに来た。

 集団はいい。数の暴力って素晴らしいと素直に思う。

 沼地の洞窟の奥で佇む一匹の小さなフルフルを見付けた。あれだけ小さいと体力も少なそうだけどどうなんだろ。こないだ私を置いて出掛けてきた仲間三人の言によれば、オババのクエストよか断然強いとか聞いたけど。

 大きな狩猟笛を背負った少女がポプーと武器に息を吹き入れる。

 仲間その一、彼女の名前はアザミちゃん。間の抜けた音なのに、何でか知らないけどふつふつと私の中に闘志が漲ってきた。脳内麻薬操る音色ってちょっと怖いよね。

 「いっくよー!」

 「あ、ちょ、アザミちゃ、待」

 った方がいいよ、と続くはずだった私の貴重な言語は、あう、と響いた可憐な悲鳴の前に散った。慌てて生命の粉塵を振り掛けると、ありがとー、とすぐに立ち上がる。

 あのさ、アザミちゃん、大人しそうな顔してどうしてそんなに特攻娘なの。尻尾アタック食らって吹っ飛んだ直後なんだから、様子見もナシで再突撃ってのはないだろ、普通。

 予想に違わずもっかい転がされて帰ってきた。10秒持たずにって考え物だと思う。そんでまた諦めずに特攻ってね、そんなに学習能力ないとババコンガアザミって呼ぶよ。

 「ひどい!女の子にババコンガはないよね……!」

 「やーい、アザミコンガー」

 「ザザミコンガー」

 仲間その二とその三こと、ナスカとクラインが即座に罵った。私の仲間兼友人であるが故とは死んでも思いたくないが、いい性格をしている。

 わーわーと騒ぐ私たちに苛立つ心が薄気味悪い飛竜の中にも存在するのか。明確な殺意を伴って口から迸った電撃を、めいめい引き攣った声と共に間一髪で回避した。ちょっとでも掠ったらしばらく地面とお友達になれるメルヘンな攻撃だ。下手すると戻って来れなくなるから絶対食らいたくない。

 「援護するので、火力お願いしますねー」

 「右に同じ。頑張って死んできて」

 無表情に言葉だけ柔らかく発して弓を構えるナスカと、ビジュアル系の綺麗な顔立ちを涼しげに綻ばせてジョークを飛ばし(ジョークだよね?)ライトボウガンに弾を込めるクライン。こくんと頷いてこちらも討伐に向かう。

 早々にペイントボールを三連続で外して涙目になった私を尻目に、一旦笛を仕舞ったアザミが見事な投擲技術を披露した。白い表皮にべったりと桃色が付着する。ちくしょう、私だってあと一、二回投げれば当てられたさ。

 顔に似合わない打撃武器を振り回す少女とは反対に、チキンレウスよりチキンという、全く持って不名誉な称号を頂いた私はうろうろと隙を待つ。ソロ狩りの癖を集団のときだけ抜けってのは無理な話だ。着実に、確実に。だからね、別にチキンってわけじゃないんだよ。勘違いしないように。

 「おぅふッ」

 「わぁ」

 「あ、ごめん」

 「ごめんなさーい」

 電撃ブレスの終わりを突いて、離脱しようとした私と追撃しようとしたアザミを衝撃が襲った。確認する必要もなく後衛の流れ弾だ。

 いてえ、と思う間もなく、フルフルの無情な一撃がこちらを襲う。弾き飛ばされて転がったこの落とし前、どうやって付けさせてやろう。

 ビリビリ痺れる身体を無理矢理起こしてあちらを睨んだ。幸いグロ生物からの追撃はなく、代わりに煩い飛び道具に狙いを定めて飛び掛っていた。ざまあと思わんでもない。

 「わわ、危ないですね」

 ナスカはどちらかと言うと私の戦い方に似ている。ヒット&アウェーと言おうか。まあ、私は前衛故にチキンと呼ばれ、彼女は後衛故に卑怯者と呼ばれる違いはあるんだけど。

 やはり無表情のまま声だけ焦って即退避した少女と違い。

 「ええいこの!」

 クラインはアザミを後衛にするとあんな感じなんだろう。多分もっとタチが悪い。突進してきたフルフルから逃げようともしない。

 後衛って言葉の意味はおわかり?後ろって文字が付いてんだろ。そんな近距離でガンガン撃ってんじゃねえよ。防具弱いんだぞわかってんのか。お前今すぐ近接武器に切り替えろ。涼しげな容姿で何でそんな熱血なんだ。

 近接ガンナーに向けて開いた私の口から飛び出た言葉は、だがしかしそんなお小言では済まなかった。

 アザミとナスカが同時に、あ、と声を漏らし。

 「クライン後ろー!」

 もう一匹のフルフルが、小さな体躯を躍らせて。

 「こなくそ!」

 ──案の定クラインは避けようともしなかった。

 

 そういや電撃祭りとかってクエストだったよね。そりゃ一匹じゃ祭りになんねえよ。

 全員が全員ボロボロになって命からがら逃げ帰った悲惨な戦果を、いつか覆せる日が来ることを願ってる。いつになるやら知らんけどね。

 

 

 

 

 

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11.アマゾネスと一緒:開戦の音色

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 諸君、私は角笛が好きだ。間の抜けた音色が好きだ。意味もなく左右に振って存在を誇張する動作が好きだ。響き渡った挑発に反応した敵に突進食らって倒れたときなど、思わず痛いのに笑いが止まらない。

 そういうわけで最近、うっかり角笛にはまっている。

 

 本日のクエストは、名前は忘れたけど、とにかくイャンクックが大量に出てくるからひたすら狩れとかいう内容だったと思う。その辺は私が把握してなくても、多分クラインとかナスカとかが覚えてるだろう。アザミには期待してないよ。

 密林を走り回って、まずはイャンクックを見付けることに専念した。

 千里眼の薬は持ってきてない。勿体ないし、本クエ経験者である近接ガンナーもクック一杯いるから大丈夫だよとか言ってたし、勿体ないし。

 浜辺を走って、ついでにきれいな貝殻を懐に収めて──誤解のないように言っておくと、皆同じ場所に這い蹲ってたんだから、別に私がワンマンで採取してたわけじゃない──視界の悪い密林へ。

 生い茂る緑の隙間に目を凝らす。怪鳥の姿はない。

 ちなみにどうでもいい話だけれど至急品ボックスは空だった。故に手元に地図がない。今どこ走ってるのか疑問に思って振り返れば、いつの間にか誰もいなくなっていた。困った。極度の方向音痴な私は一体どうやって帰ればいいんだろう。

 ……よく考えてみると、あんまどうでもいい話じゃないな。どうしよう。

 首を捻りながら洞窟を抜ける。明順応だったか暗順応だったか忘れたが、闇に慣れた私の視界を奪う圧倒的な光量。思わず目を細めて顔を顰めたところ、ふと、何かが上手いこと忌々しい光を遮ってくれたようだった。

 ありがとう、逆光でよく見えぬ何か!

 振り仰いで心から礼を述べた途端、そのシルエットを把握する。

 轟く咆哮。ティガレックスに到底及ばないプレッシャーながら、人間を竦ませるには十分だった。耳を押さえて中腰になる。

 「た、ターゲット見付けたら、まず」

 バックパックを漁って目的の感触を探った。突進してきた巨体を寸でで避ける。手に取ったそれを構えて。

 

 ぽっぽぷー。

 

 吹き終わらない内に、半切れで振り回された尻尾に打ち上げられた。

 「普通はさ、ペイントボールだと思うんだよね」

 「角笛を吹いても、ターゲットロックの合図にはならないんですよ?」

 「せめて距離を置いて安全を確保してから吹くとかないのかい」

 

 いいじゃない、好きなんだから。

 

 

 

 

 

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12.アザミちゃんと一緒:新感覚

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 ガレオス系は嫌いだ。なぜならアイテムが勿体ないから。

 経験あるだろう?音爆弾ミスって無駄に消費したり、当てたと思って近寄ったら尻尾アタック食らって弾かれて、その間にまた逃げられたり。あと顔が怖い。

 ハンターランクを上げるためと思えばこそアザミを巻き込んでドスガレオス狩りクエストを受ける決意をしたわけだが、やっぱりどうにも乗り気になれない。反対にアザミはそう嫌いでもないらしく、背に負った鈍器を暇そうに撫でていた。

 「音爆弾は勿体ないけど、キモ獲って来いって言われるよりずっといいよ?ドスガレは体力少ないし、二人なら大丈夫だって」

 「……たってなあ……うー、大タル爆弾でも持ってってやろうか……」

 「それなら」

 漁っていたアイテムボックスから顔を上げる。人差し指を立てて笑うアザミは小動物みたいで可愛い。

 ちょっとした癒しを体験しながら先を促すと、今まで私が手を付けたこともなかったモノを押し付けてみせた。

 「使ったことないなー。サスケがよくくれるんだけど、当たんなくね?」

 「ドスガレは背高いから」

 足の間に置けばいいよ、という忠言に従って、初めて使うソレを尻尾を避けながら設置する。小タル爆弾のように置くだけでいいらしい。

 ドン、と衝撃を与えて地に触れさせた、途端。

 両手の間を抜けて、顎を掠ってソレは飛び上がった。

 目を瞠る前に頭上で響く轟音、届く衝撃。ターゲットの悲鳴が耳をつんざく。唖然として、試しにもう一個置いてみて。

 同上。

 「……おお……」

 これは面白い、これは面白いぞ。怒り出したターゲットから一旦離れてクーラードリンクを飲みなおし、またソレを両手に抱える。

 「わはは、怒った、怒ったー!」

 「足の間で二回も爆発起こされたらそりゃ怒るよねー」

 あ、スンマセン、調子こきました。

 砂ビームに全身を打ち付けられながら、笑い半分反射で謝った。ごめんなさいごめんなさいこっち見んな。

 そしてまた、置く。

 

 打ち上げ爆弾超面白い。

 

 

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