狩人になった私の話。   作:ぽんぱたあすか

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21.みんなと一緒:ユウキ登場

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 幼馴染バージョン2こと、イケメンだけど中身が大変残念なユウキが双剣を振り回すのを遠巻きに見守る。見守りついでに放った矢がフェイスメットを削ったらしく悲鳴を上げたが、別にお前に怪我はないんだろ。黙って乱舞してろよ。

 

 カグラより数シーズン遅れてハンターを始めたこの男は、見る限り非常に順調なペースで腕を上げているようだった。

 立ち回りに関しては、多分私より美味いんじゃなかろうか。腹立たしい。あんまり腹立たしいのでありったけの夢と毒矢を背後から浴びせかけておこうと思う。ええい、黙りおろう。どうせアメフト装備で阻まれてんだから被害はないだろ。心は折れれば良い。

 大体、どいつもこいつも成長が早すぎるのだ。雨後のタケノコか何かか。すくすく育ちやがって。私がG級に足を引っ掛けるのにどんだけ掛かったと。誠にもって腹立たしい。

 

 あんまり腹立たしいのでカクサンデメキンと大タル爆弾を意味もなく調合する。重たいのですぐに床に置いた。ついでに爆発すると危ないので距離を置いた。

 タイミング良くナルガクルガ鬼軍曹が着地したので、隙を逃さず弓を引く。爆炎が黒い毛を焼き焦がし、劈くような悲鳴が響き渡った。野太い悲鳴も聞こえる。ひとしきり暴れた後、崩れ落ちる巨体。3度聞こえた悲鳴。安らかに眠れ。

 ああ疲れた。大体弓でチクチクやってただけだったけど、腹立ち疲れた。

 「……お前よ」

 「おう、ユウキお疲れ」

 さて剥ごうと戦利品を求める私を阻む殺気立った声。幸せタイムを阻害するような不逞な輩は死滅するのが世界に相応しい。しかし、見れば何故だか黒焦げになった幼馴染だったので、大いなる慈悲により見逃すことにした。

 「どうしたの、そんな日焼けして」

 「さっきから邪魔したいのか俺を殺したいのかどっちだ!?」

 「そんな」

 突然ヒートアップしたユウキは躁うつ病か何かに違いない。可哀相だったので、多少声音を優しくして。

 「別にユウキを狙ったわけじゃなくて、ナルガクルガのついでにユウキが滅んでくれれば嬉しいな、と」

 「お前もう斬って良いか!」

 馬鹿じゃないのか。良いわけない。

 太陽光を反射する刃から身を逃して黒の忍者にナイフを突き立てた。いや、上位素材とかいらないんで。

 切り落とした小さな尻尾はどこ行ったかな。きょろきょろ見回していると、ユウキが大きな溜息を吐いて対の剣を鞘に戻した。何だ、ようやく空気を切り刻んでもウサは晴れないと気付いたのか。

 「ユウキさ、ピアス取った?剣聖欲しがってたよね」

 「無理に決まってんだろ。俺はもうコウリュウノツガイ手に入れたからとりあえず満足した!」

 勿論、満足したように自分に暗示を掛けているに過ぎない。

 「コウリュウノツガイ!良い名前だよなあ!」

 「ホモは黙ってろ」

 「俺自身はホモじゃねえよ!」

 どうも昔に回した物語本が悪かったらしい。黄龍の器がどうのこうのという話がいたくツボに入ったらしいこいつは、以来その辺の話に少しでも触れる単語があると途端に血圧が上がって鬱陶しいこと極まりない生物に成り果ててしまった。

 世の中のユウキの知り合いの方々、ほんと申し訳ない。こいつの人格の形成に多大な貢献をしてしまったのは私ですよ。こんな生物を生み出してしまってごめんなさい。

 

 「そういや、カグラ、集会しねぇ?」

 集会?

 「俺の知り合いでハントすんだけど」

 「誰」

 ロクでもなさそうな知り合いなら行かねぇ。

 「先輩と」

 指がいきなり4つ折れた。先輩だらけだなオイ。

 「後輩」

 プラス1人。

 「あと妹」

 「私にアウェイ過ぎる」

 8人中5人が他人って、物凄い他人率である。

 「……まあいいけど」

 「んじゃ、来週な」

 「おう」

 ていうかお前の妹さん、こないだまで平和を過ごす一般人じゃなかったか。どんな心境の変化があったのかは察しかねるが、兄の悪影響のせいじゃないことを祈るばかりだ。こいつんせいだったら責任もってティガレックスに食わせておくから、妹さんは安心して余生を過ごすと良い。

 じゃあなー、と剥ぎの途中だったのにネコに連れ去られていくユウキに手を振り返す。しまった、あいつのせいで尻尾剥ぐの忘れた。

 

 「集会ねえ」

 少なくとも常人じゃないのが2、3人いるんだろうなあ。

 

 

 

 

 

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22.みんなと一緒:人種が違うと思う

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 集会自体は非常に楽しかった。アクシデントといえば、お荷物こと私を連れて行ってなお余りある余裕っぷりにちょっと引いた程度である。そんでお開きの前に教官の下にお邪魔して皆で飲んでたわけだが。

 そっからがちょっと異常だった。

 

 お芋を揚げたお菓子を貪り食いながら、遠くの戦いを双眼鏡で見守る。うわあと呆れにも似た声が出た。

 「なにあれ」

 戦乱の地、闘技場は、狭い。その中に余興とばかりに先程詰め込まれて行った──否、喜び勇んで駆け込んで行ったハンターが、意気揚々と武器を振り回す。

 弾ける火薬、甲殻を削って輝く火花。そして吐き出されて大地を削る火炎。最後のは異常に命中率が低い。

 もう同じ言葉を零すしか自分にできることはないので、自分にできることをした。

 「なにあれ?」

 「参考にならないよね」

 全く参考にならないよね。隣で同じく双眼鏡を当てるユウキの先輩さんが、神を見るような目をしている。つまり遠すぎて勉強する気も起きないってことだ。少し遠くで闘技場を見る他の仲間も似たような感じ。

 ふざけてんのかと言いたくなるような可愛らしい格好の女二人が、楽しそうに飛竜に追っかけられている。何で楽しそうなの?馬鹿なの?そういう根性がないとハンターってやってらんないの?そいつらは多分、手持ちの最強装備をひッ揃えた上で遺書をしたためるべき相手だよ?しかもあの人たち酔ってんの。

 

 外見からして頼もしい男がヘビーボウガンを構えたままチキンレウスを翻弄している。世界は人類に対して不平等だという事実を再確認した。何あの気持ち悪いほどの余裕。全裸でも支障ないだろ、フンドシ一丁で立ち向かうと良いよ。一応言っとくと、そのチキンレウスはこっちを一撃ちょっとで葬り去れる、心弱き猛獣だからな。

 私はフルメイルでも放り込まれた瞬間心が折れるよ。まあ、次の瞬間背骨辺りも折れるけど。

 

 「うむ、全く素晴らしい生徒たちだな!」

 「教官手合わせしてみたら?」

 「私は捕獲専門だ!」

 「捕獲してみたら?」

 「捕獲してどうしろというんだ」

 「参考にならなさすぎて使い道はないよね」

 荒ぶる女性陣の耳元にキラリと輝くピアスが羨ましすぎる。訓練2周したら2個貰えたりしないのかな。そしたら一つ譲って下さい。

 あの人ら、増弾、剣聖のピアスは基本にして必須用具だっつって憚らなかったのがマジ解せぬ。理由アレだぜ。可愛い服着れないだろって言い切ったんだぜ。

 ありえないありえない。仕草は可愛い女の子そのものなのに中身が非常に男らしい彼女たちは、実はニューハーフか何かじゃないかと私は密かに疑っている。

 教官がちらりとこっちを見る。見んな。言いたいことはわかってんだよ。

 「それに引き換え嘆かわしい」

 「巨大生物と狭い檻ん中突っ込まれて正常なままの方が異常なんだよ」

 さっき下位轟龍に突撃された脇腹が超痛い。

 「それにしても1分で死ぬのは酷いと思うんだけどな」

 ユウキうるさい。

 ニヤニヤと寄ってきた幼馴染バージョン2のアメフトルック男を蹴り飛ばしてぶすくれる。

 私は圧倒的優位な立場から弱いものいじめをするのが大得意なんだ。具体的に言うと、G級装備で下位クック先生をぶっとばすのな。

 「それイジメってんだぞ」

 知ってる。

 「しかし、まさかお前の知り合いが、新種のモンスターだったとは」

 「まあ、起源じゃないけど頂点ではあるな」

 ぎゃおおおと断末魔を上げて巨体の片割れが倒れ付す。

 あほらしくなったので双眼鏡を床に叩き付けた。破砕する備品。途端に噴火した教官の口に菓子の残りをぶち込み、うっかり咀嚼したところにアッパーを食らわせて黙らせた。こういう小手先なら得意なんだけどなあ。

 それ人として駄目だと思う、と双眼鏡を覗いたまま呟く双剣馬鹿の幼馴染。やかましい。お前だってどっこいどっこいの駄目人間のくせに。腹立ち紛れに双眼鏡を押し込むと、野太い悲鳴が轟いた。

 丁度金の女王が倒れ付したところだったので、きっとそれは女王の悲鳴だったのだと思う。

 

 

 

 

 

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23.みんなと一緒:隣のアイテムボックス

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 今日も元気だご飯がうまい。他人ちのネコはどうしてこんなに料理がうまいんだろう。うちのネコたち、米とチーズでドリア作ることもできないんだぜ。控えめに言って前衛的な味すぎて倒れ伏したのは1度や2度ではない。

 

 さて、本日はお宅訪問である。単に遊びに来ただけであって、別にネコのあまりの芸術的食物から逃げ出してきたわけじゃない。本当だってば。

 しかし空いた腹にありったけの食材を詰め込んで満足したら眠くなってきた。遊ぶたって結局狩りに出掛けるだけだし──よく考えたらハンターって可哀相なほどワーカホリックだな──もうこのままベッド借りて寝ちまおうか。

 とりあえずのど渇いたからもう一杯飲み物をよこせ。

 「……何かお前のアイテムボックス、ハチミツくさい」

 勝手知ったるアイテムボックス。重いフタを抉じ開けると、ふわりと甘い香りが鼻を擽った。いや、擽るというか、物凄い勢いで進入を果たす。くしゃみ3連発したら耳がパンッていった。

 なんだこれ。奥の方でこぼれてんじゃねえのか。ごそごそとそれなりに整理してある小物の数々を引っ張り出して。

 「ああー、俺、ハチミツ1000個分くらいあるから」

 「使いもしないのにそんなに取り上げてやるんじゃねぇよ!」

 ハチさんが可哀相だろ!1個分=1回復薬グレート調合分と考えると、ハチさんの何十年分の貯蓄を掻っ攫ってきやがったんだこのアホ!

 「も」

 うしばらく取ってくんなよ、と環境に優しい言葉を投げ付けようとした矢先。

 「ひぎゃああああああああああああああああ!?」

 「どしたー?」

 「ななな何か手にぬるっとべちょっと……なんか巻き付いた!」

 物凄い不快極まりない感触がした。これはフルフルに頬擦りされたときのチキン肌感に似ている。

 引き抜いた手がどことなくぬめっていて、顔面から血の気が引いた。

 「ミミズかもなあ。あれも確か1000匹くらいいたはずだし」

 「厳重に管理しとけ!」

 ミミズとか!生身のままアイテムボックスに突っ込んであんのかこの馬鹿!

 そっと重なる荷物をどかしてちゃんと視線を向ける。

 好奇心はネコをも殺す。クック先生も真っ青なチキン肌が立った。

 「ぬぅうんッ!」

 亜光速でフタを締めてカギを掛けて、あらん限りの力を振り絞ってボックスを持ち上げる。

 「あ、おい、俺のアイテムボックスどこ持ってくんだよ!」

 「畑じゃーッ!」

 全部撒いてきてやる、こんな公害ボックス。

 

 

 

 

 

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24.みんなと一緒:隣の武器事情

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 ミミズ800匹くらいを一気に撒いた畑は、やたら土の質が向上した。代わりにやたら気持ち悪くなったので、もう二度とユウキの農場には足を踏み入れないぞと心に決める。

 畑管理係のネコが涙目になって何か捲くし立てていた気もするけれど、全部ユウキのせいだからね。文句はユウキにね。

 残り200匹くらいまで減少したミミズを袋に詰め込ませる間、仕方がないのでミミズの粘液が付着した道具を拭いてやることにした。

 ほんとは死んでもやりたくなかったけど、考えてみたらあのアイテムボックスに管理されていた生命の粉塵とか回復薬とかを飲まされる恐れがあるわけだ。早々に片付けておいた方が我が身のためだと思う。

 しっかりと手袋を装着しなおして、雑巾を固く絞りなおす。

 

 ところで。

 「お前、他の武器どこにしまってんの?」

 蒼穹双刃を磨きつつ、ついでに他の武器も手入れしといてやろうかと親切心を出す優しい私。しかし、その優しさは愚鈍な返事に阻まれた。

 「他の武器?何だそれ」

 片手に握ったミミズが零れ落ちてるから、こっちは見なくて良いよ。

 「何って……弓は辛うじてあったけど、だから、太刀とか」

 「ねぇよ?」

 は?

 周囲に散った武器を見る。見事なまでに2つで1対。執念すら感じられるほど双剣一色。

 「……こんだけ?」

 「そんだけ」

 そういや、こいつが鬼人化してない戦闘って見たことなかったかもしんない。記憶の根を掘り返してみても、精々、弓を片手に大地を転がる姿が走馬灯のごとく儚さで思い出せる程度である。

 マジか。相性とか、そういう。ないのか。

 「…………私、笛でも練習しようかなあ」

 「?」

 俺は助かるけど、と首を傾げるユウキは、もしかしたら凄い奴なのかもしれない。

 

 さて、強走が吹ける笛の情報でも調べに行ってくるか。

 

 

 

 

 

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25.アザミちゃんと一緒:召喚の儀式

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 「出なーい」

 「出ないねー」

 腕に上竜石を抱えて呻く。脇に転がったピッケルが空しい。

 何故出ない、ゲリョスイショウ。狂走エキス欲しさに惨殺しまくった復讐だとでもいうのか。

 

 最近はまったトレジャーハント。ここまで順調にレアモノをゲットレしてきたというのに、沼地の水晶だけがビックリするほど出現しない。これ何周目だオイ。リタマラもいい加減飽きたっつうの。

 もーやだー!飽きたー!

 ワンモア訪れた岩場のコンガを一掃して、剥ぎ取り準備のためガンランスを収納する。やっぱりトレジャーにガンランスは外せないよね。遠足にバナナ持ってくくらいに外せないよ。

 さっくりとナイフを突き立てる。え、何で痺れ生肉が取れるの?相変わらずトレジャーのアイテムって不可解。

 ランポスの体内から取れた回復薬とか物凄く飲みたくないし、アプトロスからこんがり肉とか、すでに焼けてるって斬新過ぎるよね。

 しかしこのお肉どうしようかな。心底いらない。

 仕方がないのでゲリョスイショウの発掘現場付近にそっと放置して。

 「……ん?アザミちゃん、何してんの?」

 「えー?」

 ちょこちょこと寄って来たアザミちゃんが、並べるように肉を置く。生肉の赤みが黄色い痺れ生肉と相まって、非常に警戒色。

 じゃあ、もう一つ手に入れた痺れ生肉は、見栄えが良いようにあっち側に置こうかな。

 「岩壊すよー」

 「はーい」

 ……ううん。やっぱり出ない。もう一回。

 

 「あ、消臭玉ある。お清めしよう、お清め」

 「タル爆あるよー。火を点けろー!」

 「こうなれば人身御供だ!アザミちゃん踊れ!」

 「儀式じゃ!」

 「儀式じゃーッ!」

 

 テンション上がってきた。

 手順も完璧になってきた。

 何度も竜撃砲を撃って、何度も吹っ飛んだ。

 何か目的が儀式の完璧さメインにさえなってきた。

 あれー、本来って何しに来てたんだっけ。

 確か、そうだ、ピッケルを作らないと。

 

 ところで。

 「出なーい」

 「出ないねー」

 何回儀式をすれば、ゲリョス様は満足なさるんだろう。

 

 

 

 

 

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26.回収率パネェ

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 「……引越し?」

 何それ、聞いてない。

 せっせと動き回るネコたちを呆然と見守る。アイテムボックスを引っ繰り返して整理していた愛しのリュウが、不思議そうな顔をして、つぶらな瞳を向けてきた。

 「あれ?村長から聞いてなかったですかニャ?」

 「カグラは馬鹿だから、右から左だったに違いないニャ」

 「えっと、ナタリーは置いて行く荷物扱いで良いんだよね」

 「えへへ、ご主人、そりゃないニャー」

 やかましい。今更見え見えの媚を売ってどうなる評価じゃないと思え。ババコンガのように反省しろ。

 え、いや、ていうか。

 「引越しって」

 何故。

 「最近はこの村にもハンターが増えてきたから、以前のポッケ村みたいにハンターがいなくて困ってるところに配布されるって話だニャ」

 人をチラシみたいに言うんじゃねえよ。

 まあ、確かに最近は新米ハンターも増えたし、そこそこ安定してきている。ワーカホリックの同僚たちと片っ端から狩りまくったことで、保護に乗り出す団体が生まれてくるんじゃないかってくらいに大型モンスターの数は激減した。

 ここんとこはアイロンことウカムルバスみたいな大物が出現することがなくなって、正直物足りなくもある。アザミたちも同様なようで、家で食っちゃ寝する毎日だった。だって、モンスター出なかったら仕事ないし。

 それにしても扱いが杜撰すぎやしないか。仮にも村を救ったハンターに。

 「今度の村も、良いところですニャ」

 「知ってるとこ?」

 「ババ様の行商で通り掛ったことがあるニャ。暑い池が一杯あって、あったかい場所ニャー」

 暑い池?温泉のことだろうか。まさかマグマ地帯ではあるまい。そうだったら噛り付いてでも出てかねェからな。

 「……まあ、雪山から一転、ポッカポカの温泉満喫すんのも良いかもねぇ」

 寒いのは嫌いだ。暑いのも好きじゃないしむしろ暑い方が嫌いだけど。暑いのが良いか寒いのが良いかって言われたら普通が良い。皆そうだと思う。

 ポッケ村はとにかくクソ寒いので、雪山ハントに出かけて身体が温まるまでが大変だった。今度はそういう過酷な場所がないと良いなあと思うんだけど、そう人生上手くはいかないだろうなあ。

 そうだ、丁度良いし、ディーは置いて行こう。出かけている今がチャンスだ。頑張ってポッケ村を護り続けるが良い。今度こそこっち来んなよ。

 「いいや、さっさと片付けて、挨拶周りでも行くか」

 「そうと決まれば、カグラ!これ持つニャ!」

 おい止めろ馬鹿ネコ。ありったけの武器防具を一気持ちできるほど、私はムッキムキじゃねんだよ。押し付けんな!

 「持てねェっつってんだろ、尻尾部位破壊すんぞ!」

 「素材が余ったからって使わないものまでこんなメチャクチャに作成する方が悪いニャ。これ持ってさっさと武器屋行ってくるニャー」

 何でせっせと作り貯めた武器防具を、作成者に見せに行かにゃならんのか。眉間に山を形成して視線を向ける私にナタリーは当然のように言う。

 「そういうのは持ち出し禁止だニャ」

 「はぁ!?」

 解説を求めて、心の安らぎ担当リュウに亜光速で目を向ける。

 「村の保護のために、新米ハンターさんたちに置いてく必要があるんですニャ。新しい武器はあちらで再度貰えるので……その……」

 そんな申し訳なさそうな顔されても、必死こいて集めたコレクションを手放す私の絶望は残念ながら全く払拭されない。

 

 え、何、全部?全部って、全部?全種類集めた双剣も、貴重な宝玉使いまくって漸く一式作り上げた防具も?

 

 「お金もだニャー」

 血の気が引いた。

 視界がブレた。

 眩暈がする。

 がっくりと付いた膝。

 力を失った両手から落ちた至玉たちが近所迷惑な騒音を奏でて床にご挨拶する。

 「な」

 震える声帯が、震える声を吐き出した。

 「納得できるか、そんなモン────ッ!」

 村中からいくつもの異口同音が重なったのは、全くの偶然だった。

 

 よう、お前らも引越しか、ブラック企業の同僚ども。

 

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