狩人になった私の話。   作:ぽんぱたあすか

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31.新生の彼らの動向について

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 ぜえはあと息を切らすナルガクルガの足下に罠を張る。

 高速設置スキル最高!張ってる間に蹴飛ばされないって素晴らしい。雑魚にも邪魔されないし。爆弾を疾風の勢いで置き逃げできるのも良いよね。持ってて良かった高速設置スキル。

 まあ、今回はうっかり武器変更してきたらポイント1足りてなくて付いてないんだけどね。蹴飛ばすんじゃねぇよ死ねよ。邪魔すんじゃねぇよ虫は爆散しろ。

 何度目かのトライでようやく設置できた罠に、今度はなかなか引っ掛かってくれなくてイライラする。ナルガは手を抜かずに、地に足付けてしっかり歩くべきだと思う。

 だぁら、歩けっつってんだろ!

 「パギャァ──ァンッ!」

 何よ、ちょっと弓で射ったくらいで痛そうな悲鳴上げちゃって。イケメンのくせに女々しいわね。

 口からオツユを振り撒くナルガにエンガチョジェスチャーを向けると、なぜだか怒髪が天を突く。理解できるとは何というマニアックな。

 飛びかかってきた巨体を、慣れた動作で避け──ちょ、何その逆回転尻尾アタック。そんな動きしなかったでしょアンタ。あまりにも予想外過ぎて普通に食らったわよ。

 「ぎゃ、ふッ!」

 「──ッ!」

 二つの悲鳴が重なった。人が転がってるときに限って引っ掛かるのって良くないことだと私は思う。

 慌てて起き上がり、バックパックを漁りながら駆け寄った。

 「捕獲用麻酔玉を食らえー!」

 赤さが毒々しいボールをパツンパツンと投げ付ける。

 体調悪いところに2発食らえば、やんちゃなティガレックスだって昏倒する強力麻酔である。あの巨体が皮膚からの吸収でぐっすりってことは、人が食らったら心臓止まるんじゃなかろうか。今後は素手で調合するのは止めようと思う。

 そんな恐ろしい物体を浴びたナルガクルガ軍曹は、ぐうらりと横倒れになって、見かけにそぐわない可愛らしい舌を垂らしながら昏睡し──なかった。

 

 え?

 

 まさか当たったように見えただけで、実は人には視認できない昆虫か何かにブロックされたのかな。

 更に2個、3個とぶち当てても、しかしビリビリ痺れ続けるばかりで眠る気配が全くない。

 最終的には3つ纏めて口に放り込んでみたけど、不味そうに唾と共に吐き出されただけで終わった。ぎゃあああ!顔面に食らった!死んだらどうする!

 もんどりうっている間に、罠は消滅した。解き放たれたナルガの尻尾に再度薙払われて、いらっとしたので武器を構える。

 何、動作がゆっくりになって、涎垂らしてるってことは、瀕死ってことじゃないの?

 速やかにぶち倒して、帰ってからハンターの心得を捲ってみたところ、衝撃の事実が発覚した。

 どうもこの辺のモンスターは疲労するらしいよ。何その虚弱体質。ポッケのお前らは一日に千里を駆け抜けるほどのスタミナを持ってたのに。

 

 「……フルフルが疲れたら、逆にパワーアップしないかなあ……」

 良かった。酸性の涎持ちがここにはいなくて。

 

 

 

 

 

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32.みんなと一緒:突撃隣のまりさ登場

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 こっちに来てしばらくは気が付かなかったんだが、ユウキのサインがいつの間にやら変わっていた。ユウキ、改め、遊稀らしい。

 曰く、郷に入っては郷に従えって言うだろ!だそうなんだけど、別に表記はどうでも良いんじゃなかろうかと思う。ミドルネームがある地域とか、名前とミドルネームが前後して、かえってめんどくさかったりするし。

 そんな遊稀の隣には、可愛らしい少女がニコニコと柔らかな笑顔を浮かべて座っている。

 友人は色々いるんだが、大抵の場合、柔らかい笑顔を浮かべる人間ってのは私にとって害となるのが普通である。しかしびっくり、この子は違うんだ。

 普通に無害なの!ちょっとマイペースさんだから、すぐ座りたがるのと、打ったヘビーボウガンの弾が他人に当たっても気にしないで連撃かまし続けちゃうくらいで!

 ちなみに一言で彼女の容姿を表すとロリボインだよ。

 「まりさー、お茶欲しいー」

 「冷たいのでいーい?」

 「おー」

 立ち上がった彼女の小動物のような動きを目で追うと、癒されると同時に遊稀への殺意が沸き立った。

 2人は同居している。わかるな、そういう関係だ。このロリコンめが!

 これが殺意を覚えずにいられるものか。否。断じて否。

 しかし嫉妬は醜いので、腕まで達しようという殺意をかろうじて堪えて、ついでにまりさが持ってきてくれたお茶に手を伸ばした。

 

 ところで。

 「何かお茶がハチミツくさいんだが」

 「ああー、俺、ハチミツ600個分くらいあるから」

 使いもしないのに以下略。まだ引っ越してきて2ヶ月くらいだろ。全部没収されたのに、何を短期間で昆虫虐待に走ってんだこいつ。

 罵ろうとして、ふいに思い出した出来事に顔を歪めた。アイテムボックスを素早く振り返る。

 「おまえまさか……!」

 「あ、あ、ばか、止めて!」

 制止に飛びかかる遊希をはり倒してくそ重い蓋をこじ開けると──ああー、いました、いましたよ。ボコボコボコボコと凹凸を繰り返す、悪魔の袋。

 ミミズ!

 「いやー、うちの子を連れてかないでーッ!」

 「やかましい!ミミズのハチミツ漬けでも特産物にする気かー!」

 「それ捨ててきたら、ボードゲームやろうねー」

 足に縋る遊稀と、蹴倒す私。

 ニコニコと笑いながら机の上を片付け始めるまりさは、あんまりにもマイペースだと思うの。あとここ来るたびにボードゲーム誘われてんだが、そんなにやりたいのか。

 まあ、ゲームはルナが来てからゆっくりやろうね。

 私はまずこの悪魔たちを畑に投げ込んでくるから。

 

 

 

 

 

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33.レベル詐称

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 暇になると弱いもの虐めに走るから困る。私は決して、エで始まってスで終わる性質の人間じゃないのに。だからってムで終わる人間でもないんだから、誤解しないでよね。

 「村長さーん、終わったよー」

 「あら、ご苦労さま」

 優雅の二文字を背負ってベンチに腰掛けるたおやかな女性。ニコニコと、ただでさえ細い目を更に細めて笑う姿に今日も癒される。

 ああ、ここにネコートさんがいれば最高なのに。いや、前も言ったけど、ポッケ村の婆ちゃんに文句があったわけじゃないよ。婆ちゃんだって癒し系だったさ。ただ、私が美女の方が好きだというだけの話で。

 「カグラさんたら、本当にお強いのねえ。あんなにあったクエストの数々を、こんなに短時間で終わらせてしまうなんて」

 「新人でもないですし、こんなもんじゃないですかねぇ」

 集会所の上位クエも散々クリアしてるしね。装備が揃ってるんだから、ある程度の注意力と根気があればできるレベルだろう。

 別にイビルジョーとかいう怖いのが出てくるわけでもなし。

 「じゃあ、次で終わりですね」

 「ん、まだあるの?」

 「ええ」

 両手をあわせて、まるで花咲くように笑う村長。

 ほんわりと和やかな気分で、差し出された依頼を受け取って。

 「ちょ」

 出た。イビルジョーとかいう怖いの。上位でかち合って倒したことはあるけど、まあやっぱり数の暴力だったよ。あいつ怖いよ。

 どうでもいいけど、ユクモ村のモンスターって、アゴの自己主張が強い奴多いよね。

 「……最後?」

 「そう、最後」

 「最後ってことは、これ、ワンクエスト?」

 「そう、ワンクエスト」

 なんか、ナルガクルガとティガレックスって文字も見えるんだけど。

 「是非、頑張って下さいね!」

 わかった、死ぬ覚悟を決めることを頑張る。

 

 

 

 ジョーさん物凄く怖いので、回避上等ナルガ装備に身を包む。

 昨日は友人ちに泊まったんだがけど、みんなまだ起き出して来ない。ハンターは朝寝坊野郎が非常に多いのである。夜行性ばっかりだよ、夜目はきかないくせにね。

 設けられた制限時間を気にしながら、弓の弦を慎重に引き、離す。

 これ効いてるんだろうか。ジョーの硬い表皮をブスブス突き通してはいるんだけど、全く怯む様子がないんだが。

 打ち上げられて、リュウの笛に癒されて、ナタリーに盾にされて、結局倒したのは制限時間が3分の1を切った頃だった。

 しかし、一頭一頭出てくるってんなら行けるだろう。複数を相手取る依頼って、内輪モメでもしてんのか、やたら体力少ないし。ただでさえ装甲薄いナルガさんだから、きっとすぐ死んでくれるさ。

 信じてる。信じる者は救われるって言うじゃない。救ってくれ。頼むから。カミサマ。

 心から願った私は、次の瞬間には、神は信じる者を突き落とす存在だったことを思い出した。

 「ギャアアアアアアアンッ!」

 「グルアアアアアアアアアアアアアアアッ!」

 まさかの二重音声。

 背後で唐突に発生した風圧につんのめった。体勢を立て直しざま振り返った私を迎えたのは、2頭のイケメン。

 

 ああ、終わった。

 

 

 

 「カグラ、村長のクエ終わったかー?」

 「何それ。知らない」

 もう二度と村長さんには話しかけないと心に決めて、私は今日も集会所へと足を運ぶのだった。

 

 

 

 

 

 

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