そして、今日は、ルベリオスと
リード:(‥‥‥どうしてこうなった!?)
俺、リード=テンペストは、何故この現状に至ったのか全く覚えていなかった。
目が覚めると、
リード:(‥‥‥取りあえず、姉さんを起こさずにそっと抜け出すべきだな)
音を鳴らさないようにゆっくりと各関節を外して、そっと抜け出そうとした時、タイミング悪く姉さんも起き、お互いの目が合った。
ヒナタ:「‥‥‥」
リード:「お、おはよう姉さん」
ヒナタ:「おはよう聖司。で、なに?その身体?」
リード:「え~っと、起こさないよう各関節を静かに外して…」
ヒナタ:「直せるの?」
リード:「大丈夫、直せるから」
ヒナタ:「…そう」
姉さんが安心して笑ったのを見て、俺は少しホッとした。だけど、次の瞬間、額に柔らかい感触を感じ、チュッという音が聞こえてきた。
リード:「‥‥‥え?」
ヒナタ:「また甘えて良いからね、聖司」
姉さんは笑顔でそう言うと、寝室から出ていった。それから時間差で、昨晩の記憶が一気に甦った。
リード:「‥‥‥ーーーーーー!!」
羞恥心で顔が赤くなり、声にならない悲鳴をあげたが、仕方ないと思う。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
朝早くから営業しているイングラシアの喫茶店の席で、
そこに、長髪で鼻の所に傷のある男が向かいの席に座った。
煉武:「来たか、ダムラダ」
ダムラダ:「いきなりメッセージが来たと思ったら『帝国には戻らない』とはどういう意味だ?」
煉武:「正確には『弟達全員を見つけたので帝国には戻らない』と言ったのだが?」
ダムラダ:「同じだろ。ルベリオス付近で魔物の群れを放ち、お前がそれを単騎で討伐することで、潜りやすくなっていたというのに…理由を教えろ」
男、ダムラダは僅かに苛立ちを孕んだ声で言うが、煉武は全く気にしていなかった。それどころから、コーヒーをダムラダの前に出していた。
もっとも、ダムラダもこの態度は想定内であった。
煉武:「簡単な事だ。私の誇りを守るためさ」
ダムラダ:「…あの時も言っていたが、お前の誇りとはなんだ?その圧倒的とも言っても良い武力ではないのか?」
ダムラダの問いに、煉武は鼻で笑う。
煉武:「私は一度たりとも自分の武力を誇りとしたことはない。私の武力は、時魔の長男として
ダムラダ:「‥‥‥」
煉武:「ゆえにダムラダ、先に言っておくぞ。
ダムラダ:「…そうか」
ダムラダは、出されたコーヒーに手をつけずに、席を立つ。
ダムラダ:「その選択の先に後悔がなければ良いな、
煉武:「違う。私は時魔兄弟長男、時魔煉武だ」
ダムラダ:「…そうか、達者でなレンム」
ダムラダはコーヒー代をおいて喫茶店を出ていった。
煉武は、自分のカップの中のコーヒーを全て飲みほす。
煉武:「…結局、お互い一度も出された物を口にしなかったな」
煉武はそう呟き、会計をすませ、喫茶店を出てすぐに転移魔法で
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煉武:「なるほど、聖司は二日酔いにはならないが、酔っていた記憶は覚えているのだな」
大会議室の机に突っ伏して頭から、湯気が出ている俺の様子を、戻ってきた煉武
リムル:「いやいや、二日酔いにならないって羨ましいよ。どんな裏ワザ使った?」
リード:「その前に、俺は今すぐこの記憶を抹消したい」
それから少しして、姉さんとルミナス、ルイそして
昨日の宴会で、煉武義兄さんから
言い分は予想通り、姉さんはレイヒムからの要請以前から俺達の国を問題視しており、レイヒムの要請を受け、
ちなみ、その情報は、サーレからある程度こちらにも流れていた。
ヒナタ:「シズ先生が、あなたに記憶を改竄させられ、操られているという報告もあったわ。あの時、聖司の事を知っていたら、私も利用される事はなかったのに…」
リムル:「やっぱりリードの読み通り、利用されたんだ」
ヒナタ:「本当にごめんね聖司」
リード:「大丈夫だよ!それより姉さん、その報告って誰からだったの?」
ヒナタ:「東の商人よ」
リード・煉武:「!?(姉さん/
煉武義兄さんと被ってしまったので、お互い黙るが、煉武義兄さんが先に譲ってくれた。
リード:「姉さん、その商人って長髪で鼻の所に傷のある男じゃなかった?」
ヒナタ:「ええ、そうよ。どうして知ってるの?」
煉武:「なるほど、ダムラダか」
煉武:「ああ、私が認める程の実力者だ。今の日向と戦ったとしてどうなることか…」
煉武義兄さんが認める程の猛者か…警戒しないといけないな。
煉武:「それで、日向はダムラダの報告を受け、ちょうど
ヒナタ:「…はい」
リムル:「…確かに。あれは最悪のタイミングだった。今思い出しても腹が立つ」
リード:「!?」
リムルから僅かに『魔王覇気』を感知し、俺は姉さん達に結界を張る。その直後、リムルから魔王覇気が放出されるが、煉武義兄さんの『勇者覇気』で相殺してくれた。
リムルもその衝突で、自分が『魔王覇気』を漏れだしてしまっているということに気づき、抑え込んだ。
もし、二人の覇気のぶつかりを直接浴びたら、レナード達はタダでは済まなかったな。
煉武:「悟、少しは自分の実力を把握しろ。次にやったら問答無用で蹴りを叩き込むぞ」
リード:「…リムル、元はと言えば、俺が言わなかったのが原因だ。だから、その怒りは俺に向けろ」
リムル:「悪い煉武、リードもごめんな」
煉武:「まったく」
リード:「姉さん、レナード達も大丈夫?」
ヒナタ:「ええ、ありがとう聖司」
レナード達:『ありがとうございます』
どうやら、全員無事のようだな。
結界を張るのが間に合って本当に良かった。
リムル:「だけど、これでわかった。どうやらこれらの一連の出来事は、商人が絡んでいて、クレイマンが言っていた『あの方』というヤツが、それらを裏で操っていたのだろう」
ルミナス:「確かにのう。小物のアヤツにしては天晴れな事に、最期までその正体を口にせなんだがな」
リムル:「…その正体ってさ七曜なんじゃないか?」
ルミナス:「何じゃと?貴様、妾に内緒で七曜が勝手に動いたと申すか?」
リムルが口にした言葉に、流石のルミナスも不機嫌になる。まあ普通はそうか、すると意外な男が助け船を出した。
レント:「ルミナス
ルミナス:「?何の話じゃ?」
ルイ:「…なるほど、そういうことか。ルミナス様、あの者達はルミナス様の寵愛を欲しておられました」
ルミナス:「だから何の話じゃ?」
ルイ:「寵愛つまり、
リード:「!?」
ルイの説明で、あの時の七曜の言葉を思い出し、溢れんばかりの怒りも思い出したが、なんとか抑え込む。
レミン:「お父様。何ですか、その
レント:「七曜は確かに仙人級を越えていたが、聖人級にまで覚醒しきれてなかった。そんなヤツは普通は千年以上も生きられない。だけど、定期的にルミナス義姉さんがエナジー、生気を与える事で老いを防ぎ、寿命を延ばす事が出来るんだ」
レミン:「つまり、伯母様からエナジーの供給がなければ老いてしまい、最悪死んでしまうという事ですか?」
ルイ:「その通りですレミン様。ですから、あの者達はルミナス様がこれ以上お気に入りを作らないように必死だったのです」
煉武:「なるほど、暴走したのは、そういう理由だったのだな聖司」
リード:「‥‥‥」
ヒナタ:「どういう事ですか?」
リムル:「そうなのか?」
リムル:「ああ、アレか…ってまさか…」
縁護:「あの時は危なかったな…」
生夢:「正直、あの戦いの余波で死ぬかと思ったよ」
自然:「ホントそれな!」
釈迦人義兄さん、ハイテンションで言わないでよ。縁護義兄さん達も笑って肯定しないで!そんな事実を聞いた姉さんとリムルが言葉失ってるから…
リムル・ヒナタ:「(リード/聖司)、(お前/あなた)…」
リード:「言い訳するけど、その時の記憶ないから!」
煉武:「その様子だと、七曜を始末した際に聞き出したようだな」
リード:「…うん、あんな下らない目的のために、姉さんを殺そうとしたと知ったら、とてつもない怒りが一気に溢れて…それで…」
どうして、あの時制御出来なかった…どうして抑え込むことが出来なかった…
そんな自己嫌悪に陥ると姉さんが抱きしめてきた。
リード:「姉さん…」
ヒナタ:「聖司、あなたは悪くない。あなたも被害者なの、だから落ち着いて」
リード:「…うん」
ヒナタ:「ゆっくりでいいから、深呼吸して」
姉さんに言われて、気持ちを落ち着かせる。こういう突発的な怒りの制御を早く出来るようにならないと。
俺が落ち着くのを確認すると、姉さんは自分の席に座った。
リムル:「けど、七曜は全員リードが始末したから大丈夫だな!」
リード:「…その事なんだけど、一人逃がした」
全員:『!!』
俺の失敗したという発言に全員が驚き、視線が集まる。
リード:「確かに七人全員“エンリルの天罰”に捕らえて始末したけど、生体反応が一つ足りなかった」
ルミナス:「おそらく、そやつはグランベルじゃな」
ヒナタ:「グランベルとは“日曜師”グランの事ですか?」
煉武:「なるほど。ヤツだけ姿を見ないと思っていたが、七曜の肉体は
サーレ:「それなら、グレンダが逃げた理由も納得だ。逃げきる事が可能な所があったから、あの女は逃げたんだろう」
レント:「だけどそんなもん関係ねえだろう。ここにいる神ルミナス様を利用して、七曜は全員死んだって事にすれば問題ねえだろ?」
レミン:「なるほど、『神ルミナスが七曜は全員死んだ』ということを、教会で発表すれば名乗り出たとしても、信じてもらう事は不可能に近いですね」
ルミナス:「それくらいなら、すぐにでもやろう」
レミン:「ありがとうございます伯母様」
リムル:「けど、これで俺達にチョッカイ出した者は全員片付いたな」
リムルがそう言うと、煉武義兄さんの槍で軽く叩かれた。
リムル:「何すんだよ!?」
煉武:「貴様は馬鹿か?一番の疑問が残っているだろう!」
リムル:「えっ?なに?」
縁護:「どうして東の商人がシズさんの事をと知っていた。ということですね?」
リムル:「!」
確かに…世間ではシズさんは生死不明だったと聞いている。そのシズさんの事情を聞いていて、リムルがイングラシアにいるなんて事を知っているのは、フューズ、ユウキあとエレン達だけど、
自然:「ブルムンドはまずそんな事をしないだろうな」
縁護:「確かに、聖司の怒りを買う事を恐れていたブルムンドがそんな自殺行為をするとは思えない。それとエレン達も違うだろう。エレン達はそういうことを考えるタイプではない」
シズ:「それじゃあ…」
生夢:「シズさんには悪いですけど、消去法でユウキが東の商人を使ったのでしょうね」
釈迦人:「確かに、立場上なんの違和感もなく、東の商人と接触出来る立場ですからね」
リムル:「おいおい…」
リード:「…考えても仕方ない。とりあえず、東の商人には要注意ってことでいいんじゃない?」
ベニマル:「そうですね」
ウォズ:「もう少し情報が揃ってからにしましょう」
こうして、会議は一時休憩となった。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
シュナが持ってきたおやつは、スコーンとポテトフライだった。
おやつを半分程、食べる終えると会議は再開された。
ヒナタ:「それで今後のことだけど私達の謝罪は───」
リムル:「良いって!あの時言ったけど、煉武が土下座までして謝って、一番の被害者とも言って良いリードが許してるからな、気にするな」
ルミナス:「駄目じゃ。レミンは助けてもらった件、レントを保護してもらった件、そして此度の件。何らかの形で賠償を行いたい。手打ちはその後じゃ」
ルミナスはそう言って、ヴェルドラを睨み、ヴェルドラは漫画を盾にした。
…意味あるのか?
ヒナタ:「私としても、弟の件もある。だから出来る限りの誠意は見せたいわね」
リムルが俺に視線を向ける。俺が決めろって事ね。賠償か…それなら…
リード:「俺達の国を正式に承認して、国交を結んでもらう事は出来る?」
ルミナス:「構わぬ。それくらいのことで良いのならな。いずれはそのトカゲを成敗するつもりじゃがな」
リード:「(リムル、最悪ヴェルドラを差し出すってことで良い?)」
リムル:「(良いんじゃないか)」
ヴェルドラ:「ちょっと待て、リムル、リードよ。お前達今、かなり酷い事を考えておらぬか?」
リード:「気のせいだ。まあ、今後のヴェルドラの行い次第だけどな…」
ヴェルドラ:「待て待てリード!お前がそういう何か意味を含んだ物言いは大抵碌な事を考えておるだろう!」
ルミナス:「ええい、やかましい!調子に乗るでない!」
ヴェルドラ:「我、悪くないもん…」
ルミナスの雷に、ヴェルドラは漫画を傘のように被ってそう言うが、どの口が言うのかな?
ルミナス:「暫しの間は休戦と洒落込もうぞ。今後百年、国交を結ぶ。それを妾からの、詫びの証とするが良い…と言いたいのじゃが、もう二つ妾から提案がある。それを含めて、妾からの詫びの証じゃ」
リード:「もう二つ?」
ルミナス:「さよう。ヒナタの
リード:「‥‥‥え?
ええええええええ!?」
ルミナスのこの提案に、俺の声が大会議室に響き渡り、煉武義兄さん達も、あまりの事に驚いた表情を隠せずにいた。
一体何故、ルミナスはこのような提案をしてきたのか?
そして、それに対する聖司はどう答えるのか?
どうやらこの会談は、もう少し続くようだ。