転生したら天魔人だった件   作:通りすがりの気分屋

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今日は、このギドラがやらせていただく。
開国祭の準備をほぼ終えた、我が国魔国連邦(テンペスト)に、ミョルマイル殿が来てくださり、いよいよ明後日に前夜祭を控えるまで迫った。


開国祭打ち合わせ

会議室で幹部全員が集まり、近況報告会を行うことになった。

そこには、ブルムンドの商人で俺達の良き理解者でもあるガドル・ミョルマイルの姿があった。どうやらリムル達がブルムンドに行った時に直接スカウトしたようだ。

ミョルマイルのような人間が来てくれて正直安心する。

だって、姉さんはともかく義兄(にい)さん達の世間の印象は、魔王リムルの友人と弟分そして魔王リードの兄とはっきり言って好印象とは言い難い。

そんな中、ブルムンドの大商人であるミョルマイルが来てくれたことは本当に心強い。

 

ミョルマイル:「ガ、ガドル・ミョルマイルと申します。この度はリムル様に大役を任せられ、緊張で身が引き締まる思いです。どうか幹部の皆様も、これからもご贔屓にして頂ければと存じます」

 

緊張しながらも、ミョルマイルはしっかりと自己紹介を終えることが出来た。

 

リムル:「それでは、ミョルマイル君、皆に状況説明を頼む」

 

ミョルマイル:「了解ですぞ!」

 

ミョルマイルから配られた資料を、思考加速で三回ほど読んで内容はある程度理解した。

そして、ミョルマイルが開国祭の流れを語り始めた。

まずは前夜祭、これは開会式前日という事もあり、訪れてくる商人やその護衛の冒険者には、無料でご馳走や酒を提供する予定であるようだ。

迎賓館では、王侯貴族を招く宮廷晩餐会が催され、提供される料理は全て、シュナと吉田さんという職人の共作で、新作も出るらしい。

個人的に、これが一番の楽しみでもある。だってシュナの料理の新作料理の味見はよくしていて、全く知らないというのは、ある意味どんなのが出るのか楽しみだからだ。手紙でも、ミリムは食事の事を楽しみにしてたみたいだし…そういえば、最近ミリムの顔を見ないな?

そして、開国祭初日は、なんとこの日の朝から、俺の演説があるらしい。

何故そうなったのか、姉さん達が教えてくれた。

 

日向(ヒナタ):「聖司(セイジ)、あなた自分が世間でどういう印象を受けているのか分かっていないの?」

 

リード:「え…九星魔王(エニアグラム)の一人だけど…」

 

煉武(レンム):「それだけではない。世間ではお前は、あの暴風竜ヴェルドラを抑える事が出来る力を持っていて…」

 

縁護(エンゴ):「魔王ギィ・クリムゾンが認める実力」

 

生夢(ショウム):「進化前にカリュブティスを真っ二つに斬り」

 

釈迦人(シャカト):「かの有名な聖人ヒナタの実の弟であり」

 

自然(シゼン):「はっきり言って、お前のアウトラインがわかんねーから対応に困る。これだけ言えば分かるだろう?」

 

…なるほど、国交を結んでいる国々はともかく、他の国は俺との付き合い方が開国祭という人が多く集まるところで、俺がどういう性格をしているのかある程度知らせないといけないってことか…

確かに、リムルはドワルゴンで演説しているから、世間からある程度の理解はある。

だけど、世間に流してある俺の印象はおそらく、怒らせたら国を滅ぼす事も躊躇わない冷酷非道で残虐な魔王か、聖人ヒナタと離れ離れになっていた可愛そうな魔王という印象なのだろう。

だけど、最低限のラインを開国祭初日の演説で分からせる事が狙いか。

 

リード:「分かった。頑張る」

 

そうして頷き、話が進む。

その後は、歌劇場での鑑賞会だった。

 

ミョルマイル:「ここで、リムル様、リード様が文化に精通しておられる事をアピールしたく存じます」

 

円形闘技場(コロッセオ)では、武闘大会の予選が開始されるが、他国の重鎮達は退屈するだろうし、我が国の事を知ってもらう事が目的なので、武闘大会の観戦は二日目からになった。

歌劇場での鑑賞会後は、昼食で、午後からは技術発表会になっている。

ガビルとベルン、そしてベスターによる回復薬の歴史紹介。

クロベエとノベク、スズネそしてガルムの武具の展示になる。

以前、俺がクロベエとノベク、スズネに依頼して、俺の魔素で出来た魔鉱を使って、武器を作ってもらうように頼んだが、えげつない性能の武器が完成して、姉さんに怒られていたのを思い出す。

もちろんあの武器は姉さんに譲られたから、世間に注目が浴びることはない。

二日目は、武闘大会の本戦見学。

その昼からは、自由行動を予定してある。

武闘大会は二回戦まで行う予定だそうだ。

俺とリムルは、貴賓席にいると思っていたのだが、なんと俺は自由に行動して良いらしい。

 

リムル:「シュナか日向と一緒に祭りを楽しんでこい!」

 

と、リムルがミョルマイルに提案してくれていたようだ。

俺の過去を煉武義兄さんから聞いて、俺が祭りをあまり行ったことがない事も聞いたのだろう。

そして、三日目は、午前中に武闘大会決勝戦で、午後からは遂に、開国祭最大のイベントである地下迷宮(ダンジョン)の御披露目になっていた。

こうして、説明を終え、何か問題がないか聞くと、ラミリスが挙手した。

 

リムル:「何かな、ラミリス君?」

 

ラミリス:「えっとね。実は…」

 

ラミリスが口ごもると、ダイロスが代わりに話し始めた。

 

ダイロス:「どういうわけか、九十五階層に出来た森林が上層を浸蝕を始めて、五十一階層まで埋め尽くしてしまい、原始林のようになったのです」

 

ヴェルドラ:「クアーーーッハッハッハ!失敗失敗!」

 

ダイロス:「さらに、浸蝕で魔素を消費しきってしまい、魔素はすぐに補填出来たのですが、ボスに適した魔物が生まれるのに時間がかかるそうなのです」

 

ラミリス:「でさでさ、アタシは聖霊の守護像(エレメンタルコロッサス)をもう一度創ろうと思うワケ。だからさ、材料を用意して欲しいのよさ!」

 

ヴェルドラ:「我には、ボスに相応しい者を雇ってくれ。それと、原始林の掃除を!」

 

成る程、だけど確か今回の御披露目は、五十階層までの予定のはずだから、すぐに解決策を出す必要はないな。

ここは、一旦先送りにして、開国祭が終わった後にするか。

そう言おうとすると、

 

ギドラ:「リード様、森の事なのですが、なんとかなります」

 

影からギドラが現れ、そう宣言した。

 

リード:「え?お前、そういうの得意だっけ?」

 

ギドラ:「いえ、某ではありません。この者が得意としています」

 

ギドラがそう言うと、ギドラの衣服から顔を出す小動物、もとい九頭獣(ナインヘッド)が顔を見せた。

 

リード:「目覚めたのか!」

 

ギドラ:「はい」

 

九頭獣(ナインヘッド):「ギドラ兄様から話は聞いております。わっちのこの力を、リード様の為に役立てたいでありんす」

 

リード:「そうか。ギドラの推薦なら大丈夫だな。それじゃあ、お前にも名前を名付けよう」

 

九頭獣(ナインヘッド):「本当でありんすか!?」

 

リード:「ああ」

 

さて、名前はどうするか?

九尾は、なんか女の子には相応しくないし、種族名からとるとしても、良いのがないな…

そういえば、釈迦人義兄さんの持ってる漫画で、名前を持つ九尾の狐がいたな。それを少しだけ弄って、

 

リード:「良し、今日からお前の名前は“九魔羅(クマラ)”だ」

 

久し振りの名付けで魔素を大分消費するが、それほどではなかった。

そして、クマラが一気に成長した。

体格が多くなったのではなく、尻尾が一気に九本まで増えた。

これの尻尾一本一本に特殊能力を持つ魔獣に変化するのだと考えると少し怖いな。

そして、今度はノベクからの推薦だった。

 

ノベク:「ボスの件なのですが、俺はアダルマンを推薦します。アイツの魔法の実力は本物です。それに責任感が人一倍強いので任せても大丈夫です」

 

アダルマンって確か、リムルを神と崇めるあの骸骨か。そういえば、夜に不死系魔物(アンデッド)が徘徊することに苦情が出てるから、片付けるには丁度良いな。

しかし、リードは知らなかった。

アダルマンが最初は、リムルではなくリードを神として崇めようとしていたことに。

縁護がリードの精神面を心配し、アダルマンを必死に説得して、崇める対象をリムルに変え、縁護は謝罪と懇願を込めて、リムルに土下座をし、それを許可した事に。

最後に、トレイニーさんが、ゼギオンとアピトを推薦した。

確かに、ゼギオンとアピトは、ゲリオン達と同じ蟲型魔獣(インセクト)だから、進化したらそれこそボスに相応しいな。

さらに、ヴェルドラが鍛えると言い出したので、短期間で進化出来るな。

リムルも同じ事を、考えていたらしくトレイニーさんの案も採用され、すぐに迷宮の問題は片付いた。

 

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

 

開国祭関連の報告は終わり、最後はソウエイからの報告だった。

なんでも、現在こちらに向かっている“双武(そうぶ)”の勇者マサユキとその仲間達が、エルフ達を連れて到着する日が、前夜祭の日らしい。

噂では、勇者マサユキの一行は、「魔王リムル又は魔王リードを討伐」を掲げているらしい。

…というか、そのマサユキの戦い方ってまさか…

俺は以前から感じていたある予感を胸に抱きながら、煉武義兄さん達に視線を移す。

 

煉武:「そう言えば、アイツもお前の分骨を持っていたな」

 

縁護:「髪も金髪にしていましたね」

 

わざとらしく言うところをみると、可能性は大きくなる。念のため、ソウエイに確認をとるか。

 

リード:「ソウエイ、そのマサユキのフルネームはわかるか?」

 

蒼影:「はい。勇者マサユキのフルネームは、マサユキ・ホンジョウと言うそうです」

 

はい、確定しました!

勇者マサユキは、俺の知ってる正幸(まさゆき)だった!

 

リムル:「リードどうした?」

 

リード:「ええっとな…その勇者マサユキなんだけど、多分というか高確率で、俺の後輩だと思う」

 

リムル:「…え?」

 

全員(煉武達五人以外):『えええーーーー!!??』

 

皆の声が、会議室に響き渡ると、俺はマサユキと初めて会った時の事を思い出した。

 

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

 

アレは確か、俺が中学二年の時、任務明けで寝坊してしまい、最短の登校ルートで行ってた時だ。

屋根を飛び越えて、中学校一直線に続く道に繋がる、裏路地に出るという急いでいた時の日常とは、殆ど同じだったが、違うとすれば、着地地点に不良がいたという点だ。

そして、その不良の隣には、ランドセルを背負い涙目になっている小学生がいた。これが俺と正幸の出会いだった。

その後、俺は状況から考えると絡まれていたのだとすぐにわかり、俺は正幸を脇に抱えて、人通りの多い道に出た。

その後、小学生のつけていた校章から、近くの小学校だと分かり、校門前まで送りお礼も聞かず、俺も中学校に向かった。

遅刻はしたのだが、どうやら正幸が事情と俺の中学校の事を自分の担任に教えて、当時の俺の担任に連絡してくれていたようだった。そのため、俺は大して何も言われなかった。

それから一年が経ち、新入生の中に正幸がいたことに、本当に驚いた。

なんでも、俺にお礼が言いたかった事と俺に憧れて同じ中学校に来たようだ。

最初は、しばらくすればすぐにいなくなると思っていたのだが、一人で屋上で昼食を食べに行こうとするとついて来たり、下校中も途中までついて来たりして、先輩、先輩としつこかったのも今では懐かしく感じる。

しかし、流石にしつこかったので、時魔家が所有している訓練に使う山を登らせ、普段の俺の生活を学ばせ、諦めさせる事にした。

行ってみると、数分で悲鳴をあげて下りて来たので、俺はそのまま家に帰した。

するとその翌日また来て、山に登りたいと言ってきた。

結果は、昨日より少し高くまで登れたが、すぐに下りてきた。

そんな日常が毎日続き、俺はついに正幸にそこまで頑張る理由を聞いた。

するとアイツは、

 

正幸:「だって、先輩は僕の憧れの人なんですよ!その先輩が出来る事が出来るようになるってすごくカッコいいじゃないですか!」

 

と、笑顔で答えた直後に爆笑したなあ。

それから半年かけて、本当にあの山を攻略したのには驚いた。攻略したのもそうだが、期間も凄かった。常人じゃ仮に攻略するとしても一年近くかかるのに、その半分の期間で攻略したのだから。ちなみ俺達にとっては、軽い準備運動程度なのだが、それを言うと、正幸の尊敬の念が何故か強くなった。

しかし、それがマズかった。

ある日、正幸の家から連絡が来て、ご両親が慌てていたのが電話越しからでも伝わった。

詳細を聞き出すと、どうやら正幸が誘拐され、俺一人で来るように伝えるよう要求されたようだ。

しかし、相手はあまりにもお粗末かつ最弱の類の集団だったので、何の問題なく解決した。

誘拐された理由は、俺が正幸にあの山を登らせていた事だった。時魔家の稽古に少しでも参加出来たということは、戦力として利用出来ると見られる。しかし、それがあれ程早かったとは、思いもしなかった。

それなのにアイツは変わらず、俺の周りに引っ付くのをやめなかった。

俺は、正幸が自分の身は自分で守れるように色々なことを教える事を提案すると、アイツは迷うことなく頷いたな。

それから、毎日稽古つけてやったっけ?最初の頃は結構泣いてたけど…

本当に懐かしいな。

 

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

 

リムル:「あの時笑ってたのって、お前の知り合いだったからなのか!?」

 

煉武:「ああ、つい面白くてな」

 

…さて、思い出にひたるのはこれくらいにして、アイツの対応はどうするか。

 

リムル:「それじゃあ、マサユキが俺達を討伐するっていう噂は…」

 

リード:「多分過剰なファンが憶測で言い出して、それが広まっていったんだと思う」

 

アイツは、義兄さん達の性格もよく理解してるからな。

俺の正体に気づいていないってことは考えにくい。

 

リード:「まあ、マサユキの対応は俺がやるから。皆は自分の事に集中して」

 

全員:『はは!』

 

それにしても、アイツの話を纏めてみたが、俺の記憶の正幸の実力は、そこまでなかったと思うけど…

 

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

 

場所は変わり、捕まっていたエルフ達を送り届ける馬車の中で、正幸は魔国連邦(テンペスト)の到着に胸を踊らせていた。

 

正幸:(ユウキさんの話じゃ、魔王リードには『時魔』という姓を持つ五人の義理の兄がいる。その人達の名前を聞いて確信した。魔王リードは先輩なんだ)

 

正幸は、かつて憧れた先輩との再会を楽しみにしていた。

それに自分の目的は、奴隷商会(オルトロス)に捕らえられていたエルフを送り届ける事であって、魔王と戦う気もなかった。

自身が持つユニークスキル『英雄覇道(エラバレシモノ)』の権能のせいもあってか、世間では自分が魔王を討伐するのだと勝手に認知されている。しかし正幸にそんな気は少しもない。

むしろ、先輩ならこのスキルをなんとか出来るのではないかという期待を抱いていた。

そして同時に世間の人間に対して怒りが湧いていた。自分が尊敬する先輩を『魔王』というだけで恐れ、理解しようとしない者達に怒りが湧かないように抑えるというのは、無理な話であった。むしろ、そういう輩がいるなら今の自分を利用してでも、リード達との事を理解させるつもりでもあった。正幸も勇者と言われているが、人間であるためそういう思考になるのは仕方のないことである。

 

正幸:(あの人を理解しようとしない人達に協力する気には僕には全くない。早く会いたいですよ、先輩)

 

正幸は、リードとの再会に楽しみに胸を高鳴らせていたが、彼らの乗っている馬車は一定の速度を保って魔国連邦(テンペスト)に向かっていった。




まさかリード様が勇者マサユキの知り合いだったとは、本当に縁というのは、何が起きるか分からないことだ。
しかし、本当に何も問題がなければ良いのだが…
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