シルビアの娘で魔導王朝サリオンの天帝エルメシアがやって来た。
しかもそのエルメシアがエンゴ様を保護していただいたとリード様とリムル様は知った。
あと到着していないのは、あの方の娘であるミリム様くらいだけだった。
ミリムの到着を待つグレイドダイロス、ティアノ、キョム。その中でティアノはずっと落ち着かない様子だった。
ティアノ:「遅いわねミリム様」
ダイロス:「ティアノ少し落ち着いて」
ティアノ:「落ち着けるわけないでしょう!もしミリム様の身に何かあったら…ああああ!想像しただけでも恐ろしい!ミリム様を探しに行ってくるわ!」
グレイド:「心配し過ぎだ」
ティアノ:「ミリム様はまだ数千年程しか生きていない子供なのですよ!」
虚無:「確かにミリム様は俺より後に生まれているが、そこまで心配する事ないだろう?全くあの娘に心配する要素はないと思うが」
ティアノ:「‥‥‥は?」
虚無:「あっ…」
キョムの呆れた言葉は、ティアノの怒りの炎に油を注いでしまう。キョムも自身の失言に気づくが時既に遅く、ティアノからどす黒い怒りのオーラが溢れ出る。
グレイドとダイロスは巻き添えを食らわないように既にキョムから離れていた。
ティアノ:「ミリム様はあなたの姉弟子の娘なのよ。それなのになんでそんな事を言うの?」
虚無:「…すまん、今のは言いすぎた!おまえの気持ちも考えずの発言だった!本当にすまん!」
もし今ティアノが暴れた場合、グレイドですら止めることは可能ではあるが、骨が折れる程厳しい事態になってしまう。
しかもキョム達
ちなみにダイロスは、いざという時は一時精神世界に送るつもりだが、それには時間がかかるためどの道大変なことになってしまう。
そんな危険な雰囲気を一つの気配が消した。
ティアノ:「ッ!この気配」
ダイロス:「どうやら来たみたいだね」
虚無:「(助かった)」
グレイド:「(言葉には気をつけろこの馬鹿。今のティアノはミリム様のことになったら簡単に暴走するからな)」
虚無:「(ああ、分かったよグレイド)」
ティアノはミリムの気配を察知すると先ほどまでのどす黒い怒りが消えて安心しきった表情になると、キョムとグレイドは胸を下した。
そして、ティアノを先頭に四人はミリムの元へ向かった。
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ミリム達の案内役であるグレイド、ティアノ、ダイロス、キョムが広間から出て少しすると十名もの強者達がやって来た。
先頭にミリム、リュウエイの父であるミッドレイにヘルメスの三人。
その後ろの二人は元魔王のカリオンとホウテンの姉フレイ。
カリオンの後ろに三獣士が続き、アルビスの目はコウホウを真っ直ぐ見ていた。
フレイの後ろにいるのは、“双翼”という側近でルチアとクレアだった筈だ。
そうして思い出しながら、俺はミリム達の出迎えに向かった。
リード:「ミリム、来るのが遅かったが何かあったのか?」
ミリム:「り、リード‥‥‥」
ミリムは俺の手を見ると目線を落とす。
この前のラージャ小亜国から帰ってきた時から何か少し変だな。
フレイ:「リード殿、その件については深くお詫び致します。私共の主となったミリム様が、今朝方まで行方不明でしたもので、礼服を合わせるのに時間を取られてしまいした」
リード:「…そうでしたか」
フレイの報告は数日前から聞いて、俺も可能な限り探していたのだが見つけることは出来なかった。
それをフレイに謝罪したが、フレイは俺の事に大きな恩を感じていて、逆に協力してくれたことの感謝をされてしまった。
リード:「明日からのそちらの案内人にホウテン、コハク、リュウエイ、ティアノをおつけしますので楽しんで下さい」
フレイ:「そ、そうですか…お心遣い感謝します」
フレイはティアノも傍にいると知ると戸惑いを隠しきれず警戒しているようだ。
無理もない五百年単位で襲いかかる
リード:「ご安心下さい。ティアノは天使の襲撃には一切関与しておりません。この国の盟主として約束します」
フレイ:「…ふふ、本当にお見事としか言えませんね」
リード:「とおっしゃいますと?」
フレイ:「情報の価値を理解し、それを最大限に利用する。そんなあなたとはこれからも友好的な関係を築いていきたいです」
リード:「…それはこちらもですよ」
フレイは俺をそう評価して素直な意見を言うので、俺も素直な意見を言う。
今のフレイはミリムの悪影響になるものは極力避けようしている。俺がもしその対象になったらどうなることか。
そして、俺はグレイド達と共にミリム達を席に案内した。
後から
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ミッドレイ:「いやー
リード:「はい!実は胃袋を掴まれてしまい、彼女以外の料理だと完全に満足出来なくなってしまいました!」
ミッドレイ:「なんとそれは羨ましい!ワシも妻の料理を食べておけば良かったと後悔していますぞ!」
ミリム達が席に座り、ミリムとミッドレイに挟まるように座ったリードはミッドレイと完全に意気投合していた。
ミッドレイは後悔と亡き妻の自慢話を、リードはシュナの良いところを言い合って、お互い満足そうだった。
ミリムの手紙じゃかなり頑固者だったと書いていたが、どうなってるんだ。
俺はミッドレイの部下であるヘルメスに理由を尋ねるとヘルメスは苦笑いしながら答えた。
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それは、コハクとリュウエイがオービック跡地で起きた戦争の後片付けをしていた時、コハクは自分の作った料理をミッドレイに出したようだ。するとミッドレイは
ミッドレイ:「ザーグドの奴、我らの作法を教えておらぬとは!本当に何故こういうところは抜けているのだ!」
と文句を言い、コハクもカッとなって言い返すと口論が勃発してしまった。
ミッドレイ:「そこまで言っておらん!我らを巻き込むなと言っているのだ!」
激しくなる口論に、皆が見守るなかリュウエイが二人の間に入った。
虎白:「…えっ?」
リュウエイの言葉にコハクは固まるが、リュウエイはそのままミッドレイの前に出された料理の乗ったお盆を持っていこうとすると、ミッドレイがリュウエイの片腕の手首を掴んで阻止した。
ミッドレイ:「どういう意味だザーグド?」
龍影:「言葉通りです。
ミッドレイ:「屁理屈を…」
虎白:「こ、子供…」
リュウエイはミッドレイが最も気にしている事を引き合いに出すと、ミッドレイは作法か孫かで大きく悩み始めた。コハクは頭から湯気が出てきていつ倒れもおかしくなかった。
ミッドレイ:「…食えば良いのだろう」
ついに観念したミッドレイはスープを口する。
すると、ミッドレイの顔が驚愕の表情に一転した。
ミッドレイ:「こ、これは―――ッ!?」
龍影:「どうですか?複雑な味わいなのに生よりずっと美味しい。料理とは面白いものですよ」
ミッドレイ:「ッ!?」
この時ミッドレイの目にはリュウエイの笑みが亡き妻レイナと重なって見え、ミッドレイの瞳から一筋の雫が流れた。
ミッドレイ:(そうか…レイナお前が正しかった。すまない)
「ザーグド今まですまなかった」
龍影:「‥‥‥コハクの料理を全部食べたら、その謝罪は受け入れます」
ミッドレイ:「ああ、もちろん完食するぞ!」
ミッドレイはコハクと料理を食べていき、リュウエイも自分の分の食事を食べ始めた。
それを見ていたコハクは、
虎白:「良かったねリュウエイ」
そう呟いて、他の者の料理の配膳に戻っていった。
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リムル:「孫を引き合いに出したんだ…」
ヘルメス:「出しちゃったんです」
ヘルメスの話を聞いて俺はリュウエイに呆れもしたが、同時に感心もした。
リュウエイはコハクの事を手放す気なんて全くないだろう。だけど最近ユーラザニアの住人達がコハクの事を認め始め、さらには片思いを抱く者が出ているとスフィアから聞いた。恐らくリュウエイはそれを予想していたため、釘をさすためにそう言ったのだろう。
リードといい、リュウエイといい、一途な男だね。
そんなことをしているとシュナ達が料理を運んできて、料理を机に置きだした。
リード:「ありがとうシュナ」
…あの二人は一瞬の時間があったら二人だけの世界を展開出来るんだ?
最近は紅茶やコーヒーを飲んでもあの空間に出くわすと甘くなってしまう。
すると次の瞬間いきなりミリムが立ち上がり大広間から走り出してしまった。
リード・朱菜:「「ミリム(様)!」」
突然のミリムの行動に俺達は戸惑っていると、グレイド、ティアノ、ダイロス、キョムが立ち上がった。
グレイド:「リード様、シュナ様ここ俺達にお任せを」
虚無:「必ずミリム様を連れ戻してきます!」
リード:「…わかった頼む」
グレイド達:『ハッ!』
四人はミリムを追いかけて大広間から出た。
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ミリムの気配を頼りにグレイド達は森の中を進んでいくと、小さな草原でミリムを見つけることが出来た。
グレイド達は誰がミリムのもとに行くのか茂みの中で話し始めた。
ティアノ:「誰が行く?」
グレイド:「俺は嫌だぞ!氷漬けにされかかった事を忘れたのか?」
ダイロス:「僕も嫌だよ!羽根燃やされかけたし!」
ティアノ:「じゃあ私が───」
グレイド・ダイロス:「「(お前/君)は山一つ吹き飛ばさせただろう!」」
虚無:「…はぁ、俺が行く。この場で年齢が一番近いのは俺だし、話題に関しても俺が良いだろう?」
グレイド:「…頼む」
茂みから出たキョムはミリムに近づいていき、足元の小枝をわざと踏みミリムに気付かせた。
ミリム:「ッ!?お前は…」
虚無:「
ミリム:「‥‥‥」
虚無:「お隣よろしいですか?」
ミリム:「…良いぞ」
虚無:「ありがとうございます」
ミリムの許可を得たキョムはミリムの隣に座る。
ミリムは俯いたままで話そうとしなかったが、キョムは率直な事を口にした。
虚無:「リード様とシュナ様のことですか?」
ミリム:「ッ!?」
虚無:「やはり…ミリム様、実は俺はあなたの母上の弟弟子です」
ミリム:「え…?」
虚無:「少しあなたの母上について話しましょう」
キョムは、そのまま昔話を語り始めた。
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むかしむかし、一人の魔法使いの少女がおりました。その魔法使いの少女があなたの母上であるルシアで、あなた同じ
そしてその魔法の強さはなんと、あのギィですら認める程の凄まじく、素晴らしい魔法だったのです。
ミリム:「そうなのか!?」
ええ、あれ程の魔法使いは今の世界はいません。
そんな彼女には魔法を教えた師がいました。最初の頃は彼女は師としてその方を尊敬していましたが、いつしかその方を愛するようになったのです。
しかし、その想いが報われることは決してなかった。
ミリム:「え…っ?」
その方は別の女性を愛し、その女性もルシアの師を愛してしまったからなのです。
あなたの母上はとても悲しみました。偶然にもあなたと同じ場所に来て大泣きしていたのです。
しかし残酷な事に、あなたの母上は二人を嫌いになることが出来なかった。むしろその二人の事をまるで親のように慕うようになってしまったのです。矛盾する感情を心の中で秘めながら少女は美しい女性へと成長していきました。
そして、あなたの母上はあなたの父上と結ばれ、その二人の間に生れたのがミリム様あなたなのです。
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キョムの話を聞いたミリムは驚いていた。
自分の母親が自分と全く同じ気持ちを体験していることに、ミリムは驚きを隠すことが出来なかったのだ。
虚無:「ミリム様、あなたの気持ちは複雑に絡み合い苦しいことでしょう。しかし、今本当にしたいことをあなたは我慢している」
ミリム:「そ、そんなことはないぞ!私は魔王だからな!」
虚無:「魔王の前にあなたはまだ子供なのです」
キョムはそう言うとミリムを優しく抱きしめた。
ミリム:「お、おい!」
虚無:「ミリム様、我慢せず泣いてください。俺は最後まで付き合いますし、誰にも言いません」
ミリム:「‥‥‥良いのか?」
虚無:「いっぱい泣いて気持ちを整理をする。魔物も人間も共通の行動ですよ」
キョムの言葉にミリムは不思議な安心感を感じていた。それはかつて共に暮らしていた小竜とは違う。寄り添いながらも優しく包み込んでくれるような居心地の良さに、ミリムはついに抑えていたものが溢れ出した。
ミリム:「ふ、ふえぇぇえーん!」
世間では暴君、魔王と恐れられるミリムが十代の少女のように泣くその姿に、茂みから見守っていたグレイド達は安心した。
ミリムの親を知る者達として、強さだけでなく精神面での成長が起きる期待が出来るようになったから。
ミリム本人も今まで溜めていたものを吐き出し始めた。
ミリム:「リ、リードの指輪の事を聞いた時、リードの奴ワタシには見せなかった
虚無:「はい」
ミリム:「シュ、シュナもリードと同じ
虚無:「そうですか。よく頑張りましたね」
ミリム:「う、うわあぁぁー--!!」
ミリムはキョムの腕の中で声を出して大泣きした。
最古の魔王と言われるミリムであったが、キョムにとってミリムは妹のような存在であった。
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一通り泣いたミリムの手をキョムは掴んで大広間まで戻ってきたが、直前でミリムが抵抗を始めた。
ミリム:「なあ、行かないと駄目か?」
グレイド達:『駄目です!』
ミリム:「しかし…」
虚無:「ミリム様大丈夫です」
キョムはミリムの目線を合わせそう言うと、大広間に再び入ると、リードとシュナが駆け寄ってきた。
リード・朱菜:「「ミリム(様)!!」」
ミリム:「リード…シュナ…」
リード:「大丈夫か?心配したんだぞ」
朱菜:「ミリム様、どこか体調が優れないのですか?」
ミリム:「…っ」
二人が本気で自分を心配していたと知ったミリムは俯くが、すぐに顔を上げた。
ミリム:「私は大丈夫なのだリード」
リード:「そうか?」
ミリム:「それとシュナ」
朱菜:「はい、なんでしょう?」
ミリム:「ワタシの事はこれからは『ミリム』と呼んでくれ」
朱菜:「えっ?しかし…」
ミリム:「駄目…か?」
ミリムが不安そうな目で見つめられると流石のシュナも観念した。
朱菜:「わかりました。ではミリム、食事を食べてください」
ミリム:「うむ!」
ミリムはシュナに案内されて、元の席に戻っていった。
こうして、騒ぎも起きたが前夜祭は無事に終えることが出来た。
まったく、
さて、明日からとうとう
どれ程の者達が来てくれるのか楽しみだ。