挨拶するのは私達の主であるリード様。
リード様はなるべく長い時間を楽しんでほしいから短めで伝えると言っていたけど、それで私達の本心を伝えることは出来るのかな?
バルコニーで俺は、眼下に集った者達を見下ろした。
これだけの大人数で挨拶するのは俺の経験上ない。今までで最も多かったのは俺が時魔家当主の就任祝いの挨拶の時だったな。違いをあげるなら、あの時は欲望や敵視などの害ある視線だったけど、今回はそれは少なくどんな人物なのか知りたいという視線だった。中には目を輝かせている奴もいたがそれは気にしないでおこう。
俺はマイクを受け取って挨拶をした。
リード:「本日我が国の開国祭に来ていただいた皆さん初めまして、俺がこの
後半のセリフで何人かは顔色を悪くするが、俺の逆鱗を知ってもらうために我慢してもらおう。
リード:「勿論、手を取り合わなければ戦争ということはしない。まずはこの開国祭で我が国の事を知ってもらい、魔物だとか、人間だとか、魔王だとか、勇者だとか、そのような偏見をなくし、種族や出身、身分が関係のない良好な関係を築くことが出来るということを理解してほしい!そしてそれをこの開国祭に来ていない者達にも伝えてほしい!移住を希望する者は大歓迎だ!我が国はやりたいことが多すぎて、人手不足なのでね。それではテンペスト開国祭楽しんでください」
こうして短い言葉で本心を伝えた。
どう反応するかは、その時までわからない。だけど、伝えたいことは伝えた。
こうして、俺の演説を開始の合図として開国祭が幕を開けた。
シズさんは子供達を連れて屋台巡りをするようで既にリムルがお小遣いをあげていたが、
縁護義兄さんと
そして、俺とリムルは来賓した貴族達の案内があるのだが、俺は一日目だけで、二日目以降は自由に行動して良い事になっている。
そして先ず最初に紹介するのは、迎賓館を出てすぐの建物、歌劇場である
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リムルの
このレベルの音楽を最後に聞いたのは、犯罪組織のトップを捕縛した際最後の頼みでその組織お抱えの音楽家の演奏を聞いた時だったかな。
あの時は、疲れる世界にひと時の安らぎとゆとりを与えてくれたのを今でも覚えている。
みんなの演奏は、その時の音楽に匹敵する。
そして、リムルが拍手をしようとすると証明が完全に消え、細い光が二人の人物を照らし出す。それはドレスを着たシュナとシオンだ。
二人の演奏は、
曲を聞き、終盤に差し掛かったところで俺も二つのウォッチを取り出し変身した。
ライダータイム!ジオウ!アーマータイム!ガブッ!キバ!
ジオウキバアーマーに変身するとリムルが驚いた表情で見ていた。
リムルが開国祭の準備で色々追われているのに俺だけ何もしないのは筋違いだ。ここで印象に残る演出と演奏でさらに好印象を与えないと。
俺の魔素で生み出した白いコウモリと黒いコウモリがステージまでの道を作り、俺はその上を歩く。
照明は俺とシュナだけを照らし、シオンは既にステージから消えていた。
シオンが立っていた場所に到着すると二種類のコウモリは形を変えて俺の手に握られた。
恐ろしさと美しさを持った白と黒のバイオリンという、独特なこの色合いに観客は釘付けだった。
そして、シュナと視線を合わせ頷き合うのを合図に俺とシュナの
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俺はリードとシュナの
リードの不屈で強く時折弱さ感じる音色に、シュナの優しく包むような音色が見事な調和を生み出している。まるでいつもの二人のようだ。そして何より、二人の演奏の光景が俺には二人が息の合ったダンスをしているように見えてきた。おそらくここにいる者達は全員そう見えているのだろう。
なるほど、シズさんが子供たちと屋台巡りより先にここに来た理由も、煉武と
そして夢のような演奏が終わり、静寂に包まれると拍手の音が聞こえてきた。
俺も遅れて拍手をし、最初に拍手をした者を見ると納得した。最初に拍手をしたのは日向だった。その顔は、優しい笑顔をし、誇らしげな雰囲気もある。
その後、煉武にシズさん、子供達、ルミナスに、エルメシアやガゼル、西側諸国の王侯貴族達、フレイやヘルメス、ミッドレイに、ミリムまでも立ち上がり一斉に拍手を送った。拍手を送る者の中には感動のあまり涙を流す者もいた。故に断言できる。
この演奏は歴史に深く刻まれるだろう。それほどの大成功だった。
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王族:「なんと美しく素晴らしい演奏なのだ!」
貴族:「魔王リード様の言う通り、これからの時代は種族や出身で見極めるのは間違っていますわね」
貴族:「確かに!私も領土に戻ったら人選管理を見直さなくては!」
リードとシュナの演奏を聞いた王侯貴族の反応はとてつもなく良好だった。あれ程の演奏を聴いてリードの思いがこれだけ多くの人達に届く光景を見て俺は誇らしげになる。
ユウキ:「いやー見事な演奏だったよリード君!」
リード:「あれはキバの力もあっての腕前で、俺本来の腕前はさっきの半分もない」
嘘だ!だってさっき煉武が日向と話していた時、
煉武:『お前の手掛かりがなく、暇な時に演奏してたぞ。キバの力がなくとも聞き入ってしまう程だ』
日向:『そうなんですか』
煉武:『ああ、私たちも
日向は知らないだろうが、煉武はバイオリンに関してはとにかく口うるさい。そんな煉武が褒める程ということはリードの本来の腕前はプロの世界でも通用するということだ。リードの奴多芸多才だな。
そうして昼食の時間になった。
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昼食を済ませ、次に案内する建物は博物館である。
べスターとガビルが出迎え中に入ると、様々な資料が展示されており、中央の机には発表するための準備がされていた。
べスターとガビルの発表は回復薬の研究についての発表だったが、内容が内容なだけあくびをしてしまう者がいる。それに気づいたべスターも流石にまずいと思い、発表を進めた。
べスター:「では、趣向を変えてみましょう」
べスターがそう言うとガビルが以前自然義兄さんが稽古で折った剣を持ってきた。
べスター:「この剣に回復薬をかけた場合、剣は直せるか、誰かこの問題をお答え頂けるでしょうか?」
べスターの問いに、多くの者は直らないと答え中には馬鹿にしたような言い方をする者もいた。
魔術師:「治るわけがない!ヒポクテ草の薬効は、生物にしか適用されぬ!」
べスター:「では、どこまでが適用されるのか?これに関してはどうでしょうか?」
べスターのこの問いに苛立ちを露にする者が出てきた。
しかし当然だ。俺も事前に内容を聞くまでは彼らと同じ認識だったのだから。
ガビル:「フフフッ。我輩も、それを知りたいと思いした。知りたいと思う事、それこそが、新たな発見の入り口なのです」
べスター:「左様です。そんな馬鹿な実験は止めなさいと、私は止めたのですよ。ですが、愚かだったのは私の方でした。常識に囚われ過ぎて、研究者としての初心を忘れていました」
ベスターがそう言って
これにはみんな驚きの表情だった。
べスター:「これが答えです。完全なる再生には至らなぬものの、折れた剣は確かに修復の兆しを見せました」
ガビル:「そしてその秘密をある方が解明したのです!」
貴族:「ある方?べスター殿たちではないのですか?」
べスター:「いいえ、実は私はこの研究の発表を頼まれただけでこの事実はガビル殿とその方が見つけました!」
ガビル:「その方とは、こちらです!」
ガビルがそう言って俺達が入ってきた入り口とは反対の裏口に視線を向けると、ヤシチ達に担がれたベルンが入ってきた。
ベルン:「ちょ、ちょっと伯父さん!話が違う!」
べスター:「私が引き受けたのは回復薬の性能の発表であって、その秘密についての発表は研究者として、そして伯父として引き受けた気はありません」
ベルン:「ヒドイ!姪の頼みを断るなんて!」
王族:「あの~べスター殿、その方は?」
べスター:「おっと、これは失礼しました。では紹介します」
べスターが咳ばらいをすると、大声でベルンの紹介を始めた。
べスター:「皆さん、数年前にいた我が弟にして“ドワルゴンの盾”と言われた男と“ドワルゴンの頭脳”とその名を轟かせた女性研究者をご存知ですね?」
貴族:「ベスター殿の弟と言えば…」
騎士:「確か一人で圧倒的な防御力を持った戦士であるバスター殿だな。確か病で亡くなった」
王族:「ドワルゴンの頭脳と言われた女性研究者だと?」
魔術師:「確か、ベゼル殿でしたかな?バスター殿と同じ時期に亡くなっておりますが」
べスター:「その通り!彼女はそのドワルゴンにいた二人の英雄の娘なのです!」
騎士:「なんと…!」
魔術師:「あの女性が…!」
皆の視線がベルンに集まると、ベルンは恥ずかしさのあまりガビルの背に隠れようとしていた。しかし、それをガビルは阻止した。
ガビル:「ベルン殿。大丈夫です、あなたの研究は正当に評価されます」
ベルン:「ガビルさん…わかりました」
ベルンは観念して、べスターから残りの発表を引き継いだ。
ベルン:「ええ、皆さん発表する前に質問があります。高密度の魔素が溜まった空間に生物が長時間いたその生物はどうなりますか?」
魔術師:「そんなの、死ぬか突然変異で魔物になるに決まっている!」
ベルン:「では、その突然変異した魔物を倒したらその魔物はどうなりますか?」
騎士:「浴びていた時間が短ければ元の姿になって朽ちり、長時間浴びた生物はそのままの突然変異した姿のまま朽ちるに決まっているだろう」
ベルンの問いに皆が何をしたいのかと半ば呆れた目で見ている中、ベルンは気を強く持って発表を続けた。
ベルン:「その通り。実はそれが答えだったのです」
ベルンがそういうと、ガビルが二つの組織図が書かれた紙を貼ったボードを皆に見せた。
ベルン:「右の図はそこいらに生えている雑草の組織図で、左の図はヒポクテ草の組織図です。この二つを見比べて驚くべきことに、なんと二つの組織図は完全に一致したのです」
ベルンのこの説明で皆の表情が驚きに変わりかけていた。
ベルン:「今まで私たちは、ヒポクテ草は“魔素の濃度が高い場所でしか生息できない植物”と認識していましたが、それは大きな間違いだったのです。ヒポクテ草は“魔素の濃度が高いために突然変異した植物”というのがヒポクテ草の正体だったのです!」
ベルンが大きな声で研究結果を発表するとその場は静寂に包まれたが、すぐに大騒ぎになった。
ジェフ:「だ、大発見ではないかベルン殿!?何故これを他人に任せる!?それにこのような場所ではなく、それこそ学会で発表すべきでしょう!!」
あの人は確か自由学園の教師の一人であるジェフって人だったかな?彼の言葉にこの場にいた者は同意するように頷く者がいる。
ガゼルも驚愕に目を剥いているし、エルメシアさんもエラルドと何か話していた。
植物の生態系の判明はそれだけ大事な事だ。ましてや自分たちの常識を覆す事実はなおの事。
しかも、これらの事実を知るのは魔素濃度が高い
それにこれでベルンの自分を過小評価する癖がなおるといいけど、やっぱり強引過ぎたか?
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数日前、べスターとガビルがこの研究内容を事前に教えに来てくれていて、それを読んだ俺も驚いて少しめまいがした程だ。
リード:「凄いな。この研究結果が発表されたら間違いなく大騒ぎだな」
ガビル:「ええ。しかし肝心の発見者であるベルン殿が発表したくないと言っていて困っているんです」
ベスター:「最悪の場合、強行手段をとらないといけないのですが…」
べスターがわざとらしく目配せをし、俺はその意味をすぐに察した。
リード:「…こんな素晴らしい研究結果を他人に任せるなど言語道断だ。どんな手を使っても本人にやらせろ」
べスター:「かしこまりました」
ガビル:「ありがとうございます!」
あの時のガビルの素直さには、俺もべスターも少しにやけてしまったな。
ベルンの能力を他国に知らしめることが出来ればドワルゴンでのベルンの印象も良くなるはずだ。べスターはそう考えていたのだろう。
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来賓の全員がベルンを取り囲み、質問攻めにあっていたベルンはいろいろと限界が来たのかガビルの背に隠れてしまった。
流石に各国の王侯貴族の前で常識が覆る研究結果の発表はきつかったようだ。
しかし、やっぱりリムルは知らなかったようだ。現にベルンの発表を聞いて大分驚いていた様子だったし。
だけど開国祭一日目は、来賓の方々の反応をみれば成功か否かはすぐにわかる。あとは残り二日、この調子なら大丈夫だろう。
…それにしても、縁護義兄さんと自然義兄さんはどこに行ったんだ?
ひ、ひどい目あった…
伯父さんは人が悪すぎる。だけどガビルさんが傍にいてくれたおかげでなんとか発表出来たし、人手不足が解消されればそれでいいかな。
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煉武と日向は夕方に別れ、日向はリードの元へ、煉武はミョルマイルの元へ行っていた。
煉武は、ミョルマイルからの報告を聞くとため息を吐いた。
煉武:「この事は
ミョルマイル:「わかりました。ではまた後ほど」
ミョルマイルは仕事部屋から出て残っている今日の分の仕事の対応に向かった。
一人になった煉武は近くの椅子に腰かけた。
煉武:「‥‥‥また面倒な…」
(しかし、こんな事で縁護達の楽しみを奪う訳にはいかんな)
煉武は気分を落ち着かせるために数分仮眠をとると、ミョルマイルの仕事部屋を出た。