転生したら天魔人だった件   作:通りすがりの気分屋

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今日は俺グレイドがやらせてもらう。
開国祭一日目は大成功としか言えなかった。
ベルン達の研究結果に、リード様とシュナ様の演奏という至福の時。あの場にいた人間たちは幸運としか言えないな。
しかし、どうやら何か問題が起きたようだな。


開国祭一日目・夜

レミンからルミナスが俺とリムルに用があると伝言をもらい、俺はコウホウとウォズそしてレミンを、リムルはベニマルとシオンを連れてルミナス達がいる部屋にやって来た。

部屋に入るとメイド服を着て寛いでいるルミナスと、レミンの実の父親で姉さんの後任として神ルミナスに選ばれた騎士と世間で知られているレントがアルノーとバッカスと共に後ろに控えていた。

 

ルミナス:「さて、貴様達とは不可侵条約を締結しておる訳だが‥‥‥足りぬな」

 

開口一番にルミナスにそう言われたが、いったい何が足りないのか俺達はよく分からなかった。貿易関係の事を言うとは考えにくいし、それ以外となると姪であるレミンが何かわかるはずだ。

レミンに視線を送り、それに気づいたレミンは予想していたのかため息をついていた。

 

レミン:「伯母様は文化交流をしたいとのことです」

 

レミンは呆れた目つきでルミナスを睨むと、ルミナスも今のは言葉足らずだったと思っていたのか単にレミンの視線が怖かったのかわからないが、視線を移した。

するとレントが割って入ってきた。

 

レント:「まあでもあの演奏は見事だったぜ。ルベリオスの吸血鬼族(ヴァンパイア)も音楽に夢中の奴らがいて、二千年前に比べると上達したんだけど微妙でな」

 

確か吸血鬼族(ヴァンパイア)は太陽に克服して昼でも自由に活動できる者達のこと『超克者』というらしい。

そしてレントの話をまとめると、今日の発表で吸血鬼族(ヴァンパイア)の中にも研究者や芸術に精通する者達がいるのだが最近マンネリ化しているらしく、刺激を与えるために魔国連邦(テンペスト)に招待してほしいとのことだ。

だけど、レミンの話じゃ『超克者』たちは支配階級の存在だから、不満を抱いてトラブルが起きないか不安だ。リムルも同じことを心配しているようだ。

すると、ルミナスはそんな俺達の心配を予測していたようだ。

 

ルミナス:「無論、褒賞はそれぞれ用意するぞ。リードには我が妹と配下である『王族防衛騎士(ロイヤルガーディアン)』の四人をやり、リムルには一つ技を授けようではないか」

 

リード:「『王族防衛騎士(ロイヤルガーディアン)』?」

 

レミン:「ルーク達は生きているんですか!?」

 

王族防衛騎士(ロイヤルガーディアン)』とは、かつてレントがレミンの母親に護衛する配下がいなかったことを案じ当時彼らが住んでいた都付近の戦争で瀕死の重傷を負っていた四人の獣人族(ライカンスロープ)吸血鬼族(ヴァンパイア)の力を与え主従関係を結んだ者達のことで吸血獣人族(ヴァンパイアキメラ)と独自の進化をした者達の事らしい。

ルーク、ビショップ、ナイト、ポーンというチェスの駒の名前を持つ四人で、なんと今魔国連邦(テンペスト)に来ているようだ。

 

ルミナス:「明日にでもレミンの元へ向かわせるぞ。もし何かトラブルが起きてもあの者達なら問題はない」

 

リード:「わかった。俺はそれで構わない」

 

レミン:「ありがとうございますリード様」

 

リムル:「それで、俺にはどういう技をくれるんだ?」

 

ルミナス:「うむ。リムルには“信仰と恩恵の秘奥”を授けよう」

 

リムル:「“信仰と恩恵の秘奥”?」

 

初めて聞く技にリムルがオウム返しをすると、ルミナスが詳しく教えてくれた。

簡単に言うと、リムルを信じる者がリムルの力の一部を行使できるようになる技らしいが、それって…

 

リード:「それって、今の俺の配下達に似てるな」

 

ルミナス:「なに?」

 

レント:「どういうことだ?」

 

黄奉(コウホウ):「我も仮面ライダーゴーストの力を得てから、異常なまでの聖魔属性耐性を得たのです」

 

レミン:「私も、キバの力を得てから神聖魔法が使えるようになりましたよ」

 

リムル:(どういう事だ?)

 

智慧之王(ラファエル):『解。人魔混合隊(トライブ)の仮面ライダーの力はリード=テンペストの所持していたレジェンドウォッチから得たものであり、力の繋がりによって獲得できたのだと推測されます』

 

リムル:(なるほど、俺のゲイツウォッチはそんな繋がりがないから使えなかったってことか)

 

リード:「だけど、リムルも神聖魔法を使えるようになったら他のみんなも使えるようになるから対価としては釣り合うな」

 

リムル:「確かにな。ルミナスその条件で頼む」

 

ルミナス:「うむ。契約成立じゃな」

 

ルミナスが“信仰と恩寵の秘奥”をリムルに教えもらい、非常に有意義な会談が終わった。

そして最後に、

 

ルミナス:「ところでリムル、リードよ、貴様達が招いた来賓共の中に、少し不快な気配と妙な気配を纏う者共がおったが、気付いておるのだろうな?」

 

リード:「ああ」

 

リムル:「不快な気配の奴は二人、妙な気配は一人の計三人だろ?」

 

ルミナス:「ふむ。さすがはあのレンムの義弟(おとうと)と友人じゃな。九星魔王(エニアグラム)の名を貶めぬよう、せいぜい心掛けるが良い」

 

ルミナスの言葉を合図に会談は終了した。

妙な気配の狙いは俺達時魔兄弟の可能性が高い。姉さんと一緒に屋台巡りをしていた煉武(レンム)義兄(にい)さん、それに見回りをしていた生夢(ショウム)義兄さん、ヴェルドラの鉄板焼きを手伝っていた釈迦人(シャカト)義兄さん、夕方まで姿が見えなかった縁護(エンゴ)義兄さんと自然(シゼン)義兄さんまでも妙な気配を感じたと言っていたからまず間違いないだろう。だけど明確な敵意がないから問題ないと思う。

さて、俺はアイツのところに行くか。

 

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

 

封印の洞窟付近にある草原にシュナが作ってくれた料理の入っている弁当を持って俺は到着した。

そして草原には金髪で最近世間で有名な勇者である正幸(マサユキ)がおり、俺の姿を確認した直後蹴りを放ってきた。

俺は弁当を高く投げ上げ、正幸の攻撃に対応しながら動きを観察し、指導をする。

 

リード:「自分より格上の相手に先手を取るのはなかなか良い判断だが、蹴りはダメだ。機動力がなくなる」

 

正幸の繰り出された足を掴み、その力をそのまま利用して正幸を地面に叩きつける。

 

正幸:「カハッ!」

 

リード:「だけど反応は良かったし、動きも早くなっているからそれで妥協点だな」

 

落ちてくる弁当を掴み、先ほどのマサユキの採点を言うと、マサユキは目を見開いていた。

 

リード:「しかしまさかここまで強くなるとは思っていなかったな。凄いぞ正幸」

 

正幸:「‥‥‥やっぱり…先輩なんですか?」

 

リード:「嘘だと思うなら、向こうの世界で人通りの少ない道での俺達の出会いを言ってやろうか?」

 

正幸:「ッ!?せ、先輩ー--!!」

 

俺達二人しか知らない出会いの場所を言うと正幸は確信を得たのか泣きながら俺に跳びかかってきたので、俺は今いる場所から横に一歩ずれると丁度後ろにあった木に顔を強くぶつけた。

 

リード:「涙は許すが、鼻水はダメだ。なんとかしろ」

 

正幸:「は、はい…」

(ああ、この感じやっぱり聖司先輩だ)

 

俺は『万能空間』からシートを出して夕食の準備を始めた。

 

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

 

煉武から弟妹(リード)達とシュナ、フラメア以外を会議室に集まるよう言われ、皆が会議室に集まると煉武が開口一番にとんでもないことを言った。

 

煉武:「大問題が発生した。支払う金がない」

 

リムル:「どういう意味だよ!?」

 

事が事であったためつい突っ込んでしまったが、本当にどういう事だ?

クレイマンの居城から大量の金銀財宝を回収したし、ディアブロとグレイドがファルムス王国から賠償金として星金貨千五百枚があるから支払いは問題ないはずだ。

 

煉武:「さっきも言っただろう。支払う金貨がないんだ」

 

紫苑(シオン):「どういう事ですか?」

 

煉武:「まずお前たちがクレイマンの居城から回収した財宝なんだが、あれは芸術的価値はあるが、貨幣としての価値はない。ドワルゴンから発行する共通金貨が今の主流だ。それと星金貨なんだが、あれは商人との取引では効果はない。金額が大きすぎて国家間の取引で使うのが普通なんだ」

 

煉武の分かりやすい説明に皆が事の重大さが明確に伝わったようだ。

 

紅丸(ベニマル):「なるほど。支払う金がないというのはそういうことのですね」

 

煉武:「ああ。ミョルマイルと長い付き合いがある大店の者達は融通が利くのだが、小売商が揃って金貨の支払いのみと求めてきた。あれは西側諸国では正当な要求でもあるから拒否することは難しい。前もって証文や財宝での支払いになる場合もあると伝えていたのだが、念書も用意すべきだったな。すまないミョルマイル。私の失態だ」

 

煉武がミョルマイルに頭を下げるとミョルマイルは慌てだした。

 

ミョルマイル:「な、何をおっしゃいますか!?レンム様は家族全員が揃って喜んでおったのでしょう。それならレンム様の責任ではありません。むしろその事を失念していたワシの責任です!」

 

リムル:「どっちのせいでもないよ。それより今は…」

 

ディアブロ:「小売商達の対応ですね。今のレンム様のお話ではその小売商たちは結託しているのは明確です」

 

グレイド:「しかも、こんな事をする意味がない。おそらく何者かの命令で動いているのでしょう」

 

煉武:「それは間違いない。おそらく目的は私達に取り入る事だろうな」

 

紫苑:「何故そんな回りくどい事をする必要があるのですか?」

 

リムル:「えっ?」

 

紫苑:「リムル様とリード様の構想は、サリオン、ブルムンド、ドワルゴン、ファルムス─じゃなくて、ファルメナス、そして魔王ミリム様の魔王領。これらの国々で共栄圏を作り上げるのですよね?その中心にテンペストを置く以上、我々を無視する方が損失が大きくなるのでは?」

 

煉武:「確かに私達から見ればそうだが、他の組織から見ればそんな簡単な事ではない」

 

ガビル:「どういう事ですか?」

 

煉武:「人間は多様な生き方を出来るが、力の魅了には弱い。特に権力という自分の思い通りに動かすことが出来る力は弱い人間の中で最も魅力的なものだ。しかしすぐ隣にそれを脅かす存在が現れれば、それを撃退あわよくば取り入る事を企む。それが人間だ」

 

紅丸:「つまり、リムル様とリード様が築く共栄圏が評議会の権威を脅かすものになるということですか?」

 

煉武:「その通り」

 

煉武の説得力のある説明にベニマルが答えると、ディアブロが楽しそうに嗤い出した。

 

ディアブロ:「クフフフ。リムル様とリード様の慈愛を受け入れぬ愚かな支配層など、滅ぼしてしまえばいいでしょう」

 

紫苑:「フフッ、第二秘書もそう思うか」

 

ウォズ・グレイド:「「シオン君/ディアブロ」」

 

ディアブロの考えにシオンが賛同するが、先輩であるウォズと兄貴分であるグレイドがお説教をして大人しくなった。

ウォズとグレイドにはいつも感謝している。武力行使はあくまでも最終手段ということをよく理解している。

 

蒼影(ソウエイ):「レンム様、先ほど何者かの目的は俺達に取り入ろうとすることと言っていましたが、その理由は?」

 

煉武:「簡単だ。暴力での支配より恩や借りを作った方が動かしやすい」

 

リムル:「どういう事だ?」

 

煉武:「金貨の用意が出来なければ頼まずに仲介する者が現れる。そいつが仕掛け人だろう。そして自作自演で解決させることで、私たちに恩を売りつつ、商人を通して我が国の信用を無くすことができる」

 

リムル:「なるほどな。よくわかったな」

 

煉武:「力だけでどうにかなるほど、裏の世界は甘くない。それと仕掛け人もおそらくトカゲのしっぽだろう。文句を言っているのが小売商なのは露骨すぎる」

 

ディアブロ:「欲深い。実に人間らしい考えです。大変勉強になりました」

 

蒼影:「ではその者が現れたらその背後を丸裸にすればよろしいのですね」

 

ゲリオン:「俺達も手を貸そう」

 

蒼影:「助かる」

 

煉武がいてくれて本当に助かる。裏の世界から狙われ続けてきた経験がこの世界では十分すぎる程通用している。

幸いにも支払いの期日は開国祭が終えて翌日、つまり三日後だ。それまでにはなんとかなるだろう。

 

煉武:「それと全員、この事は縁護達には内密で頼む。折角の祭りに余計な心配をさせたくない」

 

全員:『わかりました!』

 

リード達を呼ばなかったのはやはりそういう理由か。シュナやフラメアはリードと自然と長時間行動を共にしている。それで気づかれる可能性があるからよばなかったのか。

確かに縁護に頼めばこの問題は解決するけど、アイツが稼いだ金を国での問題に使いたくない気持ちは俺も同じだ。

こうして煉武が中心で行われた今夜の会議は解散となり、俺はミョルマイルを強引に誘って夜の祭りに遊びに行った。根を詰めすぎると大変な事になるのは、縁護達やリードでいやという程経験していたから簡単に説得が出来た。

その時、コハクが

 

虎白(コハク):「程々にしてくださいねリムル様。そしてレンム様達も」

 

後ろに巨大な白虎が見える程の覇気で全員に釘を刺した。横にいたリュウエイもわずかに冷や汗を流していた。

コハク、ますますシュナに似てきな。

 

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

 

正幸:「恋人がいる!?」

 

リード:「そんなに驚くか?」

 

正幸:「それは勿論!『冷血貴公子』と言われ、告白した女子全員の心をへし折ったあの先輩に恋人が出来るなんて驚きですよ!」

 

リード:「ほう?どうやら関節全部外されたいらしいな」

 

正幸:「すいませんでした!」

 

俺に恋人がいることに正幸は失礼な発言を連発させる。いくらあの時の俺に余裕がなくてもその言い方は失礼だろう。

 

リード:「しかし、お前のスキルって便利だな。もし軍隊でその効果が発動したらゾッとする能力だ。万が一にも勝てるんじゃないか?」

 

正幸:「勘弁してください。先輩に色々教わって相手の力量が大体わかるようになってから、先輩との差をさらに感じてるんですよ」

 

正幸のユニークスキル『英雄覇道(エラバレシモノ)』は自分にとって都合のいいように物事が動くというとんでもスキルなのだが、常にそれが常時発動して自分では制御できないらしい。

一年、俺の命日に義兄さん達と一緒に訪れた直後綺麗な女性に目を奪われ、自然義兄さんの声が聞こえ振り返るとこの世界に転移していたようだ。

その後、色々な問題がやってきては本人が解決し、あれやこれやとしていくうちに勇者と呼ばれるようになったそうだ。

そして俺の存在を知り、バラキア王国を隠れ蓑にしていた奴隷商会(オルトロス)を壊滅させ、捕らえられていたエルフ達を送り届けることを理由にやって来たようだ。

俺ならこのスキルをなんとか出来るんじゃないかという期待を抱きながら、

 

リード:「けど、このユニークスキルは俺じゃどうにもできないな」

 

正幸:「そんな~」

 

リード:「まあでも、能力を把握すれば何とかなるだろう」

 

正幸:「その根拠は?」

 

リード:「経験」

 

正幸:(割としっかりしてる)

 

リード:「はっ倒されたいか?」

 

正幸:「心読むのやめてください!それとすいませんでした!」

 

このやり取りも久しぶりだな。

こうして俺達は、日にちが変わるまで飲んで食べての雑談を楽しんだ。

明日の武闘大会は出場するようだが優勝するつもりはなく、適当なタイミングで俺との関係を暴露してテンペストの印象を良くしてくれるそうだ。




こうして、開国祭一日目を終えることが出来た。
さてさて、二日目の武闘大会は一体どうなるのか楽しみだな。
しかしあのマサユキとかいう小僧、アイツにそっくりだったな。もしそうなら…いやあり得んかそんな都合の良い話。
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