我が国の開国祭最後のイベントである
しかし、このイベントも果たして穏やかに終わるのだろうか…
理由はさっきラミリスから聞いた。
どうやら
正幸のパーティはそのおかげで既に四階層目にいる。
しかし、理由はそれだけではない。なんとエレンたちに宣伝役を頼むことを条件に一階層目の地形と
これの情報のせいで、エレン達は
リムル:(釈迦人のヤツ、今日の開放が終わった後に落とし穴は全部撤去するって言ってたみたいだが、そういうのは事前に知らせておけよ)
リムルが不満を抱きながらモニターを見て隣にリードに目線を向けると、先ほどと姿勢を変えずにずっとマサユキ達が映っているモニターに注目していた。
リード:(正幸のヤツ、やっぱり腕を上げたな)
俺はそう思いながら正幸のパーティの攻略を見続けた。
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順調に進んでいる正幸たちのパーティ、そこで正幸以外のメンバーがあることに既に気づいていた。
バーニィ:「マサユキ君今日は調子良いね」
正幸:「え、そう?」
ジンライ:「確かに、俺と初めて会った時と同じくらい動けてますよ」
ジウ:「ここ最近動きが鈍ってきてましたよね」
正幸:「ま、まあこの国凄く居心地が良いんだ。温泉なんて疲労回復効果があるから」
ジンライ:「へぇ~」
バーニィ:「確かにそうだね」
ジウ:「それに美肌効果もあるからそういった点は認めます」
適当な理由で誤魔化し、ジンライたちを納得させるが本当は違う。
正幸の調子が良い理由は、先輩にして師であるリードと再会したあの夜だった。
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夕食を済ませ一息つく正幸、リードにこの世界で経験したことや話したいことなどを頭で整理していると、リードが突然正幸の体を触り出した。
正幸:「せ、先輩?」
突然の行動に戸惑う正幸を無視し、リードは全身というより手足や胴体を触っていく。そしてリードの手が正幸の体から離れると、リードはジト目で正幸に質問した。
リード:「正幸。まさかだと思うけど、見よう見まねで俺の
正幸:「え?は、はい…」
そう答えたと同時にリードの拳骨が脳天に直撃した。
あまりの痛みに正幸は涙目になり、頭には大きなたんこぶが出来上がっていた。
正幸:「い、いきなり何するんですか!?」
リード:「この大馬鹿!!前にも言っただろう!!
正幸:「だ、大丈夫ですよ。
リード:「ド阿呆!それをニ、三回だと!?運が良かったな!最悪二度と剣が持てない体になってたぞ!!」
正幸:「で、でもあの時はああするしかなく…」
リード:「言い訳無用!今すぐ治療する!」
正幸:「え?ちょ、ちょっと待ってください先輩…ぎゃああああー---!!」
リードの地獄の激痛付きの治療によって正幸の体はかつてないほどの回復をみせたが、正幸にとっては思い出したくもない恐怖の一つとなった。
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そんな事を思い出しながら(後半の部分は封印して)先に進む正幸たちのパーティ。度々襲い掛かる
リードの弟子として稽古を受けてきた正幸は常人より圧倒的な速さで集中力を高めることが出来、大抵の
正幸:(リムルさん、
そう思いながら正幸はさらに地下へ進んでいった。
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俺は正幸の成長ぶりに違和感を抱いていた。前世で後輩兼弟子だった正幸は集中力が高く、
だけど、集中力が
リード:(正幸のあの集中力が
リムル:「…ド、リード!」
リード:「あっ、ごめん。リムル何?」
考え事に集中し過ぎて、リムルから強く呼ばれて反応する。それを見たリムルは呆れたような溜息をはいた。
リムル:「後輩が心配なのはわかるけど、他の参加者もみとけよ」
リード:「え?」
リムルが正幸たちのパーティとは別のモニターを指さすと、“豪雷”のパーティが
正幸たちに気が向き過ぎていたようだが他の参加者も各々進んでいるようだ。他のモニターを見ればすぐにわかる。
釈迦人義兄さんから情報を得ていたエレンたちも動いたようだ。
この
銀箱はさっき“豪雷”が見つけたが、金箱は十階層ごとにいるボスを倒すか、
エレンたちは釈迦人義兄さんが勝手に設置した落とし穴を利用してエリアボスのいる階層まで進んでいく。
おそらく釈迦人義兄さんが大量の落とし穴を勝手に設置した理由はこれだろう。正攻法では時間内に宣伝することは難しいが落とし穴を利用すれば時短にもなる上に宣伝も出来る。正幸のスキルは既に義兄さん達やリムルにも伝えてあるから幸運を利用してボスと戦わせるつもりだろう。エレンたちには
このイベントが終わってたら少しの間調整のため開放を中断するからその時に、落とし穴は全て撤去するようだが、既に宝箱の宣伝をしているから冒険者達にとっては問題ないと考えていたな。
そしてエレンたちは
ギド:「うお!
エレン:「慌てないで、ガバルお願いねぇ!」
カバル:「血を吸われるの嫌なんだけど!」
エレンの指示に文句を言うカバルだが、
そして、カバルが注意を引き付けている間に、エレンの魔法が完成する。
エレン:「いっくわよぉー--!!」
二年前のイフリートの戦いでリムルが使った魔法をエレンは使ってみせた。それはつまりあの時のイフリートともいい勝負が出来る可能性があるって事になるな。
シズ:「今の彼女たちなら昔のあなたといい勝負が出来るんじゃない?」
イフリート:「否定はしない。しかし、今の私には勝てまい」
シズさんの肩に乗るくらいのサイズで現れたイフリートはエレンたちの成長を認めつつも、自分も強くなっているという自慢もした。
ギド:「剣、でやすね…」
カバル:「剣だと!?」
エレン:「魔法使い用の防具が欲しかったのにぃ」
カバル:「やったぜ、俺の頑張りを天は見ていてくれたんだ!」
金箱から出たのは、
エレンたちは支給されたアイテムである“帰還の
ある程度見終えて再び正幸のパーティを見ると、残り時間あと五十分以上あるのに十階層に到着していた。
確か十階層の
ジンライ:「でりゃあっ!!」
ジンライの一撃で終わった。
正幸のスキルでかなり強化されてる上にほとんどのモンスターは正幸一人で対応してたからな。他の三人はそれほど消耗してなかったから当然と言えば当然の結果だ。
金箱から
その直後にガイがボスのいた部屋に到着する。
しかし、
ガイ:「チッ、クソ勇者に先を越されたか。まあいい。さっさとボスとやらを復活させろ!」
偉そうにガイはそう要求するが、確かこの場合って…
ミョルマイル:『ふむ。ボスは三十分程度で復活するそうですな』
蒼華:『それは当然、金の宝箱もでしょうか?』
ミョルマイル:『そう聞いておりますぞ。そうしなけば、ボスの奪い合いが起きるのではと、リムル様とシャカト様は心配されていたそうですな』
残り時間はもう十数分しか残っていない。つまり今回は時間切れという事だ。
そう伝わると、ガイは逆上してきた。
ガイ:「ふざけるな!この俺様に指図する気か?貴様等が無能なのは理解したが、この俺様がそれに合わせる理由などない!さっさとボスを復活させやがれ!」
おおっと、ガイの暴走がこれ以上深刻になるとまずいぞ…
多分この光景はもう見ている頃だから、これ以上何か言うなら…
ガイ:「フンッ!!無能の主もまた無能。貴様等のような無能共が定めたルールなど、この俺が守る必要など断じてないのだ!!」
釈迦人:「へぇ~、じゃあその無能に負けたらいい笑いもんだね」
あっ、ここでガイの迷宮探索終了のお知らせの音が聞こえてきた。しかも丁寧に“復活の腕輪”の痛覚遮断機能を解除した上で声をかけた。
釈迦人義兄さんが転移魔法でガイの後ろに気配を完全に消して現れると、ガイは咄嗟にジャンプして距離をおくが釈迦人義兄さん相手にそれは悪手だ。
ガイ:「だ、誰だテメェは!」
(あり得ない!この俺様が気づかなかっただと!?いや、まぐれに決まっている!!)
釈迦人:「俺は
ガイ:「ハッ!本来なら貴様のような無能の提案など乗らんが、良いだろう受けてやる。だが約束は間違えるなよ」
ガイが偉そうにそう言っている間、釈迦人義兄さんがそこら辺に転がっている自分の拳くらいの大きさの石を手に持つ。
自信過剰すぎるのがここで災いしたな。
ジンライ:「マサユキさん、なんで手を合わせてるんですか?」
正幸:「僕の故郷のやり方だから気にしないで」
モニターで見ていた正幸も既に勝敗が決している事に気付いてガイに対して両手を合わせる。
ガイ:「魔王リードの義理とは言え兄を倒せば俺の名に箔が付く。俺の名誉のために死ね!!」
ガイが剣を大きく振るって襲い掛かろうとしたその時、釈迦人義兄さんは持っていた石をすさまじい勢いで投げ、ガイの頭の半分を吹き飛ばした。
そしてガイは光の粒子になって消えると気絶した状態で入り口に戻ってきた。当然今まで回収した宝箱の物も没収された。迷宮で問題行動を起こせば容赦なく粛清される。態度に問題アリとは言え、Aランクのガイが瞬殺されたその光景は、この観客達もそれを実感させられた光景であった。
ソーカ達が説明しているなか、姉さんが釈迦人義兄さんに対しての説明を求める視線を送ると、煉武義兄さんが説明してくれた。
煉武:「アイツは自分の手に馴染むものなら全て武器として使うことが出来る。ペンだろうが、スプーンだろうが、それこそ石だろうが手に馴染めば殺傷能力が高い武器となる」
絶句するのは当然だ。言い換えれば縁護義兄さんとは違う意味で触覚が優れているという事なのだ。
そして制限時間までいたバッソン達“豪雷”も戻ってきた。
参加者が全員揃うとリムルが最後の挨拶を始める。
リムル:『どうだったかな?楽しんでもらえただろうか?この
リムルのこの宣言ははっきり言って不可能だ。地下百階層はヴェルドラがいるからヴェルドラを倒せば良いという事になる。しかし、百階層に到達すること自体姉さん並みの実力者じゃないと不可能という話だが、冒険者達はそれ以上の利益を得る事になるから問題ないだろう。
現に観客席は大いに歓声を上げる。
これで開国祭は無事に終了した。
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開国祭の最終夜は今までで最も盛大な夜会が催された。ベニマルとコウホウはヒイロさんと酒を飲み、縁護義兄さんはエルメシアさんと食事をし、
リムルは飲みすぎで少し酔っていたが、煉武義兄さんとシズさんが相手をしている。
姉さんはルミナスの相手をしており、釈迦人義兄さんはヴェルドラとラミリス、ミリムと一緒に騒いでいた。
目を覚ました自然義兄さんもフラメアやヨウムと共に食事を楽しんでいた。
俺はその光景を目に焼き付けようと眺めていると、目の前で少女が転びそうになり、咄嗟にそれを防いだ。
リード:「おっと。大丈夫ですか?」
マリアベル:「ええ、ありがとうございます。魔王リード様」
リード:「!?」
少女がいや、俺たちに対して敵意を向けていた者が笑顔でお礼を言うと、俺の中で何かが暴れ出した。
マリアベル:「どうかしましたか?顔色が悪いですよ?」
リード:「いや、大丈夫だ…」
白々しく心配するフリをするがおそらく彼女はユニークスキルの所有者だろう。おそらくガイもコイツに影響を受けているのだろう。
だけど今は、この場から去るのが一番だ。
リード:「気を付けるんだよ」
俺は、なんとか理性を働かせて会場から抜け出し、家に出来るだけ急いで帰った。
そんな俺の姿を見ていた者がいるのに気づかずに。
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リードが会場を出たのを見たマリアベルはリードに一種の敬意を抱いた。
マリアベル:(驚いた。驚いたの。まさか自身の最も強い欲望を抑える者がいるなんて…)
マリアベルのユニークスキル『
それはリードの傍にいた
マリアベル:(
リードの最も強い欲望、それはシュナの存在そのものだった。マリアベルは対象の欲望の大きさを知ることが出来、リードの欲望の強さもそれで知った。そして、リードとシュナが恋人同士であることも既に知っていた。
マリアベル:(あの
故にマリアベルは、この欲望を利用すると決めた。
マリアべル:(
マリアベルは挨拶程度のつもりでリード=テンペストの欲望を刺激させた。成功すればそれで良し。失敗したとしても自分が犯人であるという物的証拠がないため言及されることはない。マリアベルはそこまで考えた上であのような行動をしたのだ。
やることを終え、料理を取りに行こうとすると、リードの義理の兄である煉武とすれ違った。
そしてその時、マリアベルは覚えるのある殺気を感じ取った。
マリアベル:「!?」
横目で煉武を見上げると完全に敵視した目で見下し、口パクでこう伝えた。
煉武:「(次はないぞ。小娘)」
煉武の姿が後ろだけになると、マリアベルは僅かに出た汗を拭った。
マリアベル:(なんなの、なんなの今の…今の殺気、
マリアベルは、あまりに強すぎる殺気から逃れるように自分が泊っている部屋に帰っていった。
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リード:「ハァ…ハァ…ハァ…」
なんとかシュナに会わずに家に帰りついた俺は、『万能空間』からナイフを取り出し自分の手を傷つける。
少しでも自分の中の欲望を抑えこむために、何度も傷を治し何度も自分の手を大量に出血させ、激痛で自分の欲望を抑え込もうと必死だった。
『状態異常無効』が発動しない大きな要因はおそらく、今この状態が俺が今まで抑え込んでいた感情でそれが対象外だからだろう。
今も俺の中の欲望が溢れ出しそうだ。
リード:(シュナの声が聞きたい。髪を撫でたい。キスをしたい。触りたい。そして…)
「ダメだ!抑えろ!」
必死に欲望を抑えこもうとナイフで自分の手を傷つけると、家の扉が開いた。
扉の方を見ると薄着を来たシュナがそこにいた。
リード:「シュナ…何をしてる、寒いだろう?今何か着るものを…」
俺の言葉をシュナはキスで無理やり止めた。
リード:「!」
(マズい、欲望が!)
お互いに口が離れるとシュナは真っすぐ俺の目を見た。
リード:「だが…」
朱菜:「わたくしだって今まで我慢していたのですよ。安心してください。ショウムお
リード:「…良いのか?」
朱菜:「構いません」
リード:「シュナ…!!」
再びキスをし、今度は長めにする。そして再びお互いの唇が離れて俺達は寝室に向かった。
そして今まで求めていた渇きを満たす夜へとなり、俺とシュナはさらに強く深く結ばれていったのを感じる夜にもなった。
さて、俺が確認したのはシュナ様苦しむ(俺達は気づかなかったが)リード様の姿を見て、自分の持ち場を予定より早く切り上げて帰宅された所までだ。これ以上の事は何も知らぬ。リムル様とリード様、ヴェルドラ様や時魔兄弟の皆様の名に懸けて誓おう。
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夜会の席でリムルと煉武は酒を飲みながらリードとシュナの事を案じていた。
リムル:「大丈夫かね二人とも」
煉武:「大丈夫だろう。あの二人にはこれくらいの報酬が丁度いい。それより
リムル:「ああ…」
リムルと煉武は来賓の王族や貴族に囲まれている生夢の会話に聞き耳を立てており、その内容が既に不愉快なものであった。
王族:「生夢殿、今度我が娘と一度会ってくれませんか?」
貴族:「いいえ!我が国王女と一度お会いください!きっと気に入りますよ」
はっきり言えば魔王リードに取り入ってもらおうとすることで必死になっている王侯貴族たちの相手をしている。
実の姉である日向は言わずもがな。
義理の兄である煉武は既に魔王リムルと魔王リードと互角の実力があるという情報が流れており、縁護と自然は武闘大会でその恐ろしさを直で目撃し、釈迦人はガイの一件で軽く実力を示したことで、これといった行動をしていたない生夢に白羽の矢が立ってしまったのだ。
リムルと煉武は、怒りのオーラを出しながら生夢の元に行こうとするが、それよりも早く生夢は対応した。
生夢:「申し訳ありません。既に心に決めた女性がいるのでその話を受けることは出来ません」
それだけ言うと、生夢は王侯貴族の人だかりを抜け、自分の仕事部屋に戻っていった。
シズ:「お待たせ二人とも…どうしたの?」
リムル:「‥‥‥」
煉武:「‥‥‥」
シズが、ジョッキを持ってリムルと煉武のいる席につくが二人の固まっていて反応はなく、シズは固まっている二人を心配そうに顔を覗くと二人は気絶していた。
シズ:「えっ!?どうしたのリムルさん!レンムさん!」
シズがイフリートを使って二人を起こしたのは既に日をまたぎ、明け方になっていた頃だった。
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自分の仕事部屋に戻った生夢は、机の引き出しから拳銃を取り出し、愛おしそうに眺めていた。
生夢:「煉武兄さんの話で君がこっちの世界にいたなんて驚いたよ。だけど、それ以上に嬉しかった。やっぱり僕たちは赤い糸で結ばれているのかな、
拳銃の持ち手である銃把には英語で「グレンダ・アトリー」の名前が彫られてあった。