開国祭もついに終わってしまい、王侯貴族達が国に帰国していくなか、我々は支払いの問題解決と仕掛人を思い知らすという仕事が残っていた。
それにしても、リード様とシュナ様はどこにいかれたのだ?
カーテンの隙間から日が射し目を開けると一糸まとわぬシュナが眠っていた。
寝ぼけていて起き上がると俺も同じ姿なのに気づく。床にはお互いの衣服が脱ぎ捨てられていて、肩などには小さな噛み跡があった。
またシュナの体には所々小さく紅くはれている所がある。
そこまで見て俺は昨晩の事を思い出した。
リード:(…やってしまった…)
いくら抑えていた欲望が暴走したとしても、ここまでやるか?
もう少しムードがある状況でやりたかった。
リード:「あ、おはようシュナ」
朱菜:「おはようございます…あのリードさん…」
リード:「なに?」
朱菜:「もう少し一緒に寝ませんか?反省などの会議は午後からですし…」
…うんムードとかは別に関係ないか!お互い同意の上だし結婚前提の交際をしてるんだから!
リード:「…わかった」
シュナの隣に横になり昼前まで眠る事にした。
そして起きてわかったのだが、シュナは起き上がることが出来ず、車椅子を使って移動することになった。
執務館に到着すると
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大会議室では早朝から、
煉武:「何度も言うがドワーフ金貨以外の支払いならすぐにでも出来ると言っているだろう!お前達もその事を了承していたはずだ!」
商人:「そんな事を言って、俺達を騙すつもりだろう!?」
煉武:「何故そうなる!?」
???:「まあまあ皆の衆、少し落ち着いたらどうかね?このワタシ、ガストン王国の代理であるミューゼがついておるのだ。如何に魔王の
煉武:「当たり前だ。しかし、こちらにも事情がある」
イングラシア王国は隣接する商業国家、ガストン王国の貴族であるミューゼが現れ、煉武はようやく話がわかる者が来たと思い、事情があると言う。
そしてミューゼの答えは、
ミューゼ:「なるほどそういう事ですか。それでしたらワタシめにその悩みを解決する心当たりがございます。少し個別で話しませんか」
煉武:「というと?」
煉武は少しでも興味がある素振りを見せるとそれを合図にしていたかのようにディアブロとシオンが扉開け、リムルの姿がそこにあった。
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ミューゼの言葉で確信したコイツが今回の問題の原因であり、黒幕のトカゲのしっぽなのだと、その証拠に煉武は笑いをこらえようと表情をさらに抑え込むといういつもの癖が出ていた。
もっともそれを見抜けるのは俺と亡くなったアイツの父親である
さてそれじゃあ、事前にやった打ち合わせ通りにやりますか!
リムル:「煉武、これはどういう状況だ?」
ミューゼ:「実はですね。商人たちが自分たちの権利を蔑ろにされたとワタシに泣きつかれしまい───」
リムル:「俺は煉武に聞いているんだガストン王国のミューゼ侯爵」
ミューゼ:「こ、これは失礼しました…」
リムル:「で、どういう状況だ煉武?」
煉武:「商人たちがドワーフ金貨の支払いしか認めないと言ってきてな。他の方法なら大丈夫と言っているだが、良しとしないらしい」
ミューゼ:「それは当然の事ですレンム様。この商人たちが信じるのはドワーフ金貨のみなのです」
煉武の説明にミューゼが意見を言う。その行動が滑稽すぎるのか目線を斜め下にして溜息を吐く。呆れた時しかやらない俺にしか分からない癖だ。
ミューゼ:「どうでしょうリムル陛下。もしもお困りの事でしたら、このワタシ、ミューゼめに相談してはもらえませぬか?これも何かの縁ですし、ワタシも陛下のお役に───」
リムル:「その必要はない。入れ」
俺の命令でゲルドとアスラが入室して来た。その手には山積みされた金貨を載せた盆がある。
これを見たミューゼ侯爵は俺でもわかるくらい顔色を変えた。
リムル:「支払い、でしたな。宜しい。ではドワーフ金貨にて支払いに応じましょう」
ミューゼ:「お、お待ち下さいリムル陛下!?これは本物なのですか…?」
アスラ:「ほう、偽物だと疑うのか?」
アスラが怒りの籠った声でミューゼを威嚇するとディアブロやシオンも敵意の籠った視線を送る。グレイドとウォズの教育が行き届いているな。
ミューゼ:「し、失言でした。ですが、これは本当に───?」
リムル:「疑われるならどうぞ鑑定を」
ミューゼ:「では、おい!」
商人:「はっ!」
ミューゼが自分の子飼いの工作員に鑑定を命ずると同時にコハクがファルムス王国でディアブロが配下にした記者達を連れて来てくれた。
煉武:「それなら丁度いい」
リムル:「ああ、金貨の真贋を鑑定するから皆さんにも立ち会ってもらおう」
記者達が入って来て鑑定を見守るなかその結果がミューゼ子飼いの工作員の口から開いた。
商人:「ほ、本物です!本物のドワーフ金貨に違いありません!」
工作員自らの口から本物と宣言され、その後は滞りもなく支払いを済ませていき、無事に支払いが完了した。これでリード達に知られずに開国祭での全取引が終了した。
ミューゼ:「ハハハハハ、流石はリムル陛下。これほどのドワーフ金貨を一体どのようにして集めたのやら」
商人:「まあ国際法を守っていただけるのなら文句は御座いません。これからもどうかご贔屓にしてくだされば───」
リムル:「それは遠慮させてもらう。君達との取引は終わった。次はない」
俺の言葉にシオンやベニマルが驚いた顔をするが、煉武やミョルマイルなんかは気づいたようだ。
商人達も文句を言ってきた。
商人:「ど、どういうつもりだ?」
商人:「金さえ払ってくれるなら、アンタ達を信じるって言ってるんだ!」
煉武:「ほお、最初に文句を言ってきた時と今回も『魔物の国など信用できない』と騒いでいたな。証拠もあるが?」
リムル:「だから俺達も信用できる相手としか取引したくない。よってお前達が今後我が国で商売することは一切認めない」
ミューゼ:「そ、そんな横暴が許されるものか!この者達は国際法に基づく正当な権利を主張…」
煉武:「評議会に加盟していない我が国で国際法が適用すると思っていたのか?」
リムル:「まあ、加盟できなくても別に構わない。何故なら俺達はここに新しい巨大経済圏を創るんだからさ」
そう宣言する俺に、煉武がいきなり『思念伝達』で怒鳴ってきた。
煉武:「(馬鹿か
リムル:「(いきなりうるせぇな!大丈夫だよ遅かれ早かれそうなるんだから)」
煉武:「(もういい!後で話す!)」
煉武が呆れて『思念伝達』を解除し、俺は言葉を続けた。
リムル:「だから無理して評議会と付き合う必要なんて…」
ミューゼ:「そ、それはいけません!そうです。ではワタシが評議会の橋渡し役を担いましょう」
リムル:「それも遠慮させてもらうよ。だって、君もう失脚するだろ?」
ミューゼ:「は?」
キョトンとした顔で俺の言っている意味を理解出来ていないミューゼに煉武は地獄へ背中を押した。
煉武:「ここにいる記者達は自分の国に帰って多少の誤差があるが大まかな事実を記事として書くだろうな。ドワーフ金貨での支払いにしか応じぬ商人達に無関係のはずであるのにその商人達を取りまとめる大貴族。これを読んだ者はどう思う?」
丁寧に答えまでの一本道を創った煉武。そのおかげでミューゼの顔色がどんどん悪くなっていく。煉武も自分の仕事を終えることが出来たと判断し、ミョルマイルに後の事を託した。
煉武:「ミョルマイル、あとは任せてもいいか」
ミョルマイル:「お任せを」
リムル:「じゃあ宜しく」
部屋から出ていこうとする俺達に商人達は必死になって許しを乞いたが、最早俺達のするべきことはない。俺達はそれを無視して大会議室から出た。
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中央の広場にある診療所という看板がある建物。しかしそこは診療所にしては城と言ってもいい建物であった。その建物の正体はキャッスルドランであった。普段は首や手足などを出しているが開国祭の間はそれは隠し、普通の建物に見せていた。またレミンとサーレの自宅にもなっている。二人はそこで朝食の後片付けを行っていた。
レミン:「リムル様達大丈夫かしら?」
サーレ:「問題ないだろう。あの二人が大丈夫って言っていたんだし」
レミン:「サーレも大丈夫?昨夜お父様に散々飲まされたでしょう?」
サーレ:「あははは、大丈夫だよ。まだ少し頭が痛いだけ…」
レミン:「大丈夫じゃないじゃない」
???:「なんじゃ?エルフの血を持つ者は酒に弱いのか?それとも元々そういう血筋なのか?」
レミン・サーレ:「「!?」」
二人は自分達の会話に割って入った声を見ると自分達が先程まで朝食を食べていた椅子の一つに体格の優れた老人が座っていた。腰には太刀を携え、左手には酒瓶を持っていた。
サーレ:(いつの間に!?)
レミン:(ガルル達の感知をすり抜けて入ってきたの!?)
レミンは自分の配下になった
彼らは自分達からレミンの自宅の警備を行っておりガルル達もそれに協力している。また侵入者が入れば即座にキャッスルドランが察知する仕組みになっているがそれも作動していなかった。
そんな緊急事態にサーレはレミンを守るように前に出た。
レミン:「サーレ!」
サーレ:「下がるんだレミン」
(君のお父さんと約束をしてるんだ。何があっても君を守ってみせる!)
サーレは昨夜、レミンの父親であるレントと酒を飲み。それはサーレの限界ギリギリまで続いた。レントは平然と酒を飲み続けていたが、それでも自分の限界まで付き合ったサーレの事は幾分か認めていた。
故にレミンとの交際を認める条件としてあることを言った。
レント:『ぜってぇにレミンを守れ!それこそ自分の命に代えてもだ』
サーレ:『…はい』
サーレはレントの過去を聞き、そこにこの条件を言われた事で自分の中の優先順位が決まった夜になった。
サーレ:(一番の目標はレミンを守りつつこの場から脱出…だけどあの男ははっきり言ってそこが見えないレミンを守る事に集中すべきだな)
サーレは老人の動きに一挙手一投足に全集中をしていると、老人は持っていた酒を飲む。そして立ち上がり、出口に続く扉に移動した。
???:「安心せい、今日は親友の孫娘の顔を見に来ただけだ。まさか恋人がいたとは知らず、失礼した。ではな」
サーレ:「…はあ?」
レミン:「あ、あのどなたでしょうか?それにワタクシのお爺様とは?」
オーガス:「おお!これはまた失礼した!この世界での儂の名はオーガス。お前さんの爺さんに関しては残念だが教えられん。それとついでにこれを魔王リムルか煉武に渡しておいてくれ。ではさらば」
オーガスと名乗った老人は包みを机の上に投げ、転移魔法でレミンとサーレの前から姿を消した。
サーレ:「何だったんだ今の老人?」
レミン:「分からない。だけど、どこかレンム様達に似ていたような?」
レミンはオーガスの顔を思い出してみると、やはり自分の主であるリードの義理の兄である。煉武達の面影を感じていた。
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支払いなどの問題が片付き、ソウエイ達にミューゼの事を調べる指示を出したり等色々な仕事を行っていくとお昼になっていた。そんな俺と煉武は執務室で正座をしていた。誰に向かっているかというと、
縁護:「私のサリオンで得た給料二か月分程だな」
日向:「こんな事を私達に隠していたなんて」
リード:「リムル、煉武義兄さん何か弁明はある?」
リムル・煉武:「「すいませんでした!/すまない!」」
支払いに関する資料を読んでいる縁護達の言葉で今の彼らの心境を語り、有無を言わせない笑顔で問いかけるリードに俺と煉武は間髪入れずに謝罪した。
何故支払いの件がバレたのかというと、縁護がエルメシアとの食事中に後ろにいたガゼルとベルンの会話を聞いていてそこで支払いの問題が発生したのだということを知られ、リード達に連絡をし、ミョルマイルに資料を提供させたのだ。
リード:「黙ってた理由は?」
リムル:「お前にとって良いことが連続で起きたのにこんな問題を知っちゃ折角の開国祭も心の底から楽しめないと思って黙ってました…」
自然:「シュナとフラメアに黙ってたのは?」
煉武:「お前と
縁護:「私達にも言わなかったのは?」
リムル:「お前達にも開国祭を楽しんでほしかったから」
リード:「…なるほど、みんなどうする?」
リード達が一通り事情を聞くと今度は俺達のお仕置きの内容を俺と煉武の目の前で始めた。
縁護:「『痛覚遮断』を停止させて反省会の会議まで石抱をさせる」
リムル:「一時間は軽く超えるんだけど!?」
釈迦人:「はーい!膝に乗せる石にはいくつかの属性付与させないか?」
煉武:「私達を玩具にしたいのか?」
生夢:「板は僕が作った特製薬品を大量に含ませた木版にしない?」
リムル:「俺達を実験台にするな!?」
煉武:「それ以前に、石抱で決定しているのか?」
日向:「二人の黒歴史を自分の口で語るのはどうですか?」
リード:「それ良いかも」
リムル・煉武:「「公開処刑はやめてくれ!!」」
おいおいこのままだと肉体が助かっても精神面で殺されぞ!何か打つ手はないのか!?
自然:「あのさあ
リムル:「なんだ?」
自然:「確か四天王の席って一つ空いてましたよね?」
リムル:「まあそうだけど…」
武闘大会で自然達が参加したのもあって候補であったゴブタとゲルドは決勝戦前に敗退したため空席のままなのだ。
自然:「その席、俺にくれません?」
リムル:「…えっ?」
自然:「四天王っていうことはベニマル達の情報もある程度は得ることが出来るってことですよね?」
リード達:『!?』
まさか…自然が言いたいのって…
自然:「俺を最後の四天王に入れてくれたら今回の件は許しても良いですよ」
やっぱりそう来たか。だけど今は選り好みをしている場合ではない!
煉武に視線を向けると、煉武も頷いて受け入れるべきだと言っている。問題はないらしい。
リムル:「わかった。四天王最後の一人はお前に任命する」
自然:「決まりっすね」
自然の目的はいくら特別試合でああ言っても今回みたいに秘密にする可能性があるからベニマル達を通して、情報を得るためなんだろう。
だけど今回は仕方ない。俺と煉武の平穏のためにもこれは受け入れよう。
こうして、俺達のお仕置きは自然を俺の四天王にするということで話は纏まり、反省会の会議まで各々で時間を過ごすことになった。
やはり最後にはバレてしまいましたな。しかし全てが終わって本当に良かった。
さて明日からいつも通りの日常に戻るため、オレも気合を入れ直さないとな!
それにしてもオーガスという老人、油断ならないな。
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レミンから受け取った包みの中身を見た俺と煉武は二人で頭を抱えていた。
リムル:「なあ煉武どうする?」
煉武:「間違いないだろうが、情報が確定次第伝えるまでこのことはソウエイ達にも伝えるな。いいな?」
リムル:「わかった」
俺は包みの中身であるタオルを『胃袋』に入れて、みんな気づかれないように隠した。
しかし、一難去ってまた一難だがこれはレベルが違い過ぎる。
リムル:「生きていたんですね
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ロッゾ一族の首領であるグランベル・ロッゾのいる部屋の扉が乱暴に開く。
オーガス:「今戻ったぞ!我が友グランベルよ!」
グランベル:「オーガスもう少し丁寧に開けてくれ。お前の力では壊れてしまう」
オーガス:「がっはっはっはっ!すまんな!」
オーガスの来室に軽く注意をするグランベル。それだけこの二人の関係が分かる程であった。
オーガス:「そうじゃ!
グランベル:「いただこう。前からお前の言う酒に興味があった」
オーガス:「そうか!では飲もうぞ!」
オーガスは
グランベル:「あの国の戦力はどうだ?」
オーガス:「北の悪魔どもより手応えがありそうじゃが特に問題はない。しかし魔王リムルと魔王リード、どちらを警戒すべきかと言えば魔王リードじゃろうな」
グランベル:「勝てそうか?」
オーガス:「最悪引き分けになるだろうな」
グランベル:「そうか。ではマリアベルにも迂闊に刺激しすぎないように伝えておこう」
オーガス:「頼んだぞ」
二人は仕事の話を済ませると、乾杯をして酒を飲んだ。