転生したら天魔人だった件   作:通りすがりの気分屋

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この本によると我が魔王の町にブルムンド王国とファルムス王国から調査のために訪れたガバル達とヨウムの一団が訪れた。


思い出

 

「英雄になれだって?この俺に…?何言ってんだあんた…」

 

「リムル、俺にも説明頼む。どういうことだ?」

 

ヨウムがリムルの申し出に戸惑っていたが、リードは平然としてリムルの申し出の意図の説明を求めた。

 

「ほら、俺達がオークロードを倒したといっても、人間から見たら脅威が去ったわけではないだろう」

 

「確かに、いくらこの祝福カス秘書が、人間にとって良い印象があったとしてもまだ人間の恐怖は拭きれませんな」

 

「君みたいすぐに戦闘に発展しそうな喧嘩バカボディーガードよりは幾分マシだけどね」

 

「ほう~ヤるか大食い秘書?」

 

「無駄な喧嘩は買わない主義だが、君は邪魔だから買ってあげよう」

 

このあとリムル達のいる会議室から重く鈍い音が二つ響いた。

 

「で、それとヨウムの英雄化になんの関係があるんだ?」

 

大きなたんこぶをつくったウォズとコウホウが床でのび、二人のたんこぶとリードは拳から煙のようなものがあがっていたが、リードは気にせずリムルに説明の続きを求めた。

 

「え、え~っと…俺達が英雄ヨウムに協力した魔物の国ということにするんだ」

 

「なるほど、人間のヨウムがオークロードを倒したと世間が知れば人間の不安が消え、それに協力した俺達が人間の味方であるという印象を与えるんだな」

 

「そういうことだ」

 

「その計画、私としては前向きに検討したい。ただし、貴方達が本当に人間の敵ではないことが大前提ですがね」

 

リムルの意図を理解したリードは納得し、フューズもリムル達の計画には条件付きではあるが協力的であった。

 

「まあ当然か」

 

「それならこの国に滞在するといい。この国のことももっと知ってもらいたいし」

 

「ああ、それは助かります」

 

「もちろんヨウム達な、さっきのお願いは無理強いさせるつもりはないから、よく考えてくれ」

 

「………そうさせてもらう」

 

      ⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪

 

「あ~~~、やっと今日の分の仕事が終わった~~」

 

「お疲れさま、リード」

 

リムルとリードはあの後、執務室に戻り書類の整理を片付けていた。

もともと学生で転生したリードの最初の仕事量はリムルの半分ほどだったが、半年以上経ち仕事になれてきたため今ではリムルと同じ仕事量をこなしていた。

 

「そういえばシュナが試作品でスイーツを作ってくれたみたいだぞ」

 

「本当か!?」

 

「ああ、俺がちゃんとお前の『万能空間』に入れておいたぞ」

 

「やったー!サンキューリムル!」

 

リードは喜び『万能空間』を開きそこに上半身をいれた。

この時リムルはリードが落ちないのか少し不安になったが、リードに限ってそんなことはないと考えてすぐに残りの自分の仕事を片付け始めた。

そして上半身を『万能空間』にいれたリードは

 

「どこだ~、試作品のスイーツは一体なんだ~」

 

リードはシュナの作ってくれたスイーツを探すことに夢中になっていた。

 

(なんかシュナの料理を食べてるとどこか幸せな気持ちになるんだよな~、うん?)

「あれって?」

 

探していると何かが光に反射しているのが見えた。

そこに手を伸ばし触れてみると、リードはその何かの触り心地に驚いていた。

 

「え?まさか」

 

リードが引き寄せるとそれは龍が彫られた懐中時計型のペンダントであった。

 

「!?なんでこれが…だってこれ…前世の俺がつけてた物だから…この世界に存在しないはず…」

 

リードがペンダントを見て動揺し、『万能空間』から出てきた。

 

「ん?どうしたリード?」

 

「…リムル、俺…今日はもう帰るから…」

 

「え!?スイーツは!?」

 

「帰ってから…食べる」

 

リードは動揺を隠せず足元がふらつきながらも急いでシェアハウスに戻っていった。その途中シュナに呼ばれたが今のリードには返事をする余裕がなかった。

 

      ⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪

 

シェアハウスに帰ったリードは急いで自室に籠り、札をドアノブにかけ誰も入れないようにした。

そしてベットの上に座り、『万能空間』にあったペンダントを見ていた。

 

(もしこれがあのペンダントなら、この中に……)

 

リードは恐る恐る震える指でペンダントをゆっくり開いていった。

 

「!?」

 

ペンダントの中には綺麗な笑顔で中学生ほどの女性が椅子に座っており、その膝の上には満面な笑顔を浮かべてピースサインを出す子供の写真があった。

前世の幼い時のリードと当時中学生だったリードの姉ヒナタの写真であった。

 

「本当に…スン…俺の…ペンダント…スン…よかった…ヒグッ…よかった…姉さんの…スン…思い出が…こんな形で…また…手に入るなんて…ヒグッ…」

 

リードは嬉しさのあまり涙し、枕に顔を埋めリードの嗚咽がしばらく続いた。

 

      ⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪

 

シェアハウスのリビングにリグルとウォズ、コウホウにホウテンが夕食になったために帰宅していた。

 

「おいダメ祝福者、リード様は?」

 

「先ほどリード様の自室に向かいましたが、『今日の夕食はいらない』という札がかけられていました」

 

「どうしたのでしょう?」

 

リビングにリードがいないことを気づいたコウホウがウォズに聞くとリグルが代わりに答え、ホウテンは少し不安になっていた。

 

「そういえば、我が主は朝早くからベスター殿に自身の検査を依頼していたな」

 

「ということは、ガバル達のもあって疲れていたと?」

 

「そうだろうね」

 

「「「「………」」」」

 

リグル達は不安になりながらリードの部屋のある、上を見たがリードに気づかれて気を使わせるわけにはいかず、すぐに夕食の準備をした。

一方自室にいるリードは疲れて眠っていた。

 

「スウ…スウ…スウ…」

 

リードはそこで()()()()をみた。

 

『おーねーえーちゃーん!!』

 

『聖司!?まさか一人で来たの!?』

 

『うん!』

 

『ダメじゃない、お母さんが心配するわよ』

 

『だって…早くお姉ちゃんとお祝いしたくて…』

 

『…ハァ、わかったわ一緒に帰ろう』

 

『!うん!』

 

それは当時女子高生だった坂口日向とまだ幼い弟の坂口聖司が手を握って帰っていた。

 

『聖司、今日のお母さんのご飯はなに?』

 

『えっとね~、…内緒!』

 

『そっか~内緒か~それじゃ急いで帰ろうか』

 

『うん!』

 

日向と聖地が他愛のない会話をしていき神社の前を通った瞬間、突風が吹き聖司の目に砂が入った。

 

『うわっ!うーー!目に砂が入っちゃった』

 

聖司は突風に驚き姉の手を放し、目を擦り再び目を開けると

 

『あれ?お姉ちゃん?』

 

姉の姿がどこにもなかった。

 

『お姉ちゃん!どこ!』

 

聖司は慌てて辺りを見渡すが、姉の姿はなくすぐ傍にある神社へ向かった。

 

『お姉ーちゃーん!どこーー!』

 

大きな声を出しても姉の返事はなく、聖司の目に涙が浮かんだがそれでも聖司は姉を呼び続けた。

 

『お姉ーちゃーん!どこーー!お姉ーちゃーん!!どこーー!!お姉ーちゃーん!!お姉ーちゃーん!!!』

 

とうとう聖司は泣き出すがそれでも姉を呼び続けた。

しかしいくら呼んでも姉の返事が返ってこなかったが、聖司は諦めず姉を呼び続けた。

その後、二人の帰りが遅いことに心配した彼らの母が警察に連絡し、夜になって神社で倒れていた聖司が発見されたが、姉である日向は発見されなかった。

 

「……またあの夢か」

 

リードが目を覚ますと既に夜が明けており、起き上がると目から雫が流れるのことに気づいた。

 

「…最近泣いてばかりだな…しかし、しばらく見ていたなかったあの夢を、また見るなんて……!?」

 

するとリードはあることを思い出していた。

 

『【我の知る限りたまに異世界から来るものがいる、その者は『異世界人』という】』

 

(あの時姉さんが既にこの世界に飛ばされたとしたら、あの時見た夢にもいくつか合点がいく。しかし姉さんがこの世界にいるっていう証拠が…)

 

リードはヴェルドラの言葉を思い出し、何故が自分が姉のヒナタに刺される夢を見たのか自分なりの結論を出した。

するとリードの腹から音がなった。

 

「…まずは朝飯にするか」

 

リードはそう言って、ペンダントを首にかけリビングへ向かった。

 

      ⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪

 

「そうか、ヨウムは引き受けてくれたのか!」

 

「ああ」

 

朝食を済ませ、執務室に来たリードはリムルからヨウムが自分達の依頼を引き受けたことを聞いた。

 

「それにしても昨日はどうしたんだ?『思念伝達』や『繋がる者』でも返事がなかったから心配したんだぞ」

 

「ごめんごめん」

 

「ん?なんだその懐中時計壊れてるのか?」

 

「いや、これは懐中時計型のペンダントなんだ」

 

「へえ、スゴイ造りだな。パッと見ただけで時計だって思っちまったよ」

 

「あら?」

 

リムルがリードのかけているペンダントに注目しているとシズが声をあげた。

 

「どうかしたのシズさん?」

 

「そのペンダント…どこかで見たような?」

 

「!?」

 

「シズさんそれ本当?」

 

「ええ、でもどこだったかしら?」

 

シズがリードのペンダントをどこで見たか思い出そうとしたがなかなか思い出せずにいたが、このシズの言葉でリードは自分の導いた結論が現実味を増した気がしペンダントを強く握った。

 

(やっぱり、姉さんはこの世界にいるんだ。このペンダントを持ってるのは俺と姉さん、そしてあの人(義兄さん)たちだけ。つまり可能性は十分にある)

 

リードは姉が死んでいないと今でも信じており、シズのおかげで自身の今後の方針が決まった。

 

(…姉さんを探そう、必ずこの世界にいる!)

 

リードがそう決心するとシュナとシオンが大量の服を持って現れた。

 

「リムル様、少々お時間もらえませんか?」

 

「えっ?」

 

「実は新作が出来たのでぜひリムル様にご試着をと」

 

「い、いや俺はこれからリードと少し「俺、ウォズとコウホウが喧嘩していないか見てくるなー!」おおい!?リードお前!!」

 

シュナとシオンが恒例のリムルの着せ替え会が始まり、リムルはリードを利用して逃げようとしたが、リードはそれよりも早く逃げた。

実は前回リムルに利用された時があり、そのときはシュナとシオンが恐ろしい圧をかけてきた体験をしたため、リードはリムルの着せ替え会が始まる時は出来るだけ早く逃げると決めていた。

 

(すまないリムル、俺だって命が惜しいんだ)

 

執務室からリムルの悲鳴が聞こえてきたが、リードは聞こえないフリをして急いで執務室を後にした。

 




こうしてリードはこの世界での自身の姉を探すことを決意した、しかしこれが後にリードにとって苦難な道になることをこの時はまだ知らなかった。

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