転生したら天魔人だった件   作:通りすがりの気分屋

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我が魔王と私たち、そしてベニマルは獣王国ユーラザニアとの交易のため、使節団として向かった。
そして、テンペストを出発し数日後遂にユーラザニアの首都百獣都市ラウラへと到着した。


獣王国ユーラザニア

多くのユーラザニアの兵士達がテンペストから来た馬車に注目していた。

馬車を引いていたペガサスは一匹一匹がたくましいからだをしていたが、その中でリード達の乗っている馬車にはレッドペガサスがおり、そこに最も注目が集まっていた。

そして扉が開き、最初に現れたのは

 

「久し振り、カリオン」

 

「…まさかお前が来るとは」

 

翼と羽を出したリードであった。幹部クラスの者が来ると予想していたカリオンにとって盟主であるリードが来たことは驚きのことであった。

 

「あの者があのカリュブディスを…」

 

「しかし天使の翼に悪魔の羽とは一体何者だ?」

 

「まさか二人の盟主の片割れ本人が来るとは」

 

兵士達が小声で話していると、リードに続いてベニマルとコウホウそしてウォズが降りてきた。そして別の馬車からリグルとホウテンと次々に降りてきた。

しかしウォズの姿を見たとたん兵士達の話題が変わった。

 

「何故人間がここ?」

 

「何故あの者は人間なんかを配下にしているのだ?」

 

ウォズが人間であるのを理由に主であるリードへの陰口を言う兵士達、しかしリードはそんなことは気にしていなかった。

 

「カリオン、フォビオはどうした?見当たらないけど?」

 

「この前の一件で謹慎中だ」

 

「そっか、聞きたいことがあったのに…」

 

「会いてぇなら、よんでやろうか?」

 

「いや、今は良いかな」

 

「我々を馬鹿にしているのか!」

 

リードとカリオンが他愛ない会話をしていると兵士の一人が我慢出来なくなったのか、いきなり怒鳴り声をあげた。

 

「人間を配下に加えるなどと何を考えている!魔物の風上にも置けぬな!」

 

「そうだ!そうだ!」

 

「こんな者どもと交易など我ら獣人族(ライカンスローブ)の恥だ!」

 

兵士達の多くが反対の声をあげ、カリオンが止めようとするとリードが先に反論した。

 

「じゃあ、お前達は一人でメガロドンを一撃で倒せるのか?」

 

「なに?」

 

「うちのウォズは一人でメガロドンを一撃で倒した男だぞ。それが出来ないなら俺の配下の陰口は俺が許さない」

 

リードが静かに『王の威圧』を使わず、兵士達を睨むと兵士達は怯んだ。

 

「スゲェな、お前の一睨みでうちの兵士達がビビっちまった」

 

「だが、まだ納得しきれてないだろうな…………!そうだカリオン『御前試合』をやってみないか?」

 

「あ?御前試合?」

 

「そう、互いに強いやつを二名ずつ出してタッグマッチをさせるんだ」

 

「成る程面白いな!わかったやろう!」

 

リードの提案に種族故のうずきがあったのかカリオンはすぐに承諾した。

 

「じゃあ時間は正午、場所は…」

 

「ここの訓練場を使うといい!」

 

「良いのか?」

 

「構わねぇ!」

 

「………じゃあお言葉に甘えて」

 

カリオンが男前の笑みを浮かべると、断ることは野暮だと考えリードは承諾した。

こうしてユーラザニアに到着して最初に『御前試合』を行うことになった。

 

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

 

「ふざけるなあの獣人族(ライカンスローブ)ども!!」

 

バキバキ!!

 

「今回ばかりは君の言動には同意だね」

 

「……リード様、何故二名ずつにしたのですか?」

 

ラウラの訓練場の控え室にリードにリグル、ウォズとコウホウ、そしてホウテン、ベニマルが待機していた。そんな中コウホウは近くにあった木製の椅子を粉々に破壊し、ウォズも貧乏ゆすりをしながらコウホウの言動に同意する程怒っていた。

しかしベニマルは冷静にリードの提案に疑問を抱いていて直接リードに質問した。

 

「…今いる主力を出したら最悪この首都ラウラに被害出るかもしれない、けど二人までなら俺一人変身なしで抑えることが出来るから二人って言ったんだ」

 

「成る程」

 

「我が主!」

 

リードの説明に納得したベニマル、しかしいつも冷静なウォズが怒りを露にした状態でリードに迫った。

 

「今回は私に原因があるので私が出ます!」

 

「ちょっと待て!リード様を侮辱したんだ我も出るぞ!」

 

普段喧嘩ばかりのウォズとコウホウだったが、主を侮辱されたことで二人の怒りの矛先が同じものをさしていた。

 

「やるからには徹底的に勝つぞウォズ!」

 

「当たり前だ!」

 

二人の怒りの炎があわさり、ホウテンとリグルは手であおっていた。

 

「………こうなることを予測した上で二人にしたのですか?」

 

「だってあいつらの殺気凄まじいかったから…」

 

ベニマルが横目でリードに問うとリードに目を反らして答えた。

 

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

 

ラウラの兵士訓練場には多くの兵士が集まり開始前で異常にまで集まっていた、リード達は訓練場最上階にある客室での観ることになった。

そこにカリオンがやってきた。

 

「かなり盛り上がってるな」

 

「予想以上だよ」

 

「悪かったな部下共が失礼なことを…」

 

「気にするな、予想は出来てたから」

 

「しかしお前が御前試合をするって言った時は正直驚いたぜ」

 

「あれ以外良い考えがなかったから…」

 

リードとカリオンが雑談していると会場の扉が開きユーラザニア側の戦士が入ってきた。

一人はフォビオ、もう一人はフォビオより背が高く気骨隆々の大男が入場してきた。

 

「やっぱりフォビオか…もう一人は誰だ?」

 

「元三獣士筆頭猛牛角(もうぎゅうかく)ドルンです」

 

「知ってるのホウテン?」

 

「はい三獣士筆頭に相応しい人格と強さを兼ね備えていて、オレも認める強者です」

 

「それはスゴい」

 

「ただ、180年ほど前突然三獣士の地位を返上し、今は若手を育てることに力を注いでいるようです」

 

ホウテンが大男ドルンの説明を聞いているとテンペスト側の戦士変身したウォズとコウホウが入場してきた。

 

「…不安だ…」

 

「おいおい、あいつらの勝利をお前が信じないでどうする…」

 

「いや、間違って殺さないか心配なだけ…」

 

「………」

 

リードの心配ごとにカリオンは少し拍子抜けしていたが、戦士が入ってきたことを確認した。

 

『戦士は入場したな!じゃあこれよりテンペストとユーラザニアの戦士の御前試合を執り行う!禁止事項は相手を殺すことのみ!それ以外はなんでもアリだ!てめぇら準備は良いか?!』

 

オオオオ!!!

 

カリオンの言葉で兵士達の熱狂が最高潮に達しようとしていた。

 

『それじゃあ試合始め!』

 

カリオンの合図で試合が開始された。

しかし、

 

「………あれ?」

 

「どういうことだ?」

 

()()()()()()()()()()()()()

 

ウォズとコウホウ、フォビオとドルン、両者どちらも動いていなかった。違うことはフォビオとドルンは構えていたが、ウォズとコウホウは構えていなかった。

その光景にカリオンは僅かな冷や汗を流していた。

 

「おいおい、お前の側近何者なんだ?」

 

「秘書とボディーガード…………なあベニマル」

 

「何ですか?」

 

「ずっと気になってたんだけど、ハクロウとコウホウ、どっちが強いの?」

 

リードがずっと前から気にしていた疑問を一番知っているであろうベニマルに問いた。

そしてベニマルの答えは

 

「剣術だけならハクロウの右に出る者はいません、しかし武の総合面でなら、コウホウ以上の者を俺は見たことはありません」

 

「………」

(本当、スゴいなみんな)

 

ベニマルのこの答えにリードは静かに聞いていたがコウホウが敵として戦わずに済んだことを安心していた。

そして試合場は

 

(すごい、ウォズはあえて隙を見せカウンターを狙っているのはわかる、だが…)

 

フォビオはコウホウに目線を移動させると、全身の毛が逆立った。

 

(一瞬の隙もない、僅かに間合いに入れば…やられる!!)

 

フォビオはコウホウにだけは絶対に戦ってはいけないと本能が訴えていたが、主であるカリオンや部下達が見ている場で醜態をさらせるわけにはいかないとなんとか踏み留まっていた。

 

「フォビオ君」

 

「!何ですかドルンさん?」

 

「私があの鬼人にあの技を放つ君はあの人間に集中しなさい」

 

「!?しかしやつは!」

 

「わかってる倒しきれるかわからないでも、私の本能がアレと戦えと訴えてくるんだ」

 

「………わかりました、気を付けてください」

 

ドルンと少しの会話で、フォビオは素早くウォズに膝蹴りを放つがウォズは寸前でガードしたが反動で後ろに吹き飛んだ。

 

「やはり私の相手は君か」

 

「やるからには全力でいかせてもらう」

 

「安心したまえ、私もさ」

 

ウォズとフォビオの素早い攻防は幹部クラスの者で全部見切れる程の速度であった。

 

「なんという速さ…!」

 

「………ウォズのやつまさか…」

 

「お前の側近はスゲェな」

 

「そっちもな、おっ!もう一組も動いた!」

 

ドルンが構えたままゆっくりとコウホウに遠ざかっていた。

 

「…すまない、うちの者達は種としての強さしか見ていない者が多く、君の主を貶したことを謝罪したい」

 

「………いらん」

 

「え…?」

 

コウホウがドルンの謝罪を拒否すると右手をゆっくり上げた。

 

「来い!お前の全力を受け止めてやる」

 

「!?……ふっ、成る程…わかった!」

 

コウホウの要求にドルンは本能で理解すると、頭部が野牛に変わり、からだも一回り大きくなった。

 

「姿が変わった!」

 

獣人族(ライカンスローブ)は獣の姿に変えることで本来の力を解放させるのです」

 

「つまり本気でコウホウと…」

 

(いくらコウホウでもドルンのあの技を食らえばひとたまりもないぞ)

 

リード達が見守るなかドルンが四つん這いになった。

 

「………」

 

「先に言っとくが、私は三獣士を引退したとはいえ強さは劣ってなどいない。むしろ日々修行し、私は強くなっている!」

 

「………」

 

「故に今から放つこの技はまともに食らえばただでは済まないことを知っててほしい!」

 

「………」

 

「いくぞ!!」

 

ドルンが角の突出し凄まじい勢いでコウホウに迫り、そうしている間ドルンの角に自分の魔素をほとんど角に込めた。そしてその気迫が周りの者には巨大な闘牛に見えた。この時コウホウは両腕を前に出していた。

 

「受けてみよ!破壊の角(デストロイホーン)!!

 

ドルンの攻撃がコウホウの腕に接したとき、凄まじい風圧が起きた。

 

「あいつ!?ドルンの本気の一撃を避けなかったぞ!」

 

「…まったく」

 

交戦していたフォビオとウォズも風圧に堪えるのが精一杯であった。

風圧がおさまるとコウホウとドルンのいた場所に土煙が舞い上がっていた。

 

「馬鹿な鬼人だ。ドルン様のあの技を受けて無事なはずがない!」

 

「あとはフォビオ様があの人間を倒せば、フォビオ様とドルン様の勝利だ!」

 

兵士達は誰もが、自分達の上司の勝利に確信しているなか砂煙がおさまってきた。

 

「見ろ!土煙がおさまってきたぞ!」

 

「あの馬鹿な鬼人はどうなっ………えっ?」

 

「なっ!」

 

「そんな馬鹿な!」

 

「あり得ない!」

 

兵士達が口々に現状を理解出来ずにいた。その光景とは

 

「嘘だろ…!」

 

「まったくこれで死んでくれたよかったのに…」

 

コウホウが両腕でドルンの角を掴んでいた光景だった。

 

「………っ!」

(馬鹿な!私の全力の一撃を素手で止めただと…)

 

技を放ったドルン本人も信じられずにいたなか、コウホウだけが()()()()()

 

「くはッ、お前なかなかいいぞ」

 

「…!ありがとう」

 

コウホウがドルンに最大の称賛を送るとドルンは純粋な気持ちで己を認めてくれたことに感謝すると、コウホウがドルンを持ち上げ全力で地面に叩きつけた。

 

ドガアアン!!

 

大きなクレーターをつくり、獣人化が解けたドルンはそのまま意識を手放した。

 

「まさか…あのドルンさんが…」

 

「余所見は感心しないね」

 

「!!」

 

フォビオはドルンがやられたことにショックを受けていたが、ウォズはその隙を見逃さずジカンデスピア ヤリモードをフォビオの喉元に向けていた。

 

「勝負アリ…ですね」

 

「だな」

 

『お前ら!これでわかったな?このテンペストの者達は強く度胸がある!俺達と友誼を結ぶ相手として相応しい!こいつらを軽んじるやつは俺が許さん!いいな!』

 

『ははーー!!』

 

カリオンの言葉によって兵士達は平伏し、自分達の愚かさを理解した。種の強さだけで相手の力量を決めつけることに

 

「…カリオン様何から何までありがとうございます」

 

「気にするな………ってリードのやつはどうした?」

 

「ああ、リード様でしたら…」

 

ホウテンが指を差した先を見ると真っ直ぐドルンのもとに飛んでいっているリードの姿があった。

 

「何しに行く気だ?」

 

「おそらくドルンの治療に」

 

「なに?」

 

「あの人は自分のことよりも他人を優先させる変わった人なのです」

 

「お人好しだな」

 

「そのお人好しで救われた者がいますけどね…」

 

ドルンの近くにより、リードが『光』の力でドルンの傷を治すとカリオンがあることに気づいた。

 

(どういうことだ?なんであいつの力から神聖魔法と同じ力を感じるんだ!?)

 

カリオンは驚いて、リードに注目していたがリードは特にかわった様子はなくドルンの傷を治療し終えた。

こうしてユーラザニアと多少問題が起きたが、無事に解決した。




こうして私達はユーラザニアの者達にも良い印象を与え、友好的な関係を築けることとなった。
しかしこれから我が魔王がする驚きな行動に私達が振り回されることになるとは、我が魔王本人を含めて誰も予想していなかった。
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