そして私達は故郷テンペストに帰還した。
「___という訳で何故か髪がこうなってた」
「うん、もうどこから突っ込めば良いのかわからん」
リードからの報告を聞いたリムルの感想はまさに諦めが混じった返答だった。
ユーラザニアの国家機密詮索、魔王クレイマンと接触そして敵対、さらにはリードの魔王種への進化等、いくらやりたい放題しているリムルでもこの短期間でリードの身に起きたことにリムルはもう感情を変化させることもなくなっていった。
「まあまず最初に、お前ってなんでいろいろなことに首を突っ込むんだ!!」
「い、いや~、だって気になったからつい」
「そのついで、最悪ユーラザニアと戦争にでもなったらどうするつもりだった!?」
「いや、でも」
「でもじゃねえよ!だいたいお前は……
」
「シ、シズさん助けて…」
「ゴメンねリード君。私もリムルさんの後で言いたいことがあるから」
「そんな~」
「こらリード!!聞いてるのか!?」
その後リードはリムルのお説教を受けた後シズさんからのお説教を受けた。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
二人のお説教から解放されたリードはリグルとホウテンを連れて食堂に向かっていた。
リードが連れてきたあの二人をウォズとコウホウに預け食堂に行かせるよう命じており、リードはその様子を見るために食堂に向かっていた。
「全く、リムルもシズさんも、二人は俺の保護者か」
「まあ今回は仕方ないですよ」
「確かに今回の一件は最悪カリオン様との戦闘も覚悟しましたからね」
「ぐぅ…」
リードがリムルとシズさんのお説教に愚痴をこぼすが、リグルとホウテンは今回の件ではリムルとシズさんが正しいと諭され言葉に詰まった。
「…ところリード様、本当に何も覚えていないのですか?」
「本当だって…これで十回目だぞ」
ホウテンはあの時起きたリードの変化をテンペストに到着する前に聞いていたが、リード自身は何も覚えておらず、『万能空間』にも特にかわった様子はなかった。
しかし、リードの髪の色が前世と同じ色と長さに戻った原因は間違いなくあの時起きた変化にあるとホウテンは確信していた。
「………わかりました。オレはベスター殿に用事があるので失礼します」
「おお、わかった」
ホウテンは本当にリードが何も覚えていないと分かり、ベスターのもとに飛んで行った。
そうしている内にリードとリグル食堂に到着し、中に入った。
「おーいウォズ、コウホウあの子達…は……」
二人は食堂の光景を目にすると、言葉を失った。
机には山のように積まれた完食された皿、ゴブイチやハルナが慌てて持ってくる皿をすぐに手に取り一瞬で完食しさらに積まれる皿、さらにリードが保護した
「…すごいな」
(宴の時のリード様と同じくらい食べてる)
リードが素直な感想を述べたすぐに、少女と少年の向かい側に座っているウォズとコウホウに気づくと近づいた。
「結構食べてるんだな」
「リード様、リグル!ええ我らも驚きです」
「最初は遠慮していたのですが、シュナ君の料理が美味しいあまり止まらなくなっていった結果がこれです」
「なるほど、確かにシュナの料理は美味しいからな……リグル後で食料庫の確認お願い」
「わかりました」
ウォズの報告を聞いたリードは食料庫の残りが心配になり、後でリグルに確認に行かせるよう命じ、少女と少年が食べ終わるのを待った。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
荒い歩行で洞窟の研究室に向かっているホウテン、そして研究室の扉を荒々しく開けた。
「ベスター殿!少しいいですか?」
「ホウテン殿!?」
突然現れたホウテンにベスター驚き、ホウテンはベスターの傍に近づき右手をのばした。
「リード様の検査結果を出せ」
「!!」
「本当は嘘だったり、黙ってることがあるだろう?今すぐ出せ」
静かにそして怒りの籠ったホウテンの声にベスターは観念して、机の引き出しからリードの検査を出した。
「それがリードの検査結果か?」
「ええ、あの時すべての真実を話さなかったことは申し訳ありません。しかし、話せばリード様の今後の行動は目に見えていたため、それを防ぐためにやったことなのです」
「どういうことだ?」
「こちらを見てください」
ベスターからリードの検査結果を受け取り、内容を確認していくホウテン。
内容を読んでいくにつれ、ホウテンの表情は険しくなっていった。
「ベスター殿、これは本当なのですか?」
「はい」
「確かにリード様がこれを知ったら、オレ達の制止を聞かず、無茶な行動をするな」
「………」
「これで、
「ホウテン殿、どうかこの事はリード様には…」
「わかってる、言うつもりはない」
「ありがとうございます」
「今後なにかわかったらリード様よりも先にオレに教えてくれ」
「はい」
ホウテンはリードの検査結果をベスターに返し、伝えることを伝えると研究室から出て、リードのもとへ向かった。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
「………」
(宴の時のリード様並に食べたな…)
ホウテンが食堂の光景を目に思ったことは口にしなかった。本人が傍にいるのに言ったらどうなることやら。
リードが連れてきた、
「お腹いっぱいか?」
「はい」
「
皿を全て片付け満たされた表情でリードの質問に答える少女と少年。
リードはそんな様子をみて安心したのか、笑みを浮かべた。
「さて、名付けの前に、ホウテン少し良いか?」
「?なんですか?」
リードがホウテンを手招きをし、リードの傍に近寄ると両手でホウテンの頭を掴み『
「!?なんですかいきなり!」
「少し待って………あった!お前達が聞いた声ってこれ?」
リードがホウテンの記憶からあるシーンを光の矢を少女と少年の頭にうった。
「!?これです、僕が聞いた声!!」
「
「そうか」
「…一体なんの話をしているのですか?」
状況が理解できずにいたホウテンが不満な顔で質問した。
「実はこの子達、俺と会う少し前に声を聞いたらしいんだ」
「…まさかその声がオレが聞いたものと同じだったということですか?」
「そのまさかだよ」
リードの答えを聞いたホウテンは驚き目線だけを変え、少女と少年に向けた。
そしてリグルが何か考えると
「…リード様、その声を聞くことは聞くことは出来ますか?」
「えっ?出来るだけど」
「それを聞かせてください」
「わかった、一応ウォズとコウホウにも聞いてくれ」
「「は」」
リグルに頼まれたリードは、光の矢をリグル、ウォズ、コウホウに放つと、三人の目が大きく開いていった。
「「「この声!!」」」
「えっ!まさかリグル達も!?」
「はい!」
「やはり、あれは幻聴ではなかったのか」
「………」
「?」
リグルとコウホウは戸惑っていたが、ウォズだけは何故か言いにくいような表情だったのにリードは気づいた。
しかし、リードは今は一番聞きたいことを聞いた。
「いつ?どこで?」
「私はリムル様とリード様と出会う少し前に…」
『これからある方々を探し忠誠を誓えば、あなた方を助けてくれるでしょう。
その方々はスライムと新たな種族、必ずやあなた方を助けてくれるはずです』
「と言われて、翌日探すと…」
「俺とリムルに会ったっていうことか…ウォズは?」
「私は、暴風竜ヴェルドラの消失して、しばらくした後…」
『2週間後ジュラの大森林に向かう冒険者達と合流しなさい。さすれば、あなたの主に会えます』
「そして2週間後本当にジュラの大森林に向かう冒険者達を見つけ…」
「俺達と出会った…コウホウは?」
「…我はオークの襲撃を受け、シュナ様と隠れて見張りをしていた時…」
『あなた達オーガを救ってくれるお方があなた達の前に現れます。だから決して希望を捨ててはいけません』
「まああの時は幻聴かと思い忘れていましたが、その後リード様に…」
「…なるほど」
リードはリグル達の話を聞いて、考えた。
何故リグル達の聞いた声は自分のことを知っているのか?
その声の正体は一体なんなのか?
疑問がつきることはなかった。
しかし、確かなことはその声によって自分たちは出会うことが出来たということである。
「まあ、今考えてもしかない。取りあえずこの話はまた今度ということで、もちろん他言無用だ。いいな?」
「「「「は!」」」」
「あの~」
話をまとめたリード達の様子を見ながら少女が遠慮気味に声をかけてきた。
「ん?ああゴメン!名付けまだだったな、すぐにやろう!」
「いえ!スミマセン急かすようなことを…」
「いや、今のは俺が悪いから気にしないで。それじゃあ君は
少女と少年に名前を与えるとお決まりの魔素が持っていかれた。
しかしスリーブモードにはなることはなかったのでセーフである。
そして、リムルが少し疲れたような表情で現れた。
「アレ?リムルどうした?」
「えっ!?」
「リムルということはこのジュラのもう一人の盟主様!?」
「おお、君たちがリードの言っていた…」
「はっはい!いっ今リード様から
「そちらも?」
「はい!今リード様に新たな名前
コハクは緊張のあまりかんでしまうことあり、リュウエイも緊張していたがなんとかかまず言え、二人とも深く頭を下げた。
「ああ、こちらこそよろしく」
「ところでどうしたリムル?」
「いや、実はさっきベニマルがカリオンに喧嘩を売ろうとしたって報告を聞いて…」
「ああそれか!俺も慌てて止めたよ」
「どうやって?」
「『閃光』と『太陽』を使った裏拳で」
「………よく生きてたな」
「手加減したからな」
リムルはリードも行かせたことがある意味正解だったと思った。
「ところでリード明日ドワルゴンに行くんだが、お前はどうする?」
「俺は残るよ。盟主が二人とも留守にするのはマズイだろう?」
「わかった」
この時リムルとリードのやり取りを聞いていたコハクは目を輝かせていたのにリードが気づいた。
「…コハク行ってみるか?」
「えっ!?でも僕まだ来たばかりで…」
「外の世界をもっと見たいんだろう?リュウエイもどうだ?」
「よろしいのですか?」
「もちろん!念のためウォズとコウホウを同行させるから」
「「えっ!?」」
いきなり自分たちに白羽の矢が立ったウォズとコウホウはリードに反論しようとしたが、リードは目つきを鋭くさせ『異論は認めない』と語り、二人は反論出来なかった。
「それじゃあリムル、コハク達も一緒にいいか?」
「お、おう…」
「それじゃあコハク、リュウエイ行くよ」
「え?」
「行くとは?」
行き先を聞かれたリードは笑ってこたえた。
「俺達の家!」
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
「わあぁ!綺麗なお部屋!」
「っ!」
シェアハウスにコハクとリュウエイを連れていき、同じ部屋に案内され中に入ると、タンスや物置、そして窓といった普通の部屋だが、二人にとってはあまりにも綺麗な部屋あった。
コハクは引っ越してきた子供のようにはしゃいで部屋全部を見渡し、リュウエイは壁を触ったり窓を開けて景色を見ていた。
「ベットが欲しかったらカイジン達に言ってくれ。ドワーフのアイツらが作った家具の質は完璧だからな」
「ドワーフ!!」
コハクはドワーフの単語を聞いただけで興奮していた。
リードはその表情で少し驚いていた。
そしてリュウエイはどこか不安そうな声でリードに質問した。
「あの、本当に
「もちろん!狭く感じたら別々にするけど、今は二人一緒の良いだろう?」
「…ありがとう…ございます」
本当なら別々の部屋にすべきかもしれないが、二人一緒にいたら何かあったときの対応がしやすいと判断したリードは問題ないと思い振り返った。
「それじゃあ、明日は早いからもう寝ろよ」
「ハイ!」
「おやすみなさいませ」
リードが部屋から出ると、リードは自分の部屋には行かず、ウォズの部屋に向かった。
そしてウォズの部屋の入り口に立ち、静かにノックをした。
コンコン
「どうぞ」
ウォズの許可が出るとリードは静かに扉を開けた。
「我が魔王!」
「………」
「?どうかしましたか、我が魔王」
「聞きたいことがある」
リードの真剣な表情と真っ直ぐと見据えた目を見たウォズは自室の窓際に座った。
「………なんでしょう?」
「お前、
「………」
「お前、声の話をしてた時こう言ったな」
『そして2週間後本当にジュラの大森林に向かう冒険者達を見つけ…』
「アレってつまりお前は自分の持っているその本じゃなくて、声に導かれてきたていう意味になるよね?」
「………」
「どうなのウォズ?」
リードの質問にウォズは窓の景色を見て沈黙していた。
リードはこれ以上のやり取りは無駄だと考え部屋からでようとすると、
「信じられないかもしれませんが」
「!」
「私には
「記憶が?」
「はい」
予想外の答えにリードは聞き返すがウォズは肯定した。
「15年程前にブルムンドの国境付近で意識を失っており、その時通りかかった冒険者達に助けられました」
「…ブルムンドで確かフューズ達の国」
「ええ、覚えていることは、
私が未来の人間であること、
私の主はあなたで未来では最低最悪の魔王になっていること、
そしてその未来を変えることが私の使命であること、
この三つです」
「お前の持ってる本は読めないのか?」
「残念ですが、重要な内容がいくつか抜けていて…」
「…そうか…わかった。余計なことを聞いたな」
「いえ、この事は皆に黙っておきます」
「…わかった」
リードはそう言ってウォズの部屋を出た、ウォズは自分の本の後ろをなぞっていた。
「私は一体何者なんだ。そして何故この名を言うと心が安らぐんだ?『クロノア』一体誰なんだ?」
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
リードは自室に戻ると鍵を閉め、ダブルウォッチを出した。
『(大賢者、ダブルウォッチを使って『世界の本棚』に繋ぐことは出来る?)』
『(告。可能です。しかし月に一回が限界です)』
(まあそうなるか)
『(構わない、やってくれ)』
『(了。それではダブルウォッチを起動させてください)』
リードは大賢者の指示通りにダブルウォッチを起動させた。
『ダブル!』
『(『世界の本棚』への接続___成功しました。)』
リードは辺りが明るくなると目を閉じ、収まったと感じると目を開けた。
そしてそこに見えたのは、無数の本とが入った大量の本棚だけがある、真っ白い空間だった。
「生で見るとすごいな。さて検索するかキーワードは…『経歴』『
リードがキーワードを言うと本棚が移動し一つの本棚から一冊の本がリードの前に現れた。
「!?」
リードは目の前にある本を見た途端、一瞬全身が筋肉が力み、呼吸が出来なくなった気がした。
もしこの本に姉が死亡したと出たら、自分は果たして冷静でいられるのか、いつも通りにいられるのか様々な不安がリードの胸にうごめいているが、リードは覚悟を決め深呼吸をし、本を手に取った。
そして内容を読み始めた。
───11年前、
これを読んだだけでリードの瞳に涙が浮かんだ。
(良かった。やっぱり、あの時この世界に…)
リードを涙を拭きながら続きを読みんだ。
───その後
「………えっ!?」
(シズさんが姉さんを!!何てことだ!今度体が戻ったら何かお礼しないと……って一ヶ月!その後はどうなったんだ?)
突然のことで、混乱するリードだったがすぐに冷静になり、このままでは最後のページに辿り着くのは難しいと考え、一気後半のページまではや読みした。
───そして現在、魔物を絶対悪を教義とするルミナス教直属の聖騎士団団長をつとめている。
「………え?」
そしてこの行を読んだとき、リードは一瞬信じられず目を擦るがその行がかわることはなかった。
そして、リードはあの時見た夢の意味を悟った。
「は、はは、あはははは、あははははははは!」
リードは笑った。それは姉が生きていることの事実に対しての喜びも多少はあった。
しかしこの笑いは、もう自分がヒナタの弟だと名乗ることが出来ないという事実に対して自暴自棄になった笑いであった。
その証拠にリードは頬に流れる大量の涙があった。
(結局こうなるのか…何で世界は…神は俺から大切なものを…何で?何でなんだ!?)
リードはこの時、宗教を憎んだ。
それは前世でも同じ気持ちだった。
結局神は自分の大切なものを奪っていくのだと、リードは前世でもあった宗教への憎しみ、怒りなどがこみ上げてきた。
そしてその後リードは本を本棚にしまい、『世界の本棚』を解除した。
こうして残酷な事実によって絶望したリードは、眠ろうにも眠ることが出来なかった。
すると扉からノックの音が聞こえてきた。
コンコン
「?」
扉を開けると、枕を片手に持ち、もう片方の手を互いに握っているリュウエイとコハクであった。
「どうした二人とも?」
「あの、その、えっと~」
「………」
二人して目が泳いでいる様子と片手に持っている枕で気づいたリードは扉をさらに開けた。
「いいよ入って」
「お、お邪魔します…」
「お邪魔します」
リードを真ん中に右にコハク、左にリュウエイが横になった。
「寒くない?」
「大丈夫です」
「そのリード様のからだは暖かいので…眠くなって…きま………ZZZZ」
「早いな寝るの…リュウエイはってお前もか…」
両隣の二人がすぐに眠り、その寝顔をみているとリードの心は穏やかになっていった。そしてある考えに辿り着いた。
(そうだ。姉さんが人類の守護者なら、俺はこの
ごめんヒナタ姉さん、もうあなたには会えない。本当にごめん)
リードは姉に会うことを諦め、このテンペストのために全力を尽くすと誓い、眠りについた。