そこでリムル殿はガゼル王に我が魔王の力の全てを話すと、ガゼル王は我が魔王の良き理解者の一人となってくださった。
一夜明けて、今日は二国間の友好宣言の式典だ。
すでに書面の上では友好関係なわけだが、国民に向けて「俺たち仲良し仲良し」をアピールする場というわけだ。
つまり俺は今テンペストのイメージを背負ってここにいる。
そして、シオンに文字通り持ち上げられ、多くの民衆の視線を受けながら演説を始めた。
「えー初めましてドワルゴンの皆さん、ジュラ・テンペスト連邦国。略して
この通り私はスライムなのですが、人と魔物の橋渡しとなるような国家を築きたいと願っております。
ここドワルゴンはまさに共存共栄が為された国であり、目標です。
こうして友誼を得ることが出来たことが出来、ガゼル王には感謝の念に堪えません。
我が国では魔物が多数所属しています。ですがその心根は皆様となんら変わるところはないのです。
できれば恐れるのではなく、新たな友として受け入れて欲しい。
この言葉が本心であることをここに誓い、私の挨拶に代えさせていただきます」
スピーチが終わると民衆は大きな拍手を送ってくれた。
…うん、まぁまぁのスピーチだったんじゃないだろうか
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
「
はっきり言って
ガゼル王の厳しい判定に落ち込む俺、しかしまだ終わっていない。
「国を納める者が国民に謙るものではない。ましてや他国の住民に下手に出れば舐められるだけだぞ。
こうなったらいいなんて甘えた統治は厳禁だ。素晴らしいものとは自然にやってくるものではなく、自ら掴み取りに行くものなのだから」
厳しい………でも、心からの忠言であることは間違いない。
「肝に命じて今後の課題にするよ」
「せいぜい励め危うくて見ておれんわ、それとリードにも伝えてくれよ」
本当、俺とリードは縁に恵まれているな。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
「ねえリュウエイ!次あっち見に行こう!」
「ああ!」
リュウエイがコハクの手を引き、ドワルゴンにある店を右に行ったと思ったら左へ、左へ行ったと思ったら右へと、見て回っていた。
「おーい!お前達!」
「あまりはしゃぐと危ないよ!」
「「はい!/はーい!」」
コウホウとウォズが後ろで注意をするが、二人の事情を知ってる為か、どこか嬉しそうな表情だった。
「…なぁウォズ」
「なんだい?」
「先日ドルフ殿の言っていたホウテンが死鳥のニクスと言っていたがそれ程強いのか?」
「…私の知り得る範囲だが、構わないか?」
「ああ」
ウォズが知ってる死鳥のニクスの情報、
彼が
さらに、彼の弓は数多の敵を屠り、一人で1個部隊を殲滅させるほどの技術を持っている。
「ほぅ、なら帰ったら手合わせをしてもらうか」
「しかし、彼の武器は弓にあらず」
「なに?」
まさに死を呼び寄せる鳥、『死鳥』の異名もこれらの理由からきていると聞いたことがある。
そして魔王フレイがいなければ、彼が魔王になっていたともいう。
「…その魔王フレイの弟という噂は?」
「それは私も初耳さ」
「…帰ったらいろいろと聞き出すか?」
「いや、誰だって隠したい秘密は有るものだよ。私も、君も、」
「………ウォズ「てめぇら!どこ見て歩いてやがる!」ん?」
いきなり怒声が聞こえるとリュウエイとコハクが、ガラの悪い集団に絡まれていた。
「言い掛かりはやめろ、貴様らがぶつかってきたのだろう?」
「んだと?」
「ひぃっ…!」
「うん?良くみたらその嬢ちゃんいい体してんな…へへ、こっちに寄越せば許してやるよ」
「なんだと?」
「!まずいぞ!」
「たしかに!」
コハクを不埒な目で見る集団にリュウエイがスキルを発動させようとし、コウホウとウォズが止めようとしたその瞬間、長身の女性が割って入ってきた。
「やめなよ、みっともない」
「ああん…っ!てめぇはベルン!」
「「!?」」
「(おい、ウォズ!ベルンとは確か…)」
「(ええ、ベスターの姪です)」
「…この娘を襲うなら、私を先に襲え」
「………っ!行くぞ!」
ベルンが自分を身代わりにすると連中のリーダーは悪態をついて、帰っていった。
「あの、その、ありがとうございます!」
「ありがとうございます!」
「………」
コハクとリュウエイにお礼を言われると、ベルンは照れくさそうに髪の毛を弄っていた。
「あなたがベスターの姪、ベルンですね?」
「…そうだけど」
「初めまして私は「英雄ウォズ」…今はテンペストの盟主の片割れリード・テンペストの秘書をしています」
「…質問いい?」
「なんでしょう?」
「今この場で一番頑丈な者は誰?」
ベルンの問いにコハク、リュウエイ、ウォズの視線が同じ人物に向けられた。
「…我?」
「数日前、声が教えてくれた、『私のスキルを制御可能にするお方が現れる』ことと『その配下の一人は私のスキルに耐えることができる』ことを…」
ベルンは右手をコウホウに伸ばすとリュウエイとコハクは心配そうにコウホウを見ていた。
しかし、コウホウはただ黙ってその手を見ていた。
「………ごめん、やっぱり「一つの質問がある」…!」
「我が貴様のスキルに耐えたら一緒にテンペストに来るか?」
「………耐えたらね…」
「くはっ、良いだろう!」
コウホウはベルンの手を握り、ベルンがスキルを発動させた。
「…っ!」
コウホウの身体は一瞬でボロボロになり、爪は剥がれ、筋肉はヅタヅタにされ、吐血し、膝をついた。
「………っ!」
しかし、ベルンの手を握るコウホウの手は離すどころか、強く握り返した。
これにベルンは驚きを隠せなかった。
「くはっ、お前なかなか良いぞ!」
「………ふっ」
ベルンが、笑みを浮かべるとコウホウの手を離し、踵を返した。
「…悪いけど誰か荷造りの手伝いをお願いしても良い?」
「えっ?」
「しかし、コウホウさんが!」
「リュウエイ、コハク行ってこい」
「しかし!」
「私が見とく、行ってきなさい」
「「………はい…」」
コハクとリュウエイがベルンについていき姿が見えなくなると、ウォズはコウホウに回復薬を渡すと、コウホウはそれを一気に飲み、全回復した。
「ふーー、死ぬかと思った!」
「まったく」
「ここにいたのですね、ウォズ、コウホウ」
「これはこれは、シュナ様…っ!!」
「うん?どうしたコウ…ホウ…っ!!」
シュナの声に振り返ったコウホウが固まり、ウォズも後ろを振り向くと、恐ろしいオーラを纏い笑みを浮かべるシュナと、同じオーラを纏ったアイコンになったシズだった。
「ど…どうしました?…シュナ様」
「実はゴブゾウがリムル様達と一緒に『夜の蝶』という店に行くと聞いたので、お迎えに行くのを手伝ってくれませんか?」
これはある種の命令だとウォズとコウホウは直感した。
そしてこれに逆らえば、自分達の命はないことも二人は悟った。
「シュ…シュナ様!少し確認したいことがあるので、少し待ってください!」
「…良いですよ、ですが…長引かせないでください」
「はい!!おいウォズ!ちょっと来い!」
コウホウがウォズの首根っこを掴み、30メートルほど離れた。
「(ウォズ!コハクとリュウエイには?)」
「(さっき『思念伝達』で、手伝いが終わったら部屋に戻るように伝えてある)」
「(よし!ではシュナ様達と共に参るぞ!)」
「(ああ!)」
話しが終わるとウォズとコウホウはシュナのもとに駆け寄った。
「話は終わりましたか?」
「「はい!お待たせて申し訳ございません!」」
「じゃあ、一緒に行きましょう」
「「はい!!!全身全霊をもって、お手伝いさせていただきます!!!」」
シュナとシズは、ウォズとコウホウを引き連れて、リムル達のもとへ向かった。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
一方、リムル達は『夜の蝶』での天国に浸っており、リムルはエルフの足と胸に挟まっており、酒を楽しんでいた。
連れてきたゴブタは鼻血を出しすぎて倒れていたが、皆楽しんでいた。
「ねぇ、スライムさん」
「うん?おお!君は占いの!」
「覚えてくれて嬉しいわ」
「どうしたの?」
「…あの時の占いのことなんだけど…」
「!………話してくれ」
占いのエルフが、どこか不安そうに言うが、俺はあの時の占いが気になっていたので話すよう頼むと、そのまま話し始めてくれた。
「あの後、気になってあの時の続きを見ようとしたら…」
話の内容はこうだ。
他にも入ってくる人影がいたが、全員黒いもやに覆われて顔が見えなかったらしい。
しかしその後…
「リードの旦那と
「カイジン、ヒナタって誰だ?」
「西側にはルミナス教っていう宗教があってな、それを布教する組織を西方聖教会っていうんだが、その宗教に「魔物の殲滅」が教義にあるんだよ」
「うん?」
ちょっと待てよ、それって………
「その武力として
「………」
まさか…リードの力を知り、危険と判断して殺しに来るんじゃないだろうな。
…一応、帰ったら伝えておくか。
俺が酒を一杯飲むと、カイドウが何か思い出したようだ。
「そうだ、兄貴!俺この前すげぇ異世界人に会ったぜ!」
「!?異世界人!」
「ああ、門の前で警備してたら商人が魔物の群れに襲われてな、現場で対応してたら、どこからともなくデケェ人間が現れて素手でそいつらを全滅させたんだ」
「素手だって!?」
「すげぇな!」
まあ、
「それで、いろいろ礼がしたいって言ったら」
『なら、幾つか俺の質問に答えてくれないか?』
「何を聞かれたんだ?」
「確か、『ここはなんていう国なんだ?』、『この世界の通貨の価値を教えて欲しい』、『この世界の通貨を分けて欲しい』、『人助けが出来る仕事を教えて欲しい』この四つだったよ」
「なんて答えたんだ?」
「三つは難なく答えたんだが、仕事のことを聞かれたとき、英雄ヨウムのところを進めたよ。その人、堅苦しいのが苦手そうな雰囲気があったからな」
「…その異世界人の名前とか聞いてないか?」
「確か………
「!?」
やっぱりあいつかーーーー!!
これは、再開したら大爆笑されるな、あいつ結構親しい奴ほど態度を崩すからな。
そうして俺たちの夜は更けていった。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
「おいおいしっかりしろよ兄貴。いくらなでも飲みしゅぎだじぇ~~~…」
「おみゃえこしょ~~~」
足元がふらつくドワーフの四人、完全に出来上がっている。
この酔っ払いどもめ…
「おい、ゴブタ、お前もしゃんとしろ!」
「ちょっと…貧血でむりっす…」
「ったく…」
ゴブタは貧血で俺が運んでいるが、回復するまでまだかかるな。
これから、こっそり宿に帰るのに…
「お手伝いしましょうか?」
「ああ、すみませ…」
んーーーーーーーー!?
そこにいたのは、恐ろしいオーラを纏った笑顔のシュナとアイコンになったシズさんだった。
「しゅ、しゅ、しゅ、シュナ!?し、し、し、シズさん!?なぜここに…」
「なぜって」
「ゴブゾウ君が全て話してくれたから」
「なっ…ゴブゾウっお前…どうして…」
「え?オラ、シュナ様とシズ様にどこか行くか聞かれたからお答えしただけダス」
何してくれてんだお前ええええええぇっ
そんな澄んだ瞳で答えるゴブゾウに怒りを覚えたが、それはすぐになくなった。
「ひどいです、リムル様…」
「し…シオン!!」
「置いてくなんてあんまりです!」
「いやだって、女の子が行って楽しい場所なのかわからないし…」
「でも黙って行くなんてひどいです!」
「う!!」
一方カイジン達は小道を通って逃げようとしていた。
「残念ですが、逃がしませんよカイジン」
しかし、目の前にウォズとコウホウが現れ逃げ道を完全に塞いだ。
そして全員正座され、シュナのお説教が始まった。
ウォズとコウホウは後ろでその光景を眺めていた。
「コウホウ、シュナ君は怒るとここまで怖いのかい?」
「ああ、シュナ様の母上、つまり奥方様譲りだ」
「リムル様のなさりたいことをお止めするつもりなどないのです。」
「……だけどちょっぴりだけ寂しかったの」
「うう…っ」
言い訳は逆効果だ。ここはーーー
言葉短に!
「すみませんでした!」
腰を低く!
「もうしません!!」
スライムの可愛さで情に訴えかけて!!
「だから許して、ね?」
リムルのこの動作で、シュナとシオン、そしてシズの目がハートになっていた。
「わかりました。一週間シオンとリードさんの朝ご飯で許してあげます」
良かっ…え!?
「良いのですかシュナ様!」
「ええ、頑張ってねシオン」
「リード君には私から伝えておくね」
「ありがとうございます、シズ様」
ほのぼのとした空気に合わない恐ろしい話を進める女性達、カイドウ以外はみんな顔が真っ青になり、コウホウはどこから取り出したか数珠を出し念仏を唱え始め、ウォズは十字をきる仕草をしていた。
『
この時、俺の頭にガゼル王のあの言葉を思い出した。
「あの…三日に負かりませんかね?」
「「一週間(です)」」
「…はい」
ガゼル王、あんたの指摘は正しかったよ…
こうして、我々のドワルゴン訪問は特に大きな問題なく終えることが出来、新たな仲間も加わることとなった。
しかし、あの声に導かれている者がまだいることを私たちは知らない。
一方、テンペストに残った我が魔王は、
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
自室で眠っているリードがゆっくり目を開け、大あくびをしながらベランダの窓を開け、日の光に当たった。
「………ファルムス王国か…降りかかる火の粉は払うのみ」
(そう言うのね?
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
同時刻、神聖法皇国ルベリオス
その首都ルーンの入り口に一組の男女がいた。
「行くんだな?」
「ええ、あの声の言うことが本当なら、ワタシは行くべきなの」
「………いつでも帰ってこい」
「良いの?
「お前を守る為の地位だ、安心しろ」
「………ありがとうサーレ、行ってくるね!」
「ああ、レミン、元気でな」
二人は顔を近づけ、お互いの唇が合わさり、やがて離れた。
そして、女性は馬に乗るとそのままテンペストに向かって走って行った。