しかしその後、『夜の蝶』にゴブタ達と共に訪れたことが、シュナ君とシズさんに知られてしまい、リムル殿は罰として、一週間我が魔王とシオン君の朝食を食べることとなった。
「いやーまさか…メシを食って走馬灯を見るなんて思わなかったよ」
「シュナ様とシズ様にもらしたのはゴブゾウなのになんで自分まで…」
「馬鹿野郎!お前がヤツを教育していなかったせいだろうが!」
「そもそもどこかの助平粘体生物達のせいで、俺がこんな面倒事に巻き込まれたんだけど…」
「それは本当にすみません」
ドワルゴンから帰国して数日、今は罰としてシオンとリードの手作り朝食を頂いている最中だ。
リードがシオンの料理に手を加えて、見た目だけ変えるようにしている。
ちなみに、事情知った時のリードの反応は、
「リムルってたまに馬鹿なの?って疑いたくなるんだけど」
と、絶対零度でかつゴミを見るような目でみられたことを思い出しただけでも震えがくる。これはトラウマだな…
普段は優しい表情をしているが、あの時の目は怒る時よりも遥かに怖かった。
「じゃあ俺は孤児院の完成具合を確認があるから行くね」
「おお、行ってらっしゃい」
俺がドワルゴンに出発した後、リードはすぐに孤児院の建設に取り掛かっていたそうだ。
ユーラザニアでコハクに会ってから一人ぼっちの子供を減らしたいという思いがあったらしい。
そして建設に取り掛かる前に、ソウエイ達を使って森中にいる孤児を探させると、思ったよりいたらしく、各種族に掛け合い引き取ることとなったそうだ。その中には捨てられた人間の子供もおり、赤ん坊もいたそうだ。
そしてゲルド達もリードの思いに感動し、一日でも早い完成を目指して建設に取り掛かっているそうだ。
そしてデザート(シオン作)を置いて部屋から出ると入れ替わりでウォズが入ってきた。
「リムル殿、少しよろしいでしょうか?」
「どうしたウォズ?」
「はっ、実はお話したいことがありまして」
ウォズは、俺が渡したアイコンになったシズさんを取り出した。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
「おーい、ゲルド」
「!リード様!おはようございます」
「おはよう」
俺は建設中の孤児院の現場監督をしているゲルドに挨拶をし、もうすぐ完成する孤児院を見た。
「大分完成してるな」
「はい。あと二、三日で完成します」
「そっか………あのさゲルド」
「はい?」
「俺が人間の子供も一緒に生活させてあげたいって言った時、あの中でお前が最初に賛成してくれたけど…なんで?」
「………リード様は、我が父王ゲルドと約束してくれました。我々オークの罪を背負うと」
「それはリムルだろ?」
「ええ、それと、あの時あなたはこう言いました」
『人間と魔物の違いってそもそも何?俺たちはお互いに知らないだけ!それなら、一歩ずつ歩み寄るべきなんじゃないか?このテンペストだって最初は敵対していた種族達なのに今じゃ手を取り合ってる。だったら人間と魔物だって出来るはずだよ、現にブルムンドと交流があるじゃないか』
確かにそう言ったな…
「あの言葉を聞いて、あなたは本気でやろうとしている。ならば配下の我々も本気で応えようと思ったのです」
「………ゲルド、ありがとう」
「いえ、オレはただあなたのその思いに応えたいだけです」
ゲルドの答えを聞いて、俺はますますこの国のみんな守りたい思いが強くなった。折角築き上げてきたみんな幸せを何があっても守りたいそんな思いが胸に広がった。
「(リード、ゲルド、悪いが会議室に今すぐ来てくれ)」
突然リムルが『思念伝達』で語りかけてきた。
「(どうしたリムル?)」
「(みんなに話したいことがあるんだ)」
「(…わかった今から向かう)」
「(遅れるなよ)」
「ゲルド」
「はい、全て聞いていました」
「じゃあ行くぞ」
「リード様は先に行ってください。オレは部下に伝えておくので」
「わかった」
俺は翼と羽を広げ、会議室に向かった。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
「…そんな事情があったなんて」
会議室に全員が集まると、リムルが人間の国であるイングラシアにシズさんと一緒に行くらしい。
何故だと言うとシズさんが説明してくれた。イングラシアにある学校で異世界から召喚された子供達がいるらしい。
その子供達はこちらの世界の召喚に失敗してしまった子供だそうだ、この世界に来る際に得られるはずのスキルを得ることが出来ず、膨大なエネルギーだけ得てこちらの世界に来るそうだ。そしてその膨大なエネルギーによって最後は死んでしまうらしい。
だが、シズさんも魔王レオンに召喚された時、まだ幼く瀕死であったが、あるものを得て生き延びることが出来たそうだ。
そう、シズさんを苦しめたイフリートである。
そしてシズさんはあの時の旅で魔王レオンから子供達を救う方法を聞き出そうとしていたそうだ。
俺はこの話を聞いた時腸が煮えくり返っていた。
幼くして大好きな家族に会えなくなった気持ちを俺は痛いほど知っているからだ。
平然を装い、なんとか『王の威圧』が漏れないよう抑え込んでいた。
「…お話はわかりました、ですがリムル様とシズ様だけというのは…」
「左様じゃ、万が一のことがあればジュラの大同盟が根底から崩壊するやもしれる」
「大丈夫、影に潜んだランガも連れていく。それに…」
「自分の分身体を一体、リムル様との連絡役に回しておく。何かあれば皆にも知らせよう」
なるほど、確かにそれなら多少は安全だが…やっぱり不安なところはあるな、仕方ない。
「ウォズ、お前も同行しろ」
「え?」
「我が主!?」
ウォズが文句を言いたげなリアクションを返し、リムルは俺の提案に驚いていた。
「この中で西側諸国のことを一番知っているのはお前だけだ。だからお前はリムル達のサポートをしろ、これは絶対命令だ」
「うっ…わかりました」
「くははは!残念だったなウォズ!」
「コウホウ、お前はウォズが帰ってくるまでハクロウの仕事の手伝いをしろ」
「えっ!?」
大爆笑していたコウホウがリードにボディーガードを外されたことに一転した。
「何故ですか!?」
「これを見て、何か意見があれば言ってみろ」
俺は『万能空間』から、大量の書類を取り出した途端、ウォズとコウホウの顔色が悪くなった。
「なんだこれ?」
「二人の喧嘩による被害報告書」
「あっ…」
この二人は何かあるとすぐに
「…それで何か意見は?」
「「………ありません」」
「じゃあリムル、ウォズも連れていくことでいいな?」
「お、おう」
そしてこの後、リムルのイングラシアへ行く計画をたてることとなった。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
リムルのイングラシアへ行く計画をたておえ、俺はまちの散歩をしていた。
リムルが俺を罰に巻き込んだことのお詫びに、俺の仕事の半分をやってくれているからだ。
(まあ、楽になったからいいけど…やっぱり暇だな)
「(住民より通報!織物工房に侵入者あり!!近くの警備隊は急行せよ)」
突然緊急の知らせが流れた時は驚いたが、今織物工房って言わなかったか?
俺の頭にシュナの顔がよぎり、最悪の事態を予感させた。
「シュナ!」
『閃光』を最大出力で使い、最短ルートで工房に向かった。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
「シュナ!無事か?」
「リードさん!」
「シュナ、怪我はないか?」
「は、はい。大丈夫です」
「そうか…よかった…」
「リード様!?」
リードが慌てて、工房に着きシュナの安否を確認するとホウテンが到着し、リードがいることに驚いてた。
しかし、侵入者の顔を見た途端顔色が変わった。
その侵入者は、セラドン色のショートヘアのハーピィの少女であった。
少女もホウテンの顔を見ると最初は驚いてたが、次第に瞳に涙が浮かんだ。
「………では、オレは見回りに戻りま「ニクス様ーーー!!」グホォッ!」
ホウテンが逃げようとした瞬間、少女はホウテンに体当たりのように抱きついた。
ホウテンが思いっきり倒れたが、それに気づいていないのか少女は大泣きしていた。
「無事だったですのー!よかったですのー!」
「ね、ネムなんでここに…?」
「………ホウテン、顔が良いからってそんな少女の恋心を弄ぶはちょっと…」
「違いますよ!あと、リードはいつまでその体勢いるのですか!?」
「えっ?」
ホウテンに言われて、初めて俺は今の体勢に気づいた。
シュナの肩に両手を乗せ、いつの間に抱き寄せていたことに
「あ!えっ!?ごめんシュナ!!」
「い、いえ、大丈夫です。寧ろ、嬉しかったです…」
慌てて手を放し、シュナに謝った。今何か小声で言わなかったか?
「ところでホウテン、その娘とはどういう関係?」
「……えっと、この娘は_____」
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「フルブロジアにいた時の部下?」
「はい、幹部候補のネム。かなりの怠け者ですが察知能力はかなりのものです」
あの後、ハーピィの少女ネムが工房の品を駄目にしてしまい、その分の代価を働いて返すこととなった。
俺とホウテンはその見張りをシュナに頼まれた。
「ところで、リード様は何故
「え?」
「リード様が散歩に行った方向と、この工房は反対方向のはずですが…」
ホウテンがニヤニヤして、意地の悪い質問をしてきた。
「ただ、俺は報告受けて来ただけだ」
「ほ~う、オレはてっきりシュナ様が心配で来たものだと思いましたが?」
「な、何言ってる!?!」
「では何故、『閃光』で来たのですか?」
「!?」
ホウテンにスキルを使ったことを気づかれ、言葉が詰まった。
カマをかけたのは気づいていたが身体が素直に答えてしまった。これじゃあ答えを教えたのと同じことだ。
「やはり…」
「なんで気づいた」
「リード様のいた位置を予測しても、『閃光』を使わずとも十分に間に合う距離のはずですが、時間があまりにも合わないのでもしやと思ったのですが、当たりですか?」
「………」
図星をつかれ、答えられなかった。
気がついたら『閃光』を使い、シュナの無事を祈っていたことを思い出した。
でも、この気持ちがなんなのか俺にはよくわからなかった。
「………リード様、今からオレの質問に素直に答えてください」
「え?」
「良いですか?」
「………わかった」
「まず、最初の質問
もし、シュナ様があなたじゃない別の男性と交際していたら、どんな気持ちになりますか?」
「え~っと」
ホウテンの質問の内容を想像した。
俺じゃない誰かがシュナと一緒にいて、シュナはそいつに明るい笑みを浮かべる光景が思い浮かんだ。
…なんだろうすごく、
「すごくその男が憎いし、嫌な気分になった」
「………成る程、では次の質問です。
シュナ様があなたと一緒にいるとします。あなたはどんな気持ちになりますか?」
「………」
シュナと一緒にいる…そう考え、シュナが俺に笑いかけるところを想像すると、とても幸せで、「安心出来て、心が癒される」
「……ほ~」
「え?俺声に出てた?」
「「安心出来て、心が癒される」と言ってました」
「…ッーーー!!」
顔が熱く感じる。間違いなく俺の顔は炎と同じくらい赤くなっているだろう。しかも心臓が激しく鼓動しているのを感じる。
言葉にしていたことが恥ずかしくて、手で顔を押さえた。
「リード様、あなたはシュナ様に…「言わないで」………」
(ある意味最悪だ)
自分の気持ちに気づいた時には、もうシュナのことを考えるだけである気持ちでいっぱいになった。
俺はシュナのことが………
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
その後は、ホウテンに頼んで逃げるようにシェアハウスに帰った。どう頼んだのか、どうやって帰って来たのかよく思い出せないかった。
そして自室の布団に倒れるように横になった。布団がクッションの役割をしてくれたが、やはり少し顔に痛みを感じた。
しかし、今はそんなことどうでもよかった。俺はジオウウォッチを取り出し、ただ見ていた。
「俺が誰かを愛して良いのか?」
こんな時、
「………どうすれば良いんだ?」
俺はただ、自分の今の状況に悩むしか出来なかった。
そしてそのまま、俺は夕食の時間になるまで眠った。
こうして、我が魔王はシュナ君に対する自身の本当の気持ちに気づき、悩むこととなった。
しかし、そのようなことは関係無く、我が魔王は運命に巻き込まれていくのだった。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
ある空間に円上の机があり、そこには十人の魔王が座っていた。
バァァァン!!
「気は確かですか!?」
「これは、決定事項だクレイマン」
机を叩き身を乗り出すクレイマン、しかし赤髪の魔王ギィが威圧して黙らせた。
「…っ…!」
「それでは、決定事項を発表します」
青髪のメイドが静かになったのを見計らい静かに述べた。
「ギィ・クリムゾン様の案にラミリス様、ミリム・ナーヴァ様、ダグリュール様、ディーノ様、ロイ・バレンタイン様、カリオン様の六名が賛同したため、
ジュラ・テンペスト連邦国の盟主の片割れリード・テンペストに魔王の称号を与えることを決定します」
リードの知らぬ間に事態は既に動き出していた。