転生したら天魔人だった件   作:通りすがりの気分屋

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我が魔王は、自身の義兄(あに)である時魔自然(シゼン・トキマ)と再会する。
二人は、酒を飲みながら再会を喜び合い雑談をしている最中、最古の魔王ギィ・クリムゾンが現れた。


魔王ギィ・クリムゾン

 

俺は今、全神経をギィに向けていた。

あのミリムと互角の強さを持つというだけで警戒するのは勿論、ミリムと違って考えが読めないこともあり、ヤツの一挙一動に全神経を集中させるだけでははっきり言って足りない。

 

「(自然(シゼン)義兄(にい)さん気をつけて)」

 

「(うぉっ!!びっくりした!もしかして、これが『思念伝達』?)」

 

「(うん。それよりアイツの動きには要注意して)」

 

「(知ってるのか?)」

 

「(うん。アイツはこの世界で最強の存在、魔王ギィ・クリムゾン)」

 

「(魔王!?)」

 

「(はっきり言って、今の俺達じゃ勝てないけど…)」

 

「(わかってる。お前の国には近づけさせねぇ)」

 

「(………ありがとう)」

 

この状況でこれ程頼もしい存在はいない、今の自然(シゼン)義兄(にい)さんは、俺と互角の力を持ってる。

一矢報いるくらいは出来るだろ。

そしてギィが一歩歩き出した次の瞬間

 

(………え?)

 

()()()()()()()

飛び立とうとしていた小鳥は空中で止まり、飛び跳ねていた魚も中を浮いていた。そして自然(シゼン)義兄(にい)さんも完全に止まっていた。

さっきから『思念伝達』で呼びかけてるけど、全く反応がない。おそらく意識すら止まっている

そんな空間で俺は確かに()()だけが動いていた。きっと俺の持つジオウの力のおかげだろう。

しかし、ギィはまっすぐ俺に歩み寄ってくる。

 

(クソ!クソ!クソ!動け!動け!動け!)

 

必死に動くよう念じるが、指先がやっと動く程度で歩く事すら出来ない。

そして遂に俺の目の前に立った。

 

「ほぅ、()()()()意識はあるんだな」

 

(やっぱり?)

 

ギィのこの口振り、もしかして相当強くならないと動くことも出来ないのか?だとしたら、一体どうすれば?

俺は、そのまま熟考していくと()()()()()()()()

 

「え?はぁああ!!」

 

自然(シゼン)義兄(にい)さんは、いきなり隣にギィが移動していたことに驚いているんだろう。

そして、迂闊に動けない俺をギィは、まるで観察するような手つきと目でじっと見つめる。

 

「ふむこの感じ、やっぱり()()とも持ってるな」

 

何の事を言ってるんだ?それとなんだかギィの目付きがイヤらしく感じるのは俺の気のせいにしたい。

しかしどうやら気のせいではなく、ギィは顔を近づけお互いの唇を近づけさせると

 

「テメェ!!義弟(おとうと)に何しやがる!?」

 

自然(シゼン)義兄(にい)さんが渾身の一撃を放つが、ギィは何事もなかったように空中に逃れる。

そして今度は自然(シゼン)義兄(にい)さんをじっと見つめる。

 

「…お前、聖人だな。しかも『勇者の卵』持ちの」

 

「!?」

 

「………えっ?」

 

自然(シゼン)義兄(にい)さんが勇者………

いや、その前に今聖人って言った!?

 

「まぁ安心しろ、俺はただリード、お前の顔を見にきただけだ。じゃあな」

 

ギィがそれだけいうと、どこかへ飛び去って行った。

俺と自然(シゼン)義兄(にい)さんに重苦し空気を感じた。

 

「………自然(シゼン)義兄(にい)「大丈夫だ」え?」

 

「俺はお前が道を踏み外した時以外お前を殺す気は無いし、魔物が全て悪ではないのはよく知ってる」

 

自然(シゼン)義兄(にい)さん…」

 

「さっ!飲みなおすぞ!」

 

「うん!」

 

やっぱり、自然(シゼン)義兄(にい)さんには全てを話すか。

 

自然(シゼン)義兄(にい)さん」

 

「ん?」

 

俺は自然(シゼン)義兄(にい)さんにこの二年の事を話した。

 

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

 

ギィは自分の領土である氷土の大陸を目指して飛翔していた。

そして海を横断中、ギィの頭上から大量の剣が降ってくるが、ギィはそれを結界で防いだ。

そして防がれた剣は全て消滅した。

 

「さっきのはどういうつもりだい、ギィ?」

 

「それがいきなり攻撃してきたヤツのセリフか、ダイロス

 

ギィは剣を降らせた犯人、青紫色の髪をした妖精族(ピクシー)、ダイロスを見上げた。

 

「あんなの見られたら、僕もグレイドも黙っちゃいないよ」

 

「やっぱり、()()()グレイドの兄貴の所にいるんだな」

 

「まあね。で、さっきのはどういうつもりだい?」

 

ダイロスは自身の右手に細剣(レイピア)を持つ、返答次第ではこちらは攻撃するという意思がよくわかる。

 

「君も知ってるだろうけど、人間達に『精霊武装』を教えたのはこの僕だ。そして僕は闇の精霊王以上の力を持つ、正直に返答したまえ」

 

「……………」

 

二人の間に緊迫感がつまる、ギィの返答次第ではこの海一帯の生物は絶滅するだろう。

 

「…俺はただ、詰まりを取り除いただけだ」

 

「………詰まり?」

 

「ああアイツ、リードの体のあちこちに魔素が詰まってる所があってな。それを取り除いただけだ」

 

「じゃあ君は、本当にあの方に危害を加える気はないのだね?」

 

「当たり前だ」

 

ギィが素直に答えると、ダイロスは細剣(レイピア)を消した。

 

「ならよかった。もし君があの方に危害を加える気だったのなら、即座に原初(君たち)の兄貴分にして最初に生まれた原初の悪魔、原初の(レイアン)であるグレイドが来ていたからね」

 

「勘弁してくれ…」

 

「それじゃあ、僕は帰るね」

 

「…グレイドの兄貴によろしく伝えといてくれ」

 

「………わかった」

 

ダイロスは地獄門を開き、そのまま中に入った所を見送ると、ギィも自身の領土に戻った。

 

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

 

ブハハハハハハハハハ!!

 

自然(シゼン)義兄(にい)さん笑いすぎ…」

 

俺は自然(シゼン)義兄(にい)さんにこの二年間の事を話した。

そして、俺の相棒のリムルが言っていた事は本当のようで、煉武(レンム)義兄(にい)さんとは小学生の時からの付き合いがあり、縁護(エンゴ)義兄(にい)さん達に取っ手も兄貴分だったそうだ。

自然(シゼン)義兄(にい)さんも最初は不信がっていたが、『侵入(インベイション)』で俺の記憶のリムルを伝えると、床掃除でもする気?ここ外なのにと、言いたく成る程、激しく笑い転げていた。

 

「だ、だって…俺達が知る三上(みかみ)さんだってのは、雰囲気ですぐわかったけど…こ、これは、ぶはぁ!!」

 

今度は大爆笑しながら激しく地面を叩く、自然(シゼン)義兄(にい)さんがやると軽い地震が起きるし、クレーターが出来るから止めてほしい。

俺がそう言おうとした時、

 

ドックン!

 

「がぁ!」

 

聖司(セイジ)?」

 

何だこれ?体があつい!全身が丸焼けになりそうだ!

 

聖司(セイジ)!?おい!どうした!?」

 

「あっ、がっ!」

 

「あの野郎(やろぉ)、あん時に何かしやがったな!待ってろ聖司(セイジ)、今俺のスキル『破壊者(コワスモノ)』で…」

 

「あがっ!…あれ?治まった…」

 

「えっ?ホントか?どこか痛いとこ…ろ…は………はっ?」

 

「どうしたの、自然(シゼン)義兄(にい)さん?」

 

「か、体と顔が…」

 

「え?………えっ?」

 

自然(シゼン)義兄(にい)さんに言われて腕を見てみると、あちこちに小さな傷痕が出てきた。そんな小さな傷痕が体や背中、足にまで出てきた。

だけどこの傷痕を俺はよく知ってる。なぜならこれは、俺が前世で稽古をしていた時に負った傷痕なのだから。

そして自然(シゼン)義兄(にい)さんは顔にも変化があると言った事をすぐに思い出した。

 

(まさか…)

 

嫌な予感がして、俺は慌てて湖を覗き込むと、俺は言葉を失った。

そこに映っていたのは、()()()()()()だったのだ。

 

「………何でだよ…」

 

俺はそれしか言えなかった。

そしてついに声までもが、前世の俺に変わってしまっていた。

だが、何故こうなったのかは心当たりがある。

それは俺が心の奥底で、姉によく似た自身の姿や顔が変わっていたことにずっとショックを受けていたからだ。

そして、もし前世の姿になれるならなりたいと心の奥底でずっと願っていたことに、俺は気づいていないふりをし続けていた。

きっとこれは、その望みによってだろう。

だけど、

 

「何で今頃なんだよ…」

 

「…聖司(セイジ)、今日はもう帰ろう…」

 

「…うん」

 

こうして、俺と自然(シゼン)義兄(にい)さんの再会は、重い空気の中終わった。

 

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

 

誰にも見られないように転移魔法で自室に移動した俺は、そのまま布団に向かって倒れた。

 

「今日はもう疲れた…」

 

強烈な眠気に襲われて、俺はそのまま意識を手放した。

 

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

 

狭い部屋に俺は立っていた。

 

「久し振りの予知夢か、状況は………成る程」

 

どうやらこの予知夢の時の状況は、俺の計画通りに第一段階が終えた後らしい。

 

「それにしても、ここは一体………え?」

 

俺が目線を下に下ろすと、俺は目の前の光景を理解できなかった、いや、したくなかった。

 

「シュ…ナ…」

 

それは、おそらくそばに転がっている小瓶の中身を飲んで()()()()()()()()()が倒れていた。

 

「あっ…ああ……あああぁぁああぁああ!!

 

俺はこの時悟った、俺が考えていたこの計画は、大きな誤ちであったことに…

 

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

 

翌日、シゼンはリードに再び昨日と同じ時間、同じ場所に来るように言われて、森の中を歩いていた。

そして森を抜けると、リードがそこにいた。

 

「おっ!聖司(セイジ)ーー!」

 

「あっ、自然(シゼン)義兄(にい)さん待ってたよ」

 

「!?」

 

シゼンは、リードの顔色が昨日より明らかに悪くなっていることにすぐに気づいた。

 

聖司(セイジ)!どうした、何があった?」

 

「………自然(シゼン)義兄(にい)さん、俺はどうすれば良いの?」

 

リードはそう言うと、瞳に涙が浮かび、シゼンに話した。

 

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

 

俺は、自然(シゼン)義兄(にい)さんに昨夜の事を全て話した。

それは、俺にとって地獄の選択であることは明らかだった。

 

自然(シゼン)義兄(にい)さん、俺はどうすれば良いの?」

 

俺は、同じ質問をする。

盟主としてならこのまま計画通りにすればいい、だけど俺個人としてはシュナを死なせたくない。

そんな事を俺はずっと考えていた。

 

(なんだよそれ…どっちを選んでも聖司(コイツ)には、どちらも救いが小さすぎる!だが、兄として俺が言える事はただ一つ。それは煉武(レンム)兄貴達も同じ事言うだろう)

 

シゼンはリードの話を聞いて、もっと早くにこの魔国連邦(テンペスト)に来ればよかったと後悔していた。

しかし、シゼンは兄達の事を考えて答えた。

 

聖司(セイジ)()()()()としてならどうしたいんだ?」

 

「え?」

 

自然(シゼン)義兄(にい)さんのこの質問に俺は少し怒りを感じた。

俺個人としては?そんなことは決まってる。そんなの

 

「シュナを死んでも守りたいに決まってる!」

 

言葉にして改めて気づかされる。

俺は、シュナの事が好きなんだという事に、前世では姉さんの行方を探して、恋愛等をする気なんて微塵もなかった。

でも今は、オーマジオウになってしまう恐怖よりシュナを失う恐怖が何十、何百倍も大きかった。

そして頭に何か覆い被せられた感触を感じた。自然(シゼン)義兄(にい)さんの手だというのは、すぐに気づいた。

 

自然(シゼン)義兄(にい)さん…」

 

「よく言った。それでこそ俺達の義弟(おとうと)だ。」

 

「………え?」

 

「良いか聖司(セイジ)、どんなにすごい力や才能があったって、どちらかを選ばないといけない時がある。お前にとってのその地獄の選択がそれだ。だけど、俺はお前が地獄の体験をするなら、俺もお前と一緒にその地獄を体験してやる。これは絶対(ぜってー)煉武(レンム)兄貴達も同じ事を言うぜ」

 

それってまさか…

 

聖司(セイジ)、俺はお前の義兄(あに)としてお前を支える。人魔混合隊(トライブ)の一員として、この魔国連邦(テンペスト)を守り、お前が道を踏み外した時は、俺が義兄(あに)としてお前を殺す。文句は言わせねぇぞ」

 

「………っ!」

 

自然(シゼン)義兄(にい)さんのその申し出は、すごく嬉しい。

でも、既にリムルやシズさん、それに人魔混合隊(トライブ)のみんなを俺の都合で巻き込んでる。自然(シゼン)義兄(にい)さんまで巻き込んなんて…

 

「お前が今考えてること当ててやろうか?」

 

「……………」

 

「三上さん達を既に巻き込んだ上に、俺まで巻き込むなんて出来るワケがない。だからどうやって俺を諦めさせるか考えてる違うか?」

 

「……………」

 

「はぁー、この馬鹿(バカ)義弟(おとうと)が!」

 

「痛い痛い痛い痛い痛い!」

 

自然(シゼン)義兄(にい)さんの怒鳴り声と同時に、コブラツイストを完全にかけられた。

完全に油断してたから、解こうにも自然(シゼン)義兄(にい)さんの剛力で解けない!

 

「良いか?!お前自身が死んでも守りたいのはシュナちゃんなんだろう?!それはつまり、俺にとっては未来の義妹(いもうと)になる可能性がある!そんなチャンスをみすみす逃す俺じゃないし!お前がダメだって言っても俺はお前を笑顔にするためなら、人殺しでもなんでもしてやる!それが時魔の義兄(あに)だ!」

 

自然(シゼン)義兄(にい)さんが、俺に言いたい事を全て言うと、自然(シゼン)義兄(にい)さんの目の前に突然クウガウォッチが現れた。

 

「「………え?/は?」」

 

余りに突然過ぎる出来事に俺達は呆然としていた。だってウォッチが勝手に動くなんて事は今までなかった事だのだから。

自然(シゼン)義兄(にい)さんが何かに思い至ったのか、コブラツイストを解き、クウガウォッチを掴んだ。

そしてウォッチの表面を回転させ、ボタンを押す。

 

クウガ

 

『確認しました。個体名時魔自然(シゼン・トキマ)はユニークスキル『仮面ライダークウガ』を獲得しました』

 

世界の言葉が聞こえてくると、自然(シゼン)義兄(にい)さんの腰にクウガの変身ベルトである、アークルが巻き付かれ、そのまま肉体に溶け込んだ。

 

「………というワケで、よろしくな。聖司(セイジ)!」

 

「………え~」

 

「なんだよ、その『え~』って!!」

 

「だって、煉武(レンム)義兄(にい)さんや縁護(エンゴ)義兄(にい)さんならともかく、自然(シゼン)義兄(にい)さんはちょっと…」

 

「なんだと!?」

 

「……………」

 

「……………」

 

「「………プッ、アハハハハ!」」

 

なんだろう、今まで悩んでたのが馬鹿馬鹿しくなってきた。

もうこうなったら、義兄(にい)さん達全員巻き込もう。例え辛くても、みんながいたらきっとそんな事を感じる暇もないほど、賑やかな毎日なるんだろうな。

 

自然(シゼン)義兄(にい)さん、さっきの言葉に二言はない?」

 

「当たり前だ、地獄の体験もいつでも一緒に受けてやるし、三上さんにも一緒に怒られてやる。俺、あの人に百回以上怒られてるからな!!」

 

「なにそれ」

 

あー、本当に、こうなったらリムルに死ぬ程怒られよう。しっかり自然(シゼン)義兄(にい)さんを巻き込んで。

 

「で?聖司(セイジ)、ちゃんと予備の計画は考えてるんだよな?」

 

「もちろん!」

 

リグル達にも()()()()()予備の計画をまさか使う事になるなんて思いもしなかったな。

でも、シュナを守るためなら、みんなに罵られる覚悟はもう出来た。

俺は自然(シゼン)義兄(にい)さんに予備の計画を話し、ウォズ達にも計画の変更を伝えた。




こうして、我が魔王は愛する者(シュナ君)を守るために覚悟を決めた。
そして運命の日は、もう間も無く迫っていた。
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