二人は、酒を飲みながら再会を喜び合い雑談をしている最中、最古の魔王ギィ・クリムゾンが現れた。
俺は今、全神経をギィに向けていた。
あのミリムと互角の強さを持つというだけで警戒するのは勿論、ミリムと違って考えが読めないこともあり、ヤツの一挙一動に全神経を集中させるだけでははっきり言って足りない。
「(
「(うぉっ!!びっくりした!もしかして、これが『思念伝達』?)」
「(うん。それよりアイツの動きには要注意して)」
「(知ってるのか?)」
「(うん。アイツはこの世界で最強の存在、魔王ギィ・クリムゾン)」
「(魔王!?)」
「(はっきり言って、今の俺達じゃ勝てないけど…)」
「(わかってる。お前の国には近づけさせねぇ)」
「(………ありがとう)」
この状況でこれ程頼もしい存在はいない、今の
一矢報いるくらいは出来るだろ。
そしてギィが一歩歩き出した次の瞬間
(………え?)
飛び立とうとしていた小鳥は空中で止まり、飛び跳ねていた魚も中を浮いていた。そして
さっきから『思念伝達』で呼びかけてるけど、全く反応がない。おそらく意識すら止まっている
そんな空間で俺は確かに
しかし、ギィはまっすぐ俺に歩み寄ってくる。
(クソ!クソ!クソ!動け!動け!動け!)
必死に動くよう念じるが、指先がやっと動く程度で歩く事すら出来ない。
そして遂に俺の目の前に立った。
「ほぅ、
(やっぱり?)
ギィのこの口振り、もしかして相当強くならないと動くことも出来ないのか?だとしたら、一体どうすれば?
俺は、そのまま熟考していくと
「え?はぁああ!!」
そして、迂闊に動けない俺をギィは、まるで観察するような手つきと目でじっと見つめる。
「ふむこの感じ、やっぱり
何の事を言ってるんだ?それとなんだかギィの目付きがイヤらしく感じるのは俺の気のせいにしたい。
しかしどうやら気のせいではなく、ギィは顔を近づけお互いの唇を近づけさせると
「テメェ!!
そして今度は
「…お前、聖人だな。しかも『勇者の卵』持ちの」
「!?」
「………えっ?」
いや、その前に今聖人って言った!?
「まぁ安心しろ、俺はただリード、お前の顔を見にきただけだ。じゃあな」
ギィがそれだけいうと、どこかへ飛び去って行った。
俺と
「………
「俺はお前が道を踏み外した時以外お前を殺す気は無いし、魔物が全て悪ではないのはよく知ってる」
「
「さっ!飲みなおすぞ!」
「うん!」
やっぱり、
「
「ん?」
俺は
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
ギィは自分の領土である氷土の大陸を目指して飛翔していた。
そして海を横断中、ギィの頭上から大量の剣が降ってくるが、ギィはそれを結界で防いだ。
そして防がれた剣は全て消滅した。
「さっきのはどういうつもりだい、ギィ?」
「それがいきなり攻撃してきたヤツのセリフか、ダイロス」
ギィは剣を降らせた犯人、青紫色の髪をした
「あんなの見られたら、僕もグレイドも黙っちゃいないよ」
「やっぱり、
「まあね。で、さっきのはどういうつもりだい?」
ダイロスは自身の右手に
「君も知ってるだろうけど、人間達に『精霊武装』を教えたのはこの僕だ。そして僕は闇の精霊王以上の力を持つ、正直に返答したまえ」
「……………」
二人の間に緊迫感がつまる、ギィの返答次第ではこの海一帯の生物は絶滅するだろう。
「…俺はただ、詰まりを取り除いただけだ」
「………詰まり?」
「ああアイツ、リードの体のあちこちに魔素が詰まってる所があってな。それを取り除いただけだ」
「じゃあ君は、本当にあの方に危害を加える気はないのだね?」
「当たり前だ」
ギィが素直に答えると、ダイロスは
「ならよかった。もし君があの方に危害を加える気だったのなら、即座に
「勘弁してくれ…」
「それじゃあ、僕は帰るね」
「…グレイドの兄貴によろしく伝えといてくれ」
「………わかった」
ダイロスは地獄門を開き、そのまま中に入った所を見送ると、ギィも自身の領土に戻った。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
「ブハハハハハハハハハ!!」
「
俺は
そして、俺の相棒のリムルが言っていた事は本当のようで、
「だ、だって…俺達が知る
今度は大爆笑しながら激しく地面を叩く、
俺がそう言おうとした時、
ドックン!
「がぁ!」
「
何だこれ?体があつい!全身が丸焼けになりそうだ!
「
「あっ、がっ!」
「あの
「あがっ!…あれ?治まった…」
「えっ?ホントか?どこか痛いとこ…ろ…は………はっ?」
「どうしたの、
「か、体と顔が…」
「え?………えっ?」
だけどこの傷痕を俺はよく知ってる。なぜならこれは、俺が前世で稽古をしていた時に負った傷痕なのだから。
そして
(まさか…)
嫌な予感がして、俺は慌てて湖を覗き込むと、俺は言葉を失った。
そこに映っていたのは、
「………何でだよ…」
俺はそれしか言えなかった。
そしてついに声までもが、前世の俺に変わってしまっていた。
だが、何故こうなったのかは心当たりがある。
それは俺が心の奥底で、姉によく似た自身の姿や顔が変わっていたことにずっとショックを受けていたからだ。
そして、もし前世の姿になれるならなりたいと心の奥底でずっと願っていたことに、俺は気づいていないふりをし続けていた。
きっとこれは、その望みによってだろう。
だけど、
「何で今頃なんだよ…」
「…
「…うん」
こうして、俺と
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
誰にも見られないように転移魔法で自室に移動した俺は、そのまま布団に向かって倒れた。
「今日はもう疲れた…」
強烈な眠気に襲われて、俺はそのまま意識を手放した。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
狭い部屋に俺は立っていた。
「久し振りの予知夢か、状況は………成る程」
どうやらこの予知夢の時の状況は、俺の計画通りに第一段階が終えた後らしい。
「それにしても、ここは一体………え?」
俺が目線を下に下ろすと、俺は目の前の光景を理解できなかった、いや、したくなかった。
「シュ…ナ…」
それは、おそらくそばに転がっている小瓶の中身を飲んで
「あっ…ああ……あああぁぁああぁああ!!」
俺はこの時悟った、俺が考えていたこの計画は、大きな誤ちであったことに…
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
翌日、シゼンはリードに再び昨日と同じ時間、同じ場所に来るように言われて、森の中を歩いていた。
そして森を抜けると、リードがそこにいた。
「おっ!
「あっ、
「!?」
シゼンは、リードの顔色が昨日より明らかに悪くなっていることにすぐに気づいた。
「
「………
リードはそう言うと、瞳に涙が浮かび、シゼンに話した。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
俺は、
それは、俺にとって地獄の選択であることは明らかだった。
「
俺は、同じ質問をする。
盟主としてならこのまま計画通りにすればいい、だけど俺個人としてはシュナを死なせたくない。
そんな事を俺はずっと考えていた。
(なんだよそれ…どっちを選んでも
シゼンはリードの話を聞いて、もっと早くにこの
しかし、シゼンは兄達の事を考えて答えた。
「
「え?」
俺個人としては?そんなことは決まってる。そんなの
「シュナを死んでも守りたいに決まってる!」
言葉にして改めて気づかされる。
俺は、シュナの事が好きなんだという事に、前世では姉さんの行方を探して、恋愛等をする気なんて微塵もなかった。
でも今は、オーマジオウになってしまう恐怖よりシュナを失う恐怖が何十、何百倍も大きかった。
そして頭に何か覆い被せられた感触を感じた。
「
「よく言った。それでこそ俺達の
「………え?」
「良いか
それってまさか…
「
「………っ!」
でも、既にリムルやシズさん、それに
「お前が今考えてること当ててやろうか?」
「……………」
「三上さん達を既に巻き込んだ上に、俺まで巻き込むなんて出来るワケがない。だからどうやって俺を諦めさせるか考えてる違うか?」
「……………」
「はぁー、この
「痛い痛い痛い痛い痛い!」
完全に油断してたから、解こうにも
「良いか?!お前自身が死んでも守りたいのはシュナちゃんなんだろう?!それはつまり、俺にとっては未来の
「「………え?/は?」」
余りに突然過ぎる出来事に俺達は呆然としていた。だってウォッチが勝手に動くなんて事は今までなかった事だのだから。
そしてウォッチの表面を回転させ、ボタンを押す。
『クウガ』
『確認しました。個体名
世界の言葉が聞こえてくると、
「………というワケで、よろしくな。
「………え~」
「なんだよ、その『え~』って!!」
「だって、
「なんだと!?」
「……………」
「……………」
「「………プッ、アハハハハ!」」
なんだろう、今まで悩んでたのが馬鹿馬鹿しくなってきた。
もうこうなったら、
「
「当たり前だ、地獄の体験もいつでも一緒に受けてやるし、三上さんにも一緒に怒られてやる。俺、あの人に百回以上怒られてるからな!!」
「なにそれ」
あー、本当に、こうなったらリムルに死ぬ程怒られよう。しっかり
「で?
「もちろん!」
リグル達にも
でも、シュナを守るためなら、みんなに罵られる覚悟はもう出来た。
俺は
こうして、我が魔王は
そして運命の日は、もう間も無く迫っていた。