私たち
そして、あの
(いや普通にこえーー!)
シゼンは、ヒナタの剣をドラゴンロッドで流しながらその技一つ一つに驚き、冷や汗を流していた。
(速度はまるで
シゼンはヒナタの実力が予想より上であったことに喜んでいたが、現状が現状なので後悔していた。
(まあでも、三上さんにはキツイだろうし、聖司に戦わせるっていう生き地獄は体験させたくないな)
「素晴らしい実力ね。その上で残念だわ。今からでも遅くはないわ、私と協力してリムル・テンペストを討たない?」
「あいにく、あの人は俺にとってもう一人の兄のような存在なんでね。その誘いは断らせてもらうぜ」
「そう、本当に残念だわ」
この時シゼンの体勢が僅かに崩れ、そこを見逃すヒナタでもなくシゼンの左胸を狙う。
対するシゼンは、ドラゴンロッドを地面に突き刺し、上半身の力を利用して上空へ回避する。
「まるでサーカスのピエロを相手にしてる気分」
「もう少しマシなのはないの?俺一応お前より年上だけど…」
シゼンは、ドラゴンロッドから手を放しマイティフォームにフォームチェンジする。
落下の勢いを利用して拳を繰り出すが、ヒナタはそれを楽々と回避する。回避したその場所に広範囲の亀裂が生じる。
「やっぱり、俺の戦闘スタイルとお前の戦闘スタイルじゃ相性悪いな」
(どこがよ!私の『
ヒナタはシゼンから筋肉の説明を聞いた時から、何度も自身のユニークスキル『
このスキルは格上の相手から技を
例え相手が格上で『失敗』したとしても時間をかけていけばいつかは『成功』になる。
しかし、シゼンにこのスキルを発動させた時の結果は『妨害』、つまりヒナタのスキルは全く通じないのだ。
しかし、この世界で十年以上ヒナタは戦い続けた経験が今の拮抗した状況になっていることは、シゼンもヒナタも既に気づいている。このままでは千日手になるのは明らかだった。
そして先に動いたのは、
「まさか、この世界でアレを最初にする相手がお前だったとはな」
「?」
シゼンであった。
「ハアァ!」
シゼンが咆哮と同時に今までの格闘の動きとは全く違う動きへと変わった。
(踊ってる?!)
ヒナタはシゼンの突然の戦闘変化に戸惑っていた。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
二人から少し離れた丘の上でローブを纏った女性がいた。
「なんじゃ?あの動きは?」
「知りたいかい?傍観者さん」
「!!」
首筋に冷たい感触を感じ、耳元で話しかけられたことに女性は驚いていた。
その正体は、先ほど
「何者じゃ?妾に気配を悟らせぬとはなかなかのようじゃな」
「褒めても何も出ないし、何者ってコッチのセリフだよ。あの二人が気づかないなんて貴方は何者?」
「……………」
「……………」
二人の間に沈黙の空気が漂い、先に口を開いたのはリードだ。
「まあ、答える気がないなら最初の貴方の疑問に答えてあげる。アレは俺の義兄
「必殺武踊じゃと?」
「そう、予測不能の動きと独特のリズムで相手を圧倒する。アレを全て対応できるのは、
二人はその場から一歩も動けず、ヒナタとシゼンをただ見ていることしか出来なかった。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
戦いに
しかしシゼンはそれを当たり前のように応用出来ていた。
「ホォア!」
シゼンは緩やかにそして素早くヒナタの間合いを詰める。ヒナタも一瞬遅れて
「!!」
シゼンはそのまま拳を繰り出すが、ヒナタは体勢を後ろに反らして、左手から
「うぉっ!」
シゼンは後ろ回転に避け、ホーリーカノンは空へ消えていった。
「いいねぇ!お前の経験と技術に俺の筋肉と
(冗談じゃないわ。あんな予測出来ない攻撃が連続で来たら、こっちがやられる!)
シゼンはこの戦いを楽しみ、ヒナタは悪態をつくが、二人の戦いは激化していく。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
(あのヒナタが押されてるじゃと!?)
ローブの女性は、眼の前の攻防に驚愕していた。
あのヒナタがシゼンの武踊に防戦一方となっていた。
横から来ると思ったら正面から、右拳が来ると思えば左拳と変幻自在の動きと攻撃にヒナタは回避することしか出来なかった。
しかし、リードはそんなヒナタに称賛していた。
(スゴイ!俺でも最初はタコ殴りだったのに、初見で回避しきれてる!やっぱり姉さんはスゴイ!!)
リードは今のヒナタの実力が
(でも、もうリムルも安全圏まで逃げた頃だな)
「(自然義兄さんも俺達もそろそろ引き上げるよ!)」
「(もう!
「(文句があるなら、
「(すぐに引き上げます!)」
リードはローブの女性から剣を離す。
「敵意がないようなので俺はもう引き上げますが、あの人に攻撃するなら、覚悟しておいて」
リードは翼と羽を広げ、飛び立っていった。
「………話が違うではないか」
女性は文句を言い、二人の戦いに視線を移した。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
「どうやら時間切れみたいだな」
「なんですって?」
「
(おとうと?あのタイミングで
「私が逃がすと思う」
ヒナタはそう言うと自分の
「我は望み、精霊の御力を欲する」
それと同時にシゼンの足元に魔方陣が出現した。
(おいおい、ここで奥の手を使うのか!?マジで聖司によく似てるよ…)
シゼンは自身の第六感と本能が、この魔方陣は危険と告げていたが、シゼンは動く素振りを見せていなかった。
「我が願い聞き届け給え」
(
シゼンはリードに作ってもらい、持ってきたもう一つの武器、まだ魔石製の剣を取り出し、
「万物よ尽きよ」
神聖魔法最強の魔法の鎖がシゼンを縛り、上空から神聖な光がシゼンを消し飛ばした。
「………流石は人類の守護者、俺の全力の防御でも防ぎきれなかったなぁ」
「!!」
ヒナタの目には信じられない物を見ている者の目をしていた。
にも関わらず、シゼンは仮面ライダークウガライジングタイタンへフォームチェンジし、ライジングタイタンソードを突き刺して直立していた。
しかしタイタンの鎧は一部黒焦げになっていたり、ヒビが入っている箇所がいくつかあった。しかしシゼンはそれでも生きていた。
(嘘でしょ!
「なんで、生きてたか教えてやるよ」
まず、ライジングタイタンにフォームチェンジをし、全身の筋肉を硬直させ、タイタンの鎧を自身の魔素でさらに全身を強化する。
そして、ユニークスキル『
口で言うのは簡単だが、圧倒的筋肉量を持ち、攻守に優れたスキルを持つシゼンでなくては出来ぬ芸当である。
全てを教えられたヒナタは、同じ人間なのか疑いの眼差しで見ていた。
「さて、それじゃあ俺は
「戦利品?」
シゼンはマイティフォームにフォームチェンジし、瞬動法で落とした棒を回収し、ヒナタの
「!!」
「それじゃあ、またな!!」
シゼンは足腰に力を込め、走り出すとあっという間にヒナタから離れていった。
「完全に遊ばれたわね。次に会ったら私も本気で相手してあげるわ!」
ヒナタは、いつもの表情から想像出来ない悔しさを感じながら、部下達の回収に向かった。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
「自然義兄さん、言ってたよね?すぐに引き上げるって?」
「は、はい、言いました。確かに言いました…」
「誰が、あの人の奥の手くらって帰ってこいって言ったよ、おい?!」
「お、おいリード!自然の顔真っ青だぞ!」
「リード君ストップ!お兄さん死んじゃうよ!」
俺と自然義兄さん、リムルにシズさんそしてランガは、姉さんと自然義兄さんが戦ってた場所から離れた森にいた。
シズさんは少し後に
そして俺は今、自然義兄さんをヘッドロックをしていた。
もちろん自然義兄さんも全力で抵抗するが、俺はその力を自身の体で介してさらに締める力を強めた。
しかし、リムルとシズさんに説得され、拘束を解く。
「はぁあー!死ぬかと思った!!」
「あの人の奥の手使って生きてたんだから、コレくらいで死なないでしょう」
「そんなことより急いで帰還するぞ!テンペストで何かあったみたいだ!!」
「どういうこと?」
「どうもテンペストに転移したいんだけど、結界で隔絶されてるみたいなんだ!」
「なんですって!」
「……………」
「………聖司」
「取りあえず転移可能な一番近い位置に転移するぞ!」
「うん!/はっ」
俺達は、急いで転移した。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
転移したのは、ガビルやベスターの研究所がある洞窟付近だった。
そこでベスターから聞いた話だと町が何らかの魔法に覆われて外部からの干渉を阻まれていることと、ミリムがユーラザニアに宣戦布告し、そのユーラザニアからの避難民の受け入れ要請があったことのこの二つである。
俺は、これだけ聞いて自然義兄さんと一緒に町へ戻った。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
町には確かに二重の結界が張られていた。しかし、俺は『光』の結界で、自然義兄さんはそのまま町に入っていった。
「リード様!!」
リグルドとカイジン達が走ってきた。
「心配をかけてゴメン、リグルド」
「いえ…よ…よくぞ…っ…よくぞご無事で…」
「リムルの旦那は?」
「もう少ししたら来る。………通してくれ」
「あっ…」
リグルドはなんとかあの人だかりから俺の注意を反らしたかったのだろう。
だけど、俺は
人波を抜けるとそこにいたのは、老若男女関係ない住人達の遺体があった。
そしてその先に、白い布で被せられた遺体が見えた。
(………
「リード様…」
「我が主…」
コウホウやウォズを始め、
みんなからの報告によると、どうやらファルムスが商人の中に工作員を紛れ込ませていたようだ。
すると、どこかで爆発音が聞こえてきた。おそらくベニマルがミュウランを捕縛しようとして、グルーシス達がそれを阻止しようと対立したのだろう。
しばらくして、リムルとシズさんがやって来て目の前の光景に呆然としていた。
それはそうだろう、だっていきなりこんな光景を見せられたら結構辛いよ。
「私が大魔法を使用しなければこんなことにはならなかったでしょう」
ミュウランがヨウム達を守ろうとわざと俺達を激昂させるように言うが、俺はミュウランの使った
だけど、リムルを殺意の籠った目でミュウランを捉え魔素が乱れたのを確認すると、すかさず止めた。
「落ち着いてリムル、彼女の使った大魔法よりももう一つの結界が被害の拡大に繋がったことは冷静になればわかるでしょう?」
「……………」
リムルは深呼吸をし、冷静さを取り戻す。
「ミュウランだったか?あなたの処遇についてはひとまず保留だ。悪いが宿で軟禁させてもらう」
ミュウランに抵抗の意思はなく、そのまま宿に連れていかれた。
「詳しい状況を知りたい。詳しくは会議室で聞かせてくれ」
「リムル悪いけど、俺は行けない…」
「…わかった来れるようになったら来いよ!」
俺の頭にあるのは、最早ただ一つ、
(無事でいてくれシュナ!!)
シュナ安否だけだった。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
シゼンは町を疾走していた。
「フラメアーーー!!どこだーーー!!返事しろーー!!」
宿泊所にいるはずのフラメアの姿を探して、シゼンは血眼になっていた。
「フラメアーーー!!」
「………さまー!……ぜんさまー!…シゼンさまー!」
「!!」
声が聞こえてきた方角を見ると所々煤けていたが、フラメアが走ってきた。
「フラメア!無事だったんだな!!」
「はい!危険を感じて避難してました!」
シゼンはそれを聞くとフラメアを抱き締めた。心臓の鼓動とその温かさ確認するために。
心臓の鼓動が聞こえて来るとシゼンは嬉しさで涙を流し始めた。
「し、シゼン様!?」
抱き締められていたフラメアは、突然のことで顔を赤くしていたが、シゼンは気づかずそのまましばらく抱き締め続けた。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
会議を終え、ミョルマイル達をイングラシアへ送り届けた俺は、怪我人のもとへ向かった。
「リムル様!お帰りだったのですね。ご無事で…」
「シュナもな」
怪我人の手当てをしていたのは、シュナとコハク、リョウエイそして医者であるレミンだった。
「リムル様!申し訳ありませんが、お力をお貸しください」
「どうしたレミン?」
レミンが俺の手を引いて誘導されると、重傷を負ったハクロウとゴブタのベットの前だった。
「どうやら、襲撃者の中に空間属性を使う者がいて、治療しようにも傷口に直接働きかけることが出来ないのです」
「回復薬が効かないってことか…」
「はい…」
「僕の爪でその空間属性を裂くという方法もあるのですが、それだとハクロウさん達が…」
「
「なるほど…」
俺は『
「あ、あれ?オイラ助かった…すか?」
「あっ、ジジイも無事だったっすっか!?」
「ほっほっほっ、もう一度眠りたいか?」
よかったいつも通りのやり取りが出来るくらいまで回復したか。
………あれ?そういえばあいつの姿がない?
「…なぁ、ベニマル、アイツはどこだ?」
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
俺は、コウホウ達がほとんど仕留めたファルムス兵の死体の山の前に来ていた。少し前にリムルを見かけたが、リムルの向かって方角はおそらく、シオンの事だろう。
だけど、俺は俺の仕事をするだけだ。
俺はファルムス兵の死体の山の処分を始めた。
一粒の黒い雪が死体の山を黒くし、炭化して崩れ去った。
(………悪役は俺が相応しい)
俺は、リムルのもとへ向かった。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
広場につくと、みんながリムルを一人にしていた、別れ際にシズさんが後ろから抱き締め何か言っていたが俺はそれを聞くことは出来なかった。
「リードさん?」
「………シュナ………悪いけどコレ預かってて」
「えっ?」
俺は、シュナにある物を預けると自室に戻った。
「これは…!」
シュナは預かった物を見ると言葉を失った。
それは、リードの持っている全ウォッチだった。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
俺は自室に戻ると、そのまま壁を殴った。結界も何も使わず、素手でそのまま殴った。
血が流れ痛みを感じるが、俺はむしろ物足りなさを感じていた。
何故なら、俺は盟主失格だからだ。
俺は
そう俺は
「ごめんなシオン、ごめんなゴブゾウ、ごめんなみんな、すぐにまた会わせるからもう少しだけ待っててくれ」
俺は、今いないみんなに謝罪しながら壁を殴り続けた。
こうして我が魔王とその相棒であるリムル殿に最初の困難な壁が立ち塞がった。
しかし、まだこれは最初の一つに過ぎないものであった。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
シュナはリードから預かったウォッチを見ていた。
「何故リード様はこれを?………えっ?」
するとジオウウォッチだけが激しく光だした。
「一体何が?」
光は次第に強くなり、やがてシュナの視界全てを覆った。この時シュナは咄嗟に目を閉じ、
「っ!………え?ここは?」
目を開くとそこは辺り一面真っ白い空間だった。
『ようやく、会えましたね』
「誰です?………え?」
シュナは、自分を呼ぶ声が聞こえて振り向くと、その者を見て言葉を失った。
その者とは、
「わたくし?」
自分とそっくりな女性がそこにいた。
「良く聞きなさい。このままでは、リードさんは誤った道を歩みます」
「!!な、何を言って…」
シュナにそっくりな女性はシュナの額に指をかざすと、ある光景をシュナの脳に送った。
それは最悪の未来のリードであるオーマジオウが世界を圧倒的な暴力で支配していた光景だった。
「そんな…リードさん……あんなに苦しそうに…」
「やっぱり、あなたにはそう見えますか?」
「当たり前です!!あんなに悲しみの血の涙を流して苦しいわけないじゃないですか!!」
シュナは怒りの限りシュナそっくりの女性を怒鳴ると、シュナそっくりの女性が優しく微笑んだ。
「では、アレを使うのです。あなたがお母様から受け継ぎ、今も肌身離さず持っているアレを…」
「えっ?アレですか?しかし何故?」
「それは………」
シュナそっくりの女性はシュナに耳打ちをし、シュナの表情は明るくなった。
「ですが、これを行う覚悟があなたにありますか?」
「………あるに決まってます!!」
シュナそっくりの女性の問いに、シュナははっきりと答えた。
そして、シュナそっくりの女性は再び微笑んだ。
「では、急いでください!期日は3日後準備は念入りにそして誰にも悟られないようにしてください」
「はい!」
シュナがそう答えると、気づいたときには自室にいた。
「………急がなければ」
シュナは机からある物を取り出して袖に忍ばせた。
この行動は、誰も、あのオーマジオウすら見逃していた。