私達配下は、まず弱体化の結界を破壊するために動いた。
「!?そこの者共止まれ!止まらないと容赦せんぞ!」
騎士達は近づいて来る者達、コウホウとベニマルに警告を言うが、その対応が間違っていた。
自分達
「容赦せんのは我らの方だ」
「悪いな、俺達の八つ当たりに付き合ってもらって」
コウホウは方天戟の持ち手の先端で掴み異様な構えをとり、ベニマルが漆黒の炎を纏わせた太刀で騎士達を鎧ごと斬っていく。斬られた者達は声を発する間も無く、焼き尽くされる。
「き、聞いていないぞ、こんな……ば、化け物___」
騎士隊長の嘆きは最後まで言われることはなかった。
何故なら、コウホウが方天戟に己の力を全て乗せ振るい、魔法装置ごと一刀両断したのだ。
オーガの中でも、コウホウの戦闘力はハクロウやベニマルを凌駕する。
そのコウホウが目指した武の頂の一端を今コウホウは握ったのだ。
「……俺も負けてられないな」
ベニマルを空を見上げて言った。
その目に映っていたのは、コウホウの斬撃が空に届き、雲を斬っていた。
「………完成はした、だが…」
コウホウは二年間愛用した方天戟が粉々になっていたがその表情はどこか物足りなさがあった。
(まだ足りぬ!リード様は己の心を傷つける覚悟であの行動をとったのだ!
コウホウは己の力不足にただ嘆いているだけだった。
「任務完了だな、コウホウ」
「…ああ、あいつら、情けなくも困っていないだろうな」
コウホウとベニマルはそんなことはあり得ないと確信しつつ、残りの方面の様子を窺うのだった。
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「………久しぶりだな、西方聖教会と事を構えるのは」
ホウテンは上空の騎士達を見下して、かつて西方聖教会と戦った記憶を思い出して呟いた。
「!!上空に敵確認……え?男の
騎士がホウテンに気づくとすぐに他の騎士達に警戒するように伝えようとしたが、ホウテンの放った矢によって絶命した。
そして、ホウテンに気付き警戒を始めようとした時、接近してきたベルンに気づいていなかった。
ベルンはそれを確認すると、地面に手をあてて『
火、水、風、土、空の五属性の矢が大量に雨のように降り注ぐ多くの騎士達の命を刈り取っていった。
それでもまだ残っていた騎士は魔法などで応戦しようとしたが、
「今である!ベルン殿とホウテン殿が作っていただいたこの機を逃すな!」
『おぉぉーーーー!!』
ガビルとその配下達の奇襲により、生き残った騎士達は全滅。
ベルンは魔法装置を守っていた騎士を始末すると、『
(これで大丈夫だな………っ!?アイツは!)
ホウテンが何かを視覚で確認すると、確認した方角へ飛んでいった。
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「馬鹿な!コイツら一体どこから現れた!?」
ソーカ達隠密が奇襲を仕掛け、コハク、リュウエイ、ゲリオンとその配下達が魔法使いの部隊に強襲を仕掛けて一方的な虐殺だった。
コハクが魔法使いの魔法を爪で裂き、リュウエイとゲリオン達が致命傷を与える。
この基点は他の基点より、早く片がついた。
「ソウエイさん、先程連絡があり、東と南は撃破したようです」
「そうか」
リュウエイの報告にソウエイが短く答えると同時に魔法装置を破壊した。
「どうやらリムル様とリード様の読み通り、西に戦力を集中させているようですね」
「だけど西には、シズ様とシゼン様がいるから大丈夫じゃない?」
「確かに、リグル達もいるから敗北はあり得んが…」
「必要ない、特にシゼン様のあの目は邪魔したら俺達でも容赦はしないと言っていたからな」
ソウエイは西の方角を見てシゼンのあの時の目を思い出すと鳥肌がたった。
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リグル達が兵士の相手をしているなか、シゼンは開始前から狙っていた男と対峙いしていた。
「へぇ、あんたも同じ異世界人?」
「ああ、
「はは、僕に勝てる気?笑わせるな!」
ファルムスの異世界人、
しかし、シゼンはそれを変身せず、指で摘まんだ。
「おっっそいし、よわっ!成る程これなら卑怯な手は平然と使おうとするわな」
シゼンはキョウヤの剣を放し、キョウヤは一気に距離をとった。
「は、ははマグレで随分と調子に乗るね」
「だって、お前の剣、兄貴達に比べたら眠っちまう程おせぇもん」
「っ!調子に乗るなよ、オッサン!」
キョウヤは剣を上段に振り上げ、そのまま振り下ろした。
間合いに入っていないから剣は空を斬るだけのはずだが、キョウヤの剣は特殊で、刀身だけが発射せれ、無数の刃に分裂する。
キョウヤの狙いはこれだった。
「ひゃっはっは!馬鹿が騙されやがったぜ!」
キョウヤは勝利を確信し高笑いする。しかし次の瞬間、信じられない事が起こった。
「成る程、どうやらお前はゴミ以下らしいな」
シゼンが分裂した刃を全て掴んでいた。
「…嘘だろ?テメェなんであの数の刃を掴めた、そんでなんで手は無傷なんだ!」
「あ?そんなの同じ空間属性の結界張れば無傷だし、あんだけの数にあんな遅い速度の刃なら全部掴めるよ。まあお前みたいな三流以下じゃあ、理解できないけどな」
「…なんだって?」
「ああ、分からなかった~ごめんな~、三流以下の奴に少し難しいかってでちゅね~」
「舐めるなよ、オッサン!!」
キョウヤは怒りで冷静さを失い『天眼』を発動させ、シゼンに斬りかかる。
シゼンはそれを楽々とかわす、そんな中シゼンの顔には表情が消えていた。
さんざん挑発していたシゼンだが、その心の奥底にはマグマ以上に熱い怒りが宿っていた。
それは、リードが最初に考えていた作戦でリードを殺したのがこの男だったからだ。それもシュナを人質にとり、変身を解除させた上で何度もリードを刺したらしい。その上さらに動けなくなった後も何度も何度もリードを刺したそうだ。
それを、あの時聞いた時から、この男だけは確実に自分の手で始末すると心から誓っていたのだ。
襲撃時、無抵抗の住民をわざと致命傷を外して苦しむ姿を楽しんでいたと聞いた時点で、シゼンの怒りは限界を超えた。
時魔家の人間は怒りがピークを達すると、無表情になる傾向にあり、シゼンもそうであったのだ。
「そろそろ頃合いか、お前にみせてやるよ。格のいや次元の違いをな」
「は?何を言って…」
次の瞬間キョウヤは自分の身体が果てしなくゆっくりとしか動けないことに気づいたが、既に遅かった。
シゼンが『気闘法』で強化された手刀が、キョウヤの首に触れ、そのまま切り落とした。
「………え?」
シゼンは空中に飛ばされたキョウヤの頭を掴んだ。
「はい終わり~、これがお前と俺の次元の違いだ。もう何言って聞こえないだろうけど、仙人にすら進化してないお前みたいなゴミ以下が俺の相手になるわけねぇだろ」
シゼンは、そんなことも知らないのかというような口調で呆れているが、キョウヤにはもう聞こえていなかった。
キョウヤは、相手が圧倒的な差があることを知った上で遊んでいたことに今さら気づいたのだ。
そして、この男にとって自分は眼中になかったことにも、痛みと苦しみと後悔の中その生を今終えた。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
「ふざけるなよ、クソが!」
ファルムスの異世界人、
「卑怯だぞ!そんなヤツに任せて自分は隠れて戦って恥ずかしくないのか!」
ショウゴの馬鹿げた注文に、戦っていた相手、シズとイフリートは首を傾げる。
「意味がわからん。シズよ、お前はどう思う?」
「どうって…戦いで卑怯も何もないと思うよ。それにこれは決闘じゃなくて、戦争なんだから。
「確かに」
シズとイフリートが戦闘中に会話をしている光景を見たショウゴは、この相手は自分の思い通りにならないと分かり、話しているところで攻撃を放つが、イフリートが裏拳でカウンターを仕掛け、後ろ回し蹴りを繰り出す。
(クソ!あの火男をなんとか出来れば………ん、なんだ?)
ショウゴが違和感を感じた瞬間、四肢に燃えるような痛みが襲いかかった。
「ぎゃあああっ!なんだこれ!?クソッタレがあ!!」
「貴様のスキルは肉体強化だけと踏み『
「な、なんだと……」
(本当にすごいね、まさか火属性以外の属性が使えるようになるなんて誰も思わないよ)
シズは、今のイフリートにただただ感心していた。
今のイフリートは、リムルの胃の中で様々な事をヴェルドラと共に見て、聞いて、学んでいき、戦闘スタイルは磨かれていった上に、リムルとリードの『繋がる者』の影響で、『光』と『闇』の力の一端を扱えるようになっていった。つまり今のイフリートは火属性、聖属性、闇属性の三つの属性を使う事が出来ていた。
「お~い、シズさん、イフリートこっちは終わったぜ」
「シゼン様」
「おかえりシゼン君」
(アイツは…)
「クソッ!キョウヤは何してやがる!」
「ああ、お前のお友達ならここだけど」
シゼンは無造作に、ショウゴのすぐ隣に投げて寄越した。それはキョウヤの頭だった。
「う、うわあああああーーーー!!」
ショウゴは、四肢の痛みが忘れる程の恐怖に支配され、一目散に逃げていった。
「………なあ、アイツ俺が仕留めていい?」
「え?私は構いませんが……シズは?」
「シゼン君がやりたいならいいよ」
「ありがとうございますシズさん!」
一目散に逃げていったショウゴを、シゼンがシズ達に変わると聞くと、ショウゴは頭を高速で回転させた。
(ちくしょう!クソが、なんで俺がこんな目に!?このままじゃ殺される)
すると、ショウゴはあることを思い出した。
目の前のテントにもう一人の異世界人の事を
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ショウゴはテントの中に入るともう一人の異世界人、
「なに?終わったん?アンタらにしては手間取ったみたいじゃん」
ショウゴは、キララの姿を見て笑みを浮かべ、
「キララ、悪いんだけどさ…」
ショウゴに手がキララに迫り、そして
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シゼンとシズ、イフリートはショウゴの逃げたテントから何か折れたような音が聞こえた。
三人はこの音が骨の砕けた音というのはすぐに気づいた。
「…堕ちるところまで堕ちたな」
「黙れよ、クソ虫共が!勝てばいいんだろ?簡単だぜ、何しろ、俺は力を手に入れた!」
ショウゴは、キララを殺して『超速再生』の能力をもったユニークスキル『
(この程度の事、四年前の
「シゼン様、私の力を貸しましょうか?」
「いらねぇ、あの程度なら一人で余裕に勝てるわ」
「はあ?二人同時に相手してやってもいいだぜ?」
「お前みたいな馬鹿には、俺一人で十分だよ」
「格好つけるなよ。負けた時の言い訳が欲しいだけだろうが!」
ショウゴは跳躍してシゼンに襲いかかるが、シゼンは体勢を少し反らして、頭突きで吹き飛ばす。
「ぐほぉ!」
吹き飛されたショウゴにシゼンはさらに空中からかかと落としで追い撃ちを仕掛けクレーターを作った。
そのあとは、ただ踏み潰していく。
相手の今まで築いてきたプライドをズタズタに破壊し、二度と戦えないよう完全な恐怖を植え付けるために何度も踏み潰す。
ショウゴは悲鳴をあげようとするが、あげる直前に片方の肺を潰し、再び再生したら今度は逆の肺を潰した。
「あれはやり過ぎだと思う」
「私も同感だ」
この光景にシズとイフリートは引いていたが、シゼンがショウゴが悲鳴じゃない何か言おうとしていることに気づいて踏み潰すのをやめた。
「やべでぐだざい!冗談だっだんでずぅ!」
シゼンは、ショウゴが完全に心が折れたと分かると、右腕を頭部に、左腕を心臓に合わせた。
「そんじゃあ、一瞬で頭と心臓を同時に潰すか」
「ひ、ひぃいい!」
シゼンが両手の拳を繰り出すと、ローブを纏った老人がその攻撃を防いだ。
「まさか、お主がおるとは思わなかったぞシゼン、それに爆炎の支配者シズエ・イザワがいるとは…」
「っ!ら、ラーゼンさん、俺を助けに…」
「うむ」
ラーゼンはショウゴに一瞥すると、シゼンを解析した。
「成る程、ショウゴ達では勝てぬわけだ。
「何しに来たジジイ、まさかその馬鹿を回収しに来たのか?」
「その通り、これでも大切な身体なのでな」
「じゃあ、テメェも潰す!…って言いたいけど勝手に連れて行けば?」
「!?」
「目的は果たせたし、アンタ程度じゃアイツらの敵でもないからな。好きにすれば?」
「………ふんそうか。では遠慮なくそうさせて貰おうとするかのう」
ラーゼンはそう言って、ショウゴを連れて消えていった。
「宜しかったのですか?」
「あんなジジイ、聖司達の敵じゃ無いし、別にどうでもいいだろ」
「……………」
シズは、シゼンがラーゼンを逃がしたのは別の理由が在ることに既に気づいていた。
あの時ラーゼンがシゼンを解析したように、シゼンもラーゼンを解析していた。その時、ラーゼンはトラップの爆発系の魔法と、自分が死んだことをトリガーに核擊魔法が発動することを見破っていた。
自分のスキルなら発動前に、あの二人を倒すのは容易であるし仮に発動しても堪えることは確信していた。しかし、恩人であるシズに、
(それに、今の三上さんと聖司ならあの程度の相手は敵じゃないからな)
シゼン達はリグル達が魔法装着の破壊を確認すると、町に引き上げた。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
俺とリムルは、別れてファルムス軍を皆殺しにすることにし、俺はジオウディケイドアーマーに、リムルはゲイツウィザードアーマーに変身した。
リムルは空から、俺は陸からという手筈になっており、騎士達は最初に俺の接近に気づいたようだ。
「そこの者止めれ!何者だ!」
ファルムスの騎士が何か言ってくるが、俺にはただ猿が吼えてるようにしか聞こえない。
この感覚は、前世でもよくあったな。
まあ、今はそんなこと記憶の片隅に封印するか。
俺は、右手に『光』の力を凝縮させた小さな球体を複数生み出し、左手には『闇』の力を凝縮させた小さな球体を同じ数生み出した。それにさらに精霊の力を纏わせた。
同時にリムルが
(リムルも始めたな。それじゃあ俺もいくか、カリュブティスの時に使おうと思ってた技がどれくらい使えるか試すいい機会だし)
光と闇の球体は高速で俺の回りを飛翔していき、間合いに入ったファルムス兵の急所を貫き絶命させていく。
同時にリムルの
この時、ファルムス王国軍は短くて長い、悪夢が始まったのだ。
こうして、我が魔王達の最後の仕上げが始まった。
ファルムス王国の過ちは自分勝手の欲望のままに動いたことによる自業自得としか言うようがない。