転生したら天魔人だった件   作:通りすがりの気分屋

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遂に我が魔王とその友リムル殿のファルムス王国軍殲滅が開始された。
果たして我が魔王達は進化し、シオン君達を蘇らせる事が出来るのだろうか


慈悲者(ジヒアルモノ)と顕現する者達

近づく者全てが死んでいく。

勇ましく俺に突進してくる愚者(馬鹿)は一瞬で身体を撃ち抜かれ、恐怖のあまり腰を抜かし失禁する臆病者(腰抜け)は恐怖をひきつったまま死に、俺達魔物を憎む西方聖教会の兵士達は俺の『十戒』の力で武器を持つことはおろか動くことすら出来なくなったまま無念の表情でこの世を去っていった。この者達は死んでいくなかどんな気持ちでこの戦いに来たのか。悪意があったのか、そうでなかったのか、もはや知るよしもない。ただ、(ゴミ)を掃除する。(前世)と同じことをするだけだ。

すると、俺の足元にペンダントが落ちてきた。

俺はそのペンダントを傷つけず拾い、中を開けるとそこにあったのは四つ葉のクローバーの押し花があった。

 

「お…お願い…です。殺さないでください…っ」

 

このペンダントの持ち主であろう男が、必死に訴えてきた。

あの大きな丸い傷はおそらくリムルの神之怒(メギド)を受けた傷だろう。

(前世)、人間は心臓を撃ち抜かれても即死しないって、生夢(しょうむ)義兄(にい)さんが言ってたっけ?

そんなことを思いでしてると、男は訴え続けた。

 

「家族は殺さないでください」

 

…そうか、どんな悪人だって家族はいる。

この男にも家族がいるのは当たり前だ。ましてや敗戦国になったらどんな非道な扱いを受けることか、そこから家族を守りたいって気持ちがわかってしまうな。

 

お…私はこの侵攻がどんなものか知った上で参加しま…したっ

 

男は吐血しながら、全てを告白した。

 

罪は私にあります、しかし、子供達は何も知らないのです…!

 

男は、吐血しながらも必死に家族の無罪を訴えた。

俺は、その男を聖魔の嵐(カオスストーム)でこれ以上傷つけず近づき、『侵入(インベイジョン)』で触覚を消した。これで痛みはなくなるだろう。

そしてペンダントを返し、目隠しを片方外した。

 

「もう喋らないで、大丈夫。ここで兵士は皆殺しにするけど、その家族にまで危害をくわえる気はない。むしろその子達が望むなら、魔国連邦(テンペスト)で引き取る。だから、安心して」

 

男は俺の言葉を信じ安心したのか、そのまま目をつむりペンダントを強く握ったまま事切れた。

それを見届けた俺は、せめて悪意のない人達には痛みなく、安らかに逝ってほしい。そんな思いが芽生えてしまう。

義兄(にい)さん達は、この気持ちを持つことは間違いじゃないって言ってくれたけど…

 

『確認しました。ユニークスキル『慈悲者(ジヒアルモノ)』を獲得………成功しました。』

 

『(慈悲者(ジヒアルモノ)?何それ?)』

 

『このスキルは、一定以下の悪意を持ち、戦意喪失した者の魂を恐怖の代わりに幸福感を与えさせ掌握することができます。』

 

『(つまり、さっきの兵士みたいなヤツらを安心して安らかに殺すことが出来るってこと?)』

 

『是。先ほどの個体名リムル・テンペストが獲得したユニークスキル『心無者(ムジヒナルモノ)』と同時に発動させますか?』

 

『(『心無者(ムジヒナルモノ)』か…リムルらしいな、こんな事でしか使い道はないし、遠慮なく使うか。YESで)』

 

俺が『大賢者』に実行するよう命令した次の瞬間、その場にいた兵士達がみんな倒れた、いや、絶命した。

 

『告。進化の条件(チカラノカクセイ)に必要な慈悲の心(ウツワ)人間と魔物の魂(エネルギー)卵と種(カク)聖魔の水晶(カギ)が全て揃いました。これより混沌之宴(カオスフェスティバル)を開始します。』

 

世界の言葉が頭に響くと、激しい眠気に襲われた。

これは、余地夢や低活動状態(スリープモード)の比じゃないな。

リムルがおそらく首謀者達を捕らえているだろうし、なんとか合流して…

 

『告。リムル・テンペストの付近に生存者一名を魔力感知で確認しました。』

 

なんだって!マズイ、この眠気を止める事は出来ないだろうし、何よりリムルが心配だ。

こうなったら…

 

「ギドラいるか?」

 

「ここに!」

 

俺が呼びかけると、影からギドラが現れ支えてくれた。

 

「ギドラ、町に戻るから俺の護衛を…」

 

「承知しました。しかしリムル様の近くにいる者はどうしますか?」

 

「大丈夫、それはもう考えがある」

 

問題はこの魔法不能領域(アンチマジックフィールド)なんだが消失する。どうやらリムルも同じ考えのようだな。

俺は、すぐに魔法を発動させた。

 

「リード様、その状態での魔法の使用は危険です!」

 

「大丈夫…これくらいの魔法なら……まだ使える」

 

お願いだから、強いヤツ出てきて

 

「供物は、俺の命令を果たしたら器を作ること。こい!悪魔召喚!」

 

召喚魔法、悪魔召喚から現れたのは褐色の肌で鏡のような髪をし軍服のような服装をしていて、見た目は完全に人間の悪魔族(デーモン)だった。…明らかに上位悪魔(グレーターデーモン)なんてかわいい存在じゃない…だってコイツは

 

「おお、あなた様に召喚されることをどれ程待ち望んだことか。なんなりとご命令ください」

 

………まあいい、今は敵側の生存者が先だ。

 

「よく聞け、ここから西に俺達の敵の人間を生かしたまま捕らえろ…抵抗するなら半殺しにしても構わない」

 

「お任せを、ではその褒美はあなたの配下の末席に加えていただけませんか?」

 

「それは、お前の働き次第だ。ギドラ、俺を町まで運んだら皆の顔繋ぎをお願い」

 

「承知しました」

 

「後は安心してお休みください。偉大なる我が主よ」

 

俺の意識は、暗闇に沈んだ。

 

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

 

「じゃあ、頼むぞ」

 

「ああ、その方の命令は完璧にこなすから安心しろ」

 

ギドラはリードを背負い、木の枝を遣って町へ戻って行くと、戦場のファルムス兵の死体が全て消失した。

 

「…アイツも来たのか。久しぶりに会えるな」

 

消失した原因を気づいた悪魔族(デーモン)は嬉しそうに笑い、西の方角へ飛び立った。

 

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

 

ショウゴの精神を破壊し、肉体を乗っ取ったラーゼンを三体の悪魔族(デーモン)が取り囲む。

 

「主より、貴方を拘束させて頂きます。抵抗したいのならお好きにどうぞ。ただし、痛めつけることを止められておりませんから、ご注意を」

 

「ほう、どうやらお前を召喚した者は我が主の仲間のようだな」

 

「「!!」」

 

ラーゼンと貴族の服装をした悪魔族(デーモン)は、自分達の真上まで接近を許したことに驚き、動揺を隠せていなかった。

 

「貴方は…グレイドの兄上!」

 

「久しぶりだな。あの時会った時よりずっと強くなってるようで安心したぞ」

 

「もちろんです!あれからどれ程の時が経ったと思っているのですか!!」

 

グレイドと呼ばれた上位悪魔(グレーターデーモン)にまるで本当の兄のように接する、貴族服の上位悪魔(グレーターデーモン)の態度の急変に戸惑いを隠せないラーゼンだったが、一瞬で冷静になり、事前に仕込んでいた核撃魔法を放った。

 

「馬鹿め!油断したな!」

 

熱収束砲(ニュークリアカノン)!!

 

膨大な熱を秘めた超高熱線をグレイドは、自身の魔素を干渉させ、大空に放った。

 

「不発……じゃと?チィ、こんな時に!?」

 

事前に仕込む魔法は極低確率で誤作動が起きる。ラーゼンはこの時にそれが起きたと判断したのだ。

 

「少し大人しくしていろ小僧。俺は今弟分の再会を喜んでいるのだからな」

 

「貴様、儂をなめるでないわ!」

 

ラーゼンは侮辱されたことで怒ったように見えるが、実際はグレイドが最も危険だと判断し次の奥の手を発動させた。

 

「精霊召喚、土の騎士(ウォーノーム)!根源たる大地の上位精霊よ、あの悪魔を打ち滅ぼせい!!」

 

ラーゼンが土の上位精霊、土の騎士(ウォーノーム)に命令をだす。しかし数秒経っても土の騎士(ウォーノーム)は動かない。

 

「どうした?早くあの悪魔を「聞け若造!」!!」

 

ラーゼンが催促しているなかグレイドが威圧的な声で近づいてきた。

 

「俺は今とても気分がいい。このまま引けば俺は何もせんし見逃してやる。お前だって存在を消されたくないだろう?」

 

土の騎士(ウォーノーム)とグレイドの身長差は土の騎士(ウォーノーム)の方が頭一個分程ある。

しかし、まだ自我の薄い上位精霊であり、自己判断能力が低く相手が何者なのか知らなかった。それなのに土の騎士(ウォーノーム)は、グレイドに睨まれた事で本能でこの悪魔の強さを悟った。生まれて初めて恐怖で震えて動けなくなるとグレイドが腕をあげた。その時、持っていた剣と盾を投げ捨てて精神世界に逃げ帰っていった。

 

「………ば、バカなーーーー!!」

 

これには流石のラーゼンを声をあげる。

本来こんなことはあり得ないのだ。召喚された悪魔は天使に強く、天使は精霊に強く、精霊は悪魔に強い。この三竦みの関係なら本来は、ラーゼンの召喚した上位精霊によって状況は有利になるはずだった。そう、()()()()

 

「貴方も優しいですね。あの程度の相手なら貴方の魔素だけで押し潰すことは簡単でしょう?」

 

(ノワール)、俺は(ジョーヌ)と違って無意味な戦闘はやらない主義なのを知ってる上で言うか?」

 

「クフフ、失礼しました。しかしリムル様より頂いたこの肉体を試す機会を奪われたのですよ。貴方に非がないと言えますか?」

 

「…ハァーわかった。今度稽古を三日間つけてやる」

 

「ありがとうございます!」

 

グレイド達のやり取りを見たラーゼンは戦慄した。先ほどから信じられない言葉が聞こえ、そして、理解してしまったのだ。

 

(こやつ今あの悪魔の事を(ノワール)と呼んだのか!?それに(ジョーヌ)とも呼んでおった!それも呼び捨てで!)

 

通常、悪魔は上下関係に厳しいそれも王を呼び捨てにするなど余程の馬鹿か、原初と同格かそれに認められる程の実力を持つ者のどちらである。ここまでは悪魔族(デーモン)の事を()()()理解している者が辿り着く考えだが、ラーゼンのように数百年生きた者なら残りの二割を知る機会には出会えているだろう。それが更なる絶望に突き落とされることに繋がってしまった。

 

(まさか…まさか…こやつは…)

 

(ノワール)の事を弟分と呼び、そして(ノワール)もグレイドの事を尊敬する兄のように接していた。

これだけで、ラーゼンの戦意は粉々に砕かれた。

 

(鏡のような銀色の髪に褐色の肌、そして金色の瞳………何故すぐに気づかなかった。こいつは八色(はちにん)しか存在しない原初の悪魔の一柱(ひとり)。最強で最初の原初の悪魔、原初の無(レイアン)!!)

 

ラーゼンは絶望し戦意喪失したが、グレイドはそんなことお構い無しに距離をつめる。

 

「どうした小僧?もう終わりか?」

 

「あ、ああ!」

 

グレイドが、ラーゼンに詰め寄るとラーゼンは最早意識を保つことが出来ず、気を失い失禁し、服が濡れていき倒れた。

 

「………ふん、小僧が」

 

「流石ですグレイドの兄上、一切攻撃をせずに無力化してしまう。相変わらず見事な手腕です!」

 

グレイドが鼻で嘲笑い、ラーゼンを見下し、原初の黒(ノワール)は拍手で称賛した。

 

(ノワール)今から俺がやる事に目を瞑り、口裏を合わせてくれるなら、この手柄の七割はお前にやろう。どうだ?」

 

「………まさか、あの二人を?」

 

「止めるなら自由だぞ。その時は俺が全力が相手をしてやる」

 

「私は、(ジョーヌ)と違って誰かにかまわず喧嘩はうりません。お好きにどうぞ」

 

「助かる」

 

グレイドは二つの魔方陣を出現させ、召喚魔法を発動させた。

 

「召喚魔法、天使召喚、精霊召喚!」

 

魔方陣は強く輝くと、魔方陣から長髪の金髪で紫のメッシュをした熾天使(セラフィム)と青紫色の髪をした妖精族(ピクシー)が、物質世界に顕現した。

 

「やったー!数千年ぶりの物質世界だ!」

 

「僕は一ヶ月ぶりだけどね」

 

「お久しぶりですね。ティアノ、ダイロス」

 

「あっ、(ノワール)!久しぶり!」

 

「まさか君本人が動くとは思わなかったよ」

 

「私はグレイドの兄上達に再びお会い出来たことに驚いています」

 

「おしゃべりは、全てが片付いてからにしろ。(ノワール)、お前の眷属にラーゼン(こいつ)を運ばせていいか?」

 

「構いませんよ。お前達」

 

(ノワール)の配下が気絶したラーゼンを担ぎ、グレイド達は町へと向かった。

 

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

 

「まさかお前が魔国連邦(ここ)に来ているなんて思わなかったよ。クレイマン配下の五本指の一人小指のピローネ!」

 

「くっ…」

 

魔国連邦(テンペスト)の首都リムルの上空で、ホウテンは魔法装置破壊後ピローネの姿を確認すると、フルスピードでピローネを爪で捕らえ無力化していた。

 

「お前からは情報をたっぷり聞き出すとするよ」

 

「ふん!私がそう簡単にしゃべると思っているのか!」

 

「いや全く、けど方法ならいくらでもある。事が終えたら聞き出すとするよ」

 

ホウテンはピローネを爪でしっかりと握り締め、町へと帰還していった。

 

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

 

『告。個体名リムル・テンペストとリード・テンペストの進化が開始されます。その完了と同時に系譜の魔物と人間への祝福(ギフト)が配られます。』

 

世界の言葉により、町の皆はリムルとリードの進化に喜んでいる中、シュナだけは違った。

 

(リードさん、あなたはきっとこの先皆から一線を引いて距離をおくでしょう。優しいあなたの事です。しかしそれであなたが傷つくのなら、わたくしも共に傷つき、あなたを支えます!それくらいしないとあなたの隣に立つことなど、夢のまた夢です!)

 

シュナはあの時見たリードの姿を見て自分もリードと同じものを背負う覚悟を既に決めていた。

リードだけに決して辛い思いをさせない。そうするくらいなら自分はリードのそばに立つ資格すらない。この想いは例え神だろうが、魔王だろうが、勇者だろうが消すことは不可能と言えるほど、強い意志であった。




遂に我が魔王達の進化が始まった。果たしてこの進化でシオン君達は生き返るのか。ここから先は神のみぞ知る事である。

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

リードを背負って移動していたギドラはリムルを咥えたランガと合流して全速力で町に帰還していた。

「………ランガ」

「なんだ?」

「すまない。何故か急に眠気が………」

「!お、おい!」

ランガは慌ててギドラを背中に乗せると、戸惑いを見せたがすぐにテンペストに帰還した。
この時、リードの『万能空間』にある十九個のレジェンドウォッチの内、八個が光り出した。
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