そして、そんなテンペストに向かってくる集団が三つほど存在していた。
俺がファルムスの捕虜から聞き出した情報を
リード:「リムル」
リムル:「ああ、フューズだな」
俺とリムルが出迎えると、数人を率いてやって来たブルムンド王国の
フューズ:「リムル殿!リード殿!聞きたい事があります!」
馬から下りたフューズは鬼気迫る表情で、俺とリムルに詰め寄ってきた。
フューズ:「ウォズの報告では、既にファルムス王国との戦争が終わったと聞いたのですが、本当ですか!?」
ああ、そう言えば俺とリムルが眠ってた間にウォズが転移魔法でブルムンドに報告しに行ったって自然義兄さんが言ってたな。
うん?今度は………
リムル:「ええと聞いてくれフューズ君」
リード:「リムル、説明は後にした方が良いぞ」
俺が指差すとその方角には三十騎引き連れてきたガゼル王だ。
これで同盟国の主要メンバーが揃ったな。
ガゼル:「久しいなリムル、リード。なんでも魔王になったらしいな」
リムル:「まぁね、色々あってさ」
リード:「今から幹部全員と対策会議を始めるところだ」
ガゼル:「ほう、ならば俺も参加しよう」
フューズ:「魔王…?どういう事です…!?魔王?聞き捨てなりませんよ??」
リムル:「小便ならそこ曲がって」
フューズ:「俺が知りたいのは便所の場所じゃないですよ!!」
リムル……今のは冗談で済ませられないぞ。
リード:「フューズ、ファルムス軍は俺とリムルが…」
ガゼル:「待て、リード。知っているなら俺にも聞かせてほしい。ファルムス王国軍が進軍中、何故か
ガゼル王が俺の言葉を遮って行方不明になった理由を聞いてきた。
………成る程、ベスターが細かく全て伝えた上での対応か…
しかし正直助かる。俺達が二万を虐殺した事実より、行方不明にして有耶無耶にしようってした方が良い。『隠ぺい』って聞こえは悪いが、俺も
リムル:「いや待ってくれそうじゃなくて俺達が…」
リード:「ああ、未だに原因不明なんだ。なあリムル?」
リムル:「!」
リムルもどうやらガゼル王の意図に気づいたみたいだな。
さて、後は………
リード:「フューズ」
フューズ:「ファルムス軍は行方不明、成る程了解した。だが対策会議には俺も出席させてもらいますよ。リムル殿とリード殿は信頼していますがだからと言って傍観は出来ない」
リムル:「もちろんだ」
グレイド:「リード様、あの者の監視はいりますか?俺の配下にそれが得意な者がおります」
リード:「必要ない。フューズは信用出来る男だ」
グレイド:「は、差し出がましいこと言って申し訳ありません」
リード:「大丈夫、気にしてない」
グレイドの心配はありがたいけど、今はそれよりこの覚えのない集団だな。
明らかに、地位のあるような服を着た紳士と明らかに訓練されたような者が六人………ってその内フードを深く被る一人から感じるこの感覚は……!
ガゼル:「何者だ、貴様達?」
???:「これはこれは、地底に隠れ住むのがお好きな帝王ではありませんか。意外ですな、臆病な貴方が魔王に肩入れなさるとは……」
ガゼル:「貴様か。馬鹿みたいに高い所が好きな、
二人のやり取りから顔馴染みというのがわかる。
すると、ホウテンが前に出た。
鳳天:「これはこれは、お久し振りですねエラルド侯爵殿」
エラルド:「おやおや、まさか貴方がいるとは驚きですよ。我が国に多大な被害を出した
鳳天:「あんな攻めてくださいっといった所に部隊がいたのが悪いんですよ。それと今の名は
リード:「ホウテン、知ってるのか?」
鳳天:「は、リード様、リムル様この方は魔導王朝サリオンの………」
ホウテンが俺とリムルの名前を言うと糸目の細い目が見開いた。
エラルド:「貴様らか!貴様らが私の娘を誑かした、魔王ですか!!覚悟は出来ているんでしょうね!?」
するとエラルドは超高等爆炎術式、火炎魔法と爆発魔法の合成魔法を町中で使おうとしていた。
なに考えてるのこの人!?ってよくみたらハリボテで全く威力のない魔法だな。一応シュナの前で防ぐか。
ところが、フードを深く被った長身の男が剣を抜き、
そして、男の剣の技を俺と自然義兄さんは知っている。今のは
川の水を斬ったことからその名前がついたとされる高等斬術でそれをあそこまで使えるのは、俺が知る中では三人。
男が剣を鞘に収めると風でフードがめくれた。
リード・自然:「「!?」」
???:「エラルド、見せかけとはいえ弟に手を出すなら私が相手だ」
赤みをおびた髪に顔には獣のような痣、そして耳に幻獣の絵が描かれた耳飾り。間違いない!
リード・自然「「
縁護:「?何故魔王リード・テンペストが私のなま…え……を…」
俺と自然義兄さんがペンダントを翳すと、縁護義兄さんは言葉を失い、ふらつきながら俺の両頬を触った。
縁護:「
リード:「うん!久しぶり縁護義兄さん」
自然:「縁護兄貴、俺が保証するぜ。コイツは本物だ」
縁護:「……!!…聖司!」
引き締まった腕で力一杯俺を抱き締める。俺も縁護義兄さんを抱き締める。
だけど…
リード:「縁護義兄さん……そろそろ離して…」
縁護:「!す、すまない聖司!」
ふぅ~、縁護義兄さんは自然義兄さん程じゃないけど結構力強いんだった。
朱菜:「リードさん、まさか…」
リード:「ああ、皆に紹介するよ。
俺の義理の兄の一人
自然:「で、俺の実の兄でもある!」
縁護:「はじめまして、次男の
この紹介でサリオン一同は驚きの声をあげる中、リムルが縁護義兄さんに近づいてきた。
リムル:「久しぶりだな縁護!」
縁護:「………どちら様でしょうか?」
リムル:「おい!!」
リード:「ブホォッ!!」
さすが縁護義兄さん、魔王相手に素で接するのはすごいけど、やっぱり気づいてないか。
自然:「縁護兄貴、信じられないだろうけど魔王リムルは、三上さん」
縁護:「………え?」
自然:「三上悟さん」
縁護:「………プッ」
リムル:「縁護お前もか!?」
いやいやリムル、反応で比べるならまだ縁護義兄さんの方が礼儀良いからな。自然義兄さんなんてもうすごかった。
状況がややこしくなっていったのでリムルがエラルドさん達に、俺がガゼル王の相手をすることになった。
ガゼル:「ところでリード聞きたい事があるんだが…」
ベルン:「リード様、少々報告したいこと…が…」
ベルンがガゼル王の姿を見ると一目散に逃げようとしたがバーンとドルフに阻まれ、両腕を拘束され前に出された。
ベルン:「お、お久し振りです
ガゼル:「
ベルン:「………お久し振りです
リード:「………え?」
俺はベスターを見ると高速で首を横に降る。どうやらベスターも知らなかったようだ。
俺はベルンにガゼル王とどういう関係なのか話してもらった。
そしてわかったことは、ベルンの母はガゼル王の
そして、ベスターの弟と結ばれその二人の間に産まれたのがベルンだった。
ガゼル:「そして両親が亡くなり、俺の養子にならないかと伝えた直後にお前に持っていかれたのだ!」
リード:「持っていかれたって…」
俺は盗賊じゃないんだぞ…
こうしてガゼル王に文句を言われながら、大会議室に向かった。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
リムルがサリオンの相手をしてわかったことは、エレンはなんとエラルドの娘だったそうだ。そしてエラルドはかなりの親馬鹿なのさっきの行動でわかったが、ガゼル王もベルンに対して少々過保護だった。何せ大会議室に着くまでずっとバーンとドルフを側にいさせていたからな。
縁護義兄さんはエレンの従姉の元にいてその従姉が好きに動くことが出来ない立場だったため、頼まれてきたそうだ。
今度そのエレンの従姉にはお礼をしよう。縁護義兄さんを助けてくれたし、このゴタゴタが片付いたら会いに行こうかな。
朱菜:「それでは、最初に来賓の紹介から」
俺のアイコンタクトでシュナが名を読み上げていく。
獣王国ユーラザニアから元三獣士筆頭ドルン。
フォビオとスフィアでは不安だし、アルビスはこういう場所では年長者のドルンが相応しいと辞退した。
武装国家ドワルゴンから代表ガゼル・ドワルゴン、その後ろにドルフがいた。
ブルムンド王国から
急遽参加した魔導王朝サリオンからエラルド侯爵。縁護義兄さんの話だと、サリオンで三本の指に入るほどの実力者だ。(だけど縁護義兄さんはその三人に勝ったみたいだけど)
そして俺達
最後にファルムス王国の関係者であるヨウム達とミュウラングルーシスの紹介で全員の紹介が終わった。
………そういえば、一番紹介することに気が引けるアイツがまだ来ていない。
リード:「シュナ、ヴェルドラの着替えは?」
朱菜:「はい。もうすぐ来られますよ……頑張ってください!」
うん、シュナの笑顔でなんとかモチベーションが上がった!本当にありがとう!
縁護:「………自然、三上さん、聖司とあのシュナという娘とはどういう関係ですか?」
自然:「…あ~やっぱり気づいてなかったか…」
自然が頭をかき、リムルが縁護に耳打ちで答えた。
リムル:「シュナは、リードの恋人なんだ」
縁護:「………え?」
自然:「縁護兄貴?」
リムルからの答えに固まった縁護を自然が突くと縁護が突かれた方向に倒れた。
リード:「縁護義兄さん!」
朱菜:「エンゴ
俺とシュナで起こそうとすると、満ち足りた表情で気絶していた…
リード:「っておい!起きろ縁護義兄さん!!」
ヴェルドラ:「クアーーーハッハッハ」
高速の往復ビンタで起こそうとしているなか、着替え終えたヴェルドラがやって来た。
リード:「リムル、俺は縁護義兄さん起こすから紹介頼む!起きろ縁護義兄さん!!」
リムル:「………ええっと、それじゃあ紹介する。俺とリードの盟友ヴェルドラ君だ」
ヴェルドラ:「ヴェルドラである!暴風竜と呼んでも良いぞ!」
この紹介でガゼル王達の空気が凍ったのを感じた。
そしてフューズが椅子ごと倒れて気絶した。
エレン:「あらら気絶しちゃった」
ヨウム:「無理もねえ…」
ヴェルドラ:「うむあまりの事で感極まったか」
リムル:「違うから!」
縁護:「はっ!川の向こうで父達が手を振っていた!」
リード:「なに見てるんだよ…」
ヴェルドラを突っ込むリムルに、起きた縁護が見ていたものに突っ込むリード。既にこちらも状況がややこしくなっていった。
ガゼル:「リムル、リードよ!」
リムル:「なんだ?」
リード:「うん?」
ガゼル:「話がある!」
リムル:「あ、はい…」
リード:「わかった…」
ガゼル王の有無を言わせぬ顔に俺とリムルはうなずく事しか出来ず、会議が始まる前に、一時中断となってしまった。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
ガゼル:「───なるほど、つまり二年前の暴風竜消失は貴様らが原因だったと」
リムル:「そういうことになるのかな」
縁護:「エラルド、私の
エラルド:「いや、この件にエンゴはなんの関係もない」
自然:「そうだぜ縁護兄貴。それに三上さんも聖司もこの世界の常識がなかったんだからしょうがないって」
どうやら俺達が洞窟脱出件スキル獲得にいそしんでた間、世間では大騒ぎだったそうだ。
まあ、そのせいで起きた問題がないわけではないが…
エラルド:「新たな魔王の出現で手一杯だというのにその上、暴風竜などと…」
ガゼル:「西方聖教会が黙っておるまい。何せあそこは特に暴風竜を敵対視しておる」
エラルド:「でしょうね。復活すれば即座に気づくであろうな」
縁護:「西方聖教会といえば………聖司お前は…」
自然:「そういえば縁護兄貴はどんなスキルを獲得したんだ?あっちで教えてくれよ!」
縁護:「お、おい自然!」
自然義兄さんが気を利かせて、縁護義兄さんと共に会話から抜ける。
縁護義兄さん、天然だからどこでリムルに気づかれるかわからないから、助かった。
リムル:「なあ、ガゼル王。俺達が西方聖教会と事を構えることになったらどっちに付く?」
ガゼル:「それを聞くかリムルよ」
リード:「リムル、ドワルゴンが西方聖教会に味方するのはまずないと思うぞ」
ガゼル:「その様子では、リードはベルンから聞いているようだな」
リード:「まあな」
リムル:「何で俺に教えないんだよ!」
リード:「ベスターから聞いたら良かっただろ?」
リムル:「うっ………」
リムルにも簡単に説明すると、ドワルゴンが西方聖教会に味方をしない理由は主に二つ。
一つは、
もう一つは、ドワルゴンは西方聖教会に煙たがられていること。
この二つの理由からガゼル王が俺達と敵対しない主な理由だ。
ガゼル:「リムル、貴様は少しリードを見習ったらどうだ」
リムル:「うっ…」
リード:「けど、リムルがいなかったら俺は多分暴走してたと思う。俺もリムルから見習うところがあるからそう言わないでくれ」
ガゼル:「………なるほど、確かにな」
縁護:「しかし、今回の戦争ではあまりに一方的かつ死者が多すぎる」
話を終えた縁護義兄さんと自然義兄さんが戻ってきて俺達の会話に加わった。
自然:「確かにな。二万の死者を出した二人の魔王。これだけで西方聖教会から『神敵』認定されて、西側諸国は敵に回る可能性があるな」
縁護:「おまけに三上さんの魔王化を促したのがエラルドの娘であるエレンだと知られれば、魔導王朝サリオンも最悪『神敵』認定されるおそれもある」
ガゼル:「いや、その点については安心しろ。事実が広まることは一切ない」
エラルド:「どういう事だガゼル?」
ガゼル:「死体は全て消え、捕虜を除いて生存者はいない。そうだなリムル、リード?」
成る程、ガゼル王が言いたい事は分かった。
皆の事を考えるとそれくらいの罪は背負わないといけないな。
リムル:「…ああ、そうだ」
リード:「それで、どういう筋書きなんだ?」
ガゼル:「…清濁併せ呑む覚悟は決まったようだな。それでいい、王たるものは悔いてはならんのだ」
その後ガゼル王の提案を元に、今回の戦争の内容がつくられた。
こうして会議が始まる前に、今回の戦争の話が作られた。
そして、これから行われるのは歴史に残る会談、人魔会談が行われようとしていた。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
大会議場に戻る途中、俺は縁護義兄さんに聞きたい事があったのを思い出した。
リード:「そういえば縁護義兄さん、こっちの世界にきた時何かスキルを獲得しなかった?」
縁護:「ああ、今は
リード:「………は?」
自然:「ついでに言うと、俺と同じ真なる勇者に進化したんだと」
リード:「………マジ?」
自然:「マジ」
縁護:「どうした二人共?私の顔に何かついてるか?」
………縁護義兄さん、天然も度が過ぎてる。