前回はファルムスの計画がグレイド達によって進められていったお話ですが、今回は
“闇”のタロス・ヘイムは、ルベリオスの中ではヒナタに次ぐ実力者であると人類から認識されていた。
そんなタロスは、ヒナタより低い地位でありながらルミナス教のある事実を知っていた。
深夜、人通りが少ない時間にタロスは“奥の院”に踏み込んでいた。
タロス:「ルミナス、昼に
無礼な言葉で扉を開けるよう催促すると、扉が開き、執事服を来た
タロス:「なんだ?またあの時みたいに半殺しにされたいか?」
挑発的な口調にルイとギュンターは言い返す事が出来なかった。それだけでこの男の強さがうかがえる。
そして中に進むと、ソファーで寛いでいた魔王ルミナス・バレンタインがいた。
タロス:「ロイを殺した者の特徴を教えたのだ。昼間の話を聞かせてもらうぞ」
ルミナス:「………その前に一つ確認じゃ」
タロス:「なんだ?」
ルミナス:「何故ロイを助けなかった?」
ルミナスは、殺気と覇気の込めた声でタロスに問い詰める。当のタロスは冷や汗一つかかず、口もとも崩さず答えた。
タロス:「………それは私の義務ではなかったからだ」
ルミナス:「………そうか」
タロスの答えに納得したのかルミナスはそれ以上聞こうとしなかった。
そして、ヒナタ達と話し合って決まった事を伝えた。
タロス:「なるほど、
ルミナス:「お主が行けば話は別じゃがな」
タロス:「ふざけるな。私の目的はそんなくだらない事ではない」
ルミナス:「しかし、そう言いたくなるのも無理はないであろう」
ルミナスはそう言って半年前の事を思い出していた。
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それはタロスが
タロスは“奥の院”に単身で突撃し、ルミナス教の真実を確認した。
タロス:「何故
タロスの問いに、法皇ルイと双子の弟ロイ・ヴァレンタインは答えない。
タロス:「………そうかミーノス」
タロスの呼び掛けに後ろから、一人の騎士が現れた。
タロス:「これを預かってくれ」
ミーノス:「はっ!後武運を」
ミーノスは手袋と
ロイ:「ふん、我らを相手に一人で挑もうなど愚かな」
ルイ:「流石の私も同感だよ。しかもいまだに剣を抜いていないとはな」
ルイとロイが、タロスが無防備だと思って完全に油断していた。
次の瞬間二人の前方の視界からタロスの姿が消えていた。
ロイ・ルイ:「「!?」」
慌てて周囲を探すがなかなか見つからず、後ろを振り向くと、まるで着地のような姿勢のタロスがいた。
そんなタロスにルイとロイが同時に仕掛けようとするが何も起きなかった。
タロス:「貴様ら、弱すぎる」
両手が血で濡れたタロスはそれをふるった次の瞬間、首と胸から大量の血が吹き出し何が起こったのか分からぬまま二人は倒れた。
ルミナス:「何事じゃ?騒々しい」
そこに現れたのは、西方聖教会が信仰する唯一神ルミナスであった。
ルミナスは状況を一目見て理解すると、ため息を吐いた。
ルミナス:「二人とも、妾を置いて死ぬ事など許さぬ」
ルミナスの神秘的な波動がルイとロイに届こうとしたとき、禍々しい結界に遮られた。
ルミナス:「!!?」
タロス:「この波動、死者ですら蘇る事が出来るな。まさかこれ程の実力者がこんな稀少なスキルを持つとは」
ルミナスはヒナタから聞いていたタロスの実力が違い過ぎる事に戸惑っていた。
自身のスキルを遮る程の強力な結界に、目と感知系のスキルのみで見抜く洞察力。
明らかに、ヒナタから聞いていた実力からかけ離れていた。
ギュンター:「ルミナス様、今すぐ逃げてください!この人間は危険すぎる!」
タロス:「………ルミナス?」
タロスがルミナスの名前を知ると、ギュンターが襲いかかる。しかしその後信じられない光景となった。
ギュンター:「な、なに!?」
ギュンターの剣を、タロスは『気闘法』だけで強化された右の手刀で受け止めていた。
タロス:「業のキレがなっていない!!」
タロスは空いていた左の手刀でギュンターの身体を真っ二つに切り裂き、地面に散らばった。
そして、最後の標的であるルミナスに狙いを定める。
タロス:「残すは貴様だ。神ルミナスいや魔王ルミナス」
ルミナス:「っ!?」
ルミナスが迎撃体勢をとるが、タロスの右手は闘気と神聖魔法の超高エネルギー結晶となっていた。
タロス:「ヒナタの脅威となり得るものは、全て私が排除する!!」
タロスが、拳を繰り出そうとしたその時、一人の騎士が二人の間に立った。
???:「お待ちください我が主!」
タロス:「退けパンドラ!!邪魔をする気か!?」
パンドラ:「冷静になってください!これ程の実力者の存在をヒナタ様が気づかないとお思いですか!?」
タロス:「…っ!」
パンドラ:「それに、そのお方のお名前はルミナスというではありませんか!ヒナタ様がこれらの事実に気づかないなんてまずありえません!それはあなた様が一番よくご存知なはずです!!」
タロス:「……………」
パンドラの言葉を聞いてタロスは拳を開き、コートと手袋を着た。
タロス:「………まずはそこに転がっている負け犬どもを叩き起こすぞ」
タロスの身体から、禍々しい波動をルイとロイ、ギュンターが浴びると、先ほどタロスから受けた傷が消え、綺麗に治っていた。
ルミナス:(妾と同じ権能のスキルじゃと!?)
タロス:「ルミナス」
ルミナス:「っ!?」
タロスはルミナスに近づくが、ルミナスは先ほどの事もあり警戒していた。
タロス:「私の質問に正直に答えろ。ヒナタはお前達の存在を知っているのか?」
タロスの質問に正直に答えなければ、即攻撃するという意味だということに気づかない程ルミナスは鈍くない。
故に、表情を崩さず答えた。
ルミナス:「ああ、そうじゃ」
タロス:「………そうか、それなら先の無礼を許してほしい。私もあまりの事で我を忘れていた」
その後の、二人の間である約束が出来た。
タロスはルミナス達に協力する代わりに、ヒナタに自身の実力は隠し、自身がルミナス教の真実に気づいていることを悟らせないでおくことそして、情報収集には極力妨害しないという約束が結ばれた。
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ルミナス:「…ヒナタ以上の強さを持つそなたならヴェルドラにも通用するやもしれん」
タロス:「なら、ヒナタにそう命じろ。それなら私は動く………そういえば」
ルミナス:「なんじゃ?」
タロス:「魔王リードは自身の力をどうすると言っていた?」
ルミナス:「…戻る前に本人の口から聞いたのじゃが───」
リード:『人間も魔物も関係のない国にする。それを邪魔するヤツは誰であろうと敵だ』
タロス:「………そうか」
リードの事を聞いたタロスの頬が僅かに緩くなった。
ルミナス:「お主も笑うのじゃな」
タロス:「余計なお世話だ」
タロスがルミナスから、今後の動きを聞き終えると、タロスの影から一人の騎士が現れた。
タロス:「どうしたアイアコス?」
アイアコス:「はっ!大事なお話し中申し訳ありません。間も無く時間です」
タロス:「…わかった。すぐ戻る」
タロスが“奥の院”から出ようとすると、立ち止まった。
タロス:「ルミナス、一つ良いこと教えておこう」
ルミナス:「………なんじゃ?」
タロス:「魔王と勇者には因果が巡る。ならば、魔王リードと互角の勇者が現れるやもしれん」
ルミナス:「……………」
タロスがそれだけルミナスに言うと、今度こそ“奥の院”を出て自分の部屋に向かった。
それを見送ったルミナス達は、
ルイ:「ちっ!忌々しい…」
ギュンター:「しかし、我らに牙を剥けないだけでも有難いことだ」
ルミナス:「二人とも何度も言うが、ヤツには絶対に仕掛けるな。確実に死ぬゆえな」
ルイ・ギュンター:「「は」」
ルミナスの命令に、ルイとギュンターはそれに従った。
ルミナス自身、タロスと本気で戦えば、その余波で西側諸国は混乱に陥る可能性があり、何としてもそれは防がなければならないことであった。
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“奥の院”から出て、ヒナタに鉢合わせないよう細心の注意で自室に戻っていたタロスは、夜空の星に見上げ、呟いた。
タロス:「………何故、世界はこんなにも理不尽で不公平なのだ」
それは、強く輝く二つの星とそこから離れたところに、八つの輝く星があった。
その八つの内の一つの星の輝き方が微妙に違っていた。
その後タロスは誰とも鉢合わせる事なく、自室に戻り、ひとときの眠りについた。
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それからしばらく経ち、タロスはイングラシアの喫茶店でコーヒーを飲みながら読書をしてある人物を待っていた。
影には、ラダマンティスをお供に控えさせているが、まず誰も気づくことはない。
ラダマンティス:「本当に来るのでしょうか?」
タロス:「パンドラからの報告でも、ヤツは今味方を多くつけるために躍起になっている。故に必ずくる」
しばらく待っていると、小柄な少年がタロスの前の椅子に座った。
タロス:「まさかお前から誘ってくれるとは思わなかったぞ。
サーレ:「僕もまさか来てくれるなんて思わなかったよ。ヒナタの忠犬タロス・ヘイム」
タロスの言葉にサーレも負けじと反撃するが、実力では圧倒的差があるのを知っているため、タロスは鼻で笑った。
サーレ:「仮面くらい外せないのか?」
タロス:「デザインが違うのだから問題ないだろ」
タロスはいつも、
タロス:「それで、用件はなんだ?」
サーレ:「………タロス、君はこのルベリオス全戦力でテンペストに勝てると思うか?」
タロス:「無理だ」
サーレの問い掛けにタロスは即答する。
ルミナスから知った情報を聞いてから、タロスは毎日何度も頭の中でテンペストとの戦闘をイメージしたが、結果は連戦連敗。
タロス:「はっきり言って実力不足だ」
サーレ:「やっぱりそうか…」
タロス:「何故そんな事を聞く?」
サーレ:「………ヒナタと互角に戦えたというシゼンとかいう人間に、レナード達が不意を突かれたとはいえ、魔王リードに敗れたと聞いた時から、僕達に勝ち目がないと思ってね」
タロス:「私はその時コリウス王国の調査に行っていたから止める事が出来なかったがな。それで?」
サーレ:「しかも、殺そうとしたリムルが魔王になった。それにヴェルドラを刺激するようならこの西側諸国が危険になる」
タロス:「その通り、だから私は例えルミナス様のお告げであっても、テンペストの戦争には反対するつもりだ」
サーレ:「それは何故だい?」
タロス:「ヒナタ様を危険に晒すつもりなど、私には毛一本分もない。」
サーレ:「そうか、君もある意味同じ考えか…」
タロスの言葉に、サーレは安堵の表情を見せる。そしてタロスはある話を持ちかけた。
タロス:「サーレ手を組まないか?」
サーレ:「なに?」
タロス:「私達はテンペストと戦う気はない。故にテンペストとの戦争を回避するための行動はお互いに妨害せず、時には協力し合うというのはどうだ?」
サーレ:「それは構わないけど…」
タロス:「ただし条件がある。お前の動機を話せ」
サーレ:「………なに?」
タロスの条件を聞いたサーレは表情を険しくするが、タロスは気にせず話す。
タロス:「私は理由を話した。ならばお前も動機を話すのは筋だろう?それにお前程の男が何故そこまでテンペストとの戦争を避けたいのか気になっていたのでな」
タロスの言葉に筋が通っており、サーレが苦々し表情をし、俯いて呟いた。
サーレ:「………がいる」
タロス:「なに?」
サーレ:「恋人が今テンペストにいる」
タロス:「………なに?」
あまりに予想外な言葉だったために、タロスは言葉を詰まらせるが、これまでのサーレの行動にも、いくつか納得もしていた。
しかし、事が事であったが為にタロスは仮面を僅かに浮かせて眉間を押さえる。
タロス:「………ここの支払は私が持とう」
サーレ:「………ありがとう」
こうして、タロスとサーレの同盟が結ばれた。
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それからしばらく経ち、法皇両翼合同会議を控えていたタロスは自室の机に突っ伏していた。
タロス:「悪夢だ…」
配下全員から届いたラージャ小亜国とその隣国の戦争に関する報告書と、リード=テンペストとリムル=テンペストの危険度を知らせた書類を見て、タロスの表情は曇っていた。
ラージャ小亜国に関する報告書
テンペストから少数部隊の増援により、各方面の将は討たれ全軍撤退したもよう。
増援部隊の隊長と思われるのは、
タロス:「これでは、
次に、リード=テンペストとリムル=テンペストの危険度を示した報告書を見て、タメ息を吐いた。
魔王リード=テンペストと魔王リムル=テンペストに関する報告書
魔王リード=テンペスト、魔王に進化する以前にカリュブティスを斬り、さらに、魔王ギィ・クリムゾンが認める程の武力の持ち主。その強さは魔王ミリム・ナーヴァを相手に出来る程。故に魔王リード・テンペストの危険度は
魔王リムル=テンペスト、戦闘力は魔王リード=テンペストに比べて劣るが、その頭脳は恐るべきものと見る。恐らくその頭脳で劣っている武力を補っているとみるべきである。故に魔王リムル=テンペストの危険度も
タロス:「しかし、これならあの
タロスは、二つの報告書を会議に間に合わせる為に、急いで写しを書き始めた。
…なんだか、ルベリオスもかなり慌ただしいみたいですね。
それにしても、闇のタロス・ヘイムって人、何者なんでしょうか?