転生したら天魔人だった件   作:通りすがりの気分屋

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我が魔王達が魔王を名乗り認められ、一ヶ月近くが過ぎていった。
その頃には、町は襲撃前と同じくらい活気にあふれていた。


魔国連邦(テンペスト)の日々

草原で自然(シゼン)はシオンと仮面ライダーゴーストに変身したコウホウに生身で稽古をつけていた。

無論稽古と言っても、自身を殺す気でやらないと意味がないと言って、武器の使用も許可してある。にも関わらず、シオンとコウホウは一撃も自然に攻撃を入れられていなかった。

 

自然:「どうした、もう終わりか?」

 

紫苑(シオン):「くっ…!」

 

黄奉(コウホウ):「まだまだ!」

 

シオンの剛力丸・改とコウホウのガンガンセイバーナギナタモードの重量級の同時攻撃が繰り出される。並の実力者ならこのダブル攻撃の対応は回避しかないだろう。しかし、自然はその攻撃をそれぞれ片腕で受け止めた。

 

紫苑:「なっ…!」

 

黄奉:「嘘だろ…」

 

あまりの事に驚く二人だが、自然は掴んだ武器を持ち主事上空に投げ飛ばす。

二人は、あまりの事で反応が遅れ、半端な受け身になりひどく傷を負った。

 

自然:「シオンお前は力で押し通そうとする癖がある。一つでも多くの業を体得しろ。コウホウお前は力を籠めるのが一瞬遅い、直せば俺に傷を負わせる事は出来るぜ。それじゃあ今日の稽古はここまで」

 

紫苑・黄奉:「「あ…ありがとうございました…」」

 

自然は町に戻るが、二人は、息切れが激しく動けずにいた。それもそのはず、二人は早朝から三時間以上自然と稽古をしていたのだ。

しかし、自然は常に必要最小限の動きで体力の消耗を極力抑えていたため、息切れ一つしていなかった。

 

紫苑:「ここまで力の差があるとはな…」

 

黄奉:「驚くのは、前世のリード様は僅か一年でシゼン様以上の強さを得たということと、シゼン様達が認める最強の長兄(ちょうけい)レンム様がいるという事だな…」

 

二人はまだ会ったことのない時魔兄弟長男煉武(レンム)に戦慄した後、ある程度回復したため主達のもとへ向かった。

 

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

 

訓練場では、ハクロウと縁護(エンゴ)の激しい打ち合いが繰り広げられていた。

水のような攻撃を繰り出すハクロウの攻撃を、縁護は予測し的確で最小限の動きで攻撃を防いでいく。

完全なる剣の達人同士の激しすぎる攻防は、既に一時間をゆうに越えていた。

しかし、それだけ激しく打ち合えば使用している木刀にも限界はきてしまった。

縁護の木刀が(つば)の部分で折れたのだ。

その瞬間二人の動きが止まり、互いに頭を下げた。

 

白老(ハクロウ):「参りましたぞエンゴ様」

 

ハクロウがそう言って、持っていた木刀を手放す。地面に接触した瞬間、ハクロウの木刀は木片へ変わり果てた。

 

白老:「あの打ち合いの最中、ワシの木刀を破壊するとは、しかも僅かに力加減を間違えればワシの木刀はとっくに粉々だったでしょう」

 

縁護:「ハクロウ、あなたはそれを気づいた上でそれを防いでいた。残念ですが、私の───」

 

白老:「ワシが若い頃にもこれ程の高等技術は使えませぬ‥‥‥エンゴ様」

 

縁護:「なんだ?」

 

白老:「エンゴ様がよろしければ、お(おし)えさせて頂けないでしょうか。ワシが修めた朧流最高奥義までの全てを」

 

ハクロウの提案に縁護は驚いていた。

突然の提案だったために理解するのにいつもより数瞬遅れていた。

 

縁護:「‥‥‥いいのか?私よりも聖司(セイジ)やコウホウに教えた方がいいのでは───」

 

白老:「コウホウは自分から言ってくるまで言わぬつもりです。それにリード様は朧流以上の技を使えます。だからワシはエンゴ様に言っているのです」

 

縁護:「‥‥‥」

 

ハクロウの提案に縁護は『思考加速』を最大にして考えていた。

 

縁護:(確かに私は、時魔流(ときまりゅう)武術(ぶじゅつ)最大の型である。(しん)の型を使う事が出来る。しかし、それは聖司も同じだ。その上初代様しか使えなかった技も使える。この差を少しでも埋めるにはやはり………)

 

時間にして僅か数秒であったが、縁護にとってはとてつもなく長い時間であった。

それだけ縁護は事を重く見ているのがわかる。

 

縁護:「ハクロウ、いえ先生。私に朧流の全ての技を教えて下さい」

 

白老:「…うむ。時にエンゴ様」

 

縁護:「なんだ?」

 

白老:「エンゴ様達兄弟はまるで素早い動きをする戦いに慣れておるように感じるのですが、一体誰に?」

 

ハクロウの問いに縁護の言葉が詰まる。ここで答えたら、弟のリードと兄貴分であるリムルの配下に失礼なのではと思っているからだ。

 

白老:「エンゴ様、教えてくれませんか?」

 

縁護:「‥‥‥兄上に比べればとても遅かったので、それで反応出来たのです」

 

白老:「なんと!?」

 

縁護の答えに、ハクロウは目を丸くする。

リード達時魔兄弟の動きは素早い攻撃を常に的確に防いでいた事に疑問を持っていたハクロウにとって、縁護の答えは予想もしていなかった。

それと同時に、縁護達の兄である煉武に興味を持ってしまった。

 

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

 

森林が多い場所で、生夢は小さな机で持っている道具の磨いていた。

 

生夢(ショウム):「いいかい、暗殺ってのは相手に自身の状態変化を悟らせず仕留める事を言うんだ。だから短期戦でなく長期戦も視野にいれるんだよ」

 

生夢は、持っていた暗器や刃物(メス)を磨きながら、倒れているソウエイやソーカ達、そしてゲリオン達に指導をしていた。

 

ゲリオン:「馬鹿な…俺達蟲型魔人(インセクター)に毒は通じないはず…」

 

生夢:「確かに毒単体なら効かない。けど、良薬同士を合わせる事で毒に変質するものだってある」

 

蒼影(ソウエイ):「!!」

 

生夢の言葉にソウエイは、自身の傷口を見て思い出した。生夢の攻撃は僅かに掠り続けていた。しかしそれは、自分達を油断させるための生夢の戦法だったのだと気づいたのだ。

そうして油断させていき、気づいたときには生夢特製の毒で行動不能になっていくその恐ろしさをソウエイは気づいた。

 

生夢:「煉武兄さんの受け売りだけど、『戦法は複数持っておけ、敵の不意を突くのはそれが一番だ』。それじゃあ今日の稽古はここまで!しっかり休むんだよ」

 

生夢は人数分の薬を置き、新しい薬調合のために自室に帰った。

 

ゲリオン:「‥‥‥ソウエイ」

 

蒼影:「なんだ」

 

ゲリオン:「ショウム様、我らの動きに全て対応してたよな」

 

蒼影:「兄であるレンム様でかなり経験しているらしい」

 

ゲリオン:「‥‥‥どれだけの実力者か気にならないか?」

 

蒼影:「‥‥‥少し」

 

ソウエイとゲリオンも長男である煉武の存在に興味を持ってしまった。

 

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

 

森のある場所で爆発が起き、その中心には短剣(ダガー)で遊んでいる釈迦人(シャカト)と完全に戦闘不能のウォズに吹き飛ばされ、河で気絶していたガビルがいた。

 

釈迦人:「カーカッカッカッカ!いい線いってたけど、まだまだ基礎が足りてないから、基礎練しっかりね~」

 

町に戻る釈迦人をウォズは信じられないものを見る目で見ていた。

そして、水渦槍(ボルテクススピア)を杖代わりに歩いてきたガビルが来た。

 

ガビル:「ウォズ殿、大丈夫ですか?」

 

ウォズ:「君の方こそ大丈夫かい?自慢の必殺技である渦槍水流撃(ボルテクスクラッシュ)を闘気()()で強化された短剣一本で止められたはずだが…」

 

ガビル:「…正直、心が折れました…」

 

ガビルの様々な悲しい感情の籠った目にウォズは同情せざるを得ない。何故なら、

 

ウォズ:「私の持つすべての技も防がれたからね、気持ちはわかるよ…うん?」

 

ウォズが目の前の紙に気づき、手を伸ばして広げると、そこにはガビルとウォズのトレーニングメニューがかかれてあり、それはもう適切なメニューであった。そしてそのメニューの最後には、

 

『このメニュー、煉武兄からのアドバイスで作ったから。これを平然と出来るようになれば、かすり傷程度はつけられるかもね~、とりあえず、ガンバ!』

 

ウォズ:「‥‥‥とりあえず頑張ろう」

 

ガビル:「そうですな…」

 

生夢が開発したカプセル状の完全回復薬(フルポーション)を飲んで回復すると、二人は釈迦人考案のトレーニングを始めた。

 

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

 

町の食堂の端の席で、リードを除いた時魔兄弟が座っていた。

 

自然:「いや~良い運動になった!」

 

縁護:「朧流の技はとても良いぞ。生夢達もどうだ?」

 

生夢:「時間があったらね。今は色々と忙しい」

 

釈迦人:「しっかし、三上(ミカミ)さんと聖司の配下は凄いね~俺も少し本気になったよ」

 

シズ:「相席いい?」

 

縁護:「シズさん!」

 

釈迦人:「ど~ぞ~」

 

シズ:「ありがとう」

 

自然はしょうが焼き定食、縁護はざる蕎麦、生夢は焼き魚定食、釈迦人は大盛り炒飯を食べながら会話をしていると、天麩羅定食を持ったシズが相席してきた。

 

シズ:「ここの生活に慣れた?」

 

生夢:「ええ」

 

釈迦人:「もちろんです!」

 

縁護:「ところで三上さんと聖司は?一緒じゃないのですか?」

 

シズ:「そろそろ来ると思うけど…」

 

シズが扉に視線を向けると、突然食堂が激しく揺れるがすぐにおさまった。

すると、ボロボロになったリムルとリードが喧嘩しながら入ってきた。

 

リムル:「お前殺す気か!?」

 

リード:「生きてたんだから良いだろう」

 

リムル:「良くねぇよ!」

 

シズ:「リムルさん、リード君!どうしたの!?ボロボロじゃない!?」

 

シズが慌てて二人に近づくと、リムルが怒りながら答えた。

 

リムル:「聞いてくれよシズさん!コイツ『光明之王(バルドル)』を全解放して、俺に崩魔霊子斬(メルトスラッシュ)はなったんだよ!」

 

時魔兄弟:『なんだそんな事か…』

 

リムルの答えに時魔兄弟は呆れ、お吸い物を飲んだ。

 

リード:「それで霊子の理解も出来たし、戦闘にも使えるだろ」

 

リムル:「限度ってものがあるだろ!!あと縁護達も他に言葉はないのか!?」

 

縁護:「ありません」

 

生夢:「ないですね」

 

釈迦人:「ないっしょ~」

 

自然:「ないっスわ~」

 

シズ:「それはあんまりだと思うよ」

 

リムル:「シズさん!」

 

リムルは唯一理解してくれたシズに泣きながら抱きついた。

 

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

 

夕方になり、今日の仕事を終えたリムルはシズ共に帰路についていた。

 

リムル:「まったく、縁護達はもう少し敬ってほしいよ」

 

シズ:「そう言ってるけどリムルさん、最近嬉しそうだよ?」

 

リムル:「え、そう?」

 

シズ:「ええ、生夢君と釈迦人君が来てからさらに嬉しそうだったよ」

 

シズの言葉に、リムルは頬をかいた。

 

リムル:「…縁護達は、昔から自分の才能や能力に苦労してたんだ」

 

シズ:「…そう聞いてるよ」

 

リムル:「いや、シズさんが思ってるよりずっと大変だったんだ」

 

シズ:「え…」

 

リムルはシズに、小さい時の縁護達の事を話し始めた。

縁護は目と耳が良すぎる事が理由でいじめられ、生夢と釈迦人は双子なのに性格が全然似てなく、お互い別の意味で器用だったため気味がわれ、自然は抑えれていたとはいえ、それでも異常な怪力で仲間外れにされていた。

 

リムル:「四人共、煉武に心配させまいとしてたから隠してたけど、俺の前じゃあ年相応に泣いてたよ」

(それで暴走した煉武を止めるのに苦労したのは言うまでもないけど…)

 

三上悟(前世のリムル):『落ち着け!馬鹿煉武!』

 

煉武:『離せ悟!その小僧共に礼儀を叩き込んでやる!!』

 

リムルから聞いた煉武は時魔家の屋敷にある武器を持てるだけ持ち出そうとしたのを必死になって止めたのを思い出していた。

 

リムル:「だからアイツらがあんなに生き生きしてるのを見てるとすごく嬉しいんだ」

 

シズ:「そうなんだ…ところで縁護君達って今、歳いくつ?」

 

リムルの会話から、縁護達の年齢に違和感を覚えたシズはつい聞いてしまった。

 

リムル:「ああ!アイツら俺と煉武とは少し年の差があって、今年で縁護は32歳、生夢と釈迦人は31歳、自然は三十路(みそじ)だよ」

 

シズ:「ヘェ、もう少し若いって思ってた!」

 

リムル:「時魔家ってアンチエイジングを極めたようなヤツが多いらしくて、アイツらの親父さんに初めて会った時は親戚のお兄さんかと思っちゃったよ」

 

シズ:「そうなんだ。じゃあ、その煉武さんはどんな人なの?」

 

リムル:「煉武『さん』?」

 

シズ:「だってリムルさんの幼なじみなんでしょう?それなら煉武さんって呼ばないと失礼だと思って」

 

リムル:「う~ん、一言で言うなら‥‥‥隠れブラコン」

 

シズ:「隠れブラコン?」

 

聞きなれない言葉にシズは首を傾げる。シズの時代にはそんな言葉はなかったのだから。

 

リムル:「いやブラコンじゃないか‥‥‥過保護って感じかな」

 

シズ:「過保護?」

 

リムル:「ああ、縁護達が自身で身を守れるように地獄のような鍛練をさせたからな。過保護としか言えないよ」

 

シズ:「へー、なんだが会いたくなっちゃた」

 

リムル:「縁護達四人もいるんだし、きっとこの世界にいるかもな」

 

リムルとシズは、リムル庵に帰りつき夕食の準備を始めた。

 

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

 

リード:「煉武義兄(にい)さんの事を?」

 

朱菜(シュナ):「はい」

 

シュナと一緒に夕飯のハンバーグを食べていると、シュナが煉武義兄さんについて聞いてきた。

…正直言っていい気分じゃない。

そう思っているとシュナが俺があげた指輪に口づけをした。

 

朱菜:「安心してください。わたくしが一番好きな方はリードさんだけです。レンムお義兄(にい)様についてはただの興味本位の質問です」

 

シュナが笑顔で真意を教えると、俺は頭をかいた。なんだがシュナには色々見透かされているようで、恥ずかしくなった。

だから俺はわざと咳をして、シュナに俺が知り得ている煉武義兄さんについて話した。

 

リード:「一言で言うなら、強い」

 

朱菜:「強い?」

 

リード:「ああ、唯一前世で一度も勝てなかった人」

 

朱菜:「えっ!」

 

リード:「そして‥‥‥俺が二番目に尊敬してる人」

 

朱菜:「‥‥‥」

 

リード:「まぁ戦績は全部引き分けだけど次は勝つ!」

 

朱菜:「ふふ、あまり無茶をしないで下さいね」

 

リード:「善処します」

 

こう言う時のシュナってやっぱり怖いんだよな。

縁護義兄さんから俺が(きわみ)の技の使用厳禁の理由を知った時なんて、背後に三体の竜が見えて、一時間以上受けたお説教は、姉さんのお説教にも匹敵したのを覚えてる。

そう肝に銘じながら、俺達は夕食を再び食べ始めた。

 

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

 

シェアハウスのリビングで、縁護達は自然から日向についての情報を聞いていた。

 

釈迦人:「間違いないの?」

 

自然:「ああ、日向(ヒナタ)の実力は、仙人(せんじん)レベルまで抑えた兄貴達にも匹敵する。多分本気になったら、四肢の半分はなくなるな」

 

縁護:「…それなら、あの子はやるな」

 

生夢:「言っても無駄だよ。僕達に出来る事はもしルベリオスと戦争になった時、一人でも多くを傷つけないように動くだけ」

 

縁護:「そうだな」

(こんな時、兄上がいてくれたら…)

 

縁護は今はいない兄の存在の大きさを思い知らされていた。




こうして、我が魔国連邦(テンペスト)に新しい日常の日々が過ぎていった。
それにしても、我が魔王やエンゴ様達が言う程の強者である。レンム様…一体何者なのでしょう?

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

とあるバーで、二人用の席に一人の男が酒を飲んでいると、向かいの席に幻想的な白髪の男が座った。

???:「いきなりこんな時間に呼び出して何の用だ?ダムラダ

ダムラダ:「なに、君からの報告が急遽必要になっただけさ…煉武(レンム)

ダムラダは、酒の入ったもう一つのグラスを煉武の前に置いた。
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