転生したら天魔人だった件   作:通りすがりの気分屋

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我が魔王達に戻った一時の日常、ついに幹部全員が帰還し、幹部会が行われることとなった。


魔国連邦(テンペスト)とルベリオス 前編

やっとクレイマンとの戦いの後始末を終え、皆が大会議室に集まった。

 

リード:「さて、全員揃ったな」

 

リムル:「えーと皆さん、既に御承知の方もおられるでしょうが、この度私たちは魔王に就任いたしました!」

 

配下一同:『『『おめでとうございます!!』』』

 

皆から笑顔で祝福され、縁護(エンゴ)義兄(にい)さん達もどこから取り出したのか、ラッパや太鼓で俺とリムルの魔王就任を祝福してくれた。

 

リムル:「そんなわけで俺とリードの支配領域がジュラの大森林全域に決まったから」

 

リムルの言葉に、一同難しい表情にざわめき始めた。

しまった!リムルに伝えるのを忘れてた。

 

リムル:「あれ?」

 

リード:「リムル、ゴメン。大事なことを伝え忘れてた」

 

リムル:「え、何を?」

 

俺とリムルが盟主として認識していたのはあくまで、樹妖精(ドライアド)の影響下であったアメルド大河から西の領域であり、川の向こう側である東の領域はその領域のルールで生活しており、ドライアドの影響下にはなかったのだ。

 

リムル:「それがどうしたんだ?」

 

リード:「今俺達はこのジュラの大森林全域から採れるすべての資源を得る権利を持っているんだ。だから勝手に資源を採るのは、俺達への反逆行為に繋がるおそれがあるんだ」

 

リムル:「別にそれは気にしてないけど」

 

縁護:「三上(ミカミ)さん、分かりやすい例で例えるなら、初めてガビルに会った時のシオン達です」

 

ガビル:「グホォッ!」

 

リムル:「なるほど」

 

ガビルが頭を抱えるが仕方がない。そうでもしないとリムルに理解してもらえないからだ。

 

自然(シゼン):「つまり、河の向こう側の種族やこの国周辺に住んでる他の種族が二人に忠誠を誓うことで、自分たちを守るように動くってことですよ」

 

リムル:「シオンからアビルさんが挨拶に来るって報告を受けたけどそういうことか…」

 

生夢(ショウム):「それだけ魔王の影響力っていうのは凄まじいものなんですよ」

 

釈迦人(シャカト):「そっそっそ。挨拶に来ないのは叛意ありと見られて、最悪種族の滅亡にも繋がるんですよ」

 

リムル:「また面倒な…!」

 

すると、リムルが何か思いついたようだ。

縁護義兄さん達もそれに気づいたみたいだ。

 

リムル:「それならさ、いっその事大々的に宣伝して、この町をお披露目したらいいんじゃないか?バラバラに押しかけるよりも、みんなまとめて来てもらった方が楽だろ」

 

リード:「つまり?」

 

縁護:「最近ずっと緊張の日々だから息抜きをしようって事ですか?」

 

リムル:「そう!」

 

釈迦人・自然:「「!!」」

 

縁護義兄さんの予測がリムルの考えに的中すると、釈迦人義兄さんと自然義兄さんの表情が明るくなった。

 

釈迦人:「三上さん…」

 

自然:「それってつまり…」

 

リムル:「そう!皆でお祭りしようぜ!って話だぜ」

 

生夢:「それはいいですね。この国の住人獲得に繋がりますし、三上さんと聖司(セイジ)のお披露目にもちょうどいいですね」

 

リード:「確かに、息抜きも必要だね」

 

リムル:「それじゃあ、ここは一つ盛大にやろうじゃないか!」

 

全員:『『『『ああ!/はい!』』』』

 

本当にリムルはゆとりを作る事に関しては天才だな。こういうところが、縁護義兄さん達が慕う理由なのかもな。

反対意見も出ず、予算の心配があったが、それはリムルがなんとかするそうだ。

縁護義兄さんが自分が出そうと言ったとき、リムルが現在の全財産を聞いたら、そのあまりにもバカげた額に全員引いていた。

まあ、一番無欲な縁護義兄さんだから可能な額だろうが、魔導王朝サリオンの経済は一体どうなっているんだ…

そして、馴染みのある国への招待状は人魔混合隊(トライブ)に任せたりと、着々と準備が整っていったが、縁護義兄さんがあることに気づいた。

 

縁護:「ところで街道はどうするのですか?この国の魔素の濃度の高さは異常だから警備隊でも対応出来ない魔物も出現するのでは?」

 

確かに犠牲が出てからじゃ遅い、それを理由に俺達に難癖をつけてくる輩がでないとも限らない。

 

ベスター:「でしたら、退魔結界を施してみたはどうでしょう」

 

すると、ベスターから提案の声があがり、カイジンも立ち上がって発言した。

 

カイジン:「旦那達、完成したぜ。結界を発動させる、全自動魔法発動機の試作型がな!」

 

俺はそこで、釈迦人義兄さんと共に手伝っていたアレの存在を思い出した。

 

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

 

リムル:「リード君どういうことかな?」

 

リード:「え~っと…」

 

街道についてすぐにリムルから、隠れて作業をしていたことがバレてしまい、問い詰められてしまった。

まあ、折角作った休みの時間を作業に回していたら、流石に怒るか…

簡単に説明すると、待機中の魔素濃度を低下させ、その低下させる上に、燃料を刻印魔法によって最適化された魔晶石によって魔法が発動出来るものだ。

更に別の魔法式を刻印する事で、退魔結界だけでなく他の魔法も使う事が出来るのだ。

しかも、核になる魔晶石の確認は警備隊が巡回中でも行う事は可能だから、とても手間が省けるのだ。

 

リムル:「すごいなベスター、たった一ヶ月でよくここまで出来たな!」

 

ベスター:「いえ、これを考案したのは私ではありません」

 

リムル:「え?」

 

リムルの評価をベスターは否定し、カイジンと共にある人物に目線を向けた。

 

リード:「俺も最初は驚いたよ」

 

ベルン:「‥‥‥」

 

リムル:「えっ!これベルンが!?」

 

ベルン:「大元は、リード様達が進化の眠りの間に考えていたのですが、それを実現させる形が思い浮かばず、リムル様の説明でやっと完成しました」

 

ベルンが俯いたまま答える。どうやら他人と話すのにはまだ慣れきれていないようだ。

 

リムル:「何言ってるんだスゴいよ!まさかそんな早くに考えていたなんて、もっと早く言ってくれも良かったんだぞ!」

 

リムルの言葉に照れて顔を赤くするベルン、親以外から褒められた事はあまりないようだ。するとガビルがベルンの手を握った。

 

ガビル:「良かったですなベルン殿!我輩も誇らしいですぞ!」

 

ベスター:「言った通りだったでしょうベルン。リムル様は君の考えを正しく評価出来るって」

 

ベルン:「伯父さん…ガビルさん…」

 

ガビル達の言葉に、ベルンの瞳から光が反射したが、それを指摘するのは野暮だな。

そんな、幸せな雰囲気が次の瞬間吹き飛んだ。

 

ヴェルドラ:「クアーーハッハッハ!それが完成すれば、我も好き放題妖気(オーラ)を解放出来るのだな!」

 

ヴェルドラのこの発言で、全員の表情が暗くなったと同時に自然義兄さんの手刀がヴェルドラの頭上に直撃した。

 

自然:「テメェ、それはフラメアに死ねって言ってるのか?アアン?

 

リムル:「はい自然落ち着け。どうどう!」

 

ベルン:「流石にヴェルドラ様やリード様クラスだと一瞬で壊れますよ」

 

荒れる自然義兄さんを、リムルがゲイツリバイブ剛烈になって抑え、ベルンは苦い表情で答える。

一方、ヴェルドラは頭を抑えていた。今の手刀けっこう本気だったな。

 

ヴェルドラ:「いや、しかし、我もそろそろ限界で…」

 

生夢:「我慢して」

 

リード:「いや、ヴェルドラの訴えはもっともだよ」

 

釈迦人:「どゆこと?」

 

俺は、義兄さん達にヴェルドラの発言の理由を教えた。

ヴェルドラや俺みたいに桁外れの魔素量を持ちつつ、オーラを抑えるのは至難の技である。ベニマルやコウホウでさ、抑えていても僅かに漏れているのがその証拠だ。

 

縁護:「ちょっと待てそういう理由なら何故聖司は平気なんだ?」

 

リード:「ヴェルドラと違って、俺はオーラの出力を調整出来るからだよ。後、魔鉱塊を作ったり、孤児院の遊び道具を作ったりして色々な形で放出して…あっ」

 

失言に気付き、後ろを見るといつの間にか変身解除した笑顔のリムルが後ろにいた。

 

リムル:「リード君、後でじっくり説明してね」

 

リード:「‥‥‥はい」

 

リムル:「それで今のヴェルドラの状態が続くとどうなるんだ?」

 

リード:「今のヴェルドラははっきり言ってパンパンになった風船のようなものだからなるべく早く解放しないと大変な事になる」

 

リムル:「なるほど…ならもう少し我慢してくれ」

 

ヴェルドラ:「良かろう。なるべく早く頼むぞ」

 

やれやれ、あっちが片付いたらこっちに新しい問題か…

時魔家当主の経験がなかったら、とっくに匙をなげてたな。

 

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

 

再び大会議室に集まり、最後はグレイドが報告であった。

 

リード:「レイヒムがまだ戻ってない?」

 

グレイド:「はい」

 

リムル:「まさか死んだんじゃ…」

 

グレイド:「ご安心をリムル様。ディアブロのスキルならレイヒムが死んだ事はすぐに察知することが出来ます。それがないということは、まだ生きておりますよ」

 

良かった。レイヒムには俺のメッセージが記録されている水晶を持たせているから何かあってすれ違いが起きたら大変な事になる。

たった3人しかいない生存者の一人であるレイヒムが西方聖教会に招集されたから、真実を伝える事になっているが、俺ははっきり言って姉さんと戦う気なんて微塵もない。だからレイヒムに水晶を持って行かせた。

あのメッセージには、俺とリムルは人類との共存を望み、姉さんと戦う気はなく、話し合いの場を設ける旨を記録してある。もちろん、向こうが戦う気なら、俺の全戦力で相手をするのも記録してある。

まあ、姉さんが竜種に覚醒魔王が二人、それと同等の人間が四人もいるこの国に戦争を起こすなんて馬鹿な事はしないと確信しているが、念のためだ。

願うなら良き隣人として、共存していきたい。

 

ホウテン:「坂口日向(ヒナタ・サカグチ)…今回も介入してくるのでしょうか?クレイマンが言っていた“あの方”という存在も気になるのですが」

 

リード:「‥‥‥その事なんだけど、本当にヒナタさんは誰かの指示で動いていたの?」

 

全員:『『『!?』』』

 

自然:「確かに、やり合って分かったけど、ありゃあ命令できる奴なんて、それこそ連中が信仰している神様くれぇだな」

 

釈迦人:「あとさ~、黒幕って一人じゃなくない?」

 

リード:「釈迦人義兄さん、どういうこと?」

 

釈迦人:「だって、クレイマンが覚醒するのをヒナタが良しとするわけないでしょう」

 

生夢:「それに、ファルムスがこの国を狙うきっかけになったのは商人が持ち込んだ魔国連邦(テンペスト)産の絹だったんでしょう?なら、それにも引っ掛かる」

 

リード:「つまり、黒幕は一人より複数とみたほうが、現実的か」

 

確かに、ファルムスがこの国を狙うきっかけになったのは商人だった。‥‥‥商人?もしその商人が俺達に敵対した国全てに通じていたら…そして、その商人がクレイマンが言っていた“あの方”とも繋がっていたとしたら、全ての出来事にも説明がつく!

俺は今考えたことを伝えると、会議室が騒がしくなっていく。

 

縁護:「なるほど。確かにそれなら、クレイマンの城で見つけた取引帳簿に東の商人の名前が無いのも合点がいく」

 

リムル:「利に聡い商人を利用すれば、俺の襲撃と町の襲撃が同時だったのも頷けるな」

 

リード:「あくまで俺の推測だから、ヒナタさんと話し合いが出来た時に聞く必要があるけどね」

 

ディアブロ:「つまり、リード様はヒナタがファルムスに介入せず、和解を選ぶということですね」

 

リード:「ああ」

 

リムル:「リード、何かあったら俺も手伝うよ」

 

リード:「いや、リムル達は祭りと和解の為の準備を頼む。義兄さん達もいるからまず大丈夫だよ」

 

リムル:「そっか。縁護、生夢、釈迦人、自然、お前達も何かあったら遠慮無く言えよ」

 

時魔兄弟:『はい/りょ』

 

リード:「それじゃあ会議はこれで終了!!」

 

俺の宣言で皆が会議室から出ていくと、俺はルベリオス方面の窓を開けて、ルベリオスを思いながら景色を見た。

 

リード:「出来ることなら戦いを選ばないで‥‥‥姉さん」

 

俺は、誰もいなくなった会議室でそう呟いた。

 

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

 

ルベリオスの首都ルーンでヒナタは部下達が待つ会議室に向かっていた。

その途中、もっとも新顔にして自身が今もっとも信頼している部下であるタロスと合流した。

 

タロス:「ヒナタ様!」

 

ヒナタ:「また寝坊、月に一度の会議なのだから遅れないようにいつも言っているでしょう」

 

タロス:「申し訳ありません。集めた情報を元に大事な資料を作成しており、先ほど終えたばかりでして…」

 

ヒナタ:「気をつけなさい」

 

タロス:「は」

 

ヒナタはタロスに注意をするが、タロスの情報はいつも会議において重要な決定を決める事が出来るものばかりなので、軽い注意をする程度であった。

 

ヒナタ:(何より、今もっとも“聖人”に近いのは彼だけなのだから)

 

ヒナタはタロスと初めて会った日の事を思い出していた。

 

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

 

それは半年ほど前、災厄級(カラミティ)の魔物の群れがルベリオス付近の小国に接近しているという報告を受けたヒナタは聖騎士団(クルセイダース)全軍を率いて向かった。

しかし、いざ到着するとその魔物の群れは既に全滅していた。口笛を吹き返り血で全身が染まり、槍を持ち剣を腰に携え石に座っている()()()()()()()()()()によって。それがタロスであった。

タロスはヒナタ達の存在に気付くと、ヒナタに接近し、ヒナタの前で跪いた。

 

タロス:「お待ちしておりましたヒナタ様」

 

ヒナタ:「‥‥‥あなたは?」

 

タロス:「私の名はタロス。タロス・ヘイムと申します」

 

ヒナタ:「これを全てあなたが?」

 

タロス:「はい」

 

ヒナタは馬からおり片膝をついて、タロスの手を握った。

 

ヒナタ:「ありがとうタロス。あなたのおかげで多くの命が救われたわ」

 

タロス:「勿体無いお言葉です」

 

ヒナタ:「何かお礼がしたいのだけど」

 

タロス:「では、私を聖騎士団(クルセイダース)に入団させてください」

 

タロスのこの言葉に、聖騎士の何人かは驚いたり、舌打ちをする者がいた。

 

ヒナタ:「‥‥‥」

 

タロス:「明日、この場で私と隊長格全員と連戦し、その結果次第で別のものをお願いします」

 

ヒナタ:「…わかったわ」

 

ヒナタはタロスと約束したその翌日、ヒナタは自身の部下であるレナード達を連れて来た。

 

アルノー:「貴様か、俺達に勝負を挑んだ馬鹿は」

 

タロス:「‥‥‥ヒナタ様、まず誰を?」

 

アルノー:「おい!」

 

聖騎士団の五大隊長筆頭の空のアルノーを無視し、タロスが相手を求めると、ヒナタはアイコンタクトを送った。

 

フリッツ:「それじゃあまず自分から」

 

聖騎士団隊長の一人、風のフリッツが降りて武器を構えると、勝負が始まった。

 

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

 

ヒナタ:(やはり、限りなく“聖人”に近いようね。あの男)

 

ヒナタは自分の予感が、的中したことに少々後悔していた。なぜなら、自分が鍛えた部下が()()、地に伏していたのだ。

まず、最初に相手にしたフリッツは、スピード勝負に負けだけでなく蹴りの一撃で倒され、次に相手をした火のギャルドだったが、槍の扱いを熟知しているのか、間合いに入り炎を出す前に顎を刈られ倒された。

水のリティスは水の上位精霊である水の聖女(ウンディーネ)を使った水の魔法で攻撃するが、タロスはそれを越える質量の水の魔法でリティスを気絶させ、地のバッカスは相性が悪く、徹底的に叩きのめされた。

最後に、アルノーとレナードが同時に相手をしたが、槍一本とスピードで圧倒し、アルノーが必殺の一撃を繰り出す前にレナードと同時に倒された。

あまりの強さにヒナタは驚いていたが、それ以上に喜んでいた。

これほどの猛者が、自分たちの味方になるということに、

 

ヒナタ:「合格よ」

 

タロス:「ありがとうございます!」

 

こうして、ヒナタに認められたタロスは例外的ではあるものの聖騎士団副団長と五人の隊長を倒したことで、タロスはもう一人の聖騎士団副団長となった。

 

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

 

会議室に入ると、既にヒナタとタロス以外全員が到着していた。

そして、ヒナタは凹の字に並ぶ机の上座に、タロスはヒナタに一番近い右側の端に座った。

 

ヒナタ:「待たせたね。それでは始めましょう」

 

ヒナタの言葉で、法皇両翼合同会議が始まった。




こうして、我が国は別の意味で忙しくなっていくのであった。
そしてヒナタ達が今後どういう対策をとるのかは、次のお話で
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