一方、ルベリオスでは“闇”のタロスが濡れ衣を着せられ、粛清されそうになるが、難なくルベリオスを脱出した。
タロス:「流石に精神的に疲れたな」
タロスは、二週間近く休まずルベリオスから自身の足で走り、遂にブルムンド王国に到着した。しかし来る途中で七曜の妨害に会い、流石に精神的な疲労が残ったため宿で休んでいた。
タロス:「それにしても、このブルムンドの発展具合、
タロスは窓から、町並みを眺める。
魔物の素材で作られた上等な武器や防具、イングラシアでしか見られない服、さらには上等な食材等、ルベリオスでも見られないものが数多くあった。
タロス:「それにしても、ラーメンまで再現させるとは…」
タロスは、夕食で食べた料理を思い出していた。
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タロス:「‥‥‥ラーメン…だと…!?」
夕方にブルムンド王国に到着したタロスは、飲食店の看板に書かれていた文字を見て驚いていた。
タロス:(日本語を使っている上に、読みやすいようにこの世界の文字と英語まで使っている)
タロスは飲食店の中に入ると賑わっており、なんとかカウンターの席に座り、メニューを見る。
タロス:(ラーメンはもちろん、餃子に炒飯まである…一体何を目指しているんだ?…おっ!良いのがあるな)
「注文が決まったが良いか?」
女性:「はい!なんでしょう?」
タロス:「このとんこつラーメンと餃子と炒飯のスペシャルセットの大盛りで頼む」
女性:「え…かしこまりました…」
タロスの注文に周りの客は注目しているが、タロスは全く気にせず料理が出るのを待つ。
そして十分経つと、料理が出された。
女性:「当店で最も量が多い、スペシャルセットの大盛りです!」
タロス:「なるほど、この量か…」
出された量は、明らかに一品だけでも三人分はあり、計九人前の量であった。
タロス:「さて明日に備えて、いただきます!」
タロスは割り箸を持って、料理を食べ始めた。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
タロス:「本当に、あそこまで再現するとはな…」
タロスは料理を完食し、ラーメンの提供元を聞き、胃も心も幸せになったあの時を思い出すと、部下からの通信が入った。
ラダマンティス:「(我が主)」
タロス:「(どうした、ラダマンティス)」
ラダマンティス:「(は、レナードが
タロス:「(やめておけ、それでは獲物が逃げる)」
ラダマンティス:「(どういう事ですか?)」
タロス:「(おそらく、魔王リード=テンペストはこの動きは、七曜が原因であると気づいているだろう)」
ラダマンティス:「(なんと!?)」
タロス:「(サーレ経由で情報が届いているはずだ。つまり、自分たちが戦うことで七曜を誘き出すつもりなのだろう)」
ラダマンティス:「(…そう上手くいきますか?)」
タロス:「(狡猾で頭が切れる連中ほど、目的達成には手段を選ばない。最悪、強引な手段を使うだろう。お前達は、ジュラの大森林に入ったら本隊から離れ、即席の転移門を作ってくれ)」
ラダマンティス:「(了解しました)」
タロスは、走りながら考えた事をラダマンティスに伝えると、ベットの上に転がった。
タロス:「最悪の場合は、ルベリオスから離れる事になるかもな」
タロスは一人呟き、眠った。
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俺は眠った筈なのに、気がつくと真っ暗な空間にいた。経験上、また予知夢だろう。
リード:「さてさて、今日は一体なんだ?」
辺りを見渡すと、一人の女性の姿が見えた。
あの人影は…まさか…
その人影が顔が見えるまで近づくと、その人は、
リード:「
呼ぶと同時に姉さんは倒れ、寸前で支えると、生暖かい感触を感じた。
リード:「…え」
俺は、おそるおそる手を見ると血で赤く染まり、体も血が大量についていた。
言わなくても分かる…これは、血、姉さんの、血
リード:「あ…ああ…アアアアアアアアーーーーーー!!!」
叫ぶと同時に周りの景色が、ガラスのように砕け散ると別の場所に変わった。
そこにいたのは、
リード:「ジオウと…鎧武…」
ジオウと鎧武が向かい合い、お互いの剣がぶつかると、そこから凄まじい光に包まれた。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
リード:「はぁ!!…はあ…はあ…はあ」
目が覚め、隣で寝ていたシュナを起こしてしまったようだ。窓の景色もまだ暗く、日が出ていない。
リード:「ゴメン、シュナ。少しリビングで───」
ベットから降りようとするが、シュナはそれよりも早く抱き締めてきた。
朱菜:「大丈夫です。ここにいるのはわたくしたちふたりだけです。だから無理に隠そうとしないでください」
シュナに言われると、涙が出てくる。
やめろ出てくるな。出てこないよう意識するが、体が言うことを聞かず流し続け、弱音を口にしてしまう。
リード:「‥‥‥怖いんだ」
朱菜:「‥‥‥」
リード:「姉さんと姉さんを慕う人たちを傷つけたくない!」
朱菜:「…リードさん」
リード:「本当に弱いな…俺…」
朱菜:「そんな事ありません。リードさんは誰よりも強くて優しいお人です」
シュナは知っている。
リードは
それはまさにリードが自身にかけた呪いでもあった。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
ジュラの大森林の街道にある宿に、ヒナタ達は一泊し、ヒナタは珍しく深く眠っていた。
しかし、その表情はどこか険しかった。
ヒナタ:「ここは…どこ?」
ヒナタは、緑豊かな広野にいた。
そして、一人の青年がおり、その者の顔を確認すると
ヒナタ:「…
ヒナタは、言葉を失った。
向こうの世界の心残りであった最愛の弟である聖司が、今自分の目の前にいる。
様々な感情がヒナタの中で動いていく。
ヒナタ:「聖司、大きくなったね!ほら、お姉ちゃんのところにおいで」
ヒナタは優しく笑い両手を広げ、聖司をいつでも抱き締めることが出来る体勢をとるが、聖司は俯いて動こうとしない。
ヒナタ:「?どうしたの聖司?ほらおいで」
ヒナタは少し焦ったが、再び優しい表情をする。しかし聖司は動かず、口を動かした。
リード:「ごめんなさい、姉さん‥‥‥幸せになって」
ヒナタ:「‥‥‥え?」
聖司はヒナタに背を向け、歩み始める。
ヒナタ:「待って聖司!」
ヒナタは、聖司を追いかけようとすると巨大な地割れが起き、ヒナタは聖司を追うことが出来なくなる。
聖司の進む先を見ると、謎の光線を聖司が防御した両腕と胸を貫き、聖司は寸のところで踏むとどまる。
ヒナタ:「聖司!」
ヒナタは名を呼ぶが、聖司は振り返りもせずいつの間にか両腕と胸が完治し、大きな剣を持っていた。
そして巨大な竜が聖司を飲み込むが、聖司は腹を切り裂いて出てくる。
そこからさらに多くの黒い影が聖司に襲いかかると、聖司は、それを全て迎え討つと凄まじい爆発が起きた。
ヒナタ:「くっ…」
ヒナタは爆発がおさまり、目を開くと聖司は、巫女の服をきた
しかし、下半身からヒビが広がり、遂には全身に広がりきる。
ヒナタ:「!?」
ヒナタは、次に起きるであろう事態がなんなのかわかってしまった。無駄だと分かっていても手を伸ばす。
そして次の瞬間、聖司は砕け散り、
ヒナタ:「せい…じ…聖司ーーーーー!!」
ここで、ヒナタは目を覚ます。
しかし、聖司を掴もうと伸ばした腕は天井に向かって伸びていた。
ヒナタ:「はぁ…はぁ…はぁ…大丈夫、アレは悪夢、ただの夢」
ヒナタは自分に言い聞かせた。
聖司はこの世界にいない。いる筈がない。そう言い聞かせ、冷静さを取り戻した。
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ジュラの大森林を疾走する、レナードは魔素濃度が低い事で七曜の言っていた事の信憑性が増していた。
レナード:(やはり、邪竜が復活したのは狂言だったのか…)
レナードは、二週間前の事を思い出していた。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
七曜:『レナードよ』
レナード:「これは七曜の皆さま」
七曜:『お前だけに知らせたい事があるのだ』
七曜:『実はな、ヒナタとタロス、魔王ヴァレンタインが繋がっておった』
七曜:『我等がヴァレンタインを始末したのだが、その時に命乞いをしながらそう漏らしおったのよ』
レナードは、タロスはともかくヒナタが自分達を騙すとも思えず、しかし、偉大なる英雄が嘘を吐くとは思っていなかった。
それが、七曜の狙いだと気づかずに、
七曜:『無論、ヴァレンタインが苦し紛れに嘘を吐いた可能性もある。だがな、それで話は終わりではないのだ』
七曜:『信じられぬが、今度は魔王リードと繋がろうとしておる気配があるのだ』
レナードは、この言葉に混乱する。
レナード:「し、しかし!ヒナタ様は誰よりも熱心なルミナス教の信徒です。それにタロスも日頃の態度に問題がありますが、ヒナタ様には絶対の恭順を示しています。神や我々を裏切るなど‥‥‥」
七曜:『そこなのだ、レナード。我等もそれに関しては疑問に思っておる』
七曜:『だが、その逆かも知れぬ。ヒナタが巧妙にタロスを操り、我等や神ルミナスを謀っておるという疑いも晴れぬのだ』
七曜:『ハッキリさせる方法も一つあるのだが‥‥‥』
レナード:「そ、その方法とは!?」
レナードは既に七曜の話術に嵌まってしまった。自身の行動が七曜に誘導されていく。
七曜:『魔王リードを討て!』
七曜:『さすれば、答えが出よう』
七曜:『ヒナタが魔王と繋がっておれば、ヒナタは死に物狂いで止めに動くであろうからな』
レナード:「し、しかし!邪竜ヴェルドラが‥‥‥」
七曜:『うろたえるな』
七曜:『邪竜は本当に復活したのか?全てが狂言であったと思えぬか?』
七曜の言葉に、レナードも思い当たる節がある。邪竜復活は法王とヒナタしか確認していないことに。
しかし、まだ、問題があることを思い出す。
レナード:「そ、それに、ヒナタ様と互角に戦えたというシゼンという人間が‥‥‥」
七曜:『そこだレナード』
七曜:『そのシゼンという者は、魔王リムルをもう一人の
七曜:『その者が、ヒナタを操っているとしたら‥‥‥』
そう言われ、レナードは思った。ヒナタを救えるのは自分しかいないと
レナード:「そうですとも。それに間違いないでしょう!ヒナタ様が裏切るなど、考えられません。ヒナタ様を利用する者がいると考えれば、貴方様方の疑いも晴れるのでは御座いませんか?」
七曜:『そうよな。それが出来れば、疑いも晴れよう』
七曜:『だが、危険な役目だぞ?』
七曜が試すように言うが、レナードの覚悟は既に決まっていた。いや、決められてしまった。
レナード:「ではその役目、この私が!!」
こうしてレナードは、ヒナタの言いつけを破り、タロスにも内密に出陣した。
しかし、この会話をタロスの部下が盗み聞いていたのは七曜すら気づいていなかった。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
それに気づいていないレナードは、騎士達に指示を出す。
レナード:「それでは、包囲作戦を開始する。各人所定の位置へ」
レナードの指示で、
生夢:『(釈迦人、自然行くよ!)』
釈迦人・自然:『(OK/ああ)』
三人は、リードが
三角柱状の巨大な結界が
そして、
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
ゲリオン:「リード様、ショウム様達が交戦を開始するようです」
リード:「…そうか」
リード:「これだけの戦闘だ。出てこないわけがない。行くよ!」
縁護・配下:『ああ!/ハハッ!』
朱菜:「御武運を!」
シュナの声に見送られ、『空間支配』で生夢
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
リムル:「そうか」
ソウエイの報告にリムルは筆を止めず仕事を進める。
この態度にベニマルは『兄』という視点から、少し不満を感じた。
紅丸:「随分と平気そうですね」
リムル:「そうか?」
紅丸:「弟分達が心配じゃないのですか!?」
リムル:「大丈夫だって、アイツらが負けるところなんて兄弟ゲンカの時くらいだから」
リムルは自信満々で答える。
何故なら、小さい時から、生夢達の成長を見ていたリムルにとって、彼らが身内以外で敗北するのはあり得ないと知っているからだ。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
あまりに大きな変化に
レナード:(気づかれていただと!?)
ギャルド:「まさか、ヒナタ様が俺達を売ったんじゃあ…」
自然:「バーーーカ!ウチの情報収集能力が優れてるからに決まってるだろ!」
聖騎士:「何者だ!」
茂みから、生夢、釈迦人、自然が現れると、
生夢:「まずは僕から名乗るね。魔王リード=テンペストの義兄にして魔王リムル=テンペストの弟分。『
釈迦人:「同じく。魔王リード=テンペストの義兄にして魔王リムル=テンペストの弟分。『
自然:「同じく。魔王リード=テンペストの義兄にして魔王リムル=テンペストの弟分。『
レナード:「三人だと!?」
ギャルド:「たった三人で勝てるつもりか!?やれ!」
ギャルドの指示で、聖騎士達が一斉に武器で攻撃を仕掛けるが、まるで聖騎士の武器を
聖騎士:「ば、バカな!」
聖騎士:「一体何をした!?」
自然:「生夢
生夢:「いいよ」
釈迦人:「殺すなよ~」
自然:「分かってる!」
ここから一方的な、戦闘いや蹂躙が始まった。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
タナトス:「なんという強さだ」
ヒュプノス:「なるほど、我が主が戦闘に反対だったのも頷けるな」
タロスの部下六名は、レナード達に気づかれず、丘の上で戦況を見ていた。
魔法で攻撃しようと、武器で攻撃しようとも魔法はかき消され、武器は素手や足で破壊されていった。
ミーノス:「しかし、あの者はどうやって武器を破壊しているのだ?」
アイアコス:「確かに、攻撃を当てたと思ったら武器の方が破壊されていたな」
パンドラ:「何かしらの魔法でしょうか?」
ラダマンティス:「
タロス:「魔法と技術の両方だ」
パンドラ達:『我が主!!』
タロスがパンドラ達が作った転移門で合流すると、パンドラ達は道を開け、戦況を確認した。
タロス:「やはり、こうなったか」
ラダマンティス:「主よ。先ほど魔法と技術の両方と言っていましたが、どういう意味ですか?」
タロス:「言葉通りだ。
タナトス:「そのような高等技術を!?」
タロス:「聖人級に覚醒すれば、『思考加速』で容易に出来る」
ヒュプノス:「つまり、それは…」
タロス:「数など、質の前には無意味だ。戦力面でも技術面でも、勝ち目は万が一、いや、億が一ありえない」
パンドラ達は、これほどの格上の相手と戦わずに済んだことに安心していた。
そして、タロスは、ここに到着した時点でリードとヒナタの存在に既に気づいていた。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
ヒナタは、腹立ちをおぼえていた。
それは、魔王リード=テンペストに対する完全な敵対行動だと受け取ってもおかしくない現状にだ。
結界の中では一人の男が、
そして結界の外には、魔王リード=テンペストの他にも四人いた。
一人はどう見ても人間、おそらくタロスの報告にいた者の一人だろう。佇まいだけで一切の隙を見せようとしない。
アルノー:「ギルドの英雄ウォズに、まさか死鳥のニクスッ!?」
フリッツ:「それに、
追いついたアルノー達は配下の魔物の存在に驚いていたが、リードのメッセージを思い出した。
リード:『もし、敵対するような行動をとり、俺がそれを判断したら、相手をしてあげますよ』
ヒナタ:(そう、貴方はそう判断したのね。数を合わせたのは、邪魔はさせないという意味かしら?)
ヒナタは覚悟を決め、リードの元へ向かった。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
リード:(あと数分ってところかな)
「思ったより早かったですね、
俺は、十数年ぶりに姉さんとある意味再会したが、本当の意味での再会は決して訪れないだろう。
だから、せめて今の俺を見てほしい。
こうして、我が魔王の芝居の戦いが始まろうとしていた。
果たして七曜達は現れるのだろうか?
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
タロス:「パンドラ、仕込みはどうなった?」
パンドラ:「は!完了しております。あとは七曜が現れれば完璧です」
タロス:「そうか…」
タロスは、目線を自然達からヒナタ達へ変えると、既に双方対面していた。
仮面の内のタロスの目は、怒りで溢れていた。
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リードの『万能空間』で、二つのウォッチが僅かに光が宿る。
まるで何かに共鳴するように、小さく光り続けていた。