転生したら天魔人だった件   作:通りすがりの気分屋

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遂に、坂口日向(ヒナタ・サカグチ)と我が魔王の戦いが始まろうとしていた。
聖騎士団(クルセイダース)とショウム様達の戦いは、有利に進み、“闇”のタロスはこの成り行きを見守っていた。
果たして、この戦いで七曜を誘き出すことは出来るのだろうか。


聖魔激突 ―義兄(あに)達の怒り―

聖騎士(ホーリーナイト)のほとんどが自然(シゼン)に倒され、残すは、“光”のレナードと“火”のギャルド、そして数名の聖騎士(ホーリーナイト)だけとなった。

 

自然:「たくっ、この程度じゃ眠気も覚めやしねぇ」

 

かすり傷一つ負わず、聖騎士団(クルセイダース)のほとんどを気絶させた自然が残念そうに言う姿にレナード達は恐怖をおぼえた。

あれだけの数を、全員一撃で気絶させただけでなく、息を僅かも乱さず欠伸までするその行動に恐怖せざるを得ない。

 

レナード:「なぜ…」

 

自然:「うん?」

 

レナード:「なぜこれ程の実力があるのに魔王の味方をする!?勇者を名乗るなら、人間の味方をするのが道理ではないのか!?」

 

自然:「‥‥‥」

 

レナード:「魔王リードと魔王リムルは二万の騎士を躊躇わずに屠った残虐な魔王!それに味方をするなど───」

 

自然:「あぁん?

 

レナードの言葉が、自然の逆鱗に触れてしまった。

自分への侮辱は気にすることはない上に、並大抵の言葉なら聞き流す事も出来る。しかし、一方的に兄貴分(リムル)義弟(リード)の暴言は、流石の自然も我慢ならない。

その証拠に自然の足場を中心に、妖気(オーラ)と闘気によってクレーターを作り出す。

 

自然:「随分と好き勝手な事をぬかすな。礼儀てってもんを叩き込んでやる

 

釈迦人(シャカト):「はーい自然そこまで!」

 

一歩歩もうとした自然の前に、生夢(ショウム)と釈迦人が立ち塞がった。

 

自然:「どけ!生夢兄貴、釈迦人兄貴

 

生夢:「そうはいかないよ」

 

釈迦人:「自然にほとんど獲物譲った俺達ケッコー暇になっちゃたんだよ?」

 

結界内では、気絶した聖騎士(ホーリーナイト)達の傷を適切に手当てをした後、釈迦人が動けないよう魔法で強化した縄で縛り、結界の端に置いていた。

それの意味に気づいた自然は、怒りの籠った目で兄たちを見る。

 

自然:「チッ!分かったよ。残りは兄貴達に譲るよ」

 

自然は結界の端に移動し、胡座をかいた。

 

生夢:「さて、貴方達の相手は僕たちです!」

 

釈迦人:「しっかり保ってよ」

 

二人の腰にゲーマドライバーが巻かれ、生夢はマキシマムマイティXガシャットを、釈迦人はガシャットギアデュアルを起動させた。

 

自然:(二人もしっかり怒ってるじゃん…)

 

自然が二人に残りを譲ったのは、生夢と釈迦人も怒っていたからである。

もし、逆らって喧嘩になったらその余波で聖騎士団(クルセイダース)の全滅は避けられない。だから自然は譲った。そんなことになれば、兄貴分と義弟にどれ程怒られることか。

 

自然:(聖司(セイジ)も性格わりぃよな。確かに生夢兄貴と釈迦人兄貴の単体での実力は俺達の中で一番劣るが、組まれると煉武(レンム)兄貴や聖司にも届き得る)

 

生夢・釈迦人:「「変身!」」

 

二人はガシャットをドライバーに装填させ、変身する。

先ほどの自然以上の蹂躙が始まった合図だ。

 

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

 

リード:「初めまして、坂口日向(ヒナタ・サカグチ)さん。一応自己紹介させてください。俺は九星魔王(エニアグラム)の一人、“時空聖魔王(タイムカオスキング)”魔王リード=テンペスト。前世では時魔兄弟六男、時魔聖司(セイジ・トキマ)と言います」

 

ヒナタ:「‥‥‥まさかそんな丁寧に紹介するなんて思わなかったわ」

 

ヒナタは、リードが想像していたよりかなり優しい者だとわかり戸惑っていた。

リードの言葉は信頼というよりも尊敬している者の声に聞こえたからだ。

 

リード:「俺はあなたを人類で最も信頼出来る人だと信じています。だから、あの戦闘が終わったらあの部隊を国に帰してください。そうすれば俺はあなたを信用します」

 

ヒナタ:「それは───」

 

アルノー:「何を言う!この状況でこちらの戦力を戻せば、ヒナタ様はどうなる?ヒナタ様を呼び出した貴様が何もしないと誰が保証出来るのだ!?」

 

俺の発言に憤慨したように叫んだのは、おそらく“空”のアルノーさんだろう。

それだけで姉さんを慕ってくれているとよく分かる。姉さんの負担を少しでも軽くさせようとしているのもだ。

だけど、やっぱり魔王の言葉を簡単には信じてくれないか…わかっていたつもりだけど正直堪えるな。

 

縁護(エンゴ):「お前、聖騎士団(クルセイダース)の隊長なのだろう?」

 

アルノー:「なんだ貴様は?」

 

縁護:「私は魔王リード=テンペストの義兄(あに)にして魔王リムル=テンペストの弟分。『先見(せんけん)』の勇者で『仮面ライダーオーズ』。時魔兄弟次男、時魔縁護(エンゴ・トキマ)だ」

 

アルノー:「貴様が…!」

 

縁護:「お前がこの会話に参加する権利などない。少し静かにしていろ」

 

アルノー:「…へぇ、そうか、よ!」

 

アルノーさんは、縁護義兄(にい)さんの制止を無視し、剣を抜く。

縁護義兄さんは、その剣を素手で受け止めた。

 

縁護:「随分と血の気が多いな。なら少し遊んでやろう」

 

縁護義兄さんは、アルノーさんが反応出来る速度で蹴りを放つと、アルノーさんは両腕で防御をし森の奥へ飛ばされた。

 

リード:「縁護義兄さん…」

 

縁護:「わかってる。殺さないようにする」

 

縁護義兄さんは、笑って森の方へ向かった。

この時、ウォズ達は気づいていたが、俺は縁護義兄さんの眉間にシワがよっていた事に気づいていなかった。

 

フリッツ:「アルノー!」

 

ウォズ:「仲間の前に自分の身を心配をしたらどうだね?」

 

黄奉(コウホウ):「十一聖人(イレブンセイント)の力を見せてもらぞ」

 

ウォズとコウホウが、“風”のフリッツさん、“地”のバッカスさんに狙いを定めると、二人もそれに察し、場所を移動する。

 

鳳天(ホウテン):「オレたちも参りましょう」

 

リティス:「ええ、そうですね」

 

ホウテンは、“水”のリティスさんと共に離れる。

これで残ったのは、俺と姉さんだけ。姉さんは持っていた剣を露にすると、落胆よりも怒りが沸いた。

 

リード:「何ですか、そのナマクラは?

 

ヒナタ:「…!!」

 

俺は『聖魔覇気』で姉さんを威圧する。はっきり言ってあの剣は、そこいらの三流剣士の手の中にある方がお似合いだ。

 

ヒナタ:(これは本気で戦った方がいいわね)

 

ヒナタもリードの怒りの理由を察し、七曜から賜った竜破聖剣(ドラゴンバスター)を投げ捨て、ルミナスより与えられた伝説級(レジェンド)の武器である月光の細剣(ムーンライト)を持ち、勇者が用いたとされる輝く鎧衣(ヨロイ)“聖霊武装”を纏った。

 

ヒナタ:「先ほどは失礼したわね。お詫びに全力で相手をするわ」

 

リード:「…え?」

 

ヒナタ:(何をそんなに驚いているの?)

 

リード:「それって、俺を『強い』って認めてくれたって捉えていいですか?」

 

ヒナタ:「?その通りよ」

 

姉さんの言葉に、俺は笑いを抑える事が出来ない。

よかった、あの七年は無駄じゃなかった。この世界に来た二年も無駄じゃなかった。俺が強くなりたいと思ったのは、守りたいものを守るためと、姉さんに褒めてほしかったからだ。

これだけでも嬉しい。だけど今の俺の強さをもっと知ってほしい、もっと褒めほしい。そんな欲求を抑えることが出来なくなっていった。

 

リード:「それじゃあ、俺も本気でいきます!」

 

俺はジオウ(ツー)ウォッチを起動させる。

 

リード:「変身!」

 

姉さん、今の俺を見て!今の俺の強さを褒めて!

 

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

 

ウォズとコウホウに、フリッツとバッカスは互いの自己紹介を終えていても今だに戦いが始まっておらず、縁護とアルノーの戦いを見ていた。

現状は、アルノーの剣技が縁護を圧倒しているように見えていた。

 

フリッツ:「やっぱり、アルノーが優勢だな」

 

ウォズ:「…マズイね」

 

黄奉:「ああ非常にマズイ。あの縁護が怒っている」

 

バッカス:「何を言っている?」

 

バッカスとフリッツは首を傾げるが、ウォズとコウホウは以前リムルから縁護達の注意点を聞かされていた。

 

リムル:『いいか?縁護の眉間にシワが寄ってるときは、怒っているって思え!その怒りは自然曰く、怒りレベル7以上のリードと同等と思え!』

 

それを聞いたホウテンが、僅かに震えていたので、相当危険なのだと全員はしっかりとおぼえていた。

 

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

 

時魔兄弟の中で、縁護は一番穏やかな性格をしている。例えるなら森林のように静な性格である。しかし、一度怒らせるとその怒りは、大地震のように激しく非情なものとなのである。

そんな縁護を怒らせたアルノー、ヒナタの負担を軽くするためとはいえ、行動を誤った。

 

アルノー:(何故だ?)

 

剣を振るうアルノーは、少しずつ少しずつ恐怖を感じていた。

 

アルノー:(何故一撃も掠りもしない!?)

 

己の全力の剣が全く通用しない。ルベリオスではヒナタとタロスを除いて聖騎士(ホーリーナイト)の中では実力はあるアルノーの剣撃を、縁護は衣服にすら掠らせず、息を乱さず避け続けていた。

 

縁護:「無駄だ。お前の動きを既に全て予測し終えている。お前程度なら最初の一太刀ですぐに動きはわかる」

 

縁護は腕を組み、最小限の動きで回避し続ける縁護の言葉がハッタリではないとすぐに理解する。

 

アルノー:「成る程、ならば受けてみるか、俺が最強の聖騎士の一人と呼ばれる由縁を」

 

アルノーの剣に、五属性の精霊の力が宿る。

そして、あらゆる魔物を一刀の下に切り捨ててきた必殺の秘剣を放つ。

 

アルノー:「その身に刻むがいい、魔を浄化する精霊の輝きを。くらえ!」

 

五色精霊剣(エーテルブレイク)!!

 

眩い五色に輝く剣閃が、縁護を襲う。

 

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

 

アルノー達の戦いを観戦していたタロスは呆れていた。

 

タロス:「全く、アイツらは人の報告を聞いていたのか?」

 

ラダマンティス:「主?」

 

タロス:「その程度の技で倒せる相手なら魔国連邦(テンペスト)と事を構えるのを反対しないわ」

 

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

 

アルノー:「ば、馬鹿な…」

 

アルノーはそう言うことしか出来なかった。自身の必殺の剣を、縁護は片手で受け止めていた。

 

縁護:「言ったはずだ、お前の動きは予測し終えている。と」

 

縁護は、指に力をこめると、アルノーの剣をへし折った。

 

縁護:「たかが五属性の精霊ごときの力で私が倒せると思っているとは、ルベリオスは随分とぬるい稽古をしているのだな」

 

縁護は、アルノーが剣に精霊の力を纏わせていた時には既に仕組みを理解し、それを越える方法を見つけていた。

 

縁護:「私は、七属性の精霊王(エレメンタルロード)の力を使えるのだからな」

 

七色精霊手(レインボーハンド)

 

縁護の指は五色に輝き、手の平では光と闇の精霊王(エレメンタルロード)の力を宿していた。

それにアルノーは驚く。

 

アルノー:「馬鹿な、それ程の力を宿せば体にもどんな影響が出るのかわからないのだぞ!?命が惜しくないのか!?」

 

縁護:「それがどうした?」

 

アルノー:「なに?」

 

縁護:「私は、あの子達の『兄』だ。聖司(あの子)が覚悟を決めて戦っていると言うのに、兄である私が自分の命惜しさで躊躇するなど、それこそ時魔の名に泥を塗る愚行!兄として恥ずべき愚行だ!」

 

縁護は消息が掴めていない兄である煉武と自分達を受けれいれてくれた兄貴分であるリムル(三上悟)の背中を一番見てきた。その背を見て抱いた感情は、安心と尊敬である。

自分もいつかは兄二人のような存在になりたいと思うようになった縁護は、持ち前の観察力と感知能力で兄たちの長所を徹底的に学習していった。

その結果、縁護は煉武のように弟達のためなら自分の命を代価にかけ、リムルみたいに優しい兄へと成長したのだ。

 

縁護:「お前と私達とでは、覚悟の次元が違うのだ!!

 

その縁護の怒りの気迫を前にアルノーは、無言で敗北を認めて膝を地につけた。

 

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

 

自然は、持ってみていたクッションで寛ぎながら、傍観していた。

 

自然:「聖騎士団(クルセイダース)は、頭のネジ足りてる?もう勝負ついたようなもんだろ。まだやるのかよ?」

 

仮面ライダーエグゼイドマキシマムゲーマーレベル99に変身した生夢と仮面ライダーパラドクスパーフェクトノックアウトゲーマーレベル99に変身した釈迦人の連携を前に、聖騎士団(クルセイダース)の攻撃は全て流されていた。

 

自然:(つーか、あの二人いつの間に時魔流武術(ぼう)の型・(きわみ)撃流操(げきりゅうそう)を体得したんだよ)

 

釈迦人:「ねー、まだやるの?」

 

生夢:「もう実力の差を認めて。お前達じゃ僕達にかすり傷を負わせることすら出来ない」

 

ギャルド:「黙れ!貴様らも魔王に与するのはやめて俺達につけ!勇者ならそれが道理のはずだ!」

 

ギャルドの怒号に、生夢達はあきれていた。

ここまでやっても、認めようとしないとなると殺さざるを得なくなる。しかしそれは、リードが傷つく可能性があるため出来ないのが現状である。

そこで釈迦人が最も手っ取り早く、相手の戦意を消失させる方法が思い浮かび、提案した。

 

釈迦人:「じゃあさ、こういう遊び(ゲーム)はしない?」

 

レナード:「ゲーム?」

 

釈迦人:「あんたらが一番強い攻撃を俺に撃つ、俺がそれでやられたらこの結界解いてあげる」

 

レナード:「その攻撃にあなたが耐えたら?」

 

釈迦人:「お前達は大人しく降伏する」

 

ギャルド:「いいぜ、その提案受けてやる」

 

ギャルドが聖騎士(ホーリーナイト)に霊力を送るよう指示を出し、レナードがそれの制御を行う。

一方、釈迦人は自身の究極能力(アルティメットスキル)遊戯之神(ヒュアキントス)』を発動させ、その力をガシャコンパラブレイガンに籠める。『遊戯之神(ヒュアキントス)』の権能は、ある意味反則であった。権能は思考加速、万能感知、無限再生、消費削減、永久維持、森羅万象、詠唱破棄、解析鑑定である。

特に消費削減と永久維持が主に使う権能であり、消費削減はどれ程魔力の消費が激しい魔法でもその減少量は、釈迦人と全魔素(エネルギー)量の1%まで抑えられ、永久維持はどんな魔法も一度発動すれば自身の意思で解除するか死ぬまでその効果は継続される。さらに聖魔の腕輪(カオスリング)によって魔素の回復が、十分間に一割と性能が向上していた。

お互い必殺の一撃の準備が整い、ギャルドの攻撃が放たれる。

 

ギャルド:「喰らえ!」

 

極炎獄霊覇(インフェルノフレイム)!!

 

炎の精霊王(エレメンタルロード)の力の一部を借り受けて行使する精霊魔法の究極の攻撃。核撃魔法熱収束砲(ニュークリアカノン)を凌ぐ熱量を持ち、霊子をそのまま利用しており、並の実力者では黒焦げになっていただろう。

そう、並の実力者なら

 

釈迦人:「レオンや原初の黄(ジョーヌ)の攻撃に比べたら、霞んで見えるね!」

 

PERFECTKNOCKOUTCRITICALBOMBER!

 

しかし、彼らが相手にしていたのは、魔王レオン・クロムウェルが一目おき、原初の黄(ジョーヌ)を相手に互角以上の勝負を繰り広げた双子の片割れ、時魔釈迦人(シャカト・トキマ)であった。

ガシャコンパラブレイガンを振るい、ギャルドの攻撃を真っ二つに切り裂いた。

 

釈迦人:「はい俺の勝ち!」

 

ギャルドは、信じられないのかうわ言のように呟くが、レナードは決断を下す。

 

レナード:「降伏する。部下達に寛大な処置を期待したい」

 

レナードの降伏宣言に生夢と釈迦人は変身を解除する。

 

生夢:「俺達はお前達と違って種族が理由で殺さないよ。だから、出来れば話し合いがしたかったんだけどね」

 

生夢の視線の先をレナードも見ると、そこには仮面ライダージオウ(ツー)に変身した魔王リードとヒナタが凄まじい速度で戦っていた。

それを見て驚いたレナードだが、何故二人が戦っているのかわかっていなかった。

 

レナード:「なぜ…なぜ、二人は戦っている?」

 

自然:「馬鹿か?軍隊率いて迎え撃たないヤツなんているか?」

 

自然の言葉に、レナードは七曜に利用された事を悟った。自分が部隊を率いたせいで、交渉不能にしたことと、ヒナタが魔国連邦(テンペスト)と友好的な交流をしていくという決定を思い出した。

レナードは顔を青ざめるが、もはや止める事は出来ない。ただ見ることしか出来ないのだ。

 

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

 

ヒナタは戸惑っていた。それは、リードの戦い方や態度ではない。自身のユニークスキル『簒奪者(コエルモノ)』が()()()()()()()事からくる戸惑いであった。

リードの実力は、本物である。魔物としての身体能力の高さに慢心することなく、達人レベルの技術を持つ。あのような大剣を片手で操り、もう片方の腕は体術で使われる。

この者は間違いなく、自身より格上であるはず、それは『簒奪者(コエルモノ)』の発動条件を満たしているはずであった。しかし、いざ発動してみると結果は『対象外』、しかも『強制簒奪』まで全く反応しないのである。

 

ヒナタ:(こんな事は初めてよ。けどだからといって戦いをやめてとは言えないわね)

 

勝算のない戦いのはずであるのに、ヒナタの心は高揚を感じ、小さく笑った。それはリードも同じであった。

 

リード:(未来を視て数秒以内に攻撃が飛んでくる!姉さんでこのレベルなら、もし煉武義兄さんが相手ならキツいな)

 

姉さんの戦い方は、極端に言えばフェンシングのような刺突を放ってくる。

この世界で十数年も戦ってきたんだ。当然と言えば当然か。

縁護義兄さん達も聖騎士団(クルセイダース)の主力に勝利し、集まってくる。

姉さんもそれに気づき、攻撃がおさまる

 

ヒナタ:「ねえ、リード君提案があるのだけど?」

 

リード:「なんですか?」

 

ヒナタ:「次の一撃で決着をつけましょう。私の奥義を全力で仕掛けるわ」

 

リード:「それに耐えたら俺の勝ち、耐えられなかったら俺の負けということですか?」

 

ヒナタ:「ええ、そうね」

 

リード:「すいませんが、奥義勝負に変更出来ませんか?俺の全てをあなたに見せたいです」

 

ヒナタ:「…良いわよ、この技はとても危険だからそれで相殺出来るならかまわないわ」

 

姉さんからの許可を貰うと、俺は『光明之王(バルドル)』と『闇黒之王(エレボス)』を限界まで同時解放をする。

進化したことで、凄まじく強化されたこの二つの究極能力(アルティメットスキル)は、片方だけなら全開は可能なのだが、同時に解放すると『知恵之王(ラファエル)』の権能をフルで行使しても両腕までが限界だった。

そして、俺の両腕は光と闇が混ざりあったような腕に変わると、両手でサイキョージカンギレードを持つ。すると刀身が元々の輝きに更に二色の輝きが加わる。

姉さんは、左手で霊子崩壊(ディスインテグレーション)の力を収束させ、左手で刀身を撫でるようにして、細剣に纏わせる。

 

ヒナタ:「覚悟はいい?」

 

リード:「そちらも、気をつけてください」

 

静かに全員が見守るなか、俺は呼吸を整える。

そして、お互いの剣技を繰り出す。

 

崩魔霊子斬(メルトスラッシュ)!!

 

聖魔崩滅斬(カオススラッシュ)!!

 

 

俺たちの技の勝負は俺が勝った。

まだまだ戦う力は残っているが、精神的に限界だった。それに姉さんはもう戦う力は残っていないはずだ。

 

ヒナタ:「ふふふっ、あははははっ!」

 

すると、姉さんが笑い出した。

 

ヒナタ:「凄いね、あんな技を使えるなんて。私の負けよ」

 

姉さんが、優しい笑顔で褒めてくれた。これだけで、俺は充分に心が満たされた。泣きそうになるが、なんとか涙を抑える。

その時、最悪の未来が視え、直後に姉さんが捨てた大剣が光だした。

 

リード:(あんな思いはもうしたくない!!)

 

ヒナタ:「しまった!ここまでするのか、七曜ーーッ!?」

 

姉さんが動くより先に、俺は姉さんを縁護義兄さんのところまで突き飛ばす。

そして、閃光が防御した腕ごと俺の胸を貫いた。

 

時魔兄弟:『聖司ーーーーーッ!!

 

リードは強制変身解除され、崩れ落ちた。




こうした決着したかに思えた戦いに我が魔王は、ヒナタを守って倒れた。
この落とし前はきっちりつけと貰わないとね。

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

智恵之王(ラファエル):『告。リード=テンペストが重傷を負いました』

リムル:「なんだって!?」

智恵之王(ラファエル)先生から突然の報告に俺は立ち上がり、『思念伝達』を使って召集をかけた。

リムル:「(ベニマル、シオン、ソウエイ、ハクロウ、ガビル、シズさん!今すぐ俺の執務室に集合してくれ、リードがヤバい!)」

紅丸(ベニマル)達・シズ:「(!?ハハッ!!/わかった!!)」

リムル:(少しの間耐えてくれリード!)

リムルは、リードの身を案じた。それは、相棒としてではなく、兄貴分としての心配であった。

      ⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫

丘の上で見ていたパンドラ達は、驚きを隠せずにいた。突然のことでまだ状況を理解していなかったようだ。
しかし、“闇”のタロスは違った。
全てを瞬時に理解し、堪忍袋の緒が切れたのであった。

タロス:「七曜ーーーー!!

タロスが怒りは凄まじく、自身にかけていた()()()()()を強制解除されると、あまりにも強大すぎる力に仮面にヒビが入る。

パンドラ:「あ、主?」

タロス:「もういい…」

パンドラ達:『え?』

タロス:「“闇”のタロスはここまでだ!!」

タロスの肉体が膨れ上がり、聖騎士団(クルセイダース)外套(コート)が破れ散る。
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