一方ファルムス王国ではエドマリスとヨウム殿が賠償金の着服をでっち上げられ、エドワルド王が軍を率いていた。それはグレイド達の戦いが始まろうとしていた事を意味する。
二ドル領にて布陣していた本陣で新王エドワルドと
エドワルド:「ですからサーレ殿!何度も言いますがこちらには証拠がある!あの悪魔達もこの証拠があっては言い逃れは出来るはずのない!」
サーレ:「そんなの証拠として弱すぎる!魔王リードの武力は本物だ!それを敵に回すなんて馬鹿げてる!」
エドワルドは、三武仙の一人“荒波”グレンダが持ってきた証拠で悪魔を問い詰める気でいたが、サーレは証拠として弱く、それで問いつめるのは不可能であり、今すぐ敵対行動はやめるべきだと主張してくる。
エドワルド:(一体何をそんなに怯える?こちらにはそなた達三武仙を含めた
エドワルドの疑問は自然な考えであった。
この世界の強さを理解出来ない者にとってこの考えになるのは仕方がないこと、それを利用されているとも気づかず。
エドワルド:「ともかく!貴殿達は指示があるまで待機だ!」
エドワルドが、そう言って天幕の中に入っていった。
サーレ:「‥‥‥くそっ!」
(今ならタロスの気持ちが少しわかるよ。話を聞かないヤツって本当にイライラする)
サーレは、悪態をつくが事態はどんどん悪化していく。このままではルベリオスと
グレゴリー:「おいサーレ、何をそんなにビビってるんだ?」
サーレ:「グレゴリー…」
グレゴリー:「サーレお前一体どうした?ここ数年のお前の言動はかなりおかしいぞ」
サーレの相棒と言ってもいい“巨岩”のグレゴリーの指摘に言葉がつまる。確かに十年前の自分なら、テンペストと事を構える事をよしとしていただろう。
しかし、レミンとの出会いがサーレを変えたのだ。
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十年前、ルベリオス付近の廃墟で夜になると
そして、深夜になるとローブを被った者が現れる。
サーレ:(
いつでも、サーレは攻撃が出来るよう剣を構え顔を確認するまで待った。
そして、ローブから顔が見えると、
サーレ:(!?)
その者のあまりの美しさに、サーレは手が剣から離れる。透明感のある髪に、赤と金の
そして、レミンが廃墟をしばらく眺めるとその瞳に涙が浮かんでいき、両手で顔をおさえ、地面に崩れる。
そして、おさえていた手の隙間から雫が零れ落ちていく。
レミン:「お父様…伯母様…みんな…どこにいるの?」
サーレ:(‥‥‥っ)
サーレがレミンに近づこうとするが、足下の石ころを蹴ってしまい、その音でレミンに気づかれてしまった。
レミン:「‥‥‥!?」
サーレ:「待ってくれ!君に危害は加えない、約束する!だから逃げないでくれ!」
レミンがサーレの姿を確認して逃げようとすると、サーレは持っていた剣を捨てて、危害を加えない事を証明させる。しかし、レミンは警戒して近づこうとせず距離をおく。
サーレ:「…今度の満月の時、また来てくれ!その時は武器を持たずに来る!」
レミン:「…気が向いたらね」
レミンはそう言って、サーレの前から姿を消す。
サーレはレミンのあの美しさを忘れることが出来なかった。
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それから半月が経ち、満月の夜にサーレは武器を持たずに廃墟に来ていた。
サーレ:(…あの涙…)
サーレは、レミンの涙を思い出す。
サーレ:(…ルミナス教に背いたとしても、あの涙は、止めたい)
レミン:「あきれた…本当に武器を持たずに来るなんて」
レミンの声が聞こえ、振り向くと、バスケットを持ったレミンがそこにいた。
本当に来てくるとは思わず驚くサーレだったが、レミンは有言実行したサーレにバスケットの中にあったサンドイッチを手渡す。
レミン:「
サーレ:「…ありがとう」
その日から、二人の交流が始まった。
そしてやがて二人は恋人同士になり、サーレはルミナス教より大切な存在を得たのである。
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しかし、その事実を周りの者に気づかれてはいけないことはサーレ自身良くわかっていた。
サーレ:「…無駄な戦いを避けようとしているだけだ」
グレゴリー:「そうかい、俺は先に行ってるぜ」
サーレは適当にグレゴリーを誤魔化すと、グレゴリーは、兵を率いてヨウム達のもとへ進軍する。
そしてその様子を上空で見ていた者達がいた。
グレイド:「ふむ、あの大男が
ディアブロ:「そのようですね」
グレイド:「(ダイロス聞こえるか?)」
ダイロス:「(なんだいグレイド?)」
グレイド:「(三武仙の一人が部隊を率いてそっちに向かった相手を頼む)」
ダイロス:「(ようやく僕にも戦う機会が来たね。まかせといて)」
グレイド:「ディアブロ、俺達も行くぞ‥‥‥ディアブロ?」
ディアブロ:「はっ!はい兄上!」
グレイド:「…大丈夫か?」
ディアブロ:「問題ありません。いつでも行けます」
グレイド:「…そうか」
グレイドは心配そうにディアブロの返事を聞くが、ディアブロの内心は穏やかでなかった。
ディアブロ:(リムル様とグレイドの兄上に褒めてほしい一心で様々な仕事をした。今回だって原因は私である筈なのに、兄上は全ての責任を負った。それで兄上がこの任務から外れていたかもしれないというのに…)
ディアブロは、自分が兄貴分であるグレイドに守られたことに激しく怒っていた。
主であるリムルから、帰っていいと言われた時は、グレイドの説教並の絶望を感じ、そして今度はグレイドと共に仕事が出来なくなるという恐怖を感じさせた者達への激しい怒りであった。
ディアブロ:(必ずこの報い受けていただきますよ)
グレイド:(今日のディアブロは少し変だな…この件が終わったら一杯やるか…)
二人は全く別の事を考えながら、飛翔していった。
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グレイドとディアブロが舞い降りると、ディアブロは優雅に挨拶をした。
ディアブロ:「初めまして皆様。エドワルド王にはお久しぶり、ですかね。私の名前はディアブロと申します。そして後ろにいるのは私の兄貴分であるグレイド」
騎士団長:「散開!警戒態勢を取れ!エドワルド王をお守りしろ!」
ディアブロの挨拶が終えるのを待たず、騎士団長の命令でディアブロとグレイドを包囲する。
その騒ぎを聞き、報道陣が近づいてくるとグレイドが『結界』を張った。
エドワルド:「これはこれは、魔王リムルと魔王リードの使者殿でしたか。本日はどのような要件なのですかな?」
グレイド:「要件は一つ。俺達はお前達に警告しに来た」
エドワルド:「警告?それはどのような?」
グレイド:「今すぐ兵を退かせ、ヨウム殿と和解しろ。そうすれば、知るべきではない恐怖を味あわずに済む」
グレイドは、エドワルドがこの要件を応じるとは思っていない。人間の愚かな部分を最もよく知るグレイドだからこそ、この要件を言ったのだ。
エドワルド:「ははは、これは異な事を申すものよ。これは我が国の問題。悪魔達に言われる筋合いはない。しかし、余も騙されておったわ!」
ディアブロ:「と、言いますと?」
エドワルド:「フンッ、白々しい!兄上、いやエドマリスや詐欺師連中と共謀し、我が国から二重の賠償金をせしめようとしたのであろう?そんな姑息な企みなど、全てお見通しよ!」
グレイド・ディアブロ:「「‥‥‥」」
エドワルド:「言葉もないか?魔王と名乗ったところで、リムルとリードとやらもそこが知れておるようじゃ。魔王リムルは金に汚く、魔王リードは獣のように血に飢えているようじゃな」
グレイド:「…チッ!」
ディアブロ・レイン:「「!!??」」
エドワルドのこの言葉に最初に反応したのはグレイドであった。
しかも、グレイドが反応した際に舌打ちをした。ディアブロや記者に成りすましていたレインが、この行動の意味を最も理解している。
グレイドが舌打ちをする、これは本気で怒らせた時の合図というグレイド以外の原初全員の常識であった。
グレイドを本気で怒らせるのはあのギィですらやらない。
それだけ本気で怒らせたグレイドの相手は、原初達にとって避けたいことなのである。
エドワルド:「しかし、残念だったな。大司教レイヒム殿を口封じに殺したようだが、彼の言葉はここにちゃんと記録されておる!!」
エドワルドは自身の大きな過ちに気づかず、水晶球を掲げ、報道陣にも良く見えるように翳して見せた。
レイヒム:『裏切るつもりなどなかったのです!お許しを、お許し下され!』
映像の中で叫ぶレイヒム。誰が見ても、殺される直前と思われる映像であった。
グレイド:「おい、今のどこが証拠だ?」
エドワルド:「わからんか?これはな、そこのグレンダ殿が持って来てくれたのだよ。貴様達がルベリオスに潜入して、レイヒム殿を殺したのだろう?レイヒム殿を脅して安心しておったのだろうが、彼の信心深さが貴様への恐怖を上回ったのだ!」
エドワルドは、報道陣の前で威厳を見せようとする。
一方、ディアブロはグレイドの行動に心配していた。ここでグレイドが暴走してしまったら、ディアブロにとって一番危険な事態へ繋がってしまうからだ。
グレイド:「そうか、良くわかった」
エドワルド:「ふん!認める───」
グレイド:「貴様が低能であるということにな!」
エドワルド:「なに!?」
グレイドが、自身の専用神器である『
ディアブロ:「落ち着いてくださいグレイドの兄上!」
グレイド:「退けディアブロ」
ディアブロ:「ここは私に任せてください!兄上が戦っては死人が出てしまいます!そうなってはリード様とシュナ様の期待に裏切ることになってしまいますよ!」
ディアブロの言葉にグレイドの怒りが僅かに弱まるのを感じとるディアブロ。もう一押しと感じ、グレイドの説得を試みる。
ディアブロ:「もしそうなってしまったら、最悪兄上が精神世界に強制送還されます!ここは私に任せて、兄上は少し落ち着いてください!」
グレイド:「…しくじるなよ」
グレイドが後方に下がると、ディアブロとレインは安堵の息を吐く。
そしてエドワルドは、好機と見て指示を出す。
エドワルド:「そいつを殺せ!
しかし、彼らはそれなりの経験があった。そこから慢心が生まれてしまっていた。
ディアブロ:「準備は終わりましたか?なら開始の合図をお願いします」
グレイド:(確かに、若い
眩い雷光がディアブロに直撃する。
これにはエドワルドも安堵した。
グレイド:「成る程、魔素を介さない自然の雷を利用するのか…」
グレイド:「ああいつでもいいぞ。ディアブロを倒したらな…」
ディアブロ:「クフフフ、貧弱。余りにも貧弱過ぎますね」
ディアブロは、
グレイド:「簡単だ。俺達は自然影響の耐性が強くてな。お前達の攻撃が弱すぎたってことだ。ディアブロ早く終わらせろ」
ディアブロ:「わかりました。それでは、少し兄上に良いところを見せるとしましょう」
そう言って、ディアブロは抑えていた
しかし、その光景は、記者に成りすましていたレイン以外の記者は気づいていなかった。
ディアブロ:「おやおや?
グレイド:「全く、ギィのヤツは大分人類を甘やかしているのだな。手加減している
この時、グレイドの言葉に
先ほど、グレイドがギィを呼び捨てにし、目の前の悪魔をディアブロではなく、
悪魔の厳しい上下関係ゆえに、魔王ギィ・クリムゾンをそのように呼ぶのは、いくら悪魔でも決して許されない。
グレイド:「しかも、東は確か
この言葉で、リーダーは悟った。悟ってしまった。
そして、先ほどのグレイドとディアブロのやり取りを思い出すと、心の中で絶叫した。
この大柄の悪魔は、あの最強の悪魔である
そして、見栄を捨てディアブロとグレイドに懇願する。
グレイド:「なら邪魔者共と共に結界にいろ。本当に命が惜しいのならな」
ディアブロ:「よろしいのですか?」
グレイド:「雑魚の相手に無駄に消費したくないだけだ。さて、ここにサーレと言うヤツはいるか?」
その間、グレイドはサーレを名指しで呼ぶ。
サーレ:「僕がサーレだ」
サーレがグレイドの側に近づくと、グレイドはサーレを見下ろす。
グレイド:「そうか、お前がサーレか…」
グレイドは、サーレの肩を掴むと、自身とサーレを結界に閉じ込めた。
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進軍していたグレゴリーとその軍勢は、赤い鎧を纏った戦士、仮面ライダードライブタイプデットヒートに変身したダイロスの率いる軍勢に大敗していた。
しかし、大敗と言ってもダイロスがグレゴリーを圧倒し、他の兵は撤退させただけで死者は出ていない。
ダイロス:「全く、ギィはどんな手ぬるい芝居をしているんだい?数千年前はもっと手応えのある人間はごまんといたのに」
ダイロスは、気絶したグレゴリーの上に座る。
ストレス解消出来ると期待していたが、グレゴリーの『万物不動』の扱いに失望したダイロスは、一瞬でグレゴリーをノックダウンさせたのだ。
ダイロス:「まあ、後はティアノが黒幕である七曜を見つければいいけどね」
ダイロスは、グレイドとディアブロのいる方角を眺め、報告を待っていた。
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ディアブロは、グレイドとサーレが出てくるまで待機していた。
グレンダという者も、サーレが結界に閉じ込めたと同時に逃走したため、暇になってしまったのだ。
ディアブロ:(まあ、兄上に何かあるなんて事はありえませんね)
「兄上が出てくるまで私が相手をしてあげますよ」
ディアブロがそう言うと空間が歪み、三人の賢人といわれている七曜が現れた。
そして、彼らが来た目的をディアブロは既に察している。
ディアブロ:「証拠隠滅出来るといいですね」
ディアブロがそう言うと、七曜は巨大な火球、核撃魔法
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ヒナタを庇い、腕を吹き飛ばされ胸を貫かれたリードに生夢は慌てて駆け寄る。
釈迦人:「生夢!聖司は!?」
生夢:「出血がマズい!自然は両腕の止血を頼む!」
自然:「わかった!」
自然は、生夢から包帯を受け取ると、リードの両腕を強く包む。
コウホウとウォズ、ホウテンは見守る事しか出来なかった。
その光景を見て、ヒナタはある疑問を抱いた。
ヒナタ:「なんで回復魔法を使わないの?」
縁護:「使わないんじゃない。使えないないんだ」
ヒナタ:「えっ?」
縁護:「あの子は力を使うと、細胞が攻撃的になって、外側からのあらゆる要素を弱体化または無効化してしまう。つまり、外側からの回復はほとんど期待出来ないんだ!」
アルノー:「だったら自身で再生を───」
縁護:「それが出来るならとっくにやっている!!おそらく精神面でなにか問題があるのだろう!」
縁護達も、リードの傍に駆け寄る。生夢は自分が使える手段を試しているが、まるで効果がなかった。それが生夢の心に絶望を与える。
生夢:(どうすればいい!?このまま出血が続けば聖司は‥‥‥助けて…
リムル:「リード…」
声が聞こえた方を見ると、ベニマル達を連れて『空間転移』で来たリムルがいた。
生夢:「三上さん…聖司が…」
生夢は、泣きそうな目でリムルを呼ぶ。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
リムル:(待ってろリード。お前は絶対に死なせない!)
リードが『無限再生』で再生させないことに疑問を抱いたが、俺はそんな疑問を頭の片隅に押し込めリードの傍に寄る。
シズさんはヒナタとなにやら話しているようだった。
リムル:「生夢、胸の止血は俺がやる。任せろ」
生夢:「三上さん…」
リムル:(もしお前を死なせたら、
生夢を退かして、俺は腕の擬態を解き、リードの胸に敷き詰める。
リムル:(クソ!)
俺は諦めず、自身の細胞をリードの細胞に擬態させ、移植させようとするが、俺の魔素に反応して打ち消されてしまう。
他に手はないかと考えると、ヒナタがリードの胸に両手をかざす。
リムル:(?)
ヒナタ:「絶対に死なせない」
リムル:(マジか!?)
「いいぞヒナタ!そのまま続けてくれ!」
ヒナタの回復によってリードの傷が治っていき、希望が見えると、空間が歪むのを感知した。
縁護も既に気づいていたようで、いつでも変身出来ると準備をしていた。
そして、空間の歪みから謎の二人が現れた。
七曜:『魔王リムルよ、お初にお目にかかります。我等は、“七曜の老師”と申す者。此度は命令違反を行ったヒナタ・サカグチを始末しに参りました』
と、ソイツらは抜け抜けと言い放ったのだ。
こうして七曜を誘き寄せることには成功したが、我が魔王はいまだ復活していないという危機的状況であった。
⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫
ルベリオスの大聖堂に転移魔方陣が現れると、ティアノがそこから現れた。
ティアノ:「さて、残りの七曜はどこにいるのかしら?それと私の拠点を勝手に再利用したヤツって一体どんな命知らずなのかしらね?」
ティアノは、怒りを纏った笑みを浮かべて、大聖堂の奥へと向かっていった。