趣味のそれ   作:ずんだサーキュラー

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箱、トレーナー、ウマ娘と。

──この世界は、ウマ娘という生物が存在する。

人間と共に喰らい、狩り、創り、生きてきた種族。

それは社会にも浸透していて、街でウマ娘を見かけることも少なくない。

そんなウマ娘は、人間と違って桁違いの身体能力がある。

その能力を活かしたのがウマ娘レースなるもの。

ウマ娘同士を走らせ、競わせ、成長させる。

人に夢を与える場合もあれば絶望を与える場合もある。

それがこの世界のレースというもの。

そしてウマ娘は、人間にはない耳と尻尾と…

異世界で活躍した馬なるものの名前を継いでくる。

 

前置きが長くなったが、俺は中央のトレセン学園で働くトレーナーだ。

今まで数々のG1ウマ娘を育ててきた、いわゆるベテラントレーナーというやつ。

俺は学園内でも一二を争う実力を持っている。

例えば、ゴールドシップ。彼女は少し… いや、とても気性が荒い。

しかしその彼女をやる気にさせて幾多のG1を勝たせたのも俺だ。

 

そんな俺だが、今とてもヤバい事になってる。

 

「…ここ、どこだ?」

 

全く知らない白い部屋… というより箱と言った方が正しいか。

家具も電化製品も何も無い。あるのはそこにあるスマホだけ。

俺は咄嗟に手に取り、状況を確認しようとする。

スマホを起動すると、画面に文字が表示された。

 

︎︎『ニセモノ』

 

(…ニセモノ?いったいどういう)

 

俺が考える間もなく、箱が動き出した。

側面の1つの箱が横にスライドして、別の箱の中が見えた。

 

(なんだこれ…!?)

 

そこには横たわっていたナリタタイシンがいた。

俺の教え子で、皐月賞を勝ったG1ウマ娘だ。

だが2人いる。何故か制服のままだ。

 

俺は混乱して、どうすればいいか分からずにいた。

そうしているうちに、片方のタイシンが起きる。

 

「ん…あ、え?トレーナー?」

「タイシン… なの… か?」

 

俺はそのタイシンが本物かどうか確認する。

 

「気持ち悪… てかここどこ?」

 

タイシンもようやくこの状況の異常さに気付いたか…

 

「ひゃあ!?」

 

どうやらもう片方に気付いたらしい。可愛い声だ。

 

「え…?誰?」

 

もう片方も起きた。脳がパンクしそうだ。

ひとまず話を聞くとするか?いや、そんな状態じゃないか

 

「ちょ、トレーナー!どういうこと!?なんでアタシがいるの!?」

「ここどこ!?アタシがもう1人いるのはなんで!?」

 

「あー、ステイステイ。俺もよくわからねぇ。」

ここは安直に。

 

「まず状況整理だ。俺たちは何故か白い箱の中にいて、タイシンは2人いる。俺は自分の部室でトレーニングメニューを作っている所までしか覚えていない」

「アタシはチケットとハヤヒデと一緒にカラオケに行ってた。」

「アタシは寮に居た。クリークさんがご飯作ってあげる約束だって。」

 

…全く読めん。誰がどんな目的でここに入れたのか。

なんでタイシンが2人いるのか。

 

ここからはタイシン達から聞くしかない、か…

 

「タイシン」

「「何?」」

そうか…タイシンは2人いるんだった

 

ん…?待てよ、タイシンが2人いるって…

かわいいが純粋に2倍になるのでは?

タイシンを2倍可愛がれるチャンスじゃないのか?

…いやいや、ダメだ、やっぱり混乱してる

 

「ひとまず、アタシが2人いるなんて考えられない。」

「アタシも。どっちかが偽物…とかじゃないと信じられない」

偽物…?そういえばさっき…

 

俺はスマホを探し、画面を見る。

やはり、『ニセモノ』と不気味な字体で書いてある。

じゃあ、本当にどっちかが偽物なのか?

 

「は?そっちが偽物でしょ。もう決まりじゃん。」

「ムカつく…!アタシが本物なんだからそっちが偽物でしょ…!?」

 

おっとこれは…まずいことになった。

ウマ娘のパワーで喧嘩なんてされたら人間の俺に止めれる気がしない。

 

「無益な争いはひとまずやめよう。それをしてここを出れるか?」

「「…わかった」」

 

本物かどうかは… 本人以外にはこの中で俺が1番よく知ってるな。

これでも学園内上位のトレーナーなんだ、俺は絶対に当てる

それじゃあ確かめていくか。まずは筋肉だ。

タイシンは筋肉というか全体的に細い。

だがそれでも無いという訳ではない。

むしろ、少ないからこそその多少の違いもわかるというもの…!

 

「早く起きた方のタイシン、ちょっとこっちに来てくれないか」

「わかった。」

よし、誘導は成功だ

次が難所だぞ…

「筋肉を触らせて貰えないか?本物かどうか確かめたいんだ」

「はい。」

 

タイシンは快く腕を差し出してくれた。

それからしばらくずっと腕を触っていたが、別に普通だ。

普通のタイシン。いつも通りの。

 

 

それから、もう片方も触ったが前のタイシンとは変化なし。どういうことだ

全く同じ?偽物なんてない?クソ、教え子を疑うのは辛いな…

 

ただ…早く起きた方は触られてる時少し笑っていた…

もう片方はどことなく落ち着いていたのに…

 

あ、アレは───

「トレーナー!いい加減決めてよ!」

「どっちが本物でどっちが偽物か!」

 

2人のタイシンが俺の思考を遮るかのように叫ぶ。

そうか、時間制限があるって可能性もあるのか

ニセモノ…ニセモノ…偽物ってなんだ…?

少し違ったら偽物なのか?

また混乱してしまう…

…ん?待てよ…?

 

 

答えは決まった。

 

 

「本物は…」

「「ゴクリ…」」

 

「ここには居ない!お前たちはどっちも偽物だ!」

「「え!?」」

「お前らが本物のタイシンなら、デビューから今の今まで、ずっと一緒に頑張って来たはずなんだ!」

「コミュ障気味のタイシンでも俺が考えてる間、ましてや見知らぬ白い箱の中という不安の最中で話しかけないはずはない!」

 

…どうだ!?

俺は白い箱の中に叫んだ。

すると突然、理事長の声がする

「感動ッ!ウマ娘との絆、今ここに感じたぞッ!」

そうすると、いきなり視界が明るくなり───

 

 

気付けばそこはVRウマレーターの中だった。

 

全部理事長の仕業だったのだ。

 

理事長によると、最近タイシンと疎遠になっているように見えたからこの計画を実行したらしい。

俺は自分のトレーナーとしての自覚を改めさせられた。

 

そうこうしているうちに、タイシンもVRウマレーターから出てきた。

 

タイシンも俺と同じ試練だったようだ。もちろんタイシンもクリアできたらしい。

 

 

「俺はタイシンの… ウマ娘、ナリタタイシンの担当トレーナーになれて幸せだ。」

「…ばーか。」

 




初投稿です〜 文書書くのが下手っぴなのは許して♡
っていうか♡って記号、水マルの固有以外で見る機会ねーな
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