趣味のそれ   作:ずんだサーキュラー

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正しく舵を切れた世界線の黄金の不沈艦

ゴルシのやつ、今日はしっかり来てくれるかな…

今日はトレーニング。ちゃんとやってくれるといいが…

お、来たぞ

 

「ゴルシ!早速トレーニングなんだが…」

 

はぁー…いっつもここで理由つけられてサボられる。

今回もどうせ

『ライスのライスをついてモチシャワーにしてくるぜ!』

とかよくわかんない事言い出すんだろうな…

 

「はい、トレーナーさん。芝コースの走り込みですよね」

「はぁ… またそうやって変なこt」

「エ"ッ"!?」

 

おかしい。おかしい。何だ今の口調。

俺はゴルシ(?)の顔を覗き込み、確認する。

ゴルシだ。髪飾りも耳あてもゴルシと変わらない。

いや、ゴルシの事だ。俺をからかってるんだろう。

そう心の中で言い聞かせ、『それ』がゴルシだと認識しようと試みる。

 

「トレーナーさん?どうかされましたか?」

 

「い、いや、な、なん、なんでもないよ」

 

これでもかってくらい動揺してしまった。

オーラというか雰囲気というかなんというか…

口調だけじゃない。見た目以外は何もかも違う。

やっぱりおかしい… 誰なんだこのウマ娘は?

 

「そうですか。では… 走り込み、やってきますね」

「あ、ああ。ししっかりやれよ…!」

 

今、ほぼ確信に変わった。あれはゴルシじゃない。

ゴルシの皮を被った『ナニカ』だ。

ゴルシの悪ふざけならもうとっくに元に戻ってるはずだ。

それが戻ってない… 現に「いつも通り」に戻ってないんだ

前までのゴルシは何しでかすか分からなくて不安だった。

でも今のゴルシはそれ以上に不安だ。

人格が変わる?聞いたことがない。どうして?

 

少々吐き気がしながらもトレーニングは進んでいった。

何か起こるわけでもなく、『それ』はトレーニングを終えて寮に帰っていった。

少し気になりながら、『それ』の後をつける。

一応、ボイスレコーダーでも録音を開始しておく。

寮の前まで来たところで『それ』と目が合った。やばい。

 

「トレーナーさん?こんな所でどうしたんですか?」

 

「いや、ちょっと、ソノ…」

言葉がうまく紡げない。頭がパニック状態だ。

 

「もしかして私に何か用が?」

 

「そ、そうそう!そう… なんだけど」

なんて誤魔化せばいいか… そうだ、ここは思い切って

 

「ちょっとこんがらがっちゃって…名前を聞いても?」

 

「私はゴールドシップ、ウマ娘です。」

 

あああああああああ!!!!!

ダメだ… 同じ名前のウマ娘はいない…

ゴルシのそっくりさんと勘違いしてたって線は消えた…

 

「これでいいですか?では。」

 

「あ、うん… ありがとう」

もう、どうしたらいいか…

でも録音しておいてよかった。一応収穫はアリだ。

うぅ… 『あれ』から戻らなかったらどうしよう…

なんだかんだいって前のゴルシでも楽しかったのに…

それに… レースに支障がないか心配でならない。

とりあえず今回は帰るか…

トレーナー寮へと歩きはじめる… 栗東寮を後にして。

 

今日はうまく眠れなかった。

夢の中で前のゴルシに追い回された…

それだけ前のゴルシに対して愛着があったのか…

…さて、今日は俺も『あれ』も休みだな。

これを機に少し『あれ』について調べてみるか。

俺は双眼鏡とスマホを手に取りトレセン学園へ足を運ぶ。

 

ゴルシは… いつもはトレーナー室にいるけど、休日は出かけることが多いんだったよな。

いや、厳密には今のゴルシはあのゴルシじゃないから…

ああああ頭がこんがらがる!どこに居んだよ!

頭を抱えているとそこに───

 

「あの〜、ゴルシのトレーナーさん?」

 

…ん?この声は… ジョーダンか!

ジョーダンといえば、ゴルシがよくちょっかいを出してるのを見かけるな。

いつも構って貰っててありがたい所ではあるんだが…

 

「…ゴルシ、どうしちゃったんです?」

 

不安そうな声で問いかけられる。

そんなの俺が知りたいよ!と言いたいところだが…

どうする?ここは話すべきか?

…うん、秘密にしておこう。前のゴルシが復活した時に悪いだろうし

 

「ん?なんのこと?」

必殺、しらを切る作戦。

 

「ちょちょ、担当トレーナーさんでさえ知らないワケ?」

 

「何のことかわからないが、それよりゴルシを見なかったか?探してるんだ」

ここはちょっと強引に…

 

「え、ゴルシならさっきそっちで会いましたケド…」

 

そっちは… カフェテリア方面か!

 

「ありがとう!それじゃ!」

ごめん、ジョーダン!その質問は後で答えてやる!

 

「ちょい、トレーナーさん!?」

 

急ぎ足でカフェテリアの方に向かう。

大事になる前に何とかしなければ…!

 

いた!ゴルシ(?)発見!

カフェテリアに向かってるな… 追うか。

柱に隠れながら後を追う。

 

…ん?あれはメジロマックイーンか!

いつもよくゴルシと仲良くしてるのを見かけるが…

あ、やっぱり驚いてる… やっぱりマックイーンほど仲のいいウマ娘でも事態を掌握してないのか

何か話してるけど… ここからじゃうまく聞こえないな。

もう少し近くに…

柱の陰から出てもっと近くの柱の陰に移ろうとした瞬間

 

「何をしてらっしゃるんですか〜?」

 

やばい。たづなさんだ。笑顔だが目が笑ってない。

たしかに傍から見ればものすごく怪しい行動だった…

これは多分数時間のお説教フルコースだな…

観察の機会を失うのは痛手だが注意力がまったく自分に足りてない事を知れた。

次から注意しよう…

ゴルシの事は秘密でいいか。大事になるのは避けたいし。

たづなさんに手を引かれ、理事長室に連れていかれる。

一瞬、ゴルシと目が合ったような気がした。

 

 

「もう不審な行動はしないでくださいね?」

 

「はい…」

 

理事長室の扉が閉まる。やっとお説教が終わった。

 

「はぁ…」

 

大きくため息をつく。

いきなり激変したゴルシといいお説教といい…

だァーッ!トレーナーめんどくせーッ!!!

 

ゴルシのやつマジでどうしちゃったんだよ!もう!

あのメジロマックイーンでさえ驚いてるとか!

周りのウマ娘に噂が広まるのは避けたいが…

 

…あ、寮ではどしてるんだろう。

部屋を監視する事の許可を貰うか…

いや、流石に同室のウマ娘も居るしそれは無理か?

 

寮長のヒシアマゾンに直接監視を頼むってのもアリだな

事情を話せば理解して貰えるかも…

そうと決まれば聞きに行くか!

 

 

「おう、このヒシアマ姐さんに任せときな!」

 

「あぁ、ありがとう。ホントに感謝してる。」

 

承諾してくれた。寮長ってばもう心強い!

どうやら栗東の寮長もゴルシには手を焼いていたらしい。

勝手に寮の入口にオペラオーの像を置いたり…

夜中に壁を破壊したり…

聞けば聞くほど出るわ出るわ… 俺でも驚くほどだ。

あいつ、俺が見てない所でもこんなにやんちゃしてたのか

俺は何かあるまで寮の前で待機だ。

 

あんな破天荒だったのに真面目になっちゃって…

少しあの破天荒さが恋しいよ…

早く戻ってきてくれ…!ゴルシ!

 

「貴方はゴールドシップのトレーナーさんですわよね?」

 

メジロマックイーンか… ゴルシを心配しているのかな?

 

「そうだけど… どうかした?」

 

「最近ゴールドシップさんが変なんです…」

 

やっぱりゴルシか… みんなあいつが不安なんだな。

マックイーンなら、喋ってもいいかもしれない。

 

「実はかくかくしかじかで… 俺もよくわかんないんだ」

 

「そうなんですの…」

 

「何かあればすぐ俺に連絡がいく。安心してくれ」

 

「…私もここで待ちますわ。やっぱり気になりますの」

 

そう来るか〜… かなり絡んでる所を見る限りは仲がいいんだろうから一緒に待ってて悪いことはないし別にいいか

 

「まあ… 別にいいと思うけど」

 

「ありがとうございますわ!」

 

 

「…ゴールドシップさんは、いつも意味もなく絡んでくるんですの。」

 

「いつもあいつを構ってやってくれて助かってるよ。」

 

「彼女ははっきり言って面倒なタイプですわ。でも…」

 

「でもその面倒さが賑やかな事に繋がるのはいい事だと思うんですのよ」

 

「確かに俺もそんな感じだな。変な絡み方をしてくるけどその変さが逆に俺のメンタルケアになってるというか」

 

「あれだけ真面目だと… 接し方に困りますの。」

 

「あぁ、なんか今まで通りの接し方でいいのか迷うよな」

 

ゴルシについての話が弾む。

思ったより仲良かったんだな、マックイーンとゴルシは。

 

「ゴールドシップさん… 早く前の性格に戻ってください…」

 

「俺もそれを願うよ。レースに影響がないかも不安だし」

 

『あぁ、アタシも早く元の身体に戻りたい。』

 

三人の想いは一致してるみたいだ… ん?

 

三人!?

 

「ご、ゴルシか!?」

 

「ゴールドシップさん、そこにいますの!?」

 

『おう、アタシはここだ。』

 

ゴルシの声だ。脳内に鮮明に響いてる。

 

「一体何があったんだ!?戻す方法は!?教えてくれ!」

 

「早く戻ってください!ゴールドシップさん!」

 

『オイオイ、まあ少し落ち着けって』

 

「落ち着けるかこんな状況で!なんで声だけなんだよ!」

 

『順を追って説明するからテメーは黙ってやがれ!』

 

なんか怒られた。かなしい。

 

『ありのまま今起こった事を話すぜ。まず、アタシは早朝に地球の衛星軌道に乗ったんだ』

 

「は?」

 

???????????

 

「既に意味がわかりませんわ!」

 

『そしたら宇宙ステーションに頭をぶつけたんだよ!』

 

「ちょちょちょぉい!宇宙ウマ娘かよお前は!」

 

「どういうことですの?」

 

『アタシはそれでしばらく気を失って、気づいたら寮の前に倒れてたんだ』

 

「やっと話が現実になってきたぞ…」

 

『で、立ち上がろうとしたら、目線は動いてるのに身体は動いてないんだ』

 

「えっ???」

 

「どういうことですの!?」

 

『幽体離脱… っていうと想像しやすいか?そんな感じになってんだ』

 

「まとめると『頭打ったら人格が抜け落ちちゃった☆』って感じか?」

 

「…!そういうことですの!」

 

『そうだな。流石アタシのトレーナー、飲み込みが早くてエクストリーム助かるぜ』

 

なんか褒められた。ちょっと涙出そう。

 

「…で?どう戻るんだ?」

 

『アタシもよくわかんねえ』

 

「パードゥン?」

 

『アタシもよくわかんねえんだよ!知ってるならとっくにもう実行してるっての!』

 

「まあ、それもそうか… 誰かに助けを求めなかったのか?俺たちがお前を見えてるって事はできるって事だろ」

 

『なんかトレーナーとマックイーンだけ見えてる感じっぽいな。他のやつの耳元で大声出しても反応しないし』

 

「えぇ…それ聞こえてた場合やばくなかった?」

 

「迷惑ですわね…」

 

『アタシも必死だったんだよ!カフェとも少し目が合ったような気がしたけど…』

 

「なにそれこわい」

 

多分あの『お友達』とか見えてるしカフェはそういうのが見える人なんだろうな… こわい…

 

『まーとりあえずアタシの「身体」を持ってこい!』

 

「わかったわかった、寮長呼んで連れてくるから待ってな」

 

「ゴールドシップさんのトレーナーさんは有能ですのね。メジロ家で雇っても宜しくて?」

 

「宜しくない!俺はトレセンで働くんだ!」

 

『アタシのトレーナーを奪おうとはいい度胸じゃねえか、マックイーン?』

 

「じょ、冗談ですわ!メジロ家は冗談も嗜むのですわ!ほ、本当ですわ!」

 

「…じゃあ、行ってくる」

 

寮のインターホンを鳴らし、栗東の寮長を呼ぶ。

そして、寮長に頼みゴールドシップを呼んでもらう。

 

寮長、こんな事までやってくれるなんてホント優しいな…

 

━━━━━━━━━五分後━━━━━━━━━━

 

「連れてきたぞ!」

 

「? どうされたんですか?トレーナーさん、それにマックイーンさんも」

 

『よし!思いっきり突っ込んで戻れるか試してやるぜ!』

 

「頑張ってください、ゴールドシップさん…!」

 

「?何をですか?マックイーンさん」

 

「頼む、成功してくれ…!」

 

勢いよくゴールドシップが『身体』に突っ込んでいく。

これは行けそうだ…!

ゴールドシップと『身体』の距離が縮まっていく──!

 

「行けぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

「かっとばせー!!ゴ!ル!シ! ゴ!ル!シ!」

 

「ちょっ、どうしたんですか!?」

 

応援を受け、ゴールドシップの速度が増していく

 

そして遂に…!

 

『あーれー!』

 

「「!?」」

 

通り抜けた!?

 

『ダメだった。』

 

「行けそうだったんだけどなぁ…」

 

「残念ですわね…」

 

『どうすりゃいいんだよ…』

 

「うーーーん… その時を再現してみるってのは?」

 

『うし、ちょっくら宇宙行くか』

 

「トレーナーさん、さっきから誰と話してるんですか?」

 

「ごめんごめん、今から宇宙行くぞ」

 

「!?」

 

『この「身体」をどう持ってくかな…』

 

「っつーか気絶すりゃあいいんじゃねーの?」

 

『それもそーだな。待ってろトレーナー、マックちゃん』

 

「戻れそうな気がして来ましたわ!」

 

今度こそ行けそうだぞ…!

 

「じゃゴルシはこのタキオン特製ドリンクを飲んでくれ」

 

「わ、わかりました…」

 

少し頷き、『身体』は試験管を手に取る。

口の中に青い液体が入り、喉を通る。

しばらくするとその場に『身体』が倒れる。

 

「今だゴルシ!」

 

『おうよ!』

 

「今度こそ成功してくださいまし!」

 

ゴールドシップが『身体』の中に入っていく。

 

「やった… のか!?」

 

「頼みますわよ…!」

 

 

「パーフェクトゴルシちゃん、参上だぜ!」

 

やった!やった!成功した!

 

「おかえり、ゴルシ。」

 

「もう、心配したんですのよ!」

 

先程までの大人しさは消え去っており、完全にいつものゴルシに戻った。

 

「オイオイマックイーン、いつになくデレデレじゃねえか」

 

「デレデレ…!? そ、そんなことないですわ!」

 

「ははは、2人は仲が良いんだな」

 

良かった。これで元通りの生活だ

何とかレース前までに、かつ重大になる前に解決できてよかった…

 

「とりあえず戻って良かった。マックイーンもありがとう」

 

「助かったぞマックイーン!ケーキでも食い行くか?」

 

「行きますわ!ぜひトレーナーさんも行きましょう!」

 

「わかったけど、今日はもう遅いしまた明日な。」

 

ゴルシがいる事で賑やかになる。

変なヤツとは思ってたけど、実は良いやつなのかもな…

 

「それとゴルシ、明後日からは普通にトレーニングだからな。」

 

「えーっ?んだよ、この身体に戻んなきゃよかったぜ…」

 

「ははは、冗談はよしてくれ。じゃ、いい夢見ろよー」

 

「じゃあなー」

 

寮を後にし、自分の部屋へ帰る。

もうすっかり日が落ちている。

俺もなんだか疲れたな。帰ったらすぐ寝るとするか…

 

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