趣味のそれ   作:ずんだサーキュラー

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救世主『アグネスタキオン』

 

…ここは何処だ?

冷たい石の床、見覚えのない瓦礫…

瓦礫の壊れ方から見るに爆発物か何かを用いた破壊活動か…?

破壊活動…?まずいな…

 

ドォン!

 

近くで轟音がする。

起き上がって周囲を見渡すと、ようやくそこがどこか理解できた。

そこは───

 

───地獄だった。

 

 

「アハハハハハハハ!!!!」

 

名も知らぬウマ娘が有り得ない力とスピードで大岩をもう一人のウマ娘へ投げつけている。

 

「ふぅ………」

 

もう1人のウマ娘が綺麗に避け続けると、腕の構えを変えた。

 

「どうした!?それで終わりか!?」

 

「…心頭滅却。」

 

彼女がそう言うと、突然金色に光り輝いて大岩を跳ね返し、次の大岩を準備していたウマ娘を押し潰した。

その光景はあまりにも非現実的で、物理的に証明し難いものだった。

 

「今の戦いを見てましたか?」

 

いきなり声をかけられる。

声の音程と声量を比較してみるに、この声の主はたづなさん…

だが、声が死んでいる。

 

「…たづなさんかい?どうしてこんな事に?」

 

思うがまま、率直な疑問をぶつける。

 

「説明しますね」

 

彼女は淡々と説明し始める。

 

「貴方は特別移籍によって移籍されました。」

 

「…!」

 

そうか、なるほどそういう事だったか。

学園側が… という事か。

 

「特別移籍によって移籍されたウマ娘がどこへ行くか知っていますか?」

 

「少なくとも、私は知らないよ」

 

「じゃあ教えますね。特別移籍によって移籍されたウマ娘は…」

 

「ここ、電脳世界『フレームワーク』に魂ごと意識が転送されます。」

 

なるほど、URAはもうそんな所まで…

これは負けていられないな。

 

「1ついいかい?魂ごと、というのはどういう事なんだ?」

 

「それは後ほど説明する『能力』に関わってきます。」

 

「ここに集められたウマ娘たちは、各自『能力』を手にして殺し合ってもらいます。」

 

URAはもう、人のものでは無いようだ。何故こんな事をするのかも分からない。

 

「ッ…!殺し合う、か…!殺し合うとは具体的にどういう事なんだ?」

 

「ここに沢山ウマ娘を集めて、最後の一人になるまで争ってもらいます。」

 

「ふゥん… で、その能力とやらは?」

 

「…貴方は、ウマ娘の『想いの力』というのを知っていますか?」

 

想いの力… 皐月賞の時に感じた、あの感覚のようなものだろうか。

 

「あぁ、自分でも何回か経験がある。」

 

「想いの力、領域、など色々な呼び方がある『ソレ』は、ウマ娘が生まれつき持つ『才』なんですね。」

 

「その『才』の力を強くし、想いの力を可視化したようなものが『能力』です。」

 

つまりは精神力…

その当人しか知り得ない内面や裏があっての総合的な産まれ持った本能の強さ、と言ったところか?

 

「貴方ももうじき使えるようになるはずですよ」

 

「あらかた、状況は理解出来たよ。」

 

要するに先程のような戦いを幾度も重ねなければならない、と…

 

「そしてもうひとつだけ、能力について。特別移籍によってここに集められたウマ娘の中でも貴方は実力がかなり上位に位置します。」

 

「…ふゥん、それで?」

 

「貴方には、能力をもう1つ得られる権利をあげます。」

 

「そうか、必要ないな。」

 

「え?」

 

「『私には必要ない』と言っているんだ、そんなものはね。」

 

「そう… ですか。では貴方にかけた透明化の能力を解きますので、ここからは自分の能力で生き残ってください」

 

やけに存在を認識されていないと思ったら、これも能力か。

しかしまだ、引っかかる部分がある。

 

「…待て。最後に2つ質問をさせてくれ」

 

「はい」

 

「まず一つ目、なんで殺し合いをさせる?」

 

「URAの資金調達です。ここの戦闘をデータ化し、売ることで金を稼いでいます。」

 

『売る』?軍にでも利用されるのか?

そもそも能力なんていうものを利用した上での戦闘を軍が必要とするか?

 

と、なると…

 

「…へぇ。では2つ目」

 

「なぜ嘘をついた?」

 

「…ノーコメントでお願いします。」

 

「都合の悪い話にはだんまりというわけか!URAの職員は堅実だなあ!ハッハッハ!」

 

「その代わりに、アドバイスをひとつ…」

 

アドバイスならば聞かない理由はない。

ここは素直に聞いておいた方が良いと言えるだろう。

 

「『何もかも信じないこと』、『全てを疑うこと』。これだけは覚えておいた方がいいですよ。それでは、頑張ってください」

 

 

…さて、まずは能力とやらの確認か────

 

「あ、タキオンだわ!!!タキオン!!」

 

やけに耳障りなこの声。この声の主を知っている。

 

「スイープ、君もここに来ていたのかい?」

 

振り返ると、やはりそこにはスイープがいた。

ただ、雰囲気が普段とは明らかに違うのが感じ取れた。

 

「タキオン!!ここ、凄いのよ!!!魔法が沢山成功するの!!!!」

 

魔法…か。

おおよそ、たづなさんの言っていた『能力(想いの力)』によるものだろう。

 

「そうか… どんなものなんだい?ひと目見てみたいんだが」

 

味方にするにしても、敵にするにしても、ここでの要となりそうな『能力(想いの力)』を知っておくのは良いことだ。

 

「しょーがないわね!見せてあげるわ!まず強く願うと魔術書が出るの!」

 

彼女が床に跪き、祈りを捧げるかの如く目を瞑る。

そうすると、眩しさと共に分厚い古びた本が出現した。

『強く願う』… この部分は、たづなさんの言っていた『能力が想いの力によるもの』という説明と一致している。

 

「そしたら、本を持ったまま詠唱するのよっ!!『バオウ・ザケルガ』っ!!」

 

彼女が指を指し言い放った先には、激しい音と光と共に落雷が発生した。

跡には黒ずんだ地面しか残らなかった。

もう少しでも近くに居たら即死だっただろう。

しかし彼女は躊躇もせずに『魔法』を使った。

 

「おやおや、なかなかに凄い魔法じゃないか。」

 

『詠唱』… つまり、喉───

 

「でしょでしょっ!?!?それでね…」

 

もう、壊れているのだろう。

治せない。直せない。それ程までに傷は深く、広い。

 

「スイープ、本は仕舞えないのかい?」

 

「勿論しまえるわ!!ほらっ!!」

 

もう、『コレ』とは終わりにしよう。

その前に、だ。

 

「…君はこの能力で人を殺せると思うかい?」

 

質問はこれだけで十分だ。何故なら─────

『もし本当に殺した事がある』なら、迷いなく『ある』と答える質問だからだ。

 

これだけで、私が彼女を『信じれる(殺せる)理由があるか』が解る。

 

最後の質問だ、スイープ。

 

「思うわよ!!だって、実際にわたしの魔法で何人も殺したもん!!!でも、いきなりどうしてそんな事を聞くの?ねえタキオン、ねえってば!!!!」

 

嗚呼、君はどうやら『ハズレ』の返答をしてしまったようだ。

 

「ごめんね」

 

「タキオン?それってどう意味」

 

彼女が言い終わらないうちに、右手で喉を掴み地面に倒す。

 

「がァッ…!?」

 

ごんッ

 

地面に後頭部がぶつかり、鈍い音がした。

 

「…い、いた」

 

まず、喉を殴って潰した。

多少の身体の強度があったとしても、いとも簡単に潰れてしまう。

 

彼女は泣いていた。両手を目に当て泣いていた。

泣きながら蹲っていた。

そんな彼女の脚を折った。

 

「ぅぁぁ〜〜ッ……!?!?」

 

足首を持ち太ももを抑えて、普段なら絶対に曲がらない方向に曲げた。

何か喚いている。もっとちゃんと喉を潰しておくべきだった。

もうこのウマ娘は、自由に走るのみならず歩く事さえも許されなくなった。

 

彼女の手が邪魔をしてくる。

あまりにも邪魔なので、指を折った。

 

「ごきゅっ」という生々しい音が、私の鼓膜を揺さぶる。

右手は一本ずつ折っていたが、面倒なので左手は一気に折った。

手が逆の方向に閉じていた。

 

『ソレ』が人ではないものを見る様な目で私を見つめてくる。

やめろ。オカシイのは君だ。私は正常だ。

 

仕方ないので顔に拳を叩き込んだ。

鼻から血がドロドロと出てくる。

たまにピクピクと瞼を動かすが、

 

壊れた。コワした。私が壊した。

 

何故だろうか。私の頬から水滴が滴っている。

なのに、どうして、顔は笑みを浮かべている?

おかしい。オカシイ。何故だ?

 

これ以上は、ワタシが壊れ──────

 

『もっと壊しちゃおう』

 

何だ ナニが起きていル

 

「誰…だ……」

 

『死体をおもちゃにしてたくさん遊ぼう』

 

脳ガ 揺 レ る

 

「や…めろ… ヤメロ……」

 

『怖がらないでいいんだよ』

 

ワ タ シ が お ト を た テ て 崩 れ ル

 

「グっ……ア…………」

 

「あれは…タキオンか!?しっかりせい!!」

 

声───

 

 

 

 

 

 

気分が悪い。

 

得体の知れない何かが私の中で蠢いている。

 

ただ私の理性を貪り、奪っている。

 

私は、今まで一時でも彼女(スイープ)を信じたことがあった。

 

だから壊した時に私も壊れてしまった。

 

『何もかも信じるな』『全てを疑え』

 

それらは『用意された答え』。

 

とすれば、私は─────

 

 

─────“私自身を越えていく”

 

 

『もうちょっと遊びたかったな』

 

━━━━━━━━━━━━━

 

復帰した。戻ってこれた。

 

破壊衝動も無い。

視覚、味覚、聴覚、嗅覚、触覚…

感覚情報は全て正常(オールグリーン)

 

「あーーー」

 

声は出せ、身体は動く。

心拍数はやや上がり気味だが、体温も平熱だ。

目眩、下痢、嘔吐、どこかに過度な痛みも無し…

健康状態も全て正常(オールグリーン)

 

「起きたか!?」

 

私の姿を見て驚いているウマ娘が居た。

 

タマモクロスだ。

彼女もまた、特別移籍によってここに連れてこられたのだろうか。

 

「大丈夫やったか!?」

 

心配そうな声で私に語りかける。

 

「私は大丈夫だ。それよりも、君は大丈夫かい?」

 

「え、ウチか…?ウチは大丈夫やけど…それがど」

 

分かっていない。

ここの危険性が全く分かっていない。

 

「そういう事を聞いているんじゃない。」

 

「は…?」

 

「君はどこまで『お人好し(単細胞)』なんだ?」

 

「…なんで、そないな事訊くんや?」

 

彼女は声色を変えず、ただ感じた疑問を投げかけてきた。

 

「能力の分かっていない相手を前にして無警戒すぎる。

実際、この間合いであれば私の能力なら殺せるだろうしね。」

 

彼女は私がスイープを殺している所も見たはず。

 

人を殺した人間を許容するのが早すぎる。

 

『既に何度も見ている』なら説明がつく。

だが、助ける理由にはならない…

 

「…ウチはただ、アンタを助けたかっただけや。」

 

「…は?」

 

「アンタが他人を傷つけてたんは事実やし、それはもうウチじゃあ助けれんかった。

でも、アンタも辛そうな顔をしてたんや!

助けれるなら、助けようと思った…ただ、それだけやで」

 

なんだそれ。

 

「クッ、ハハハハハハハハ!!!要するに、私は君の情に助けられたという訳か!」

 

私は忘れていたようだ。

 

人の温もり、暖かみ。

 

こんな世界でも、まだ残っているものだったのか。

 

「…まあ、アンタの言うことも分かる。ウチは危機感がちと足りひんかった。たづなさんから受けた説明だと、ここで戦うのがウチらのセオリーらしいしな」

 

…とすれば、最初の『説明係』はたづなさん固定でほぼ確定か。

 

「でも考えてみてくれ。

私たちは少し前までは学園でただ生活しているだけの生徒だったろう?

それがいきなり『殺し合え』だなんて、幾らなんでも無理がある。

何か戦う為の理由や強制力がなければ…ね。」

 

「それもそうやな…」

 

何か引っかかる部分がある。

 

起きた時に見た戦闘。

おかしい様子のスイープ。

壊れだした心。

 

いきなり何かが『狂い出した』ように見えた。

 

「強制させる能力とかか…?いや、わからん。適当に言っただけやから忘れてくれ」

 

能力… そういうことか!

 

「『能力』という観点自体は非常に良いかもしれないぞ。今のはかなりいいヒントになった。」

 

「そうか?それなら、結果オーライやし全然ええんやけどな」

 

私の能力がこれなら、それで全てが繋がる。

 

なら、私が私を犠牲にすれば…

 

「…とりあえず君とはここでお別れだ。私は『ある事』の為に動き出すとするよ」

 

上手くいけばこの世界を救える。

争いも止めることが出来る。

 

「そうか。少し名残惜しいけど、お別れやな」

 

救う…この私が?

一度でも壊し、涙を流させたこの私が?

 

「…最後に、ひとつ質問をしてもいいかい?」

 

「なんや?」

 

こんな…

 

「こんな私でも、誰かを救っていいと思うか?」

 

私が… 私がやらなければいけないんだ。

 

「…ウチはバカやから、アンタが何考えてるか今でもよーわからん。

 

でも、理解されへんからって全部一人で背負うのはちゃうで!」

 

「おっと… その辺はお見通しというワケか。確かに、2人で行動した方が特ではあるな」

 

単純に戦力が増えるとなれば頼もしい。

 

それに、彼女からは何かを感じる。

とても信頼でき、かつどことなく懐かしいような何かを。

 

「改めて自己紹介や!ウチはタマモクロス!」

 

「そうだな。私はアグネスタキオン。」

 

私はもう迷わない。

 

誰かを傷つける選択よりも、誰かを信じる選択をする。

 

この腐りきった世界に平穏を取り戻してみせる!

 

「…この世界を救うウマ娘だ!」

 




読んでくださり大感謝の限りでございます
いやぁ、眠い
いつものごとく夜なべしてたらいつの間にか正午ッスよ
寝落ちって怖いですね…
今回は「なんか書きたいから」って理由で書いてたんで設定はめちゃめちゃ雑です。
説明できるとこ(設定があるとこ)だけ説明してきます。
まずタキオンの能力ですね
最後まで明かされないでモヤモヤしてたら人もいると思うんでもう明かしちゃうとしますか(どーせ続き出ないし)
タキオンの能力は「薬師」です
薬を自分で生成できます。つよい!
また、作れる薬は飲み薬、塗り薬とか薬として作られてたらいいって言うぶっ壊れ性能ッスね…
チート能力はルールで禁止ッスよね
その上、自分で新たな効能の薬作れちゃいます
だからドーピングだってできるし…
作中語っていた『狂気が能力によるもの』のくだりで
『能力によるものだとしたらその能力を無効化する薬を作ればいい』ってなってなんか閃いた感じになってるんすね
おくすりスゲー。
あ、でも新たな効能の薬ってーのは注射薬限定です!
何その微妙な制約!
ほんでここではみんな普通戦う理由なんてなくて、普通のウマ娘なら戦わず平和に過ごしたいじゃないすか
それを見越して運営側が能力で戦わせるように戦闘狂になるような狂気を垂れ流してるんすね。
それで最初出会ったスイープはもうそれにかかってて、心の中の大部分を侵食されてた、と。
でもタキオンに対する恐怖が心の中のもっと大部分を占めたことで最後の方は実は正気に戻ってたんですね
悲しいね…
その後、タキオンなんか壊れちゃったじゃないですか。
タキオンは自我が崩壊しかけたけど、能力とは即ち想いの力。
タキオン自身の精神世界で、狂気に対するワクチン成分を自ら無意識下で体内生成し、自身の狂気を追い払ったんです。
彼女やっぱ天才なんでね、こういうこと出来ちゃうんですね
いやでもほんとタキオンの殺人鬼フェーズは書いてて辛かったすね
リアルな表現あんまり出来ないからそうなっちゃうけど…
てゆーかあとがきのくせに長ったらしいな。作者がでしゃばってすんません。
つーことで寝ます。お疲れ様です。次回は未定です
おつカレ!GG!

追記
ルビ振りのやつの使い方を盛大に間違えてたかもしれないッスまじでごめん大謝罪です
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