悪の女幹部が好きな少女   作:さなかのさかな

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百合が書きたくなった。


悪の女幹部っていいよね

 皆に問いたいことがある。

 悪の女幹部は好きかー! ちなみに私は大好きだー! 

 私が悪の女幹部を好きになったのは理由がある。それは前世の記憶によるものだ。前世の記憶、とはいっても別の世界の人の記憶が見えただけだが、その人の最後の記憶は死ぬ寸前だったため、前世の記憶と呼んでいる。

 私が見た記憶はいわゆるオタクという男のものだ。男は幼い頃に見たアニメ出てくるキャラに初恋を捧げていた。そのキャラとは女幹部である。圧倒的なおっぱい。それを際立たせる露出の多いえっちぃ服。そこから伸びるスラッと長い手足。上品でどこか妖艶な雰囲気をした笑み。全てを包み込むかのような母性。全てに魅了されていた。だが、それは男の話であり私とは異なる。男は女幹部が好きであったが、私は()()女幹部が好きなのである。

 これに関しては私の性癖? が原因だ。私は好きな人に利用されたり、いじめられるのが好きなのである。痛いのは嫌いだけど。もし好きな人に都合のいい女として利用されたらと想像すると胸が締め付けられ切なくなり心が満たされていくのだ。最後、捨てられる時に、ホント都合のいい女、と笑われると最高だね! 

 男の記憶によると、女幹部は正義感が強く、清楚なことが多い。逆に悪のが付く女幹部はえろい。そして性格が悪い。人を道具として使い潰すことがよくあり、Sである。最高だね! 

 分かっていると思うが私は女性が好きだ。幼い頃に前世の記憶を見てしまったのが原因だろう。初恋もしていなかったのに男の人生を見るなんて私の恋愛観を動かすには充分すぎる出来事だった。そこに私の性癖? が加わって悪の女幹部を恋しく想っている事に繋がるのである。

 さーてここで問題。私は今、何処に居るでしょうか? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こっこで~す。こっここっこ。ここでございま~す。私は今、悪の女幹部の前で跪いております~。彼女の名前はリルスアール・ヴァイオレット。

 リルスアールが名前でヴァイオレットが姓である彼女は前世のアニメのキャラクターだ。誰にも救われず希望がなくなり闇堕ちしたという設定の。

 

「ねえ。そこの貴女。聞いてるの?」

 

 おっと。考え事をしてたから話を聞き逃してしまった。相変わらすいい声してるなぁ。などと下らないことを考えつつ面を上げる。

 

 そこには玉座に座る女神がいた。いや、本当に。誇張抜きに。月の光を反射しキラキラと輝いているピンクがかった銀髪。アクアマリンのような水色で全てを見透かすような透き通った瞳。シミがなく、まるで処女雪のように真っ白い肌。大きくもなく小さくもない私好みのおっぱい。モデルのように長く、程よく肉付いている美脚。丸くて小さな可愛らしい臀部に付いている尻尾。全体的にいえばスレンダーな体型。全てが私の好みだ。これは私の為に生まれたといっても過言ではないのでは? 

 

「せっかく私が拾って来たのだから早く行きなさい」

 

 ええ~。もう少し眺めていてもいいじゃありませんか。まあ、私に拒否権は無いんだけどね。ちなみに今、悪VS正義で戦争をしている。私は悪なんだけどね。だって恩を返すためだもん。

 私は前世の記憶のせいで子供ながらに大人びた態度をとっていた。それを気持ち悪いと思っていたのか両親から捨てられた。そこを彼女に拾われここにいるって訳。

 じゃあ、ちょっくら行ってくる事にしますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「化け物だぁぁぁぁぁ!」

「助けてくれぇぇ!」

「嫌だ! 死にたくない!」

 

 阿鼻叫喚。少し前までは平和だった町が数十分の内に死体で満たされていく。魔族の侵攻によるものだ。ある人は生きたまま喰われ、またある人は巨大な身体に押し潰され床または壁の染みとなる。だが、人間にも対抗できる者が居る。

 

「おい、早くこっちにこい!」

「ここは俺に任せて先に行け!」

 

 冒険者や騎士などと呼ばれる戦闘に慣れている者たちだ。彼らと魔族との違いは、連携力。冒険者たちは、四~八人のパーティー単位で連携しており、騎士たちは、数十人という規模で連携している。相当な鍛練、実践をしたのだろう。冒険者たちは無駄がなく周囲の事を余り気にせずに戦っているのに対し、騎士たちは逃げた市民に被害が及ばないような安定した堅実な戦いを繰り広げている。減らせど減らせど勢いが変わらない魔族の侵攻に集中力を削られながらも着実に魔族の数を減らしていく。やがて勢いは衰え、辺りに魔族の姿が見えなくなった。

 

「ハァハァ、やったか?」

「終わったのか?」

「勝った。俺らは勝ったんだ!」

「俺達人間の勝利だぁぁぁぁぁぁ!」

 

 ウォォォォー! 全員が歓喜の声を上げている。勝利の喜び、生きる事への喜びを噛み締めている。

 

 

 

 そんな中、少女は現れた。

 

「やりましたね」

「ああ、嬢ちゃんやったな。生きてる。俺らは生きてるぞぉぉぉぉ?」

 

 叫びだそうとしていたおっさん冒険者の首がはねられる。先程までお祭り騒ぎだった空気が霧散する。まだ、誰も事態を飲み込めていない。少女以外は。

 

「あれ? 来ないの? じゃあ、こっちから行くね。大丈夫。痛くしないから」

 

 少女が鋭く尖った尻尾を振り、すぐ近くにいた未だ茫然としている人間の首をはねる。ようやく事態を飲み込めた冒険者たちがそれぞれの武器を少女に向ける。その間に少女はこの状況、イレギュラーに対して弱い騎士たちの集団の中央に潜り込む。

 

「そのガキを殺せぇぇ!」

 

 その言葉にハッとした騎士が剣を振るおうとするが、人間に似た少女を切り殺すのに躊躇ってしまった。そんな隙を逃すはずもなくは隠し持っていたナイフで喉元を突き刺す。決心した騎士たちが少女を殺そうと剣を振るうが、それを少女は余裕の表情で素早く走り回り躱していく。密集した場所で各々が剣を振り回すとどうなるか。それが少女の狙いだった。

 

「おいっ! 俺は味方だぞ!」

「危なっ。もう少し回りを見ろ!」

 

 少女に振り下ろされた剣は仲間の膝を切り裂き、突きは鎧の隙間から胴体を貫通させる。同士討ちが始まり混乱に陥った中で騎士たちの剣を利用しながら淡々と殺していく。逃げようとするものは尻尾で首をはねられる。

 

「…………地獄だ」

 

 援護をしようと様子を窺っていた冒険者が少女の蹂躙に絶望したように呟く。

 

 そんな中、一人の青年が走り出していった。少女は明らかに騎士ではない格好をした青年を一瞥すると、尻尾を凪払い周囲の騎士を吹き飛ばし町の外へと逃げていった。

 

「行った……のか?」

「今度こそ大丈夫か」

 

 周囲の人たちがざわめく中、青年は一人顔を歪めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら。生きて帰ってきたのね」

 

 リルスアール・ヴァイオレットは愉快そうに笑う。

 もしかして心配してくれてるのかな? 嬉しい。

 

「そんなわけ無いじゃない。駒が減ると困るもの」

 

 口に出してしまっていたようだ。絶対零度の視線がに向けられているのが分かる。

 いいっ! 実にいいっ! まるでゴミを見るような目をしている。私を人として、いや魔族として見ていないのが分かる。私はこんなにも想っているのに! 

 ぞんざいに扱われて悦んでいる私に気づいたのか美しい顔が嫌悪感で歪んでいる。

 

「早く視界から消えなさい。そこに居るだけで不快なの」

 

 怒気を含んだ声で命令される。理不尽! リル様からここに来いって言ったのに! 私が抗議の声を上げる

 

「リル様? もしかして私の事かしら?」

 

 ヤバッ。心の中でリル様呼びしたのがばれちゃった。眉間にシワが寄っている。

 てへっ。 あざとく笑みを浮かべてみる。

 青筋が立った。此方に向けられた腕には禍々しい魔方陣が浮かんでいる。

あ~~~れ~~~~

 突風が私を玉座の間から吹き飛ばす。痛い。身体に擦り傷ができちゃった。それにしても予想外だな()()()があの場にいたなんて。

 私に原作知識と呼ばれるものはない。憶えているのは主要なキャラの容姿とその名前ぐらいだ。まあ、それも怪しいかもだけど。

 

 決めた。私はリル様に尽くそう。

 リル様は私を拾ってくれた。その時、惚れてしまったのだ。うん。我ながらチョロい。リル様からしたら使い捨ての兵士を拾った程度の軽い気持ちだったのだろうけど私は命を救われたのだ。別に彼女に救われた人生を彼女の為に使っても不思議ではないだろう。

 

 私はぞんざいに扱われるのが好きだが、イチャイチャラブラブするのも好きだ。だから私がずっと生きて帰ってくればリル様に名前を憶えて貰って、お友達から初めて、恋人になって、ゴールインしたいという打算もある。

 取り敢えず晩御飯の用意しますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 食事を食堂まで運ぶ。部屋に入るためにノックをし、許可を出されるまで待つ。返事がしたので両開きの扉を開けて無駄に広い部屋を見渡す。何かリル様が此方を睨んでいる。ふぇぇ……怖いよぉ。

 おっと、幼児退行してしまった。

 

「視界に入らずに準備しなさい」

 

 無茶言いなさる。そんなの不可能でござるよぉ。ちょっと困った顔をする。

 

「何? その顔は。ふざけているの?」

 

 そろそろ真面目に仕事しないと殺されてしまう。リル様にとって私は替えの利く存在なのだ。()()だけどね。ふっふっふっ。日常から侵略される恐怖を味わわせてやるぜ。

 リル様が高級料理に乗っている、料理を隠すため? の銀色のボウル? を開ける。

 ちょっと美味しそうかもって思ってそうな顔してるぞ。やった。私が作った料理はハンバーグだ。前世の知識チートを利用した。幸いこの城には食材が大量にある。なので、まずは胃袋から掴んでいく事にした。

 

「あら。なかなか美味しいじゃない」

 

 リル様が美味しそうにハンバーグを食べる。

 私は驚愕した。上品だ。ナイフとフォークを使って上品に食べている。庶民の御飯なのに。

 それにしても可愛いな。いつもは凛々しい顔をして美しいのに。

 

「何。此方見てないで早く部屋から出なさい」

 

 不機嫌そうな顔で言われた。ひどい。準備したの私なのにな~。まあ、出ていきますけど。

 ゆっくりとした足取りで食堂から出ていく。そのまま自分の部屋に戻ると思わせて、扉に耳をつけ盗聴の準備をする。

 

「不味い、流石に不味すぎるわね。もう捨ててしまいましょう」

 

 あっ、泣きそう。そっかぁ不味いかぁ。気を遣われてたのかな。

 余りのショックでしばらく動けないでいると扉が急に開き体勢が崩れ尻餅をついてしまう。

 何事かと確認するとリル様が魔法の準備をしていた。

あ~~~れ~~~~

 

 

 

 視界の端に入った空っぽのお皿については指摘しないでおいた。

 

 

 




戦闘より日常の方が長いかも。
人気だったら続き書く
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