転移先でエルモノ   作:eeeeeeeei

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01. 運命との出会い

○・○・○・○・○

 

 

 

 

 今日も今日とてごろごろと暇を持て余す日々。

 というか、生まれてこの方ダラダラとしかしたことがない。

 文字通り何もしない、どこにもいかないままに15年間をこの部屋で過ごしている。

 というのも四界大戦以降、敗戦した機械国家の立場は無く、殆ど全てのモノがただの労働力、所謂奴隷として過ごしている。

 では僕がなぜダラダラとしかしていないかと言うと、そんな生活に嫌気のさした両親とも言える、のかはわからないが二人はできたばかりの僕を連れて逃げ出したからだ。結果として、僕に脳味噌の遺伝子を提供した人間は途中で死に、僕のボディーの開発者である機械人(ヒューマノイド)と僕の二人でたどり着いた隠れシェルターへと転がり込むと、機械人(ヒューマノイド)もすぐに動かなくなった。

 する事もないので、この機械の身体へ埋め込まれたAIの言うままに、同じく機械の身体を持ち、この身体を造ったモノのメモリーを覗き見て得た知識でしかないが、この世界は元々4つの種族がそれぞれ国を作り、大陸を分けて暮らしていたらしい。

 

 天国と言われる、魔法を操る天使達の国。

 魔国と言われる、魔術に長けた悪魔達の国

 人国と言われる、不思議な武器や技を生み出す人間達の国。

 そして、機国と言われる無限とも言える寿命と独自の生産ラインで圧倒的な戦力を誇る、機械人(ヒューマノイド)の住む国。

 

 そんな四国の内二つの勢力、天使と悪魔が手を組み、残る二つの国を攻め落としたのが四界大戦。

 まずは強大な武力と無限とも言えるスタミナを誇る機国へと攻め込んできたらしく、魔法や魔術などと言う不確かなものと数の暴力により我々の先祖は敗走。

 機械と言うことを良いことに、労働力として最高のものを手に入れた天使と悪魔はそのまま人国を潰して二国協定を組み天魔国を作り終戦。

 天魔国とは名ばかりで、天国は機国の領土を。魔国は人国の領土を得ただけで不可侵条約を結んだという形。

 

 その後は奴隷の配分と言うことで、機国と人国の奴隷達はそれぞれの領土へと、半分ずつに分けられた。

 そんな機国に移住させられた奴隷仲間である人国の男性と、奇特にも僕を造りあげたのが、目の前にいる、二度と動くとのないこの機械人(ヒューマノイド)。

 僕も機械人(ヒューマノイド)ではあるが、ただの機械人(ヒューマノイド)ではない。

 人工の脳に人間の遺伝子を混ぜ、残る機械の身体にそこの機械人(ヒューマノイド)のチップとAIを埋め込んだ紛い物。

 だから、僕自身は機械人(ヒューマノイド)ではなく、人間の偽物という皮肉な意味を込めて、擬似機人(プセマノイド)と呼ばれる者、らしい。

 ちなみに人間の身体を機国の技術で改造している場合は半機人(ヒュムロイド)と言い、僕とは違ってずっと人間に近い種族なのだそう。

 こう言った昔の話や種族に対しての知識は全てこの身体に埋め込まれた人工AIであるシロマに教えてもらったこと。

 基本的な言語だったりは全てチップを埋め込むだけで、勝手に脳が理解していた。

 ただ、一つのこと以外は。

 

『……今日は、何かしますか?』

(いい。)

 

 と頭の中に響く声に日課のように答えてまたも何をするでもなく、ただ横になる。

 しばらくして、ちゅーちゅーと側にあるオイル缶から燃料を飲みながら、いつものように母親の頭へ指を差し込みメモリーを見返す。

 行ったことはないが、メモリーを見る限りシェルターの外の世界には迫害しかない。地上の映像データを見るに、機械と人間を貪る天使が溢れかえっているものしかない。

 

 理解できない一つのこと。それは、なんのために2人は僕を作ったのかという事。

 既に天国に侵され無謀としかいえない状況の中、機国のマザー施設で僕を造った2人。その2人は案の定天使達に見つかり、ここに逃げる途中で父とも言える人間を嬲る天使の映像を見ながら、いつものように僕を作り出した理由を考える。

 そして、いつも通り答えは出なかった。

 

「ちゅーちゅーちゅー…じゅッ!!…ジュ…ジュジュ……」

 

 ん。無くなった。そういえばこれが──

 

『そちらが最後です。この場に貴方のエネルギーとなる物は残っていません。残念ですが……』

(そう。)

 

 そう言うシロマに、頭の中で伝えておいた。

 結局のところ、自分が存在している意味がわからなかった。

 二人分の蓄えがあったとはいえ、15年も飲み続けてきたのでそろそろ無くなる事はわかっていた。

 通常モードであれば2週間もすればエネルギーも枯渇する。

 動力源がなくなり動けなくなるのは当然だが、脳の保存液の循環も滞り、そのまま腐っていくことになる。

 とはいえしたい事も無いのでシロマの提案通り、スリープモードに入った。

 スリープモードと言っても身体の動きや思考回路に制限をかけて止めているだけで、鈍いが意識は起きてる。

 

『426時間経過いたしました』

(そう。)

 

 完全な無の時間。

 人の脳は眠ると夢というモノを見るのだと知識にあるのだが、僕はそれを見た事がない。永遠に続く暗闇の中を何も考えず、起きている時と変わらぬ時間を過ごす。

 

(・・・・)

『1249時間経過いたしました。残存エネルギーは残り5%未満となります。私の活動も停止し、脳細胞の延命を優先します。すみません、でした………様』

 

 そう。

 最後の方はよく聞き取れなかったし、シロマに回すだけのエネルギーも完全に尽きた。

 そろそろ僕の活動も終わるようだ。最後の最後まで、結局僕は何の為に存在していたのか、全くわからなかった。

 ようやく、この無駄な思考も無くなり完全な無になれる。

 願わくば、もう二度と起きなくて済みますように。

 

 そして、一人の擬似機人(プセマノイド)は誰に知られることも無く、とうとう一度も声を出す事なくその短い生涯を終えた。

 

 

 

○・○・○

 

 

 

 と思ったんだけど。

 

(誰だ…!!)

 

 誰?

 

(聞いているのは我だ!! お前は…ユニークか?)

 

 ……ユニーク…? そう言われても、わからない。可能性としてはシェルターが破壊され、埋もれていた僕が何かの拍子に出てきたのかもしれないが、それでも、長時間機能停止すれば脳という有機物は腐ってしまっていると思うのだけど。

 会話が成立しているのは、なぜ?

 

(我程の者になればお前如きの思考を読むことなど雑作もないわ。)

 

 そう。

 ただ、視覚情報の取得…発声…もできないか。エネルギー量が足りていないらしい。

 シロマ。

 

『──ブツ!』

 

 何かを言おうとしたのかもしれないが、接続が切れた音を一度立てただけで、返事はない。何度頭の中で呼んでも反応はない。

 奇跡的にエネルギーが回復して、僕自身の機能が復活したのかとも思ったけど、思考以外の機能は完全に沈黙している。

 

 そして、質問の答えだが誰と言われても、僕は型番はあっても、上級の戦闘兵士でもあるまいし、呼称はない。此処が元の世界なのかすら知らないのに、ユニークなのかどうかなんてわかるはずもない。

 

(そうか。お前のような種族は初めて見たのでな。見た目は人、それも可憐な少女のようだが、ところどころ……ゴーレムともまた少し違うようだが……)

 

 ゴーレム…? 天国の岩人形の事かな。

 もしかして、既に機械人(ヒューマノイド)は完全に滅びてしまったのだろうか?

 今の僕にそれを調べる術はないのだけど。

 

(さっきから我の質問を無視しすぎでは無いか? 機械人(ヒューマノイド)というのが種族名か?)

 

 僕は誰かと話した経験がないんだ。ワレを無視をしていたと言うつもりはない。

 質問の答え。機械人(ヒューマノイド)じゃなくて、僕は擬似機人(プセマノイド)。

 今は視覚情報に回すエネルギーもないし、なんで思考回路が動いているのかも不明。

 

(我、は名前では無い。だが…ふむ、そうなのか。

 我は"暴風竜"ヴェルドラ!!我も三百年ばかし暇を持て余していたのだ。我がお前の初めての話し相手となってやろう!!)

 

 そう。

 とは言え指一本動かすことすらもままならないこの身体じゃあ、少しの時間しか相手はできそうにないけど。

 

(……お前は異世界からの転生、いや転移者か? かなり特殊な世界からきたようだな。恐らく今はまだ魔素がお前にうまく馴染んでいないようだが、消える事はないはずだ。それに、今のままでも話はできるだろう? 我は話しができればそれでいい。)

 

 魔素と言うのは、わからない。

 あと、僕はシェルターから出た事もないし、誰かと話したこともないし、話せる事はそもそもない。

 

(むっ。それは──)

 

 だから、僕は暴風竜ヴェルドラの話を聞く事しかできない。

 

(そうかそうか!よし!我が話をしてやるから良く聞いておけ!! あれは何百年前の話だったか──)

 

 

──

 

 

 そんなこんなで、指一本動かすこともできない擬似機人(プセマノイド)と、災害とまで言われる暴風竜ヴェルドラとの会話は、エネルギー切れを起こすまで続き、回復すればまたヴェルドラの話を聞き続ける、という奇妙な関係が、もう数年にも及んでいた。

 魔素の事やこの世界の事を教わり、そしてヴェルドラの大活劇を聞かされた擬似機人(プセマノイド)は傍目にも、自分でもわかっていないだろうが、数年間が過ぎた頃から、少しづつ、ほんの少しづつではあるが変化がおきていた。

 そして、5年が経った頃にヴェルドラから尋ねられた擬似機人(プセマノイド)は、自分のいた世界の事を、母親とも言える開発者の機械人(ヒューマノイド)の残骸からメモリーを読み取った記憶の事を話していた。

 

(ふん。我がおればそのような国は滅ぼしてやるというのに……)

(僕自身はなんとも思ってない、よ。)

 

 そんな話をしているうちに、ヴェルドラはすっかりその擬似機人(プセマノイド)を可愛がるようになっていた。

 

(それにしても、お前も動けぬし、そのシロマと言うのもまだ起きないのか?)

 

 会話や初めて聞く言葉に思考を重ねる事に魔素を変換して得たエネルギーを消費しているため、指一本動かすエネルギーすら蓄積できていない今、シロマを起動させるほどのエネルギーは当たり前のように足りない。

 此処は随分と魔素が濃いとの事だが、そもそも天国や魔国の者達と違って、魔法のような力の向かない機械の身体には、まだ魔素が馴染んでおらず、残存エネルギーのチェックもできない。

 

(うん。今はまだ思考に使うエネルギーで精一杯。だと思う。)

(そうか。我も話しすぎたな。【えーあい】と言うのは我も詳しくはないが、お前の事を良く知る者なのであれば待とう。お前の得たであろうスキルも気になるしな。安心しろ。我はどこにもいかない。お前を見守っているから、今回はゆっくりと休むがいい。)

(スキルって言うのも異世界というのもまだよくわからないけど。じゃあ、再起動可能になるまでスリープモードに移るよ。)

 

 スキルと言うのは異世界人がこの世界へと辿り着く際に得る力の事だそう。

 世界の声を聞かなかったかと言われたが、そんな覚えは僕にはなかった。

 

(あぁ。  

 ──お前が目覚めた時には、我がお前に名を与えてやろう。)

 

 最後のヴェルドラの言葉は既にスリープモードに入っていた為に認識しておらず、完全に眠りについていた。

 ヴェルドラも全く予想はしていなかったが、そうして眠る事なんと三年。

 三年後、この二体の今後の人生を大きく変える者に出会うとは、まだ機械人形と暴風竜は思ってもいなかった。

 

 

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