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──リムル
俺のスキル『捕食者』を使用し、ヴェルドラを胃袋の中へと収めた。
流石に『無限牢獄』そのものを収める事は不可能だったが、『無限牢獄』に囚われたままのヴェルドラを捕食する事は問題なく行う事ができた。
『大賢者』から可能だと言われていたとはいえ、あれだけデカイ竜がよくこんな身体に入りきるものだ。
ヴェルドラと同じく俺の……妹? になったエルノアはヴェルドラのいた付近を話すこともなくウロウロと歩き回っている。
そもそも、俺が捕食すると言い、ヴェルドラが同意した時もあまり反応は無かった。
逆にヴェルドラはしつこいくらいに、「我がいなくても大丈夫だ」とか、「我の与えた加護を信じろ」とか、「知らない人にはついて行くな」と親か何かのように伝えてはいた。それに対してコクコクと首を縦に振るエルノアを満足そうに見つめて、俺に頼むと言ってきたあの顔は娘を嫁に出す父親そのものだった。
まぁ、俺は子を嫁に出したことも、そもそも嫁をもらいに行ったこともないので想像でしかないのだが。
とはいえ、俺も新たにスキル『念話』を取得したので話してみる事にしたのだが、ヴェルドラが消えた今、あまり反応が無い。
(おーい!元気出せって。ヴェルドラも直ぐに出てくるって言ってたし、また会えるさ。それまでは俺がちゃんと守るからさ)
エルノアは転生前の生涯はひとりぼっちで終えて、初めて話した相手がヴェルドラだったらしい。
三日三晩、いや数週間に及んで話し込んだとも聞いたし、ヴェルドラが居なくなって寂しいのだろうとそう声をかけたんだけど。
(コクリ)
黄金色の瞳をこちらへと向けて、うなづく美少女。
俺の声が無事届いているのは良いけど、話はできないのかな。
というか、俺の時もそうだけど、ヴェルドラは勝手に思念を読むから会話が成り立ってたのか。よくよく考えたら、念話をしてただけで未だに声を出したことすらないのかもしれない。
なんだか嫁をもらう前に子ができたみたいだ。
これから俺はエルノアと二人で洞窟の外に出て、世界を見て回る。
俺自身の望みでもあるけど、ヴェルドラからも世界を見せてやってくれとの事だしな。友達の頼みだ。俺が責任を持たないとな。
(エルノアは俺の妹みたいなもんだ。俺の事も兄だとでも思って、頼ってくれて良いからな。)
流石に娘というのもアレなので、妹と言っておく。
スライムの妹が美少女サイボーグというのもおかしな話だが、俺たちは三位一体に近いのだから間違っては無いだろう。
エルノアは考えているのか、コテンと首を曲げ、しばらくすると。
(コクコク!!)
表情はいつも通りの無表情だが、嬉しいのかわからないがいつもより大きくうなづいてくれた。
俺にも兄がいたんだし、兄らしく振る舞うとしよう。
そしてまずはすべき事があるな。
と、できたばかりの妹のありのままの姿を見て思った。
○・○・○
──エルノア
僕以外の二人で話は進み、ヴェルドラはリムルの中へと収まるという事になったらしい。
色々と話をしていたが、ヴェルドラを封印しているプロテクトの解除が目的。
ヴェルドラへのスキャン結果も上手く機能しておらず、僕にもわからない。
三人で封印を解いていこうという事で、ヴェルドラはリムルの中へと入る前、必要以上に心配していたがリムルへと何か声をかけて呆気なく、消えていった。消えたと言ってもリムルの中にいるだけなのだけど、もう声は聞こえないし、僕の思考に相槌も入ってこない。
初めての話し相手だったのだけど、プロテクトの解除までどのくらいかかるか。
(元気出せって。ヴェルドラも直ぐに出てくるって言ってたし、また会えるさ。それまでは俺がちゃんと守るからさ)
元気は、ある。ヴェルドラから名前をもらった後、魔素の吸収と、それをエネルギーへと変換させる効率がよくなったとシロマも言っていたし。
よくわからないけどうなづいておく事にする。
(エルノアは俺の妹みたいなもんだ。俺の事も兄だとでも思って、頼ってくれて良いからな。)
………?
生殖機能などもちろんないし、無性である僕が、妹?
それに、次々と話しかけるのは待ってほしい。
会話スキルと言うのは無いのかな。思った事に対して言葉を返していたヴェルドラの時とは勝手が違うので、本気でそう思う。
『リムル様は、エルノア様を家族だと思っているという事ですよ。エルノア様の造形美は人族でいうと最高峰ですので、雌性だと思われたのだと推測します。ただ、エルノア様のボディー完成から数えると既に50年は経っているのですが、この場合歳下と捉えても宜しいのでしょうか?』
わからない。けど、リムルがいいなら、いい。
家族……僕には最後までわからなかった事。
リムルが教えてくれるのかな。
『エルノア様。そろそろお答えにならないとリムル様がお困りのようですよ』
シロマの言葉で対応をしていない事を思い出し、僕は勢いよく肯定の意を示した。
そうして、フヨンと跳ねたリムルは僕を指差すような形で、身体の一部を伸ばしていた。
(まずは布か、皮か、なにか衣服になりそうなものを探そう。エルノアがその、ずっと裸でいるのも……)
(?)
なぜ衣服が必要になるのかわからないが、ひとまずはうなづいておくことにした。
ヴェルドラのいた場所から初めて離れ、リムルと洞窟を歩きながら次々と岩や草を『捕食』しているリムル。
シロマ、あの行動の意味は?
『今は鉱物を取り込んでいるようです。植物もですが、いずれも私のデータ上には存在しないものですね。ほんと、何してるんでしょう?』
(エルノア……下がってろ)
リムルはぴょんと前に出て、途中出てくるヴェルドラの手足を外してこじんまりさせたようなドラゴンに向かうと、液体を飛ばしその首を切り落とした。
リムルはヴェルドラの時のように『捕食』して、そのドラゴンが持っていたというスキルを得たという。
その後も現れる魔物という魔物を次々と捕食していき、スキルを獲得していったよう。
そして、数日後。初めの方で出会ったコウモリを捕食したところからずっと音波を使って言葉を話す練習をしていたらしい結果が出た。
「ワレワレハ、ウチュウジンダ」
我々? リムルは一人なのだけど、と首を傾げた。
「あめんぼあかいな あいうえを。 どうだエルノア?」
どうやら発声のテストだったらしい。こう見ると、スキルというものは、便利だ。
僕も完全に機能停止した後、集音器も止まっていたはずなのにスキル獲得、成功といったノイズであれば聞いた気がする。
もしかするとそれが、ヴェルドラの言う世界の言葉だったのだろうか?
シロマ、わかる?
『そうですねぇ……私も謎のノイズに聞き覚えはあります。が、データもないのでまずはスキルと言うものを試してみてはどうでしょうか?』
シロマはそう言うが、スキルの起動方法がわからないんだけど。
「リムル」
「お、おう!なんだ!?」
なぜか驚いた様子のリムルだけど、僕も初めて声帯機能を使ったから、自分の集音装置に聞こえてくる自分の声に内心で驚いていた。うまく話せてなかったのかな。
『発声に問題はありません。お綺麗な声ですよ』
シロマの言葉にうまく話せていたんだとわかったので、質問をした。
「スキル、どうやって使う、の?」
少し考える様子のリムル。
「使い方を教えるというか、何ができるのかを正確に知るには俺が一度『捕食者』でエルノアを捕食しないといけないんだけど……」
「わかった」
捕食。リムルがずっとやっていたようにと、リムルを抱き上げて頭を埋めてみる。
「うわっ!?な、何してるんだ!?」
捕食をするとはこういうことではなかったのかなと、突っ込んだ頭を一度出して、リムルを胸に抱いたままに答える。
「捕食……しないの?」
なんだかあわてている様子のリムルだけど、そんなリムルから、というよりかはリムルの持つスキル『大賢者』は何ができるスキルなのか、僕の持っているスキルを色々と解析してもらっていたようだった。
その解析してもらった結果が、
ステータス
名前:エルノア=テンペスト
種族:融機人(レプリロイド)
加護:暴風の紋章
称号:なし
魔法:なし
技能:ユニークスキル『
ユニークスキル『
固有スキル『換装』
スキル『魔力知覚』
耐性:なし
それを教えてもらったが、種族が変わってるし、『
『私、超ハイテクAIでしたのに、ユニークスキルって・・・しかも共依存だなんて・・・なんだか複雑です……』
確かに、昔よりも人間のような話し方をしているし、シロマも変わったのかもしれない。
結局僕の持つスキルはシロマと魔力知覚以外には二つだけど、固有スキルという換装はわかる。
耐性というのも、わざわざなくても機国のモノであれば電気や熱の耐性はそもそも備わっている。
転生と言っても、中身はほとんど前とほぼ変わりはないのかな。
○・○・○
──リムル
おっふ。
あの顔であぁ言われると……とんでもない破壊力だな。
突然名前を呼ばれた時は驚いた。小さく控え目のようで、なにか力強さを感じると言うか。
妹の質問に答えるためにもまずはそれらを知る必要がある。
なので頼れる先生、『大賢者』に聞いてみることにしたのだが、『捕食者』での捕食を行えば解析は可能との事だった。
なので聞いてみたのだが、急に抱き上げられると、その可愛い顔を躊躇なく俺のスライムボディーへと入れ込んでくる。
「うわっ!?な、何してるんだ!?」
「捕食……しないの?」
顎を引いて、真っ直ぐに俺を見つめてそう言ったエルノアを見て思った事だった。
スキル以前に、エルノアには教えなくちゃいけないことが山ほどありそうだな……