Fate/Apocrypha -IF- ~黒衣の死神~ 作:あるふぃ@ship10
―全ての令呪をもって命じます。黒のアサシンに、この生において至上の戦いを与えんことを。
今回の聖杯戦争での活動は、戦うことに生きがいを見出してきた黒のアサシンにとって、苦痛でしかなかった。
人間から強制的に魔力を奪い取る吸精の呪、『魂喰い』。
アサシンにとってそれは、生き残り続けるための最終手段であり、本来望まない行動だった。
だがそれでも、マスターである六導玲霞には何も言わずにいた。
彼女が魔術師の素質ではない以上、仕方のないことだと彼女自身理解していた。
だからこそ何も言わず、魂喰いという方法を提案し、実行してきた。
しかしマスターとして彼女とつながっていたからなのか、はたまた彼女がアサシンの心中を見抜いていたのか、死の間際、これまでの戦いにおける謝罪と、感謝を込めた最後の命令を下した。
「ごめんなさいね■■■。このような形で、貴方と別れてしまうなんて...そして何より、貴方には辛いことばかりさせてしまった.....貴方は本来、人を殺めることを望まない人。でも私が魔術師ではないばかりに、これまで多くの人に手をかけさせてしまった。そしてありがとう。今まで何一つ不満を言わず、私に付いてきてくれた。だからせめて、残された魔力が尽きるまでの間、貴方には幸福であって欲しいの.....■■■、貴方との旅、とても楽しかったわ......―――」
令呪によって導かれた場所で、私は空中庭園の奥へと進む一人のホムンクルスと黒のライダーと、彼らの行く手を阻む赤のランサーを見た。
その状況を見てすぐに確信した。
ここが私の全てをぶつける場所だと。
そして私は、彼らの間に立ち入り、二人を先へ向かわせ、私は赤のランサーと交戦を開始した。
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大きな戦闘音が鳴り響く。
武器が何度もぶつかり合う音。
地面を強く蹴る音。
創り出された魔力の槍が何本も地面に突き刺さる音。
鎌から放たれる魔力の斬撃が空間を切り裂く音。
激しい戦闘を繰り広げている両者だったが、アサシンとランサーは一度距離を取る。
「まさか、この聖杯戦争に俺とここまでやり合うサーヴァントがいるとはな。どこの英霊かは知らぬが、なかなかやるようだ。」
「...何度か打ち合って分かった。お前、神性を持っているだろう?私がお前と打ち合えてるのは、そのおかげだ。」
「なるほど...神殺しの異名か。その特性を持つのはかの影の王国の女王だけだと思っていたが...」
「私はイレギュラーで召喚されたサーヴァント。サーヴァントとしての知識は召喚された際に持っていたが、英霊の座にいたわけではない。この能力がその人だけだという認識は、間違っていないさ。」
「英霊の座にはない...そうか、別次元からの来訪者というわけか。そのような者と戦える機会は滅多にない。だが状況が状況だ、これ以上お前に時間をかけている場合ではない。すまないが、そろそろ決着を付けさせてもらうぞ、黒のアサシン。」
「残念だ。私はもう少し、戦っていたいのだがな、赤のランサー。」
ランサーは地面を強く蹴り、アサシンに向かって飛び込む。
パワーにおいて遥かに上回るランサーを、スピードで補うアサシン。
一撃一撃が周囲を破壊する程のランサーの攻撃に対し、アサシンは瞬間移動でかわしながら、ランサーの死角に入り攻撃を打ち込む。
しかしランサーは歴戦の英霊。
死角からの攻撃を、彼は槍で軽くいなす。
(死角からの攻撃ですら全て防がれる...それにあの鎧......かなり厄介だな。)
『
物理・概念を問わずあらゆる敵対干渉を削減する無敵の鎧。
黒のランサーの放つ杭を何千と受けても、かすり傷程度しか受けなかった。
これがあるかぎり、ランサーへのダメージは十分の一しか届かないとされ、鎧を纏ったランサーが損傷を受けたことは皆無に等しい。
だがアサシンにとって、鎧がどれだけ最強であろうと、それを貫く手段があることは、本人が一番よく分かっていた。
(『あれ』なら確実にダメージが通るだろうが.....)
「真の英雄は眼で殺す――」
突如、ランサーの目が光り、強力な光線が放たれる。
「っ!?」
ランサーの視線を追うように走る光線は、放った箇所で大爆発が起き、アサシンの周囲の瓦礫を粉微塵に吹き飛ばす。
大爆発が起きた黒煙の中から、アサシンはランサーに向けて素早く飛び掛かる。
再びお互いの武器がぶつかり合う。
ランサーはすぐさま大きく後ろへ飛び、空中からアサシンに向けて槍を投げるように構える。
「『
放たれた槍は巨大な炎を纏い、アサシンへと向かって放たれる。
「『
光の粒子によって巨大化した鎌を振ると、放たれた斬撃は炎槍と激しくぶつかり合い、爆発が起きる。
直後、アサシンは爆発によって起きた黒煙から飛び出し、ランサーよりさらに上空に飛ぶ。
そしてランサーへ向けて、鎌を振り斬撃を飛ばす。
ランサーは自身に向かって飛んでくる斬撃を、無敵の鎧で防ぐ。
「これでは決め手にならんか。」
空中で斬撃を受けたランサーは、大きく吹き飛び地面へ着地する。
「見事だ。お前の戦闘に対する能力と気迫は称賛に値する。どうやらお前を仕留めるには、今のままでは不足らしい...」
ランサーの胸に埋め込まれた宝石のようなものが赤く強く光る。
「.....」
アサシンは鎌を強く握り直す。
「故に、俺はお前を打ち倒すための、絶対破壊の一撃が必要だ!」
「っ!!」
ランサーの言葉が終わると同時に、彼の鎧と胸の宝石が激しく燃え上がり、頭上に巨大な槍が出現する。
そして辺り一帯に激しい炎が燃え盛り、アサシン諸共広範囲を取り囲む。
「我が名はカルナ。黒のアサシンを名乗る者よ、その名を聞きたい。」
「.......■■■。■■■・■■■■■■だ。」
「良い名だ。では、この第二の生において最大最強の我が好敵手に、最上の敬意をもって、この一撃を捧げよう!」
「......」
しばらくカルナを見つめたシエルは、にやりと笑うと大きく深呼吸をする。
「来い!!」
カルナの一撃を迎え撃たんと、■■■も鎌を大きく構える。
「神々の王の慈悲を知れ。」
「時は満ち、
「絶滅とは是、この一刺。」
「これより先は、生の終着点。」
「焼き尽くせ──『
「死せよ──『
お互いの全身全霊を賭けた宝具がぶつかり合う。
しかし、威力、範囲において遥かに上回るカルナの宝具との差は歴然であり、■■■の宝具は次第に押されていく。
(さすがに分が悪いな.....だが...!!!)
そして、マグマのように燃え盛る炎は地面に衝突し、大規模な爆発が起きる。
勝負は決したと思ったのもつかの間、カルナの背後に炎を纏い、今にも燃え尽きそうな■■■が現れる。
「........!!!」
「なにっ!?」
魔力を一気に消費した反動と、ほぼ消えかけの魔力に気付きづらかったからか、カルナの反応が少し遅れる。
彼女の宝具、『
宝具を放つと同時に、「相手を絶命させる」という結果に基づき■■■は自身の意識に関係なく動く。
それは、彼女自身の霊基が完全に消失するまで有効となっている。
最大の宝具を撃つため鎧を犠牲にしたカルナに身を守る術は無く、■■■の振りかざした鎌はカルナの心臓を的確に貫く。
「.......なるほど........『相手の命を刈る』という結果を先に作り、『鎌を振るう』という原因が作られる.......因果逆転の宝具か.........」
突き刺さった鎌は粒子となって消え、カルナはその場で膝をつく。
「.......」
「.....気は済んだか?.....黒のアサシン。」
「.....あぁ。全てを出し尽くした。文字通りこの身、この命尽きるまで戦った...令呪に導かれた戦場だったとはいえ、これほどに満足のできる戦いは、今までなかったかもしれないな。」
「それは俺もだ。これほどまでの強者と巡り合い、戦えたこと、嬉しく思う。」
「......次また戦うことがあれば、決着を付けよう、カルナ。」
(そしてありがとう、玲霞。お前との旅、全てが苦痛だったわけではない。魂喰いこそしていたが、お前と過ごしたこれまで、まるで親友である彼女と共に戦場を駆けているような、そんな気分だった。雰囲気が似ているからだろうか....私はそれだけで、十分だったというのに......)
そして、■■■は燃え上がる炎と共に粒子となって、その場から姿を消した。
「そうだな...だが俺としては、次は肩を並べ、共に同じ敵を見て戦いたいものだな、■■■。」
そうしてカルナは、フッと笑いながら、■■■と同じように、光の粒子となって消えていった。
本編でまだ本名が明かされていないので、その部分は全て「■」で伏せられてる。