東北イタコは、その名の通りイタコ業を営んでいる。
シャーマニズムに精通し、霊的干渉もお手の物。霊媒師業界では、その名を知らぬ人間は居ないほどに絶大な力を誇る彼女。
決して驕ることはせず、妹二人の手本となるよう、努めて上品に振る舞う姿は、多くの男を魅了する。
というのが、彼女が被った仮面である。
現在、彼女は飲んだくれていた。
成人して間もないと言うのに、浴びるように酒を飲む彼女。その目の前には、妹の恩師である水奈瀬コウが座っていた。
「…で?米花町はどうでした?」
「二度と行きたくありませんわ!!
なんなんですのあそこ!?悪霊の溜まり場じゃありませんの!!」
「僕は見えないんで知りませんが、そんな酷いんですか?」
「酷いの何の!!
殺された霊は余程満足行く殺され方じゃなければ確実に悪霊になるんですのよ!?」
「満足行く殺され方って何だ」
酷いパワーワードを聞いた。
コウは顔を顰めながら、ジュースをストローで啜る。
完全に酒で潰れかけている。面倒くさいことこの上ない。明日も予定があると言っていたが、大丈夫なのだろうか。
そんなことを考えながら、隣に視線を向ける。
そこには、虚な目で何事かを呟きながら、無心に焼き鳥を貪り食う少女がいた。
「全然祓えんのやけど…。
ウチ、今日18回も討伐したんに、あの嫌な感じ全然取れへんかった…。
もうえらい…。方相氏やめたい…」
「やめたらあの町終わりますわよ」
「……わかった、やる」
少女…如月ついな、もとい源氏名「役ついな」は、方相氏である。
悪鬼羅刹を殲滅し、人の世に安寧をもたらすことを天命とした彼女は、その志半ばで挫折しかけていた。
原因は、イタコたちが訪れた町にある。
その町の名前は、「米花町」。日本のヨハネスブルクという、なんとも不名誉な称号を持つ都市である。
あまりに多すぎる犯罪発生率に比例するように、悪霊悪鬼どころか、いわゆる邪神まで跋扈するに至っている。ここまで酷い事例は、歴史上類を見ない。
ついなとイタコは、その気苦労を吐き出すように、深いため息を吐いた。
「もう嫌ですわ…。あの町での依頼はやりたくありません…」
「そっちも大変やなぁ…。降霊する瞬間は無防備やもんな…。
ウチはお国からの命令やから、嫌でも仕事せなあかんのよ…」
「たしか、皇室は神の血が混じってるから見えるんでしたっけ。
宮仕えだと大変ですね」
「ほんまやで…」
ついなは国に仕える方相氏である。
自営業のイタコと違い、国により給金が支払われているため、下手に仕事を蹴ることが出来ないのだ。
国相手に好き勝手振る舞う度胸なぞ、ついなにはかけらも無かった。…目の前の教師にも見習ってもらいたいところである。
「イタコは兎も角、方相氏的に霊ってどうなんですかね」
「悪霊やったら悪魔カウントやから、祓わなあかんよ。あの数と密度と質やったら、ウチやなかったら三秒で死んどる」
「よく生きてますねあそこの人たち」
流石宮仕え。よく分からないが、方相氏としての実力はピカイチらしい。
そんな場所で日常を謳歌する人間は、どんな胆力をしているのだろうか。
「そういう感覚がうっっっっ…すいヤツばっかおるんちゃう?
ウチらみたいに見えるんやったら、危害加えられるん分かっとるから近づかんし。
それに、干渉も出来へんくらいのパンピーは、ただ瘴気に当てられて短気なって人殺しとうなるくらいや」
「致命的な実害出てない?」
異様な犯罪発生率の高さはそれが理由か。
負のループに入ってないか、と思いつつ、コウは目の前に置かれた唐揚げを口に放った。
「で。二人とも、暫くは米花町住まいなんですよね」
「せやな。ウチとイタコさんとで二人暮らし」
「『友人の子を預かってる』って設定でいきますわ。私は成人したばかりですから、親子設定は流石に無理かと」
「…まぁ、無難だと思いますよ」
何が悲しくて気苦労の多い町に住まなければならないのだろうか。
そんな不満が透けて見えるようだ。
二人の沈んだ様子に、コウは容赦なく言い放った。
「お歳暮くらいは送ってあげますよ。生きてたらですけど」
「くたばれ」
「死ね」
「辛辣ですよね君ら」
♦︎♦︎♦︎♦︎
その光景は、あまりに現実離れしていた。
時は少し遡り。出先で突如起きた事件。
日常の一部を飾るスパイスにしては、あまりにも背徳的且つ物騒なソレに、江戸川コナンは巻き込まれていた。
江戸川コナンこと、本名「工藤新一」は、今でこそ小学一年生の姿をしているものの、元は高校生である。探偵として活躍し、「日本警察の救世主」とまで称されるに至った、現代のホームズ。
「黒の組織」と呼ばれる犯罪組織の陰謀に巻き込まれ、体が縮んでしまった彼は、江戸川コナンとして生活しながら、組織を追っている。
その保護者たるのが、現在「眠りの小五郎」として世間にその名を轟かせる名探偵こと、毛利小五郎。
厳密には保護者ではないのだが、細かいことは置いておく。
彼は数ヶ月前まで、刑事事件の捜査などままならない程に推理力のない探偵であった。探偵として大成することになった理由は、江戸川コナンにある。
江戸川コナンは、さまざまな小道具を協力者たる阿笠博士から授かっている。
ソレらを駆使し、小五郎を眠らせ、変声機で彼に成り切ることで、あたかも彼が推理を披露しているように見せかけているのだ。
閑話休題。
毛利小五郎の娘、毛利蘭含む三人が遭遇したのは、刺殺された遺体が発見された事件であった。
場所は食品会社の所有する、商品保存用の冷凍施設。凍死の可能性もあったが、死斑の色から事後工作として放り込まれた可能性があるとのことだった。
容疑者は三人。二人はそこの職員で、もう一人は依頼を受けて訪れていたと言う女性。
その女性は、容疑者の中でも特に異彩を放っていた。
「東北イタコ、二十歳。名の通り、イタコをやってますわ」
白い髪に、薄く青がかかった着物。
儚げな印象を受ける振る舞いの中に、力強さも感じられる。
大和撫子。コナンたちのイタコに対する第一印象は、まさしくその四字熟語であった。
「イタコというと…、恐山の?」
「勘違いされがちですが、恐山だけで活動するわけではありませんわ。正式に言うならば、霊媒師…ですわね。
私の場合、出身が東北だからイタコと名乗っているに過ぎませんの」
いくらなんでも、名前がそのまま過ぎないだろうか。
偽名の可能性を考慮して、疑惑を浮かべるコナン。…彼の偽名もどっこいなのだが。
彼が知ったことではないが、イタコの名前は普通に本名である。両親のネーミングセンスが致命的に欠落しているだけなのだ。
「本日はご依頼があって、この施設で亡くなってしまった方の言葉を、職員さんたちに伝えていました。
地方から来たばかりですので、被害者の方との面識はありませんわ」
「ほぉ…。そうなのですかな?」
「これ、新幹線のチケットですわ。で、こちらがタクシーの領収書。本日の日付で、金額も駅からここまでの料金でしょう?
…まさか来て三十分ほどでご遺体を見る羽目になるとは思いませんでしたが」
イタコは一通り自身の無実を証明すると、ふぅ、と息を吐く。
隠してはいるが、本来ずぼらな彼女がここまで周到に証拠を用意したのには、訳がある。
ただ単に、殺人事件に遭遇した挙句の誤認逮捕を免れたかったのだ。
記録の塊と揶揄されるコウから、「出来る限り自分の動向は記録しておけ」と口酸っぱく言われ、領収書やらチケットやらを破棄せずに保管。
それが功を奏して、イタコは即座に容疑者から外れることとなった。
「…逆に怪しいですな」
「ちゅわっ!?」
しかし、そこまで周到に用意すれば、疑われるのは必然なわけで。
小五郎の言葉に、イタコはびくりと肩を震わせ、目を白黒させた。
「そもそもイタコという時点で怪しい」
「事件に関係ありませんわよ!?本当にこの人大丈夫なんですの!?」
ごもっともである。
そもそもの話、これは刺殺なのだ。凍死にあるはずの特徴は出ず、かと言って他に現場足りうる場所があるわけでもない。つまり…。
「…こほん。そもそもの話、刺すには近づく必要がありますわ。
冷蔵施設は食品会社の要とも呼べる場所。
無論、関係者以外の立ち入りは禁じられており、厳重なセキュリティに守られた場所ですのよ?私は来賓とはいえ、部外者。現場に立ち入れる筈もありません。
現に私の痕跡は、この場にないでしょう?
私の職が怪しいと思うのは勝手ですが、事件とは関係ない理由で疑われても困りますわ」
「うぐっ…」
(よ、容赦ねー…)
言葉のマシンガンに、ものの見事に撃沈する小五郎。
小五郎に疑われた手合いは、大半が詰め寄られて慌てるのだが、イタコは違った。
容疑者の中に入れられたのも、現場の入り口近くにある部屋で仕事をこなしていただけなのだ。冷蔵施設にある空調が効いた部屋には入っていない。
「やましいことがあれど、緊急時は開けっ広げにしろ」。コウからのアドバイスが立て続けに役に立っているのには複雑な心境だが、疑いの目が晴れるならば仕方ない。
因みに、これを真に受けたある女性は、事件に遭遇した際に、アリバイ証明のため、臆面もなく下ネタを放ったらしい。別の意味で白い目で見られた。
「私、次の仕事がありますの。
容疑者から外れたのなら、ここから去っても問題ありませんわね?」
「あ、いやっ。その、解決するまでは、まだ疑いが晴れたわけでは…」
「………故郷が恋しい」
故郷ならば、亡くなった方の霊を降ろせば即解決なのだが。
東都では通用しない、と親に耳にタコが出来るほどに聞かされていなければ、実行に移している。
イタコは心底面倒そうにため息を吐いた。
彼女の死生観は、少し特殊だ。昔から「見える」体質であり、死と生の境界が曖昧だった彼女。
普通であれば、吐き気を催すような凄惨な死に様さえ、彼女にとっては日常の一部。
何故なら、「死んだ時の損傷は、そのまま霊体に反映される」のだから。
今なお、死んだ人間の霊が、彼女には見えている。自分の死体を見て、狼狽えているという、事件現場で実によく見る光景が。
子供や小五郎が事件を捜査する姿を、霊と共に見守る。
霊は自分が死んだことを比較的すぐに自覚したのか、狼狽えた時間は、十分にも満たなかった。
と。そこでイタコは異様な光景を見る。
(…あれ?普通ならば殺された霊は、怨恨に呑まれ、悪霊まっしぐらなのですけど…)
先程、満足させて祓った霊もそうだった。
まだ知性が残っていたから良かったものの、殺され方が凄惨であればあるほどに、怨恨に呑まれ、知性のかけらもない畜生に落ちてしまう霊は多く居る。
特に、トロピカルランドとかいう遊園地は酷かった。元は、首を切られた男の霊だったのだろう。切られた首から、異形の首が生えていた。
人を引き込む結界があったものの、ついなが祓ってくれたのは、記憶に新しい。
米花町、並びに隣町の杯戸町は、悪霊の温床だ。祓う力を持つ者の中でも絶大な力を持つついなと、霊媒師の中でも豊富な経験と力を持つイタコ。この二人のみが派遣されたのは、必然だと言えた。
閑話休題すると、この死に方で悪霊とならないのは、まずあり得ないのだ。
イタコは死にたてホヤホヤの死体から、抜け出た霊が悪霊となる過程を知っている。
殺されたと自覚した瞬間に、霊は悪霊と化すのが必然。それが、当たり前である。
となれば、考えられる可能性は一つ。
「…自殺、ですわね」
「えっ…?」
満足の行く死に方。不謹慎かもしれないが、この死に方ならば確実に自殺だ。
他殺だとすれば、なにかしら納得のいく最期であるならば、悪霊とはならない。でなければ、戦が起きている時点で、世界は霊に侵食されている。あの手合いで死んだ人間は、「死んでも仕方がない、自分は精一杯やった」と諦めに似た満足を感じているからだ。
現代社会で、納得のいく最期を他殺により迎えられる人間は、殆どいない。誰かを守っての最後ならまだしも、それならば生き延びた目撃者がいるはずなのだ。
「適当こいてんじゃねーぞ、このシロートめ。幽霊にお話でも聞いてんのか?証拠にならねーんだよそんなの」
「証拠にならないのは確かですわね。
ですから、話半分に聞いていただいて結構ですわ」
小五郎の呆れた言葉に、イタコは淡々と返す。
彼女の故郷では、その力を証拠の一つとしてカウントすることは、珍しくない。証拠と言っても物的なものではなく、証言の一つとして纏められるのだが。
無論、被害者に直に話を聞く分、物的証拠のヒントになりうる情報が転がっているのだ。
時間は有限。イタコは事件解決のため、死体の前にいる霊の記憶を覗き見る。
「……この会社、労働基準法の違反を長年にわたって行なっていますわね?」
「「なっ…!?」」
「証拠は…この方のロッカー。
鞄の中にある鍵つきの箱の中に、USBメモリが入ってますわ。鍵はご遺体のパンツの中にありますわよ」
「………ほ、本当だ…」
本当に、パンツの中から鍵が出てきた。
コナンは思わず、イタコの方を見上げる。
彼女の纏う雰囲気。黒の組織と呼ばれる犯罪組織のメンバーよりも色濃い、有無を言わさない迫力。
言霊と言って、放つ言葉には霊が宿るという考え方が、日本にはある。もし、彼女が本当のイタコならば、その力を存分に奮っているのではないか。そう思わせるほどには、彼女の言葉には逆らえない圧があった。
「ど、どうだった…?」
「本当に、ありました…」
「…で、社長さんには労働基準局のお偉い方と繋がりがあるのでしょう?
名前は…新田幸雄さんと言う方ですわ。不正の証拠は…数年前に亡くなった方のデスク。今は吉村さんという方のデスクですわね。
そこの二段目の棚に特殊構造となっている場所があって、USBメモリが隠されています」
「今すぐ確認しろ!!」
数分経っただろうか。
場にいた警官が確認したところ、言われた場所にUSBメモリが隠されていた。
中を開くと、こちらも証拠が残っている。
全員がたじろぐ中、イタコはなおも続けた。
「数年前に亡くなった…いや。『殺された』方。…死因は凍死で、空調部屋にある開閉装置の故障によって閉じ込められた末の死と見られていましたが、違いますわ。
開閉装置の故障は…誤魔化されていますが、本来は殴打によるものでしょう?そちらの方の業者も、金で買収したそうですわね。
証拠は全て、今回亡くなった方のUSBに入っています。勿論、内部の監視カメラの映像さえも」
出鱈目だ、とは言えなかった。
一応、証言ではあるのだ。警察が恐る恐る調べたところ、イタコの言うことは全てにおいて当たっていた。
自殺だという証拠も出た。どうやら、普通に訴えても揉み消されるのがオチだと思い、命を犠牲に会社を変えようとしたらしい。
社長はまだ時効では無かったため、即座に逮捕され、連行されていった。
「ご、ご協力、感謝します…」
「いえ、ここの霊を満足させて祓うのが、今回の仕事でしたので」
あまりに現実離れした事件解決に、皆が目を丸くする。
イタコは本来、こういった大それたことをしない。しかし、今回は米花町という悪霊の巣窟で起きた出来事。
霊同士が融合し、より事態が悪化することもあり得る。イタコは数年前の悪霊と、今回の霊を満足させるために、事件解決に力を奮ったに過ぎない。
「…ああ、マスコミ方に公表はしないでいただけるとありがたいです。
霊が関係する事象は、一度縁が出来ると、取り返しのつかない事態にも結びつきます。
ただ知るだけでも危険極まりない…。そんな世界ですので」
彼女はそれだけ言うと、一礼し、その場を去っていく。
放心していたコナンは、慌てて気を取り直すと、イタコに駆け寄った。
「ねぇ、お姉さん!!」
「ぢゅわっ!?」
その声に驚いたイタコが、派手に転び、壁に激突する。
なんともしまらない姿である。本当に、先程の淡々とした振る舞いを見せた女性と同一人物なのだろうか。
たんこぶが出来ていないか、確認するために頭をさするイタコ。
それに対し、コナンは頭を下げた。
「ご、ごめんなさい…。ビックリさせた?」
「ええ…。お恥ずかしい話ですが….、その、霊害には強いのですけど、ドッキリとかには弱いので…」
「こら、コナンくん!ダメじゃない、ビックリさせちゃ!
その、大丈夫ですか?」
「こぶにはなっていませんわ…」
いたた、と呟きながら、イタコはなんとか立ち上がる。
一度体勢を崩せば、大変動き辛そうな着物ではあるが、イタコは慣れているのか、即座に立ち上がった。
その際に埃が付着したらしく、イタコは着物を撫でるように叩いた。
「…で、どうかしましたの?えぇっと…、確か、キッドキラーの子でしたわよね?」
「えっ?僕のこと、知ってるの?」
「ええ。この町を調べていれば、嫌でも名前が出ますわよ」
ほら、と携帯を取り出し、画面をコナンに見せるイタコ。
確かに、キッドキラーとしての自分の記事が載っている。怪盗キッドや、それに真っ向から喧嘩を売る鈴木財閥の知名度と合わせて、自身の存在もかなり認知されているようだ。
「それで、私に何を聞きたいんですの?」
「あっ、そうだ!お姉さん、なんで死体のちょっと上を見てたの?」
「……?この歳の子は、まだ見える頃だと思うのですけど…。
…遠目からでも薄々わかっていましたが、やはり魂がおかしいですわね。体に見合わないような…。まるで、体だけ縮め…」
「僕イタコさんのお仕事のこと聞いてみたいなぁ!!」
あっぶねぇ。イタコって、そんなこともわかるのか。
普段ならば、科学で証明されていないことには否定的なコナンも、今回ばかりは「霊的事象」に納得しつつあった。
先程のイタコの目線。死体ではなく、そのそばに立つ誰かを見るかのような、そんな視線。その視線を逸らした途端、よく知りもしない会社の内部事情を、恐ろしいまでに的確に当ててみせた。
あらかじめ知っていた、と言えることが出来たなら、コナンも即座に納得していたはず。
しかし、彼女は先日、東北から訪れたばかりの女性。今回訪れた会社は、そんな片田舎の女性が内部事情を知る可能性など、万に一つもない。
知り合いがいたとして、何故、誰も気づかなかったUSBメモリの場所を当てられたのか、と言う疑問が出てくる。
それらを加味すると、「死者の声を聞いている」というのが、最も納得できた。
イタコは暫し唸ったのち、手短に伝えるべく、言葉を選んだ。
「手短に言うと、霊と生者の仲介役…って分かるかしら?」
「うん」
「あら、賢いですわね。…まぁ、そんなところですわ。
教えるのはこれだけ。これ以上は…知らないことが望ましいですわよ」
────知った瞬間、気が触れるかも知れませんから。
これが江戸川コナンと、東北イタコの邂逅。
米花町を取り巻く陰謀と、その裏で育つモノを巡る、戦いの始まりだった。
「…あの、イタコさん。そっち、男用の更衣室ですよ?」
「ぢゅわっ!?」
東北イタコ…我らがクソガキ、東北きりたんと、我らがずんだ狂い、東北ずん子の姉。名前の通りイタコ。見える人には彼女のキツネ耳がガッツリ見える。カッコつけて帰ろうとしたら、男子更衣室に入ってしまった。蘭に指摘されるまで気づかなかった。
役ついな…本名は如月ついな。宮仕え。鬼の力を持って悪鬼羅刹を撃滅する方相氏。デコピンで家屋を吹き飛ばしたことがある。
実は日本の平和を守ってるスーパー中学生。米花町行きは盛大に泣き叫びながら駄々をこねて反対したものの、棄却された。
水奈瀬コウ…前作の「そうだ、先生になろう」の主人公と同一人物。並行世界の人間といった方が正しい。出番はもうない。
下ネタを大声で叫んだ子…エビフライ大好き。せやな。昨晩何してたと聞かれて「AV見ながらフルパワー072してた」と馬鹿正直に答えた。なんならドン引きするレベルでどぎついタイトルまで読み上げた。居合わせた関西弁探偵が顔真っ赤にして叱った。