イタコと方相氏にこの町は酷ですわ!!   作:鳩胸な鴨

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イタコさんの口が非常に悪いです。
今回、初めて事件を作ってみました。
正直、解決メインでやってるわけではないので、初心者も良いところなガバたくさんの物だと思いますが、温かい目で見守っていただけると幸いです。

追記…ガバを発見したので修正しました。


爆発が日常に溶け込んでるとかどういう町ですの!?

「ここかぁ、コナンの坊っちゃんが言うとったポアロっちゅうのは」

「探偵事務所の下にあって、『ポアロ』なんですのね。

…なんというか、この町、探偵由来の名前が多い気がしますわ」

 

二週間後。事件に巻き込まれたり、散々疑われたりしながら依頼をこなし、ようやく訪れた休息の時。二人は空いた腹を埋めるために、コナンによって紹介された喫茶店『ポアロ』へと足を運んでいた。

なんでも、ハムサンドが絶品らしい。スイーツに舌鼓を打つのが無難なのだろうが、あいにく二人とも洋菓子の類は、あまり得意とは言えなかった。

二人は期待を胸に、喫茶店の扉をゆっくりと開く。昼より少し前の時間帯ということもあってか、人は疎らで、席もちらほらと空きが見える。

と。褐色肌が眩しい金髪の店員が、イタコたちを見つけて声を張り上げた。

 

「いらっしゃいま、せ…ぇえええ゛っ!?」

 

次の瞬間には、派手にすっ転んでいた。

イタコとついなが慌てて駆け寄ろうとすると、同じく従業員の一人であろう少女が、転けた青年へと駆け寄った。

 

「あ、安室さん!?どうしたんですか急にすっ転んで!?」

「い、いえ…、その、バランスを崩しただけなので…」

「………ぁん?」

 

と。ここでついなは、安室と呼ばれた男に、見覚えがあることに気づく。

おかしい。以前会った時は、確か公安警察の一員で、降谷という名前だったはずだ。別人か、とも思ったが、それにしては似過ぎている気がする。

潜入捜査でもしてるのだろうか、と思いつつ、ついなたちは案内されるがままに席へと着いた。

 

「…ついなちゃん、知り合いですの?」

「確か、公安の人やったと思うで。

…そん時は降谷っちゅう名前やったんやけど、安室って名乗っとるちゅうことは、潜入捜査でもしとんのちゃう?」

「公安の方ですか…。あら?守護霊が五人もいますわね」

「愛されてたんやろうなぁ」

 

他愛もない会話…安室本人からすれば、とんでもない内容だが…を交わしながら、メニュー表に目を通す二人。

おすすめ欄には、ハムサンドとコーヒーが並んだ写真が貼り付けてある。写りがいい。写真から匂いが漂ってくるようだ。

二人してハムサンドを頼むことを即決し、女性店員に話しかけた。

 

「姉ちゃん、注文ええか?」

「はい」

「ハムサンドのランチセットを二つ。

私はアップルティーを、ついなちゃんは…」

「ウチもおんなじので」

「はい。ハムサンドのランチセット、ドリンクはアップルティーが二つですね。

少々お待ちください」

 

女性店員が「安室さーん」と、未だに引き攣った顔をする青年に声をかける。

どうやら、先ほどの話を聞いていたようだ。

しかし、イタコとついなは、久々に気を落ち着けることが出来る時間を堪能しており、その様子に気づかない。

と。そこへ、昼食を摂りにきたコナンと毛利親子が入店した。

 

「いらっしゃいませ、毛利先生」

「おーう…って、なんか顔色ワリーぞ?」

 

顔色が悪くなる原因がそこに居るからだ。

安室は内心ヤケ気味に愚痴ると、横目でついなを見る。

ついなと共に来た女性…イタコのことは全くもって知らないが、彼女と居る以上、協力者だと考えるのが妥当だろう。万が一にでも失礼があってはならない。

あの地獄の訓練を思い出せ。ボロを出せば物理的にも社会的にもクビが飛ぶぞ。

平静を装うために、なんとか呼吸を整える安室。

しかし、彼の平静をぶち壊すように、コナンが声を上げた。

 

「あーっ!イタコさんについな姉ちゃん!」

「お、コナンの坊っちゃんかー。

そういや、2階の探偵事務所で暮らしとる言うとったな」

 

最悪だ。優秀な協力者ではあるが、今だけは大人しくしておいてほしかった。霊的事象において、「好奇心」は即死ワードなんだ。

安室は震えようとする体を抑え、なんとかアップルティーを注いだ。

 

「安室さん、どうしたの?笑顔がぎこちないけど…」

「だ、大丈夫ですよ。ちょっと、窓に大きな虫が貼り付いていたのが見えただけで…」

 

長袖でよかった。半袖だったら、血管が千切れんばかりに浮き出た手が露出するところだった。

女性店員が安室の言葉に、「えっ!?」と慌てるも、すでに飛び立ったと言う体で説明し、恐怖心を和らげる。

ある程度落ち着いて、安室はハムサンド作りに取り掛かりながら、耳を傾けた。

 

「巫女というのは、実は科学でも立証されつつある存在ですのよ?

例えば、琉球神道にはユタという民間人向けの巫女様が多数いらっしゃいますわ。素養ある民間の方が覚醒の儀式を経て、新たなユタとなるのですが…。

覚醒の儀式の際、脳医学者が脳波の測定を行ったデータが存在してるのです。そこには未だに解明しきれない、謎の脳波が出たそうですわよ」

「へぇー…。物知りですね、イタコさん」

「ローカルテレビで放映されている程度の浅知恵ですわ」

 

安室も、その知識は少し齧ったことがある。

黒の組織で研究している、脳医学に関するデータで、心霊関連のものも多数あった。…まぁ、その研究者は揃いも揃って、謎の変死を遂げたのだが…。

 

「イタコさん、大学生なの?」

「いえ、社会人…というのも微妙ですわね。神職に就いてはいますけど。

妹たちは大学に行く予定ですわよ。上の方が、蘭さんと同い年で…、下の方が歩美ちゃんたちよりちょっと上ですわね。生意気盛りの五年生ですわ」

「妹さん居るんですか。会ってみたいです」

「ちゅわー…。1ヶ月のおやつが全部ずんだ餅になっていいなら、呼びますけど…」

「「「え?」」」

 

(なんだその斜め上過ぎる恐怖映像!?どんな教育受けたらそんな量のずんだ餅を人に食わせようと思うんだ!?食べ終わる頃には肌が鮮やかな緑色になるわ!!)

「お待たせしましたー」

 

安室が怒涛のツッコミを内心で吐き捨て、出来上がったランチセットを二人の座るテーブルへと置く。

どうやら、イタコたちはコナンたちと相席することにしたようだ。

同じ席に座り、談笑を交わすくらいにはこの町に馴染んでいる。

 

「あら、美味しい」

「ほんまや。…兄ちゃん、こんな特技あったんやなぁ」

「あ、あはは…」

「え?なに?知り合い?」

 

やばい。公安ってバレそう。

安室は冷や汗を流しながら、なんとかこの場を切り抜ける術を模索する。

コナンはなんとなく、安室が気疲れしていることに気づき、合掌した。

 

(安室さん、強く生きてくれ…)

 

結局。なんとかバレずに済んだが、あまりに疲れた顔をしていたため、組織からも公安からも、果てはポアロからも三日間の休みを貰うことになったという。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「…もうここ封鎖した方がええと思うんや、ウチ。遷都しよてお国に言おうな。

大阪とかどうやろ」

「大阪もどっこいって聞きましたわよ。なんでも米花生まれの鬼が渡ってくるとかで」

「もぉ嫌やウチおうち帰るぅう!!」

「おうち此処ですわよ」

「知ってたぁ!!」

 

役ついな、14歳。現在ガチ泣き中である。

わんわんと泣く彼女を宥めながら、イタコは今回の被害者を見る。

被害者。それはよりにもよって、イタコたちの自宅前で爆発した車の中に居たという老父だった。

車が爆発するという異常事態にも関わらず、テキパキと作業をこなし、野次馬もそこまで居ないのが逆に怖い。

その老父も完全に悪霊と化しており、下手したらここいらにいる人間ごと引き込みそうだったので、ついなが早急に祓っておいた。

 

「えぇっと…、この家の家主は…」

「私たちですわ、目暮警部」

 

捜査に取り組む目暮に、挨拶を済ませるイタコ。頻繁に起きる事件のせいで、すっかり顔馴染みになってしまった。

目暮はイタコの声に気づくと、軽く会釈した。

 

「おや、東北さん。これはどうも」

「…酷いですわね。車の爆発事故…と言うわけではないのでしょう?」

「いえ、まだ判別はできていない状況です」

 

また爆発か、と愚痴る目暮警部。

そこまで辟易するような頻度で爆発が起きる町ってなんだ。バラバラになった車の破片を、科学捜査をする訳でもなく即座に判別できるくらいには慣れてるのか。

そんなことを思いながら、イタコは目暮に事情聴取を受けた。

 

「先ほどまで、ポアロで昼食を摂っていましたわ。これ、レシートです」

「ふむ…。では、この老人と、何かしらの関係はありますかな?」

「いえ…。お顔も初めて見ましたわ。

名前も、もちろん知りません」

 

イタコは言うと、ふと思い出したように付け足した。

 

「…大家なら知ってるかと思いますわ。

すぐに呼びます。彼女、年がら年中暇を持て余してるので。

少々、風貌に面食らうかもしれませんが、気にしないでいただけると」

「頼みます」

 

イタコは辟易しながら、携帯を耳に当てた。

暫くコール音が響いたのち、大家である少女…いや、童女の声が響く。

 

『はいはい、何かな?』

「ちょっと、貴女が用意してくれた家に来てくれませんか?

その…、家の前で車が爆発したらしくて。

被害者の方に見覚えがないか、確認しに来て貰えませんか?」

『あー…、なんだ、いつものことか』

「車の爆発なんて滅多に起きませんわよいつものこと扱いしないでくださいまし!!」

『この町に住めば嫌でもそう思うよ。すぐに行くから、ちょっと待ってて』

 

イタコは知らないが、米花町では爆発は春の季語としてカウントされつつあるらしい。

麻痺した感覚にツッコミを入れた後、イタコは通話を切り、携帯を仕舞った。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

数分後。コナンたちも駆けつけ、事件の捜査を行なっている中。

容疑者すら浮上しない中で、使い古されたであろう、レトロというには情緒のかけらもない古さあふれる車が、現場前に駐車される。

高木刑事がその侵入を止めようと足を運ぶも、イタコにより制された。

 

「大丈夫ですわ。先ほど話した大家さんところの車です」

「ああ…」

 

高木が下がるや否や、一人の男性が運転席から降りてくる。

それに続くように、ロリポップを口に含んだ童女が車から降りた。

 

「やっほ、お待たせ」

「あら、タカハシも居たんですの?お呼びでないんでさっさと帰ってくださいまし」

「ここまで運転してきたの俺なのに!?」

「タカハシ、ハウス」

「お嬢!?」

 

恒例となったいじりを一通り終えると、童女が高木へと歩み寄る。

その手には、一眼で数えきれない程のロリポップが入った袋が握られており、それを高木へと差し出した。

 

「刑事さん方、お疲れ様。コレ、アイからの差し入れだよ。

いろんな味があるから、皆で分けてね」

「あ、ありがとう。そっちの男の人が大家さんかな?」

 

高木刑事が笑顔でそれを受け取り、大家だと目星を付けた男性へと視線を向ける。

それに気づいた男性は、首を横に振った。

 

「大家は俺じゃなくて、お嬢」

「……………………え゛!?」

 

高木刑事の喉奥から、妙な声が放たれる。

ロリポップを咥え、ぬいぐるみを抱えている、どこからみてもコナンくらいの童女。

こんな童女が、この家の大家とはどういうことだろうか。

高木刑事がそんなことを思っていると、アイがぺこりと頭を下げた。

 

「どーも、大家の月読アイだよー。

爆発して死んだって言うお爺さんの写真ってあるかな?」

「…あ、えっと、これ…」

 

不思議な雰囲気を纏う童女…月読アイが、高木刑事から写真を受け取る。

恰幅のいい、少しキツい印象を受ける老父。

その風貌を確認すると、アイは納得したように頷いた。

 

「やっぱり殺されちゃったかー」

「…この人のこと、知ってるのかい?」

 

殺されたことに驚きもせず、小さくため息を吐くアイ。

高木刑事が優しく聞くと、アイは軽く頷いた。

 

「アイの将棋仲間でね。貯金が目標まで溜まりきったって自慢してたよ。

名前は萩尾虎座右衛門。今日、そこの喫茶店で会う約束をしてたんだ。

車は此間、ウチでメンテしたばっか。だから、事故の線は有り得ないんだよね。

殺された理由は…多分、貯金してたお金だと思うな。億は超えてるらしいから」

「おっ…!?」

 

億越えの遺産。それを聞いた目暮警部、及び小五郎の目が変わる。

アイはと言うと、そのまま被害者の人物像について語り始めた。

 

「恨まれるようなことして、お金稼ぎはしてなかったよ。普通にコツコツ働いて、漸く貯まったんだって。

で、この貯金のことを知ってるのは、私を除外すれば、家族だけらしいよ?」

「「今すぐ呼べ!!」」

 

目暮警部、小五郎が叫ぶと共に、警官たちが動き始める。

捜査に動きが出た直後、アイは役目は終わったとばかりに踵を返した。

 

「帰ろっか、タカハシ。飴ちゃんなくなっちゃった」

「虫歯になるぞ、お嬢。その歳で虫歯は後に響く」

「どの歳でも響かんか?」

「お嬢はまだ永久歯が生えてないからな。これから形成される永久歯に響くんだ。

ついな嬢もまだ生え揃ってないんだから、気をつけろよー」

 

皆が談笑を交わしている中、コナンが手持ち無沙汰だったイタコに駆け寄る。

 

「ねぇ、イタコさん」

「コナンくん、どうしたんですの?」

「あの女の子と男の人、誰?」

「女の子の方は大家で、男はその舎弟ですわ。舎弟の方は認識しなくて結構」

 

なんて酷い扱いなんだ。

人畜無害そうなイタコからこんな扱いを受ける人間が居るのか、と思いつつ、男へと視線を向ける。

男はと言うと、下手な芝居でよく見るような、泣き崩れる仕草をする。

 

「イタコ嬢、そろそろ俺泣くよ?いいの?いい歳した男のガチ泣き見ることになるけど」

「生き恥が恥の上塗りしたところで、罪悪感なんて感じませんわ」

「酷いっ!アタイの存在ってこんなに軽いのねっ!」

 

イタコが男に向けたのは、道端のゴミを見る目だった。

慈悲深い性格の彼女にここまで嫌われるとは、どんな人間なのだろうか。

コナンがヒクヒクと顔を引き攣らせていると、男は立ち上がり、なんでも無いようなケロッとした顔を浮かべた。

 

「で、イタコ嬢。今回逝っちゃった爺さんはちゃんと祓ったのか?」

「…タカハシ。そのデリカシーの無ささえ治せば、人扱いしますわよ」

「無理だな。ペットの躾すらできないイタコ嬢の耳が取れないみたいに」

「一言多いわ枝豆と一緒に茹でて摺り下ろしたろかお゛おん?」

 

なるほど、嫌われるわけだ。

飄々とした態度に、余計な一言。

この米花町で真っ先に殺される人間ランキング堂々の一位だろう。

しかし、気になるのは最後の言葉。

イタコがペットを飼っているという話は聞いたことがない。

コナンは捜査を横目で見ながら、目の据わったイタコに問うた。

 

「イタコさんって、ペット飼ってるの?」

「ん?ああ、飼って…」

「タカハシ」

 

と、男が答えようとした時。

イタコが肩に手を置き、首を横に振った。

 

「無差別銃撃してるのと同義ですわよ。

…この町で対応できるのは、私とついなちゃんだけなのですから」

「……今のはマジで軽率でした、さーせん。

なぁ、ボク。この町のためにも、今のは忘れてくれ。な?」

 

目がマジだった。

この二週間で、霊的事象は実在していることが、薄々わかりつつあったコナン。

初めて会った時の「知るだけで危ないモノもある」と言う言葉を思い出し、冷や汗を流しながら頷いた。

 

「あ、親族が来たみたいだよ」

「…なんというか、見るからにアッパラパーな家族やなぁ」

「ドラ息子夫婦とドラ孫が居るとか言ってたよ。まさにそれだね」

「ドラ孫とかいう単語初めて聞いたわ」

 

現れたのは、アイが言うように、あからさまなファッションの男女二人と、まだ幼いながらも邪気を纏う子供。

いかにも「金持ち」と言いたげなブランド品を、組み合わせも考えずにとりあえず着こなしてみた…と言ったところだろうか。

両親の影響で、高級品慣れしたコナンからすれば、めちゃくちゃも良いところだ。

 

「あのクソジジイくたばったの?マジで?」

「漸くか。さ、ジジイの金で飯でも食うか」

「オレ、寿司がいい。回らないやつ」

 

仮にも親族が死んだ時の反応では無い。

警察もこれには面食らい、あまりの不謹慎さに怒りを滲ませる者まで現れる。

その中には、ついなも含まれていた。

 

「……なんやあいつら今すぐミンチにしたろか」

「ついな嬢が言うと冗談じゃないんだけど」

「ほっといても悪霊呼び寄せて死にますわ。

ああいう性格は、悪霊にとって絶好の餌。

それはそれはもう、夜中の蛍光灯に集る虫みたいに寄って来ますわよ」

「……対応は?」

「性格矯正として刑務所か寺にブチ込むだけで済みますわよ」

 

刑務所ってそう言う面ありますし、と付け足し、事件の行く末を見守るイタコ。

コナンは「僕行くね」と場を離れ、遺族らの話を聞きに行った。

所々、聞くに耐えない罵詈雑言や、モラルを欠いた発言が散見されたが、四人は既に気にしていなかった。

 

「……ちゅわ?」

 

と。イタコが爆発した車の側に、小さな繊維片を見つける。

もしかすれば、証拠品かも知れない。

イタコは近くに居た小五郎を呼び、落ちた繊維片を指した。

 

「この繊維片、もしかすれば証拠品かも知れませんわよ」

「ふむ…。ハンカチか何かですかな?

…焼けたというより、破けたみたいな切り口だが…」

「おじさん、見せて!」

「あっ、おい、こらっ!」

 

小五郎が叱るのを待たず、コナンが繊維片を見る。

見たところ、ハンカチだろうか。

しかし、ソレにしては手触りがやけにザラザラしている。オマケに、焦げた場所以外も、殆どどす黒く汚れている始末。

と。アイがコナンの手に持ったソレを覗き込んだ。

 

「あー…。アイがお爺さんに渡したのだね。

……でも、おかしいな?」

「どうかしたか?」

「いやね、昨日家にお邪魔した時、ソレを無くしたって言ってたんだよ。

無くさないように、厳重に保管してたって言ってたし。

アイの手縫いだから、この世に一つしかないスペシャルデザインなのに。耐火性にも優れてた代物だったのに、ここまでボロボロになるなんて…」

「…何者なんだ、この子?」

 

コナンが首を傾げると、ゲンコツがその頭に振り下ろされる。

小五郎が「邪魔すんなっつってんだろ!」と怒鳴り、その首根っこを掴んで現場から離していく。

その姿を見届けながら、アイは「あー、そゆこと」と頷いた。

 

「何か分かったんですの?」

「まーね。小さな探偵さんが解いてくれると思うよ。

今日のは割に簡単だったねぇ」

 

言うと、舐め終わったロリポップの棒を咥えるアイ。

こんな童女でさえ、事件慣れするのか。

イタコとついなは居た堪れない気持ちになり、深いため息を吐いた。

 

「…なるべく早く狐の力を解放しますわ…」

「一年ここを封鎖してくれへんか、お国に頼むわ。大丈夫。更地になる代わりに平和にはなるから」

「ついなちゃんの案はやめて欲しいかなー」

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「朝からの行動?オレと嫁は今までずーっと家で酒飲んでた。小太郎も一緒に騒いでた。

アルコール反応も…ひっく。あるだろ?

ほら、これ写真な」

 

コレは酷い。

乱痴気騒ぎも良いところな惨状が、写真に写っている。

コナンは小五郎に差し出された写真を覗き込みながら、苦笑いを浮かべる。

と。写真の中に、一箇所の致命的な「証拠」を見つけた。

コナンは即座にイタコとついなの家の塀に隠れ、小五郎の首筋を腕時計型の麻酔針を射出する装置で狙い撃つ。

 

「はにゃっ!?にゃ、にゃに、にゃああ…」

「も、毛利くん!?」

 

狙い通り、塀にもたれかかる形で、ぐっすりと眠る小五郎。

コナンは蝶ネクタイ型の変声機のチャンネルを操作し、声を小五郎に変えながら推理を開始する。

 

「分かったんだよね、眠りの小五郎さん。

アイも答え合わせがしたいから、お聞かせ願えないかな?」

「ええ。今回の事件は簡単なもの。

それこそ、子供でさえも出来てしまうような内容です」

 

アイの言葉に、コナンが小五郎の声で続ける。殺害方法は割り出せたものの、実行犯が中々割り出せなかった。

しかし、先ほど見せたアリバイのための写真が、その答えを運んでくれた。

 

「まず、今回のトリックはそこまで複雑怪奇なものではありません。

ただ、排気管にガソリンを浸したハンカチを入れただけ…。

先ほど我々が見つけた繊維片は、耐火性に優れていたせいで、残ってしまったハンカチというわけです」

「成る程…!排気管の温度上昇によって発火したというわけか!!」

 

車の爆発事故の原因は、排気管等の高温となる部分に、ガソリンなどが引火して…と言ったものが殆どである。

今回の場合、事故ではなく、誰かの作為があるため、事件なのだが。

 

「仕掛けたのは、ご家族方の誰かでしょう。

動機は明白ですので、今回は除外させていただく」

「な、なんで俺たちの中の誰かだってわかるんだよ!!」

「あのハンカチはアイがお爺さんに渡した、世界に一つだけのハンカチだからね。

お爺さんはそのハンカチを厳重に保管していたと言っていた。

何処かで落とすなんてあり得ないのさ」

 

アイが言うと、被害者の家族は揃って目を剥く。

確かに、デザインはありふれているように見えたが、素材と合わせれば唯一無二の品なのだ。更に言えば、ハンカチは厳重に管理されていた。

それらを加味すると、持ち出した人間は、持ち主と関わりある人物しかいない。

 

「入れた時間は彼が出かける直前の十時頃。

ガソリンは揮発性の高い液体。乾くことを恐れたんでしょうね」

「何故、直前だと?」

「写真だよ!」

 

と、コナンが塀の奥から姿を現す。

「さっきの写真、もっかい見せて!」と夫婦に迫り、警察もじろり、と視線を向ける。

ここで証拠隠滅を図って仕舞えば、認めたようなものになる。

皆が見つめてくる状況に耐えかねた二人は、渋々と先程の写真を携帯に映した。

 

「写真を撮った時間、十時頃になってるよね?」

「ああ」

「写真にあるゴミ箱の中、よーく見て」

 

目暮が写真に映るゴミ箱をマジマジと見つめる。と、そこには、明らかに何かしらの油で光沢めいているゴム手袋があった。

 

「こ、これは…っ!?」

「ちょっ、ちょっと…」

 

目暮は引ったくるように携帯を奪い、写真をマジマジと見つめる。

容疑者が手にしていては、いつ破壊されてもおかしくない。それゆえの判断だった。

 

「ええ。ハンカチをガソリンに浸した時、使用したであろう手袋です。

雑に処理してくれたおかげで助かりました」

「今すぐに被害者の自宅へ!この手袋を回収しろ!!」

「小太郎くんの『服』も調べたほうがええと思うで」

 

ついなが言うと、コナンは目を丸くする。

服についても気づいていたが、まさか、ついなまでもが気づいていたとは。

コナンは咳払いすると、そのまま推理を続けた。

 

「ええ。小太郎くんの服の袖に触れてみてください」

「あ、ああ」

 

目暮が黒地の生地に触れると、ハンカチと同じような汚れが付着する。

匂いを嗅ぐと、車の排気管から出てくる汚れのそれと全く同じ臭いが、鼻腔を刺激した。

 

「ハンカチを仕掛けたのは、小太郎くん。君だね?」

「ばっ、そんなわけあるか!!」

「そうよ!小太郎がこんなことできるわけが…」

 

親二人が否定するも、証拠は揃っている。

コナンは淡々と、真実を解き明かしていく。

 

「袖が汚れているのが証拠ですよ。この汚れは、排気管に手を突っ込んだ時に付着したものでしょう。左側の袖はボタンが見事なまでに白いのに、右側の袖は、ボタンが芸術性のカケラもなく、ただ不潔にまだらに黒く染まっている。すぐに気づきましたよ。

ハンカチにも同じ汚れが付着していました」

「着替えなかったのは、そもそも疑われることを想定していなかったから。

ガキってのは発想力は凄いけど、自分が悪いことになるってことを一切考えないタチなクソガキも多いしね。

で、こんなに堂々と証拠品リビングのゴミ箱にぶち込んでるってことは、もしかしなくても立案君らでしょ?

このクソガキ、見るからに頭弱そーだし。ま、君らもだけど」

 

タカハシが毒を織り交ぜて詰め寄る。

被害者を殺してメリットがあるのは、この家族だけ。

実行犯は、まだ右も左も分からないような子供。教唆した人間がいると考えるのは、極々自然なことだった。

 

「撮った写真も、お酒飲んで馬鹿騒ぎしてるテンションで撮ったんだろうね。

いや怖いね、お酒って。イタコ嬢みたいに飲んでも飲まれるなってね」

「ぢゅわ゛あ゛ん…?あンのクソ教師諸共大豆畑の肥料にしたろかタカハシィ…!!」

「なんでコウがソースって分かったの?」

「あの時相席してたのクソ教師とついなちゃんしか居ないからですわよ!!」

 

二人してそんなやり取りを交わす中、認めざるを得ない状況に陥った小太郎が、叫び始めた。

 

「だって、だってパパとママが、このハンカチをあそこに入れたらゲーム買っであげるって言ゔがら゛あ゛ぁぁああ…っ!!」

「何バラしてんだクソガキぃ!!」

「この、黙りなさい!!」

 

と、二人が子供に手を上げようと、駆け寄った時だった。

ついながロリポップの棒を勢いよく投げたのは。

凄まじい勢いのソレは、アスファルトを貫き、しっかりと突き刺さる。

二人はソレに驚いてか、腰を抜かした。

 

「罪を重ねるんも大概にせぇよおどれらみたいなンせいで今日本がどンだけヤバいか分かっとんのかおぉん?」

「ついなちゃん、ストップ。

このまま行くと、ジャ○プの某サマーオイルさんみたいになりますわよ」

「……わかった」

 

意気消沈した犯人を、警察が連行していく。

その姿を見届けながら、ついなは遠い目をして呟いた。

 

「この町の教育、刑務所とか寺とかのレベルまで引き上げたらどうかと思うんやけど」

「「「それな」」」

 

その後、現れた鬼によって、ついなたちはロクに睡眠を取れなかったという。




タカハシ…ネタにされてる人。仲間内カーストの中ではぶっちぎりで最下位。余計な発言さえなかったら優秀。こんな性格のため、アイの元でしか碌に働けない。ここだけの設定で、名前は長すぎて、口頭するだけで二時間はかかるので、皆から「タカハシ」と呼ばれている。先生以外で正確に名前を覚えられたことがない。(彼は公式設定で名字の「タカハシ」以外の名前が決まっていません)

月読アイ…ミステリアス幼女。多才で多趣味。ロリポップが大好きだけど、タカハシに一日一個と決められてる(守らないが)。鈴木財閥は彼女に頭が上がらないらしい。一体何者…?

今回、初めて事件を解かせてみた。僕自身、ミステリー書くの初めてで全く勝手が分からんかったから、取り敢えず分かりやすさを優先した。すごいシンプルなのになったし、多分ガバあるけど許して欲しいです。
トリックって考えるの難しいんだな。これから鍛えてみます。

因みに、ユタ云々はマジにテレビでやってました。いつか、神様が科学的存在になる日が来るかもしれませんね。
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