イタコと方相氏にこの町は酷ですわ!!   作:鳩胸な鴨

5 / 13
コナンの酷い動機ランキング見てて「こんな話あったな」と思って書きました。蜘蛛御前が本格的に祟り神してます。

コナン未視聴者の皆様。あの話はすごくよく出来てるんだ。YouTubeのコナン公式チャンネルで出てるから、ちゃんと見てほしい。
「鳥取クモ屋敷の怪」って検索したら見れるよ。全三話だけど、この事件は全部配信してくれてるよ。
他にも色んな話が配信してるよ。流石公式さん。めっちゃ太っ腹。阿笠博士並みに太っ腹。


蜘蛛御前(前編)

「祟り神、ですの?」

「なんか、とんでもないのがおんのやと」

「へぇ」

 

新幹線の中。

魔窟を一時的に抜け出せたイタコたちは、通称『シンカンセンスゴイカタイアイス』を頬張りながら、振動に揺られていた。

ちなみに、スプーンを六本ほど折っている。

 

「どんな祟り神ですの?」

「蜘蛛やと。前に自殺とか、それを模した殺人やらがあったから、死んだやつの魂食って顕現しよったんちゃうかな?

地域の伝説やと、そういうん多いし」

「殺人を起こした方は?まさか死んでませんわよね?」

「さぁな。死んでたら、封鎖せなあかんな」

 

今回、彼女らに届いた依頼は、鳥取県知事からのものであった。

どうやら、山奥の屋敷にて、不可解な惨殺事件が発生したらしい。なんでも、蜘蛛の巣のような粘性の糸に絡まり、人の皮と骨だけが残されていたそう。

その死体はまるで、人間より大きな蜘蛛に捕食されたようだった…と、発見した警官が語っていた。因みに、警官はその翌日に、同じ殺され方で亡くなっている。

 

どう考えても、その蜘蛛の仕業である。

二人はため息を吐き、七本目のスプーンでようやく削れ始めたアイスをもう一口掬った。

 

「依頼主のお子さんが、探偵さんにも依頼出したそうやで。

毛利さんとこと…、あと、西の高校生探偵とかいうの」

「んー…。まぁ、コナンくんに明確に解らせるいい機会かも知れませんわね。

あの子、マシにはなったけど、好奇心が強いきらいがあるから…」

「やなぁ」

 

そんなことを話しながら、新幹線の窓を見る二人。

鳥取に差し掛かった景色は、二人の目には淀んで見えた。相当怨みが深いらしい。

 

「………これ、悪化しとるよなぁ」

「してますわねぇ」

 

県に入った時点でここまでの瘴気を感じるのだ。確実に最悪な事態まで悪化してる。

イタコは頭痛を抑え、ついなに問うた。

 

「祠は?祟り神ということは、信仰はあったはずですわ」

「家の昔の主人が壊したんやと」

「……………は?」

「倉建てるために壊したんやと」

「バッカじゃありませんのソレで殺人まで起きてますのよ一族郎党惨死しても文句言えませんわよ」

 

祟り神は祠を用意して、信仰を捧げるだけで無害にできるのだ。信仰の深さによっては、土地に恩恵も与えられる。

祠を壊すのは、悪手と言う他無かった。

 

「それで積もった神の不満やら、殺人によって生じた負の気が作用して顕現したんですのね…。狐が食えるかしら…?」

「イタコちゃんの狐は悪食やからなぁ。食えるんちゃう?」

「…憂鬱ですわ」

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「遠路はるばるご苦労様やなぁ、方相氏サマに、霊媒師サマ」

「いや、大したことあらへんよ。悪いモン祓うのが仕事やからな」

「私は付き添いしてるだけですわ。お気になさらず」

「そう言ってもらえると助かります」

 

老婆と家政婦に迎えられた二人は、出された茶を啜り、一息吐く。

この家…人形師を営む武田家が、祟り神の住処として認識されているという。

以前、コナンたちが解いたと言う「蜘蛛屋敷事件」の現場でもあり、三年にわたって数名の死者が出たとのこと。

コナンたちが事件を解決して、それなりに時間が経った今。今度は倉で、蜘蛛の糸と、皮と骨だけになった人の死体が夥しい数見つかった。

この家に住む大奥の武田智恵、塩谷深雪、武田勇三の三人のみ、その被害には遭わなかったとのこと。

今、武田勇三は出払っており、しばらくは帰ってこないらしい。賢明な判断である。

 

「にしても、こげなちんまい子ぉが、稀代の方相氏サマとはなぁ。先々代の方相氏サマは元気か?

ワシがちんまい頃は、追儺の儀式で姿をよぉ見ちょったわ」

「じいちゃんやったら、まだくたばっとりゃせんよ。おとんと年がら年中、喧嘩ばっかしとるわ」

 

他愛のない話で、緊張をほぐす二人。

これから死地に向かう兵士のような気分だ。

と。そこへ聞き覚えのある声と、イタコたちは聞いたことのない声が響く。

 

「おーい!来たよー!」

「はーい!今開けまーす!」

 

塩谷が縁側を開き、来訪者を迎え入れる。

そこには、コナン、蘭、小五郎のいつもの面々に加え、日焼け肌の眩しい少年…西の高校生探偵こと服部平次と、その幼馴染である遠山和葉がいた。

 

「…イタコさん。胸」

「あっ」

 

服部やコナン、小五郎はものの見事に、リラックスするために着物を着崩したイタコの胸をガン見しており、女性陣に引っ叩かれる。

イタコは苦笑いを浮かべ、着崩した着物を慌てて直した。

 

「ご、ごめんなさい。女しか居なかったものだから…」

「い、いえいえ。良いものを見せてもら…げふんげふん」

 

ごっちん。

蘭の拳が再び、口を滑らせた小五郎に降り注ぐ。

イタコはあまり気にしていない、と返し、服部の方を見た。

 

「初めての方ですわね。はじめまして、東北イタコと申しますわ」

「おおう、くど…ああいや、コナンから聞いとるで。俺は西の高校生探偵、服部平次。

で、こっちのへちゃむくれは腐れ縁の遠山和葉や」

「誰がへちゃむくれや初対面の人に助平な目ェしとるむっつり!!」

「なっ、誰がやねんこのペチャパイ!!」

「あぁん!?」

「おぉん!?」

 

仲がいいのか悪いのか。

喧嘩を始める二人を、蘭が「まぁまぁ」と宥める。そこでヒートアップせずに切り替えるあたり、付き合いは長いらしい。

彼らは塩谷に招かれるがままに、家へと上がり込んだ。

 

「では、さっそくですが。勇三さんから手紙をいただいてやってきたのですが、現場を見せてもらえますかな?」

「なんや、勇三があんたら寄越したんか」

「おう。俺んトコにも手紙来とったから、俺らも一応やってきたわけや」

 

二人がここまで来た経緯を答えると、智恵は暫し思考し、ついなへと視線を戻す。

 

「………どないします、方相氏サマ。見せてもええんですか?」

「んー…。夕方なっとらんし、別にええよ。

逢魔時過ぎたら、夜から朝まで顕現しよる。夜は魔の時間やからな。

確実に目ェは付けられるやろけど、この子らにゃかなり位高い神霊憑いとるから問題あらへんやろ」

 

ついなの返答に頷いた彼女は、倉の方を指した。

 

「よく覚えておいででしょう。

ウチの倅らが死んどった場所に、皮と骨だけの死体がぎょおさんあります。

中はデカイ蜘蛛の巣だらけやさかい、気をつけて」

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「和葉、見ンなよ。…むごいことしよるわ」

「ンな殺し方、人に出来んのか…?」

 

倉の二階にて。

以前、踏み入った時とは違い、足の踏み場もないほどの屍が積み上がった部屋を目の当たりにし、和葉の目を隠す服部。

無論、小五郎も蘭とコナンの目を隠し、その凄惨な遺体を見て、吐き気を堪えていた。

血は一切流れていない。だというのに、偽物とは思えない、骨と皮だけの遺体が、そこらにゴロゴロと転がり、磔にされている。

まるで、蜘蛛が人間を喰らったように。

 

「…どうやって殺したかもわからん。

…まさか、マジにおるんちゃうやろうな、蜘蛛御前」

「おるよ。今もずーっとこっち見とる」

 

服部の言葉に、ついなは淡々と答える。

彼女とイタコの目には、しっかりと見えている。まるで、ご馳走を吟味するように、八つの目がこちらを睨め付けているのが。

その言葉に、コナンと蘭、和葉はぶるりと肩を震わせる。

小五郎もそれなりにイタコたちと付き合いを築いてきただけあって、冗談とも受け取れず、ごくり、と唾を飲んだ。

 

「夜やないから、こっちに干渉出来へんだけで、コナンの坊っちゃんと服部の兄ちゃん見とるわ」

「はぁ?な、なんで俺とくど…コナンだけなんや?」

「あんたら二人とも神霊憑きやからな。警戒しとるんよ」

 

ついなは言うと、掌を蜘蛛のいる方向に向け、力を込める。

蜘蛛は何かを感じ取ったのか、そのまま踵を返し、闇の中へと消えていった。祓えた訳ではない。ただ、場を去っただけだろう。

 

「……よく喰らって育ってますわね。

祠の建て直しをしても、大して効果は無さそうですわ」

 

イタコは、コナンたちには視認できない狐耳をぴょこぴょこと動かしながら、蜘蛛の様子を探る。

服部はと言うと、彼女らの発言を電波と切り捨てることも出来ず、未知の恐怖と好奇心に苛まれていた。

 

「逢魔時になれば、彼方から結界に引き摺り込んで来るでしょうね。

ついなちゃん、方相面…ディクソンは持ってきてますわよね?」

「そら持ってくるやろ。相手祟り神やし。

狐の調子はどうなん?」

「…『食いでがありそうですにゃあ』…だそうですわ」

 

二人の間に流れる、歴戦の戦士が纏うかのような、鋭い雰囲気。

服部はコソコソと下がり、コナンに耳打ちした。

 

「あの人ら、マジモンなん?」

「多分な。オカルトなんて信じちゃ居なかったが、この1ヶ月で嫌でも悟った。

…断言する。心霊現象ってのは、どうやらマジに起きるらしいぜ、服部」

「……やろぉな。今、目の前で起きとるもんな」

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「「はぁ!?獄中殺人!?」」

「ええ。どうやら、先日に…」

 

部屋から戻ると、塩谷から聞かされた話に、服部とコナンが目を丸くする。

先程、テレビをつけた際に流れてきたローカルニュースで流れていた速報。

 

先日、ここで事件を引き起こした犯人…ロバート・テイラーが獄中で殺害されたという。

 

それも、倉の多くの死体と同じような死に方をしていたらしい。今朝、見回りに来た看守が見た時には、皮と骨しか残されていなかったと報道されていた。

収監されていた監獄から遠く離れているというのに、蜘蛛御前が態々、ロバートを殺しに出たのだろうか。

服部はと言うと、ロバートの心を絶望の淵に叩き落としたことを思い出したのか、複雑な表情を見せた。

 

「服部…。もしかして、気にしてるのか?あの時のこと」

「…しとるわけあらへんやろ、アホらしい」

 

強がってはいるものの、表情は晴れない。

イタコはソレを見て、服部の隣に腰掛けた。

 

「…そのロバートと言う方と何かあったのか、教えていただけませんか?」

「え?…まぁ、ええけど…。なんでほないなこと聞くんや?」

 

服部が訝しげな表情を見せると、イタコは真剣な表情で告げた。

 

「死者の声の中に、大きな嘆きと、生まれそのものへの怨恨…。そして、死んだことへの歓喜を謳う声があります。

言葉のイントネーションからして、アメリカの方ですわね。

その方が、より祟り神を強大にしてしまっているのです。私めが霊を祓うにはまず、相手を知らなければいけませんから」

 

ついなは現在、祓う準備をしている身。

少しでも負担を和らげるべく、日の出ている内にやれることはやっておくべきだ。

イタコは自身の使命感を口に出すことで、服部の警戒をほぐす。

服部はというと、暫し考えた後に、わしゃわしゃと頭を掻いた。

 

「……わーった、話すわ。つっても、ここで起きた事件のことは知っとるんよな?」

「ええ。美沙さんという方が自殺し、そこからその母が、三年経って父とその仕事仲間が亡くなったと言うのは聞きましたわ」

 

イタコが頷くと、服部は躊躇いがちに話し始めた。

コナンには、その姿がカウンセラーに心の病状を打ち明ける患者のように見えた。

 

「…その美沙さんが自殺した理由なんやけどな。俺、そん時頭に血ィ上っとって。ロバートに言うてもたねん。

『アンタが去り際に書いた〈SHINE〉っちゅうメッセージが、「死ね」って伝わったから自殺した』っちゅうことをな。

…ロバートは美沙さんにメッセージ送るまで、土砂崩れで大怪我して喋られへんかってん。

せやから、美沙さんが看病しとる間、ローマ字で話しとったんよ。

…誤解されてもしゃあない状況やったわ」

 

それだけ言うと、服部はふぅ、と息を吐く。

ソレを聞いたイタコは、ふと、最悪なことに気がついた。

 

「…ソレを話したのって、何処ですの?」

「ん?現場やで。あの骨と皮だけの死体がぎょおさん転がっとる倉ン中や」

「………Oh…。…最悪なんてモンじゃありませんでしたわ……」

 

イタコは机に突っ伏し、嘆きを込めたため息を吐き出す。

何が何だか分からない服部とコナンは、顔を合わせたのち、首を傾げた。

 

「そ、その、どうしたの?」

「大丈夫か、アンタ?具合悪いんやったら、日ィ変えて…」

「大丈夫ですわ…。……成る程。愛憎の矛先が生まれ落ちたこの世界そのものに変わって、そこに愛が加算されたんですのね…。

だから、こんなにも負の気に満ち溢れてる訳ですわ…」

 

服部が勢い任せとはいえ、真実を告げたのは、美沙の霊にとっては良かったのだろう。

しかし、美沙が祠のあった場所で最初に死んでいたということは、供物として捧げられ、神との統合が為されたと考えていい。

最初こそは怨念に塗れていたのだろう。ロバートや家族への怨讐を胸に、殺された魂を喰らい、成長。

そのままロバートを殺そうとした矢先に、ロバートが残したメッセージの真の意味を、服部の口から聞いたのだ。

結果。抱いていた愛憎が、生まれ落ちた境遇、果てはその境遇を選んだ世界そのものへとシフトした。

神に統合されてしまっていた美沙は、愛ゆえにロバートを引き込んだのだろう。

言葉の壁も、肉体の壁すら存在しない世界だ。彼女らの愛を阻むものはない。

だからこそ、自らの愛に水を差すかの如き行動をする者が許せず、近づく人間を手当たり次第に殺し、捕食したといったところだろう。今はまだ、この地域に留まっているが、エスカレートすれば鳥取県全体に行動範囲が広がる可能性すらある。

 

前例もある。ついなが方相氏になり始めた頃、同じようなケースの祟り神が猛威を奮っており、彼女の母がソレを祓ったという。

 

祟り神は、そもそもが神が持つ負の面の塊。

彼らの特性は、ソレすなわち禍をもたらすことなのだ。崇めることで、それから逃れることができる。武田家の人間は、蜘蛛御前のことを深く信仰しているからこそ、禍を逃れることができた。

ロバートも美沙も、統合された時点で、その習性から逃れることは出来ない。

 

「……気を引き締める必要がありますわね。

今回のは、相当厄介ですわ」

「そ、そぉなんか?」

 

「あなたたちは嫌でも見ますわよ。

あと一時間で、蜘蛛御前が…ロバート・テイラーと武田美沙が、縁を持ったあなたたちを喰らいに来ますわ」

 

逢魔時まで、あと一時間。




服部平次…知らないうちにとんでもないやらかしやった人。次回、コナンと共にトラウマものの祟り神を目の当たりにすることが確定してる。
頑張れ、服部!負けるな服部!蜘蛛御前は真実を暴いてくれたお前らを喰いたがってるぞ!!タチの悪いことに殺意100%だ!!!やったね!!!!

遠山和葉…取り敢えず怖いくらいしか分かってない。ある意味幸せな立場にいる子。死闘前にリラックスを図るついなちゃんと、怖さを紛らわそうとした蘭ちゃんとキャッキャッウフフしてた。祟り神の返り血浴びまくったついなちゃんに腰を抜かす予定。

ロバート・テイラー…祟り神に引き込まれてしまった人。本人的には今が最も幸せ(ただし周りへの被害は考慮しないものとする)。

村の皆様…夜中に通りがかるだけで次々に殺されていくからガクブルしてる。酷い場合は車すらスクラップにされたらしい。皆が引っ越すことを考えていたが、武田智恵から「方相氏サマを呼んだ」と聞いて胸を撫で下ろした。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。