Re. 海竜のヒーローアカデミア 作:willtexture
ちょっと普段よりも長めかな?
第20話 備えろ!期末テスト!
職場体験を終えた雄英高校1年A組の教室は、喧騒に包まれていた。
「海藤お前!!ニュース見たぞ!!」
「スゲーじゃん!!」
「お、おお?」
普段よりも遅めの時間に登校した悠雷を出迎えたのは、上鳴を始めとするクラスメイトの声。
他の既に来ているクラスメイトも、興味津々といった目だ。
これはあれだな…………兄さんと姉さんのチームアップについてだな。
「くぅー!ニュースとか完全に新人ヒーローみてーな扱いじゃねえか!!」
「待って、ニュース?」
「ああ、ニュースになっていたぞ」
「マジですか」
「常闇の活躍もニュースに書いてあったぜ?」
「恐悦至極」
「お疲れ様、悠雷ちゃん。常闇ちゃん。二人とも怪我は大丈夫かしら?」
「スゴいねー!!やっぱ体育祭一位と三位ってことかな」
「あまり褒めないでくれ、反省が多いから心に刺さる」
「俺も悠雷の意見に同意だ。ホークスの下で学んだ事はあまりにも多い。
なぜこんな簡単な発想が出来なかったのかと過去の自分に鉄槌を喰らわせたいくらいだ」
「そんなにか?」
「ああ。だからこそ悠雷に感謝している」
「それはどうも」
「二人とも仲が良くなったのね」
「とりあえず、怪我は大丈夫だ。俺は怪我を負っていないし、常闇も軽症だ。
それもリカバリーガールのおかげでほぼ治っているよ」
「良かったな!!」
「本当にいい経験が出来た」
「その通りだ。まだまだ経験が足りんと痛感した。課題は多い」
「そだな!!まだまだやんなきゃいけねーことだらけだ!!1個ずつやってこーぜ!」
「お、上鳴のくせにマトモな意見」
「うっせえぞ砂藤!!」
「それでだな。今日の放課後に意見交換会でもやらないか?」
「意見交換か、いいなそれ!!」
「互いの情報交換をして、経験したことを教え合う」
「教えるという事は自分が取れだけ理解できているか確認するいい機会だものね」
「そういう事だ」
そうして和やかに話が弾む最中、教室の大きな扉が開かれる。
「おは──ブフォッ!」
──そこに居たのは、爆豪と思われる人物。
尾白が思わず噴き出した理由は、その辺鄙な髪型だった。
「アッハハハハハハハ!!マジか!!マジか爆豪!!」
「……笑うな。クセついちまって洗っても直んねえんだ。オイ笑うなブッ殺すぞ」
「ブハハハハハハハハハハ! やってみろよ8:2坊や!」
見事なまでに美しい、8対2に分けられたヘアスタイル。
流石ベストジーニスト…………もっとも本人は不満がまだありそうだけど
爆豪のあまりにも不釣り合いなその姿に、瀬呂と切島は涙を浮かべるほどに笑い転げていた。
一方の悠雷というと…………
「アハハ!!…………ヤバい、絶望的に似合ってない!!」
笑いすぎで呼吸困難に陥っていた。
「悠雷大丈夫?ほら、息をゆっくり吸って」
「…………ふぅ…………ありがとう響香。落ち着いた」
「うっせーぞお前ら!!」
「おお、爆発頭に戻った」
「どーいう仕組みだ!!アハハハハハハハハ!!」
「笑うなっつってんだろうがクソ髪コラァッ!!」
「…………で、麗日は何があったんだ」
俺の言葉に、全員の視線がそちらへ向けられる。
そこには、何やらシャドーボクシング的な?
といっても凶悪な回転が加わった一撃を空中に放つ麗日の姿があった。
誰とはなしに、そっと視界から外す。
「確か、麗日くんはバトルヒーロー・ガンヘッドの所に行ったんだったか?」
「…………確かそうだったと思う」
「せ、成長だよ…………多分、うん」
「変化っつーか、大変だったのはそっちの3人だろ!!」
「いやー、ヒーロー殺しとかヤベーの相手にしてたしな」
「マジ命あってなによりだぜ」
「……心配しましたわ」
上鳴の言葉に、皆の話題が移る。
何せ、被害にあった中には命を奪われたヒーローも居たのだ。
そんな凶悪ヴィランと関わった…………それも緑谷からの不穏な位置情報のみというメッセージ。
それがあったことも加われば、心配するなと言う方が無茶な話だ。
「ニュースとか見たけどさ。ヒーロー殺しはヴィラン連合とも繋がってたんだろ?
あんなのがUSJの時に来てたらと思うと…………」
「いや、多分だけどヒーロー殺しはUSJに来る事は無かったと思う」
「どういう事?」
「ヒーロー殺しが求めていたのは“真の英雄”と呼ばれる人物…………
すなわちオールマイトのことだろ?そんなあいつがオールマイト殺しに参加すると?」
「確かに一理ありますわ」
「ちょい待ち。じゃあ何で、あの脳みそヴィランが保須にいたんだ?」
「さすがにそこはわからない。いくつか可能性は考えられるが、情報がほとんど無いからな」
「ヴィラン連合がヒーロー殺しに便乗した、とか?」
「多分だが、そうだと思う」
「悠雷、ホークスかリューキュウから何か聞いていたりしないか?」
「いや、何も言われていないな」
「そっか、トップヒーローなら何か聞いているかも知れないのか!!」
「でも、私たちにそんな重要なことを教えてくれるかしら?」
「轟は何か知らねえか?」
「知らねえ」
「常闇が聞いたのは俺がホークスとリューキュウの義弟だからな」
「「「「「弟!!?」」」」」
「轟みたいなサラブレッドだったのか!!?」
「お前もトップヒーローの血を引いていたんだな」
「義理だぞ?血の繋がりはない」
「それでも十分すげぇよ!!」
「この話はまた今度詳しく聞きましょう?ヒーロー殺しの話が先よ」
「確かにそうだな」
「と言ってももう話す事なんて無いと思うが…………緑谷たちも緘口令敷かれてるだろ?」
「うん。ごめんね」
「まぁ、仕方ないだろ」
「でもよ、あの動画見たらさ。本気っつーか、執念っつーか。
カッコよくね? とか思っちゃわねえ?」
「上鳴くん!!」
「え?あっ……飯……ワリ!!」
「いや、いいさ。確かに信念の男ではあった。クールだと感じる人が居るのも、わかる。
…………しかし、ヤツは信念の果てに"粛清"という手段を選んだ。
どんな考えを持とうとも、それだけは間違いなんだ」
「確かにな…………自分が規範となれば良いのにと思うな。
悲しむ人を生み出した時点で、反発する者が必ず出る。
オールマイトのような皆を導く存在になってさえいれば…………」
「うむ。ステインに限らずヴィランによって傷付く人も居ればその方々には家族や友人が居る。
──ならば!!俺のような者をこれ以上出さぬ為にも!!改めてヒーローの道を俺は歩む!!」
「さあ! そろそろ始業だ! 席につきたまえ!」
「…………五月蝿い」
「なんか、すいませんでした……」
▽▽▽
「ハイ!私が来た!!──ってな訳で久し振りだね少年少女!!
早速だけど始めるよヒーロー基礎学!!」
午後から始まったヒーロー基礎学は、オールマイトのぬるりとした登場から始まった。
あまりに簡単に始まったので、周囲からはネタ切れを不安視されたが、
当の本人は無尽蔵だと反論するが、彼から嫌な汗が流れていたのをA組は見逃さない。
オールマイトのネタ切れ疑惑を疑うA組だったが、
オールマイトは話題を変える様に、会場へ視線を変えながら授業説明へと入った。
「さあ!!今日は体験明け初日と言う事で、やや遊びを含んだ訓練だ!!」
──そう救助訓練レースだ!!
救助訓練レース。
──まるで一大イベントの様に宣言しながら、オールマイトは会場となる場所を指差した。
『運動場γ』
それは複雑な迷路と言える“密集工業地帯”をイメージした場所だ。
配管・貯水タンク・冷却塔等が存在し、クレーンや煙突が木々の様に存在を示している密集地帯。
一見だけすれば、どこから入れるのか考えるのも馬鹿らしくなる狭さ。
それ程までの密集工業地帯で、オールマイトが始めようとしているのは救助訓練レース。
ルールも至ってシンプルなものとなる。
一番最初は緑谷・芦戸・尾白・瀬呂・飯田。
それ以外は近くのビルの上、そこにあるモニターで彼等の見学をして自分の番を待つ事となる。
──となれば、話題は誰が1位になるか予想当てとなる。
「普通なら瀬呂だろうな……こんな密集してんだから
テープでパパっと上に上がって楽に行くだろう」
「速さなら飯田くんだけど、怪我をしてるもんね……」
「そういう点なら芦戸は不利だな……」
「いや!!あいつは運動神経は凄いんだぜ!!だからオイラは芦戸だな」
「デクが最下位。ぜってー最下位」
各々が腰かけながら予想を言い合う。
ヒーロー科を受かっているだけあり、それぞれが文字通りに個性があるものばかり。
しかし、今回はテープを出せる瀬呂が有利と言う意見が多い。
逆に緑谷の1位を予想する者は一人もいなかった。
「緑谷の評価って定まんないだよなぁ……いつも大怪我してるし」
「えぇ、よく考えている方とは思えるのですが、それでも最後は骨折ばかりですから……」
「でも、あの超パワーでオールマイトまでの道をぶっ飛ばせばワンチャン有りじゃね?」
「オールマイトは極力壊すなって言っていた筈よ、上鳴ちゃん?」
「どれほどの距離があるか知らんが、壊したらヴィランと大差ないだろ…………」
「こっち見んな……ぶっ殺す」
「悠雷はどう思う?」
「そうだな…………瀬呂かな。緑谷の今の評価は俺もよく分からんから何も言えん」
「そろそろ始まるみたいね」
「うおぉぉぉぉ!!? マジか緑谷!!」
「骨折克服したのか!?」
「動きも全く違いますわ!」
「あんなにぴょんぴょん飛んでるなんて……まるで──」
上鳴・切島・八百万・麗日達が画面に映っている緑谷の姿に驚き、そして叫んでいた。
一番人気の瀬呂を差し置いて、彼を大きく離しての1位を保っていたのだ。
自爆ではなく、ぴょんぴょん飛びながらタンクやパイプの上を飛んで行く。
『……あっ』
そして、モニターを見ていた全員が呟いた。
──パイプの上に乗ろうとし、足を滑らせた緑谷の姿を見て。
結果を言えば、足を滑らせた事で緑谷は脱落。
一気に最下位となり、1位は皆の予想通り瀬呂だった。
だが、アクシデントがあろうが、周りの緑谷の評価は大きく変わっただろう。
増強系は可能性が広く、怪我の克服によって緑谷は大きな成長が期待できるからだ。
その後は次々とレースが行われる。
常闇の新技(技名はまだ未定)により機動力と接近戦の弱さを克服したという波乱もあった。
しかし、この場ではそれは割愛させてもらおう。
して、最後にレースを行うのは爆豪・八百万・砂藤・青山・悠雷の5人。
それぞれが各々のスタートラインに立つ姿がモニターに映ると、再び始まったのは順位予想だ。
「爆豪、八百万、海藤……この三人の誰かだろうな」
「単純に言えば爆豪だろ?
だってあいつ爆破で普通に飛ぶし、スロースターターでもずっと飛んでれば関係ないしな」
「いや、それなら海藤だって可能だ。飛行自体は無理でも、あいつの跳躍力は凄まじい。
現に、体育祭の障害物競走の時もそれで突破してるからな」
「でも、それならヤオモモの方が期待できんじゃない?
知恵もあるし、何でも作れるなら使い方で突破も出来そうだし」
『HAHAHA!!それじゃ、そろそろ始めようか!』
それぞれのスタートラインに立つメンバー達に、オールマイトの準備完了の合図が届く。
するとメンバー達は反応し、静かに動き始める。
『スタァァァァトッ!!』
「「「「「!!」」」」」
オールマイトは空を叩き割るかの如く、気迫に満ちたまま腕を振り下ろす。
そして、そのスタートの合図に五人は一斉に飛び出した。
オールマイトの合図と共に駆け出して風の中で舞う様に跳躍する。
先ずは位置を確認するために高い所へと向かうか…………尻尾でパイプを掴むとそのまま一回転。
そしてその反動を利用し、更に前方へと跳ぶ。
先程までと違ってここからは狭い通路が混ざり合った複雑な地形だ。
先程までの大胆な動きは出来ない。
自分が行く先を基にどのルートが最短化を予測して行動に移す。
「ここからなら聞こえるかな?」
兄さんの事務所に行ったときに貰った公安御用達の最新版の機器をいくつか貰った。
これなら周囲の確認がコンマ一秒足らずで出来る。
衛星経路で通信とかできるから無人島に取り残されても安心!!
まぁ、泳いで帰れるからそこはどうでも良いんだけどさ。
「HAHAHA!!Help Me!!」
楽しそうなオールマイトの声を捉え、現在位置との場所関係を把握する。
これくらい大きい声なら機器使わなくても問題なかったな。
高い位置にある貯水タンクにいるため、その場から落ちるように壁走りを実行。
一定の場所に着いたと同時に壁を蹴り、更に別の壁を蹴って高速移動を行った。
マリオの如し壁蹴りで次々と交差状に移動し、いとも簡単に密集地を突破する。
そして、上空へと飛び上がり近くの貯水槽タンクの上に着地する。
あとはこのタンクの中身を足場に加工してオールマイトの元に向かおう。
「「「海藤ヤベェェェェ!?」」」
何人かがモニター越しに叫び声をあげる。
他の者達も同意見らしくモニターに釘付けになりながら頷いていた。
「体育祭の時と動き違うじゃん……!!」
「たった一週間でここまで変わるものなのか……!?」
「うわぁ……曲芸かよ!!」
「今まではセーブしていたとでもいうのか?」
「いや、流石にそれは無いだろ…………」
「これがトップの場所で獲た経験なのか」
「常闇の動きも凄かったもんな!!」
「恐悦至極」
「また言っとる」
みんなが話している間に悠雷は貯水タンクを壊して中の水で槍を形成してそれを足場にする。
職場体験での訓練のお陰様で以前よりも強度が上昇している。
足場にしたそれらを使い、悠雷は悠々と一位の座に君臨した。
その後で色々と問い詰められたが、ただ単にこういった密集地帯に行くことが無かっただけだ。
尾白や上鳴に教えてくれと頼まれたので放課後にやる内容が決まった点は良かったな。
それと、覗きは声を出さず気配を断って行うべきだと思うのです。
出来る事なら俺も見たかった………
▽▽▽
救助レースからしばらくの時が経ったHRの日の事。
担任の相澤先生から夏休みについての説明が入った。
「えー、そろそろ夏休みも近いが、もちろん君らが1ヶ月も休める道理は無い」
教壇に立つ相澤先生の言葉に、どよめきが起きる。
ヒーロー候補生であるが学生である彼らにとって夏休みは必須、どよめきが起こるのは当然だ。
まだ一か月も先の話をされている訳なのでいまいちイメージが湧かない。
確か…………臨海合宿に行くとか言ってたか?
「夏休み、林間合宿やるぞ」
「知ってたよー!!やったー!!」
休みがなくなると言われれば普通の学生なら落胆するのかもしれないが、そこはヒーロー科。
誰もが自身を高める機会を喜んでいた。
「肝試そー!!」「風呂!!」「花火」「風呂ぉっ!」「カレーだな」「行水!」
「自然環境ですと、また活動条件が変わってきますわね」「湯浴み!」
「……峰田黙ってろ」「はい」
己の欲望を声高に叫ぶ峰田に、ついに相澤からストップがかけられた。
ついでに、他の生徒たちも口を塞ぐ。
相澤先生の恐ろしさは皆の知るところとなっている。
「…………ただし、その前に行われる期末テストで赤点だった奴は学校で補習地獄だ」
「みんな頑張ろーぜ!!」
相澤先生の説明が終わり、授業が始まった。
そして、昼休み。
「「まったく勉強してねー!!」」
悲壮感漂う上鳴となぜか笑顔の芦戸が異口同音に叫んだ声が教室に響く。
中間テストの成績は20人中、芦戸19位、上鳴20位である。
彼らの為に補足しておくと、あくまでA組の中での順位であり、2人とも学力自体は高い。
単にヒーロー科の授業が途轍もなく速いため結果的に試験範囲が異常に広いのだ。
「体育祭やら職場体験やらでまったく勉強してねー!!」
「いや──あっはっは!!」
「…………の割には芦戸は随分と笑顔だが」
「なーんかもー、笑うしかないよね!!」
「ああ、重症か」
「お2人とも、座学ならば私、少しはお力添えできるかもしれません。
…………海藤さんほどではありませんが」
「海藤よりヤオモモがいい!」
「いい度胸だな上鳴」
「私もー!!」
「泣いてもいいかな?」
「お2人じゃないけど、ウチもいいかな?二次関数、ちょっと応用で躓いてて」
「わりい、俺も!!八百万、古文わかる?」
「俺もいいかな」
そこに続くのは、耳郎、瀬呂、尾白であった。
頼られたのが嬉しいのか、八百万の表情がパッと明るくなる。
「…………あれ?」
「海藤この前のテストの問題聞いたらわかりやすかったんだけど」
「試験範囲越えてスパルタでやりそう」
「女の子の方がいいじゃん!!」
「上鳴…………お前、あとでボコス」
「…………海藤ちゃん。あのメールを送ったことから考えても自業自得だと思うわ」
「くっ!!何も言い返せん」
「いくつか漢文で確認したいのだけれど、頼っていいかしら?」
「僕もいいかな? 数学で解き方合ってるか確認したくて」
「すまんが俺も頼めるか。物理でいくつかな」
「すまんな」
自業自得で項垂れる悠雷に救いの手を差し伸べたのは、蛙吹をはじめ緑谷と障子。
響香もこっちをちらちらと見ているが、頼んだことなのでしっかりとやってもらわないと。
というか演技だからこれっぽっちも傷ついて無いんだからね!!
「そういえば、職場体験先で先輩に例年の演習試験内容を聞いて来たんだが」
「マジか!!」
「教えてくれ海藤!!」
「お前の望みを叶えたいところだが、あいにく俺は男なのでな」
「謝るって!!ゴメン!!」
「まあ、俺の方もそこまで気にしていないさ。こっちから頼んだことだし。
どうやら例年だと、入試同様のロボット相手の戦闘演習らしい」
「「イヤッホウ!!ロボならブッパで楽勝だ!!」」
「…………いやに例年と繰り返すな」
「今年は違うって言いたいの?」
「気付いてくれたか。今年の一年生はUSJの襲撃や職場体験で巻き込まれた。
…………果たして、先生方が何も手を打たないなんてことはあるだろうか?」
ピタと、上鳴芦戸の動きが止まる。
両腕は喜びを表して高々と上がっているのに、表情だけが絶望に染まっている。
セリフを入れるなら、「マジで?」といったところだろうか。
「予想として考えられるのはより実戦的な対ヴィランを想定した内容かな?
内容を考えるのはこちらの“個性”のことをすべて理解している先生だ。
今のところ判明している弱点を露骨に突いてくるんじゃないか?」
「考えすぎ…………とは言えないわね。
最近はヴィランが活性化しているなんて話もあるのだし、何より雄英だもの」
「雄英の校訓からだと間違いなくそうなるな…………」
「やること多すぎね!?」
「普通に授業受けてりゃ、赤点は出ねえだろ」
「言葉には気をつけろ轟ぃ!!チキショウ、演習試験もヤベーじゃねえか!」
「お前らは個性の制御、大変そうだしな」
その日のお昼、俺はちょっと珍しい面子と一緒に学食に来ていた。
緑谷、麗日、飯田、轟、梅雨ちゃん、響香、そして俺という七人だ。
緑谷と麗日、飯田はまぁおなじみの三人組。
一堂に会しているのは正直言ってまったく珍しくない。
で、職場体験以降は緑谷、飯田、轟の三人は親密になって一緒に行動する機会が増えている。
秘密の共有って、仲間意識芽生えるよね。
麗日と梅雨ちゃんは席が近いこともあって仲良しで割とよく一緒に学食に行ってるようだ。
俺と響香も似たような感じだ。障子や常闇、上鳴とも食べることも多いな。
聞いた話だが、女子は結構その日その日で一緒に食べる人が流動的に変わってる。
お弁当だったりそうじゃなかったり、という人が多いのがそうなっている理由の一端かもしれない。
とにもかくにも、それぞれだけならよくある組み合わせなのだ。
けれどもこの全員が一緒に、というのは間違いなく初めてだった。
「筆記試験は授業でやった内容のはずだからなんとかなりそうだけど
…………演習試験の内容が不透明で怖いね」
「筆記はまだなんとかなるんや……」
「……緑谷、言葉には気を付けた方がいい」
「え、あ、ごめん!!」
「えっと、演習試験は一学期でやったことの総合的内容だって…………」
「ええ、相澤先生がそう言ってたわね。でも、正直それだけの情報じゃ全然わからないわ」
「戦闘訓練と救助訓練、避難器具とか救助器具の使い方も教わったけど
…………振り返ってみると基礎トレが多かったよね」
「うん、そうだね。
とにかく、試験勉強に加えて体力面も万全にしておくのが無難──あいたっ!!」
ふと、緑谷の背後に一人の男子生徒がやってきて、どう見ても故意に緑谷の頭に肘をぶつけた。
俺たちは思わずぎょっとして、その下手人に視線を向けた。
「──おやおやごめん、君の頭が大きいから当たってしまった」
「えっと誰だっけ?」
「えっと……確か、物間くん!!よ、よくも!!」
「悠雷名前くらい覚えてあげなよ」
「デクくんもうろ覚えだったんな」
「A組に嚙みついてきて爆豪にわからされたくらいしか覚えてないな」
「くっ!!痛いところを突いてくる…………君ら、ヒーロー殺しに遭遇したんだって?
A組ってさ、体育祭に続いて注目浴びる要素ばかり増えていくよねぇ。
ただその注目って決して期待値とかじゃなくて、トラブルを引き付ける的なものだよね?」
「あぁ怖い!!
いつか君たちが呼ぶトラブルに巻き込まれて僕らまで危険な目に遭うかもしれないなぁ!
あぁ怖──」
「──物間シャレにならん。飯田の件知らないの?」
そろそろコイツしばくかと俺が手刀を構えたところで、突如物間が膝からがくっと崩れ落ちた。
物間を手刀で沈めたのは…………拳藤か。
…………お前はいつも大変だな。
「拳藤久しぶり」
「久しぶり悠雷。写真撮影以来だね」
「知り合いなのかい?」
「ああ。体育祭で知り合ってな。職場体験中も会う機会があったんだ」
「ごめんなA組。こいつちょっと心がアレなんだ」
心がアレなのか。まぁアレじゃなければあんな発言はできんだろうね。
前のこととは言え、あんなほじくり返し方するかね。
「……ねぇ、あんたらさっき、期末の演習試験不透明とか言ってたよね?
あれ、入試の時みたいな対ロボットの実戦演習らしいよ」
「やっぱりそう聞いたよな」
「拳藤くんはどうやってその情報を?」
「私、先輩に知り合いいてさ。ちょっとズルだけど聞いたんだ」
「…………いや、ズルじゃない、ズルじゃないよ!!
そうだよきっと事前の情報収集も試験の一環として組み込まれてて
だから相澤先生もあえて詳しい説明をしてくれなかったんだそっかそうだよね。
先輩にでも聞けばよかったんだどうして僕は気が付かなかったんだ──!!」
「……拳藤、それは気にしなくていい。緑谷の持病の発作みたいなものだから」
「あ、あはは、A組にもいろいろいるんだね……」
緑谷の持病には拳藤だけでなく、緑谷の隣の麗日も苦笑いを浮かべていた。
そろそろA組の面々は緑谷の持病にも慣れてきたけど、初めて見る人には刺激が強いだろう。
というか俺が波動先輩から聞いたことを緑谷は聞いてなかったのか?
轟とその時は話していたと思うけど地味にショックだ。
と、そんなやり取りをしているうちに物間が再起動して顔を上げた。
「バカなのかい拳藤……せっかくの情報アドバンテージを!!
ココこそ憎きA組を出し抜くチャンスだったというのに……!」
「別に憎くはないっつーの」
「というか知っていたし」
物間の首元に再びトッと拳藤さんの手刀が炸裂し、奴は今度こそ完全に沈黙した。南無三。
「それと例年通りに運ばれるとは思えないから…………」
「最悪を想定して動くべきでしょ?この前、忠告くれたよね。ありがとう」
「また情報が入ったら交換しような」
「オッケー、それじゃあまたね」
拳藤は物間を引きずりながら器用に食器類を落とさずに席に戻っていった。
そう言えばB組の奴らと昼を一緒にした事は無いな。
拳藤を除くと他の奴らと話したことすらないわ。
もう少しB組の奴らと関わった方が良さそうだな。
その日から暫くの日が経ち
──期末試験当日を迎えた。
次回は期末テストの演習試験です。
ようやく以前とったアンケートが役に立つぜ………